メートル - みる会図書館


検索対象: QED : 鬼の城伝説
20件見つかりました。

1. QED : 鬼の城伝説

うらまちゃうすやま 細谷川の音のさやけさ 窺い知れます。なお古墳関連でいえば、浦間茶臼山 古墳が全長百一一十五メートル、中山茶臼山古墳が全 という歌が出来上がっています。また、吉備の中長百一一十メートルで、これらもかなりの規模になり 山は『枕草子』にも載っていますが、これは収載さます。特に、浦間茶臼山古墳に関しては、箸墓古墳 の設計規格を、約二分の一にした形状を持っことが れていない写本もあり、正確なところは分かってい 分かっていて、これを見ても吉備は、大和に次ぐ勢 ません。その他にも『播磨国風土記』には、 力を持っていたのではないかと思われます」 「 : : : はしはか古墳 ? 」 たらちし吉備の鉄の狭鍬持ち みみざと 隣で思わす呟いてしまった奈々の言葉を崇は耳聡 く聞きつけて、 などという一文が見え、吉備の製鉄はかなり有名 だったと思われます。実際に、吉備高原や中国山地「ああ。卑弥呼の墓ではないかともいわれている古 で採れた砂鉄は、城の真下の谷間まで運ばれて、製墳だ」 錬炉四基、炭釜三基を使って、盛んに製鉄が行われ「卑弥呼の ! 」 きど、つ 「そう、『鬼道に仕え、よく衆をまどわし』た、邪 るようになったといわれています。鉄製の農具は吉 備の沖積平野の開発を進め、武具は吉備の軍事力を馬台国の女王だ。これについても、また後で説明し よ、つ しかし、今ここで重要なのは、これら吉 増強しました。その勢力は、全長三百五十メートル もある造山古墳ーー岡山市新庄下ーーや、全長一一百備の造山古墳には、九州の阿蘇石が使われていると いうことです」 七十メートルの作山古墳ーー総社市三須ーーからも まかねさぐわ 幻 4

2. QED : 鬼の城伝説

百メートルだからね でも忘れちゃいけないの いきなり素晴らしい眺めだった。 目の前の上半分は真っ青な空と、ばっかり浮かんは、ここに高い門があったってこと。ええと : : : 」 ・間ロ五・五メ 沙織は資料に目を落とす。「門は・ だ雲の波。 トル、奧行一二・六メートルで、その高さは約十五 そして下半分は、緑の山を越えて、その遥か向こ うに総社市街を一望できる。言葉通り、百八十度のメートレ 「十五メートル この位置からさらに ? 大パノラマだ。中央を蛇のようにうねって走ってい るのは、山陽自動車道だろうか ? もしも高性能望「そ。何しろ三階建てだったらしいからね。岡山平 そし 遠レンズを用いれば、市街に住む人々の一挙手一投野どころか、瀬戸内海まで楽々見渡せる さの一 足を観察できてしまいそうなほどだ。視界を遮るもてここは西門だけど、この鬼ノ城にはこんな門が、 東西南北四つあったっていうわけ。それプラス、さ のは何もない。 「完璧な景色だね」沙織が、うーん、と伸びをしつきみたいな角楼が数カ所でしよ。もう、殆どパ こ復一兀されるの フェクトな城構え。ああ、この場所幺 た。「こんな良い景色見たの、久しり」 「というよりも : : : 」奈々は驚きを隠せないまま答かあ。見てみたいなあ : : : 」呟きながら沙織は、石 垣の周りを歩き回る。「あ、そうそう。お姉ちゃん、 える。「山や湖や海を見渡せる場所っていうのは、 何カ所も行ったことがあるけれど、一つの大きな市これこれ」 「なあに ? 」 街を完全に見渡せる場所っていうのは初めて」 と奈々は、沙織の指差す場所を覗く。するとそこ 「天気さえ良ければ、岡山市街を通り越して、児島 半島まで見えるらしいよ。何て言ったって、標高四には大きく平らな石が置いてあり、その中心部分に 118

