信用状を個人負債に使う異常性 金融取引に利用できる / o は、国際金融で「手形」のようにも利用されている。 日本では行われないものの、例えば額面 1000 億円の / o を元にファンドを形成 することは、まっとうな金融マンが行う常套手段だ。国際金融の世界では、額面だけが巨 大な証券や債券などのペー ーマネ 1 を元手に、日々資金調達が行われ、調達された資金 層が投資へと運用されている。 最 しかしここで疑義が生まれる。 の 件 事 前述のように証券としての / o の使用範囲は貿易に限定されない。とはいえ ン 」「物」の輸送で使う場合には出荷証明書や品目などのドキュメント ( 書類 ) を、会社間の取 す 引では登記簿などを、「手形」のように使用する場合には使用者、目的などのドキュメン 明 トを添付しなければならない。 ザ いくら / o が手形のように利用できるとはいえ、個人の負債の担保に使用するこ ャ 釜とは、資金移転の疑いがかかる異常な行為と言える。なぜならジュファリ氏が「知人の厚 元 意」としてゴーン氏を援助するのであれば、わざわざ / 0 などを使わずに、現金な 章 第り、それこそ小切手を送ればそれで済む話なのだ。実際に年川月には億円を提供して
みだ。 輸出人業者各々の地元にある銀行が決済を保証することで、貿易独自のリスクを回避し て円滑に商取引を成立させるというものである。 *-a / は物の取引に利用され、船積みごとに発行される。「取引の信用」を担保するた めに、 *-Ä / 0 には、「インポイス」 ( 送り状 ) や、船名などの「ドキュメントー ( 書類 ) が添 付される。 この»-a / を「物」だけではなく、「金融取引」などにも使えるようにしたものが「ス タンドバイ *-a / 0 」 ( o ) だ。 / 0 は船積みのたびに発行しなければならないのだが、 / は複数の輸送に使 うことができる。「物の取引」の場面で、 1 回の取引に川回の輸送が必要になる時の決済 には / O を使った方が便利ということになる。 「金融の取引」の場合、例えば日本の企業が海外に子会社を作り、現地銀行から川億円の 融資を受けたいとする。そこで、本社の取引銀行が川億円の / o を発行し、子会社 の地元銀行に送れば融資が受けられるという仕組みである。 このように / o は表の世界で普通に利用されている一種の決済方法だ。
こうしてひも解いていけば、ゴーン氏が行ったことが単なる「特別背任」でないことが 理解できるだろう。ジュファリ氏が額面よりはるかに安い金額で人手した / o をゴ ーン氏に差し入れ、ゴーン氏が日産の「名前と資金」を利用できるだけ利用し、最終的に は決裁権を持っ予算から 1470 万ドル ( 現在のレートで約億円 ) を振り込むーーこれは 「マネーロンダリング」の構造そのものだと私は考えている。 「資金洗浄」と直訳されるマネーロンダリングだが、具体的には「資本移転」と「自己資 本還流」で構成される。ここには二つの「資金移転」と「自己資本還流」が存在してお 、実際にマネーロンダリングを行った経験のある私の観点からすれば、「マネーロンダ リング」にしか見えない。 一つ目の「資金移転」「自己資本還流」は、ゴーン氏が自己損失である億 5000 万 円の信用保証を「日産」に移転させて埋め合わせたことだ。 そもそも私は、ゴーン氏の金融派生商品が、単なる為替スワップ取引であることを疑っ ている。リーマン・ショック後の相場下落を考えて、ゴーン氏が約億円ともされる年収 の全額を通常のスワップ取引に投資してもマージンコールの額はせいぜい 1 億円か 2 億円 「マネーロンダリング」
