資金洗浄 - みる会図書館


検索対象: 金融ダークサイド = THE DARK SIDE OF FINANCE : 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界
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1. 金融ダークサイド = THE DARK SIDE OF FINANCE : 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界

るようになった。 資金洗浄には「 washing 」 ( 洗浄 ) が使われてもおかしくないのだが、カボネの「コイン ランドリー」が元になって、「ロンダリング」 (launde 「 ing= 洗濯する ) という一一一一〕葉が当てられ たとされている。 さらにカボネは、カジノもロンダリングの場所に使った。カジノは匿名の現金が集まる ばかりか、現金はチップに交換される。そのチップを第三者に手渡し、第三者が換金する ことで決済も行うことができる。犯罪組織にとっては、実に便利な交換所となった。 実は、この時点で、今日まで続く口ンダリングの技術は基本的に完成している。どれほ ど世の中の金融システムが進化しても、資金洗浄は「三段階」の作業に集約されるから ホ資金洗浄を「三段階」に理論化したのは、乱立するニューヨークのマフィア組織を五大 ッファミリーによる合議制に変革した、カボネと同世代のラッキー・ルチアーノの右腕で、 ~ 組織の「金庫番」とされていた大幹部のマイヤー・ランスキーだったとされている。 それは①プレイスメント、②レイヤーリング、そして③インテグレーションと呼ばれ マ 章 第第一段階の「プレイス (place Ⅱ置く ) メント」とは、正常な金融システムの中に黒い金 る。 133

2. 金融ダークサイド = THE DARK SIDE OF FINANCE : 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界

このように、大量の現金を移動させることは、時に苦痛を伴う作業となる。何より資産 は保管しておくだけでは、ただの置物に過ぎない。使えるようになって初めて価値を持っ ということで、裏に蓄財した現金を表に出せるようにする必要がある。そうすれば表の経 済活動への投資も可能となる。 これが犯罪組織が資金洗浄を行う動機だ。 最初の洗浄はコインランドリー 歴史上、資金洗浄を初めて行ったとされているのは、アメリカのマフィア組織「シカ ゴ・アウトフィットのポス、アル・カボネとされている。 ニューヨークのギャングとして暗黒街のキャリアをスタートさせたカボネは、 19 2 0 年にシカゴに移り住む。この年は、いわゆる「禁酒法」が施行された年で、マフィアが密 造酒の運搬と販売によって、組織の近代化と巨大化へと向かった元年だ。 カボネはその強烈な暴力性で、シカゴの組織の中でほどなく頭角を現した。 カボネが最初にロンダリングに使ったのは、コインランドリーだった。少額の匿名の現 金が大量に集まるコインランドリーをいくつも所有し、その売り上げの中に黒い金を潜り 込ませる手口だ。疑惑の目に対してカボネは「洗濯屋で儲けた」と言いのけることができ 132

3. 金融ダークサイド = THE DARK SIDE OF FINANCE : 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界

マネーの世界に正義はない。あるのは最強の暴力の所有者による思惑だけということ だが閉鎖的な地理状況と金融環境にある日本人にとって、本質的な意味での「マネーロ ンダリング」への理解は難しい。そこで私自身が手を染めた「資金洗浄」の手口を明らか にした。黒い経済活動は、黒い実務を通じてしか知識を得ることのできない分野だ。また 黒い経済人が自らの手の内を明かすことはない。貴重な資料になるだろう。 正義不在ということで、資金洗浄を黒い経済人だけのツールだというステレオタイプの 認識もこの際改めるべきだろう。犯罪行為としての資金洗浄の正体は「資金移転」を繰り 返すことだ。だが一方で「資金移転」は、実は世界の金融機関の資金調達の手段でもあ る。脱法のリスクを取って得られたマネーが、よりリスキーな投資へと向かうことでビジ ネスチャンスが広がっていくのが世界標準の金融と投資の在り方だ。 普通の人が遵法しながら行う経済活動を「一般道」に譬えるなら、非合法スレスレの場 所に「高速道路」を作るのが黒い経済活動だ。「暴力」は、ファイナンスのための究極の 合理的ツールであるというのが私の認識だ。規制が強化された現在では「逮捕リスク」が 「合理性」と釣り合わないので、別な「合理性」を追求しているのに過ぎない。 ヾこ 0

4. 金融ダークサイド = THE DARK SIDE OF FINANCE : 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界

