ー第四章ー明るい未来 9 ・実行に移す これまでの八つの段階をマスタ 1 したなら、自分自身で、自己のために、自分にとって 意義のある ( 複数の ) プロジェクトを、理性を働かせ、他者の意見に耳を傾け、謙虚な姿 勢で実行に移すのだ。 8 ・不可能なことはないと思え 思いもよらないことを望め。ありそうもないことを考えろ。待つのではなく行動するの だ。どんなプロジェクトであっても、自分の取り組むプロジェクトが実現不可能だと認め るべきではない ( ただし、科学的に反論できない場合や、道徳的に正当化できない場合は 他者が実現不可能と考える二つのプロジェクトがあるとき、一方が他方を実現可能にす るこし J がし、はし ~ のるこし」な」化帽「しておこ一フ 自己の ( 複数の ) プロジェクトを実現するために必要な場合に限り、適宜に変身するの だ。そのための準備を整えておく必要がある。
5 ・自分の幸福は他者の幸福に依存していることを自覚せよ 自分と世界は相互依存していることを自覚するのだ。そこで、次のことを理解すべきで ある。自分が不幸になる原因は、ほとんどの場合、他者の不幸に対するわれわれの無分別 ゃあきらめからである。他者を喜ばせることができないのなら、あるいは他者の役に立て 次世代に対して利他的になる ないのなら、それは自身の成功とは程遠い。そしてとくに、 ことは自分自身の利益なのだ。 消費者、労働者、市民として、寛容であることは自身の利益であると理解できるように なってこそ、他者の存在や、他者と分かち合うことに寛容になれる。こうしてわれわれは、 他者、とくに次世代を助けることは、自分たちの大きな特権であると同時に、自分たちの 利 ) 益に . なると強ノ \ 咸じるよ、フにもはる そのような自覚があってこそ、自由という理想から利他主義という理想への本格的な転 換が始まる。こうしてこそ、懣から激怒への逸脱が避けられる。 そしてこの転換こそが、人類のサバイバルのカギである。利他主義が押しつけられるの 、。誰もが利他主義を理性的かつ情熱的に熱望し、利他主義が人々 ではこの転換は生じなし 188
ー n t r 0 d u c t i 0 n を起こさなければならないのだ われわれは世界の現実をきちんと把握し、自分たちの生活を早急に見直す必要がある。 救世主の登場と集団的な救済の間には密接な関係があるが、これらを期待しても無駄であ 0 る 診断がついたのなら、たとえ困難でも、そして権力の正体を暴くことがこれまでのよう に容易でなくても、行動すべきだ。何を差し置いても、自分自身の人生を大切にすること だ。自分の人生を決定するのは他者だなどと考えてはいけない。自分は唯一無二のつかの 間の存在であることを意識すべきなのだ。 自分の幸福は他者の幸福に左右されると肝に銘じてほしい。 より一般勺にいえば、 , 目分 の幸福は、世の中のあり方と行方に依存するのである。そして自分自身および他者のため に行動する勇気を、他者の幸福から導き出すのだ。 世界の行方は、各自が自分自身になれるかどうかにかかっているのである。
ー第四章ー明るい未来 4 ・他者が行なおうとすること、そして世界の行方について、 絶えず熟考しながら自分自身の意見をまとめろ その前提として、先入観なく、好奇心旺盛にして注意深くなければならない れまで本書が行なったように、 世界をさまざまな側面から絶えず分析するのだ。 そのためには、共感カ ( つまり、偏見にとらわれず、他者の利益を考慮しながら彼らの 立場に立っ能力 ) は必要不可欠だ。共感力とは、たとえ他者の行動が利己的、不誠実、敵 対的だと思えても、彼らの価値観、不変的なもの、探求しているものを見出し、なぜ彼ら がそのように行動するのかを理解しようとすることだ。 共感力が得られたのなら、世界は最悪に向かっていることを意識するのだ。今後の出来 事に対し、甘受するのではなく健全に怒るのだ。この貭懣を行動の原動力にするのである。 それは建設的であるためであり、自分自身を救うためだ。そして自己と他者の関係を理解 するためでもある。 も浮かび上がってくる。今日、われわれの価値観を破壊するために死ぬ覚悟の者たちがい る。だからこそ、自分自身に対し、己の課題を明らかにすべきなのだ。 フてしてこ 187