戦後になっても定期預金に最長 3 年の制限があったことや、 1990 年まで銀行には社 債発行が認められていなかったことなどから、金融債は一部銀行が長期資金を獲得するた めの資金調達法だった。中でも一部の債券は無記名で購人することができた。 巨額の現金を物理的に圧縮し隠すことや運ぶことが容易になるということで、脱税のた めの資産隠しなどに使われた。 現在では、購入時に身分証明書の提示が義務付けられ、ペー ーレス化 ( Ⅱ電子化 ) に より購人や譲渡先などが記録されるようになったので、金融債を資産隠しにも利用するこ とは難しい。 割引金融債は金融債の一つで、利息を割り引いた額で販売され満期時に額面の金額を受 け取る債券だ。日本興業銀行の「ワリコー」、日本長期信用銀行 ( 現・新生銀行 ) の「ワリ チョー」、日本債券信用銀行 ( 現・あおぞら銀行 ) の「ワリシン」など、ある年代以上の人 は記憶にあるのではないだろうか。 尸川は傘下グループに、当時無記名だった割引金融債に儲けた金を転換させ現金を圧縮 していた。また一部の売上金はドルに両替させ、毎月 1 回、 1 店舗あたり約 1 万ドルを持 参するように求めていた。 アメリカ側に狙われているということを知らない門川は、警察の押収から逃れるため ノ 182
の再移転にあたって、かけこむような形で、 / 0 のベネフィシャリーを、大企業 「日産」にしたことが自動的に導き出されるだろう。 一つ一つの要素を整理していけば、ゴーン氏が「日産」の名前や信用をフルに利用し て、ジュファリ氏に協力を依頼しながらその処理をしたということになる。新生銀行が、 新たに生まれた危ない橋を渡る決断をしたのには、国家プランドのトップである威光と、 カリスマ経営者としての存在感が大きく寄与したことは想像に難くない。同時に、すでに 層違法性の指摘を受けているにもかかわらず、「日産名義」として振り出された / 0 のを受け人れた新生銀行が、何らかの責任を問われることは当然だと言えるだろう。 件 事 日産からジュファリ氏への億円の融資計画は、囲年川月の約億円と額面億円の ン / (-) 差し人れの見返りと報じられている。そして、この計画を承認しなかったという す ことは、日産が四年の時点で、ゴーン氏の「妖しさ」を認識していたということも導き出 されるだろう。 すなわち、ゴーン政権下の日産は、少なくともこの時点から逮捕の日まで、こうした行 釜為を、結果的に容認していたとも言える。 元 章 第
ーにメ 期にはサー ールが残らないドコモのメールの使用が推奨されていた。「・ や、ゲームサイトの掲示板を使う方法もあった。募集に使われたはこの延長 にあるものに過ぎない。 この事件が突きつけたのは、世界の金融環境が動的に変化する中で、金融規制の緩和と 強化のリバランスも恒常的に行われなければならないということだと私は考えている。注 目しなければならないのは、なぜコンビニのが特化して狙われたかだ。 順を追って解説しよう。 豸行に利用された偽造カードには「暗証番号」が書かれていた。またその偽造カードは 南アフリカのスタンダード銀行が発行したクレジットカードの情報を元に作られた。事件 前に同行の銀行システムがハッキングされて顧客情報が流出し、それをコビーしたのだ。 「金融閉鎖国」日本にあって銀行のシステムは、日本の会社がソフトを作り独自のガラ。ハ ゴス的進化を遂げた。キャッシュカードやクレジットカードも、日本の物と海外の物では 磁気コードの位置が逆になっているのはそのわかりやすい例の一つだ。日本のキャッシュ カード、クレジットカードを海外でに人れる際には、逆側にして入れないと受け付 けない。 しかし第二次橋本 ( 龍太郎 ) 内閣下で 19 9 6 年から 2 0 01 年にかけて「金融ビッグ 196
なく、故意だとすればもっと問題なのだが 億円の T)O-J / O に必要な金額は : さて、ジュファリ氏からの億円の / o だが、ゴーン氏が焦げ付いた場合、ジュ ファリ氏には支払い義務が生じることになる。ゴーン氏側もこれについて、 「ジュファリ氏は極めて高いリスクを負った」 層 と主張している。 深 最 こう聞くと多くの人は / 0 の発行には、実際に億円の現金が必要だと考えてし の 事まうだろう。しかし、それは大きな間違いだ。証券としての / o は国際金融の市場 」ではそれ自体が「証券」としてリースされたり、売買されたりしているのだ。 す 億円の / o をリースする際に必要な金額は、年 7 % の使用料と、 2 ・ 5 % の手 数料で約 3 億円というのが、国際金融での常識的な相場だ。発行銀行の格や相場にもよる ザ ヤのだが、額面「億円」の売買金額は、安くて 4000 万 S5000 万円というところだ 済 経ろう。 元 実は、自分で発行するとしても億円の現金は必要ない。国際金融の世界には「ジャン 章 羶ク債」と呼ばれる債券が存在していて、それはペー ーマネーとして利用されている。極郵