明らかになったが、以前からアメリカ本土の貸金庫では入出金を頻繁に繰り返していた。 カジノがマネーロンダリングのツールであることは前述した通りだ。ラスベガスのある ネ、ハダ州では、一人が幻時間以内に 1 万ドル超の資金を移転させた場合、カジノ側がアメ リカ財務省の経済犯罪ネットワークへ報告することを義務付けていた。 人出金が頻繁なことと、多額のデポジットにもかかわらず、一回の賭け金がそれほど多 くなかったことなどから 、門川は現地捜査当局に「怪しい人物」としてマークされてい こ 0 そして 2 0 01 年に 9 ・Ⅱ同時多発テロ事件が起こる。 カジノで洗浄された資金がテロ組織に流れている疑惑が浮上したことから、、 (United states Department 0 ( Homeland Security Ⅱアメリカ合衆国国土安全保障省 ) 、、不ハダ . 賭 博規制委員会などが、カジノでやり取りされる資金の流れを血眼で探し始める。そして 2 ーの存在が国家 0 0 2 年春ごろ、このアメリカ最精鋭の捜査機関のチェックによって、門Ⅱ 問題として浮かび上がる。カジノ内の口座ばかりか、ロサンゼルスの「ユニオン・ ク・オブ・カリフォルニア」に作られた口座に頻繁に人出金していたことも明らかになっ こ 0 ヤクザ組織は自らを「任侠道を追求する任意団体」と主張するが、アメリカ側はテロ組 180

5. 金融ダークサイド = THE DARK SIDE OF FINANCE : 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界

資金洗浄という秘術 私はゴーン氏の事件の本質を「マネーロンダリング」 ( 資金洗浄 ) であるとしているが、 この指摘に納得できない人も多くいるだろう。多くの日本人にとってマネーロンダリング とは、犯罪組織が黒い収益を白くするものという程度の認識で、その実態を明確にイメー ジできないと私は考えている。 金融の流動性が高くなった現在では、黒い金を洗浄することだけがマネーロンダリング ではない。国際金融を舞台に犯罪収益を移転させ、膨張させながら、法空間の及ばない第 三国でプールするやり方が主流となっている。 それは、ロ伝によって後世に受け継がれながら、新たに生み出される規制に対応するた めにアップデートされる黒い秘術だ。それゆえマネーロンダリングについて歴史を証明す る文献は、ほとんど存在しない。 地下経済に住みながら、実務を行うことがマネーロンダリングを理解する唯一の方法 だ。実は私自身、最初の頃は何度か失敗をしており、石油取引を通じた経験の積み重ねに よって秘術を獲得するに至った。 そこで本章ではマネーロンダリングの解説を行いたい。私自身が手を染めたマネーロン リ 0

6. 金融ダークサイド = THE DARK SIDE OF FINANCE : 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界

4 「私の黒い経済史 宿病ファイナンスとの出会いファーストロスト他人資本不動産 神話とバブル突入 00 伝説の相場師崩壊黒い経済界への旅立ち 00 暴力経 済黒い液体石油と証券資金監視と没収 与マネ 1 のブラッノホ 1 ッ 資金洗浄という秘術最初の洗浄はコインランドリー私のロンダリン グ翡中東の金融ハプセンターから「金融の聖地、ヘ 3 億円を 2 億ドルにす るカストディアン・ロンダリング金融危機の爆心地「オフショア自 由な金融からの転換神の銀行と暗黒街教皇の死神の金庫の中身は翡

7. 金融ダークサイド = THE DARK SIDE OF FINANCE : 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界

教皇の死 ゴーン氏や私のマネーロンダリングスキームを考えれば、犯罪組織が銀行を所有するこ とがいかに資金洗浄に有利なのかは理解できると思う。黒い金の入出庫を監視するゲート 、、 : 犯罪組織の配下にあるのだからこんな便利な金融機関はない。ましてや「神の銀行」 には、世界中の信者から寄付が集まる。そのバチカン銀行は、イタリアの法律が適用され ないバチカン市国にあるのだ。 しかし爲年 8 月、カソリックにありながら避妊を容認する革新的な思想の持ち主の、ヨ ハネ・。ハウロ 1 世が教皇に就任。神の銀行と犯罪組織の関係清算を表明する。だが、ヨハ ネ・パウロ 1 世は志半ばどころか就任からわずか芻日で、バチカン内の自室べッドの上で ホ書類を持って座った状態で遺体となって発見される。 急性心筋梗塞と発表された死因を信じるものはいなかった。 以降、関係者の死は連鎖する。 の ネ巨大な障害を取り除いたことでバチカン銀行とアンプロシアーノ銀行による資金洗浄は マ 続き、四年には両者の関係を捜査していた捜査官が銃殺される。 章 だが、膨れ上がった黒い経済のひずみに耐えきれなくなったアンプロシアーノ銀行は、 第 157