組むプロジェクトに見合う年齢にしかならないからだ。 7 ・危機、脅威、落胆、批判、失敗に対する抵抗力をつけろ それらに対する抵抗力を身につければ、レジリエンス〔へこたれない精神〕と勇気が得 られる。他者に責任を押しつけることなく、自身の失敗から教訓を導き出すことができる のだ。屈辱、不満、疎外に対する憤懣を決して忘れてはならない 他者が自由に下す判断なら、たとえそれが自分と彼らを決別させることになるとしても 尊重すべきだ。たとえその判断が自身の利益に反するとしても、他者の人生の選択や意見 」しみであっても、利他主義と両立する場合もあるのだ。 は尊重されるべきだ。悲 悲嘆や悲しみを抱えながらサバイバルする術を学ぶのである。とくに、自然災害、事故、 。、 1 は、罪悪感を覚えてはいけない。仕事上の失敗や私生活の破綻につ テロ事件のサバイノ いて自責の念に駆られてはいけない。常に本質に向かって歩むのだ。すなわち、自分自身 になるのである 190
言い換えると、われわれは「央適な時間」を過ごす手段を自身に与えると同時に、他者 もそうした時間を過ごせるように手助けしながら、幸せで持続的な世界をつくり出すこと ができるのだ。 ここに、偉大な哲学者の教えがある。彼ら哲学者は、宗教家であろうが世俗主義者であ ろうが、幸福のカギは他者への愛がすべてだと説く。最近では神経科学者も同じようなこ とを述べている。そしてそれは「積極的な経済」の主体者が実行することでもある。すな わち、彼らは次世代のために毅然と行動する人々なのである。 そのためには、われわれは利用できる短い期間に迅速に行動し、自分自身および他者に とってのパラダイム・チェンジを早急に実現しなければならない 。そして確固たる貭既の 精神をもっ必要がある。それは怒りに任せてわれを忘れるためではなく、利他主義を広め るためにきわめて理性的かっ明敏になるためだ。 怒るのは、建設的になるため、愛するため、そしてこれまでのやり方に再考を促す勇気 をもっためである。 そうした境地にいたるには、自分の直感、自身が受けた教育、読書、出会い、さらには 本書で述べた悲惨な状況から湧き上がってくるに違いない自覚だけで充分な人もいるだろ 182
過ごせるようになると、われわれは期待すべきなのだ。 そのためには、われわれにとって他者の幸福は、他者の悲しみよりも有用であることを そして、民主主義が機能するのは国内だけであるため、民主主 理解しなければならない。 義はまもなく幻想になると覚屠しておく必要がある。そして民主主義と市場は近視眼的な 要求によって逸脱するかもしれないと、い得ておくべきだ。 次に、自分たちの饋懣を怒りではなく、利他主義へと誘導するのだ。そして、協力は競 争よりも価値があり、人類は一つであることを理解すべきだ。そうした認識があれば、人 類の倫理と政治組織を高度な次元に移行すべきだという自覚が、われわれの中に芽生えて くるたろ , フ 寺間はほとんど残されていない世界の破壊は進行中だ。すでに秒読みが始まっている。 もちろん、人々のメンタリティと組織を変革するのは、ほば不可能に田 5 える。さらには、 残された短い時間で行なわなければならないのだから、それはなおさら不可能に感じられ る。惨事が不可避になる前に行動を起こすのは、きわめて難しいだろう。 それでもこの難題に取り組まなければならないのだ。貭懣を制御するのであって、抗議 したり、 不満を述べたり、他者より少しでも長く生き延びようとしたりするのではない。 嵐に遭遇したこの船を修理するのだ。飛行中のこの航空機に操縦室をつくるのだ 178