その理由はアメリカ自身が、自国の国家戦略として / o=e を行ってきたからに 他ならない。歴史の中には突如として、超大国が犯罪組織を使ってマネーロンダリングを 行ったスキャンダルが露呈することがある。 その一つが「イラン・コントラ・ゲート事件」だ。 麻薬と武器、そしてドルという三つの暴力経済の象徴が巨大なスケールで交換されたこ の事件に利用された銀行が、 0 0 — (Bank of credit and commerce lnternational= 国際商業信用 金彳た。 まずは、爆心地の解説から始めたい。 預金とは銀行に対して預金者が貸した金だ。そして銀行は借りた ( 預かった ) 金を元手 に収益を上げ、預金者に利息を還元する。高い利息を支払う銀行には、より多くの預金が ホ集まるのだから、収益増加は銀行業務の義務となる。 ク 一方で麻薬や武器は基本的に非合法ということで、世界中いたるところで販売しても莫 ~ 大な収益を上げるアイテムだ。しかもこうしたアイテムは決済額が大きい上に、「エイ」 と売ったら「ヤーツ」で現金が入ってくる超優良商品だ。 マ 「この取引のメインバンクになりたいーというのが、利益を追求する銀行の本音だ。しか 章 第し金融機関に禁断の果実を食べることを思いとどまらせているのが、法規制だ。逆に言え
第 1 章元経済ヤクザが明かすゴーン事件の最深層 ①金融派生商品で約 18 億 5000 万円の評価損 ・ジュファリ氏が約億円の「 ( 信用状、後述 ) を外資系銀行から新生銀行へ 送り、ゴーン氏の追加担保にした ・この時、ジュファリ氏側に日産から億円の融資が計画されたが、社内承認が得られず 中止になった ( この指示はゴーン氏によるものだっ 一丁れたこと たことが報じられている ) 。 ⑤約億円の / o 工を差し入れ 生 ・しかし四年 6 月—年 3 月の間に、ゴーン氏 は自らの判断で使うことのできる「 O 予備 費」から「販売促進費」の名目で、ジュファリ 氏が経営する会社に 1470 万ドル ( 約億円 ) を振り込んだ ・ジュファリ氏の会社で「販売促進」が行われ たかは確認されておらず、追加担保への謝礼と 目されている これらを図 1 にまとめたが、要約すれば、会 長という立場を利用して、焦げ付いた個人投資 ゴーン氏 、、、、⑥ 30 億円の追加融資 、、、を計画するも失敗 ③評価損を付 け替える ⑦ CEO 予備費 、 / ユ 中東日産 ⑧「販売促進費」名目で計 1470 万ドル ( 約 16 億円 )
/ が差し入れられたのは、証券取引等監視委員会が、ゴーン氏が負債を抱えた 金融商品を日産に付け替えたことを「違法」と指摘した後だ。このモラルが崩れた状態 で、正規の金融機関に / o の発行を依頼しても断られる可能性が高い。指摘を受け たということで、再移転は喫緊の課題となっていた状況だ。 しかもジュファリ氏はすでに約億円もの資金を援助している。もし追加を現物で援助 するのであれば、現金、小切手、 0 コラテラルを利用しているはずだ。ここで co / を選択しているということは、これ以上、現物の提供はしにくい状況であったことが 導き出せるだろう。 ム テ こう考えていけば、この場面で、発行を依頼するのはプローカーしかありえない。そし ス シ て、こうした / o の「黒い特徴」を熟知しているのは、黒い金融で実務を行った者 の ネだけで、それがゆえに / 0 が選ばれたと、私は考えている。 マ このように国際間の送金方法として利用される、各証券の性質を裏と表の両面からひも 交 行解くと、ジュファリ氏が少ない自己負担で、巨大企業「日産」を利用して、「違法性」を を 界知りながら、あのタイミングで発行でき、なおかっジュファリ氏、ゴーン氏の 2 人で最大 章限の「黒い利益」を享受できる証券は、 / o しかなかったということになる。 第