8. 金融ダークサイド = THE DARK SIDE OF FINANCE : 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界

やトルコを経由した資金洗浄ルートへと変化していることが地下経済で観測されている。 黒い金を巡る闘争は、登場人物と舞台を替えてなお継続中ということだ。 国家戦略に利用されたマネーロンダリング 国際金融の中で麻薬、売春、ポルノ、武器の不正売買などで得られた「黒い金」を浄銭 する金融機関へと堕していった「神の銀行」。その防壁となったのは、神と暗黒街という 「触れえざる防波堤」だった。 その強固な壁を突破したのは、米軍という世界最大の暴力と、ドルという基軸通貨の両 方を所有するアメリカだ。 だが一連の流れからアメリカが世界の正義のために、犯罪資金のマネーロンダリングを 規制していると理解しているならば、それは大きな誤解だ。考えなければならないのは、 ・Ⅱが起こるまでアメリカが今日のような / ( マネーロンダリング対策 なぜ 9 とテロ資金供与対策 ) を行ってこなかったのかという点だろう。年のアルシュ・サミット から、現在行っているレベルの厳しい規制と監視を実行していれば 9 ・Ⅱは未然に防ぐこ ともできたはずだ。 なぜアメリカはそうしなかったのか 162

9. 金融ダークサイド = THE DARK SIDE OF FINANCE : 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界

資金洗浄やテロ資金供与などを扱うために、は 1990 年、各国に疑わしい金 融取引を調査、分析し、捜査する ( 金融情報部門 ) の設立を求めた。日本においては ワ 3 -0 : 0 : 0- 年、ようやく金融監督庁 ( 現・金融庁 ) 内に、—の日本版である「—— 0 」が創設された。そのは、年に国家公安委員会へ移管され「 となっている。しかし、その矛先は主に「暴力団」など、極めてわかりやすいドメスティ ックな金融犯罪にしか向かっていないのが現実だ。 1 月日の日経新聞のインタビューでゴーン氏は、 「証拠は日産がすべて持っており、社員との接触も日産が禁じている状態で、どうやって 証拠を隠滅できるのか」 と答え保釈を訴えている。 確かに証拠は日産が持っているが、日産からジュファリ氏などに流した金が、ゴーン氏 に再還流されているかどうかは未だ不透明だ。国際金融捜査のアプローチが行われなけれ ば、ゴーン氏への資金還流の有無は確認できないというのが、日本の現状である。 資金ルート解明のためには、関係した口座ばかりか、時には銀行そのものを凍結するな ど、人権や金融機関への暴力行使を躊躇しないアメリカであれば、早期の保釈も認められ たかも知れない。ゴーン氏のケースは金融監視の緩い、人権尊重国・日本だからこそでき

10. 金融ダークサイド = THE DARK SIDE OF FINANCE : 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界

こうしてひも解いていけば、ゴーン氏が行ったことが単なる「特別背任」でないことが 理解できるだろう。ジュファリ氏が額面よりはるかに安い金額で人手した / o をゴ ーン氏に差し入れ、ゴーン氏が日産の「名前と資金」を利用できるだけ利用し、最終的に は決裁権を持っ予算から 1470 万ドル ( 現在のレートで約億円 ) を振り込むーーこれは 「マネーロンダリング」の構造そのものだと私は考えている。 「資金洗浄」と直訳されるマネーロンダリングだが、具体的には「資本移転」と「自己資 本還流」で構成される。ここには二つの「資金移転」と「自己資本還流」が存在してお 、実際にマネーロンダリングを行った経験のある私の観点からすれば、「マネーロンダ リング」にしか見えない。 一つ目の「資金移転」「自己資本還流」は、ゴーン氏が自己損失である億 5000 万 円の信用保証を「日産」に移転させて埋め合わせたことだ。 そもそも私は、ゴーン氏の金融派生商品が、単なる為替スワップ取引であることを疑っ ている。リーマン・ショック後の相場下落を考えて、ゴーン氏が約億円ともされる年収 の全額を通常のスワップ取引に投資してもマージンコールの額はせいぜい 1 億円か 2 億円 「マネーロンダリング」