び他者の天賦の才能を見つけることは、充実した人生を過ごす最大の条件の一つでもある。 3 ・変わらない自分を見つけろ 多様な生き方が可能であり、またそうした生き方が望まし、 したが、「誰もが何よりも , 入 切にすべき不変的な価値観をもつ。それは祖先から受け継いだものや、自己の価値観の寄 せ集めからなる。不変的な価値観は、宗教的なもの、世俗的なもの、市民としての信条、 それは倫理 政治的信念などからっくられ、どのような状況においても変わることがない とも定義でき、自己の自由の行使を制限し、人類全体、あるいはまた自分の家族や身近な 人たちだけに適用される。 不変的な価値観により、自分自身であることに安らぎを感じる精神的な枠組みが形成さ れる。そうした価値観のおかげで、われわれは行動を起こすことによって、あるいは傍観 することによって、自分自身を裏切るということをしなくなる。 不変的な価値観を自己の奥底に見出し、それらを明らかにし、自分がそれらに固執する 理由を他者にわかってもらうことは、きわめて重要だ それらをうまく探し出し、明らかにできるのなら、自分の命を賭けてでも守るべき課題 186
乗る航空機に操縦室をつくる唯一の方法なのである。 これを実行するのは幻想ではない。積極的経済をはじめとして、すべてはすでに始まっ ている。この経済には、次世代の利益のために働くあらゆる人々が集結している。彼らは 自分たちが他者にもたらす幸福に己の幸せを見出す。飽くなき富の蓄積や他者の生活の破 壊でなく、微笑や共有に意義を感じる。すべては無数の「自分自身になる」という過程で 現われる。必然的に利他主義に基づくそれらの過程は、いたるところで開花する その最も説得力のある証拠として、これら一〇個のどの課題についても、世界規模で精 力的に活動する非政府組織 (ZCO) が、少なくとも一つは存在することが挙げられる。 したがって、この計画を達成できると考えるのは非論理的ではないのだ このサバイバル計画において、フランスが自分たちの役割を担うために実行すべき一〇 の提案を掲げる。それら一〇の提案は、きわめて当然ながら「自分自身になる」という各 自の欲求と、そのために必要な手段から生じる。 ・自分自身になる各自の手段を強化せよ。すべての地区の保育所と小学校の整備率を上 昇させろ。それは脱宗教の国であるフランス共和国への社会統合を成功に導く最短距離で 202
自分自身および他者のために、全員がすぐにでも行動を起こさなければならないのだ 本書ではそのことを理解してもらうために、今から二〇三〇年までに世界で起きるであろ うさまざまな重要な出来事を語る。 そのためには、よく知られているデ 1 タはもちろん、あまり知られていない知見を読者 に紹介する必要がある。それらの情報に触れると、未来は、現在の傾向を単純に引き延ば すことによって描かれるというよりも、よくも悪くも、現在よりも常軌を逸したものであ ることが理解できるはずだ。というのは、未来は、八〇億人〔二〇三〇年の世界の人口〕 の行動、創造力、懣、錯乱、激怒、世の中をよくしようとする意思の絶えざる相互作用 から生じるからだ。今から二〇三〇年までの間に地球で暮らす人々全員の人数を考慮すれ ば、実際には二〇〇億人近くの人々が未来の行方に関与する計算になる。 本書で述べる難題、望み、惨事に直面しても、劇場で演劇を鑑賞するような態度で暮ら そうとする者たちがいるかもしれない。人類の大半が彼らのように自分たちの将来に働き かけることを断念するのなら、最悪の事態が訪れることも考えられる。 台本はすでにできあがっている。役者たちは台本通りに舞台に登場する。自分自身そし ( あがり、台本を書きかえ、舞台装置を覆さなければな て他者に善をなすには、舞台に駆す さもなければ、まもなく取り返しのつかない悪夢が現実になる。われわれは行動 、 0