3. QED : 鬼の城伝説

ししがしら な神事でした。大きな獅子頭を先頭にして、その後 「ないけど、それこそ気にするな。体を壊す ろに神主さんたち、そしてそのまた後ろから大きな ずいじんもん と答えて沙織は随神門をくぐった。する 白い布を張った、長さ四、五メートルもある竹竿を いしどうろう 捧げた二十人近くの人々の行列が続くんです。殆どと大きな石灯籠が二基、奈々たちを出迎えてくれ 意味不明でした」 「変なの」沙織が身も蓋もない感想を述べる。「そ「土日は、地元の人たちがボランティアで神社を案 内してくれるんですよ」 ういうのってさ、全然意味が分からないことが多い よね。でもどうして皆、おとなしく一一「ロうことを聞い 「でも今日は私たち一一人がいますから、きっと必要 て伝承していってるんだろう ? 疑問に隸って悩んないでしよう」 猫村と桃田は、ニッコリと微笑む。 だりしないのかな」 確かにその通りだろう。というよりも、彼女たち 「まあ、伝統行事ってのは」小松崎が振り返る。 こそ地元のボランティアではないのか 「意味を追究したりしちやダメだな。余り悩まない 「この大石灯籠は」さっそく桃田が言う。「高さ十 z 方かいい」 かさいし 一メートルで、あの笠石は八畳敷きなんですー 「そうかなあ : 「少なくとも俺たちはな。代表して、誰か一人に悩「でも造られたのは」猫村が受ける。「意外と新し乢 んでもらえばいいんだよ、そんなことが好きな奴くて、江戸。ー・・・安政年間なんですよ てみずや ふんふんと頷きながら、奈々たちは手水舎で手を に。何故か今はここにいないけれど」 「そういえば、まだタタルさんから連絡ないんです洗い、ロをすすぐ。そして目の前の石段を十七段上

4. QED : 鬼の城伝説

どくろ 正面には黒い土の壁。そして、 骨のようだった。そしてその側には髑髏がゴロリと がんか 転がって、無言のまま、虚ろな眼窩が虚空をじっと「おい、梯子だぞ ! 」 「えつ。ああ、本当ですね ! 助かった」 見つめていた。 助かったも何も、今来た道を戻れば何も問題はな 「け、警部 : : : 」片岡は囁く。「もしかして、ここ いのだけれど、しかし今の言葉は片岡の本心からの は墓場なんじゃ・ 「バカ。墓場は上だろうが。こんな場所にあるもん声だった。 「どうやら、ここが終点のようだな」 か。しかし・ーー」 忍田は梯子に近づく。 忍田は骸骨を照らす。 するとそこには先ほどと同じくらいの、床面積三 ただ、この頭蓋はかなり 「何なんだろうかな : ・ 天井も、三メートル弱あ 畳弱の空間になっていた。 年季が入ってる。最近の物じゃないことは確実だ る。 後でこいつも、 もう何十年も経ってるだろう : ・ 一一人はその空間にたどり着くと、ようやく腰を伸 鑑識に観てもらうとするか」 でもやばすことができた。次に忍田は梯子に手を掛けて、 「それがいし 、と自分も思いますけれど : い揺すって強度を確かめる。 つばりャパいんじゃないですか、ここは : 「よし、登るぞ」 返した方が 。あっ、警部つ」 情けなさそうに呼びかける片岡をあっさり無視し「はいつ」 ここまで来れば、好奇心が勝つ。 て、忍田はすいすいと進む。 片岡も大きく頷いた。 やがてすぐに道は行き止まりになった。 うつ 140

5. QED : 鬼の城伝説

いの洞窟だ。確かにしめじめとしていたが、幸いに 「どうしたんですか ? ー考え込む忍田の肩越しに、 も有毒ガスなどは発生していないようだった。 片岡もそれを覗き込む。「何ですか、こいつは ? 歩き出してすぐに紐の長さが足りなくなった。そ ケ : : : ですか ? 」 しよう : もしかしたら、被害者こで忍田は紐を外して地面に置いた。道が中で鍾 「分からない にゆうどう 乳洞の迷路のようになっていたら困ると思ったのだ はここに投げ込まれた時まで息があってーーー」 が、この洞窟は完全に人工の物のようで、道は真っ 「これを書き残したと ? 直ぐ一直線に延びている。 「その可能性はある」 この分ならば道に迷うことはないだろうし、どう 「しかし : : : 」片岡は首を捻った。「こいつは、ど ういう意味でしようかね ? あ まさか、犯人せすぐに後ろから鑑識たちもやって来るに違いな そう判断したのである。 の手がかりを ! 」 所々に見える梁もしつかりとしている。いやそれ 「それは : : : 分からない。後で検討してみる。とに かく、鑑識に言って、こいつをきちんと保管しておどころか、部分によっては鉄板できちんと補強され ていた。そのせいだろう、声がよく響く。 いてもらおう」 「こいつは、凄いな : : : 」忍田は懐中電灯で辺りの 壁を照らしながら呟いた。「今でもしつかり使える 片岡は頷いて、その由を上に向かって伝えた。 地下道じゃないか」 「 : ・・ : どこまで続いてるんでしようかねえ・・ : : 。何 一一人は中腰になって、洞窟の中を慎重に進む。 幅二メートルくらい。高さは一メート ル五十くらか不気味ですよ」

6. QED : 鬼の城伝説

「ああ : ・・ : そうですね。確か : ・・ : 妙見、とかいって いたような」 「本部と連絡を取って、確認を急がせてくれ」 鑑識たちの手によって、遺体引き上げの作業が開「分かりました ! しかし : : : 警部は、この後どう されるんですか ? 」 始された。 しかし、地下室の床までは地上から二メートル以「決まってるだろうが」忍田は片岡の肩を親しげに 叩いた。「お前と一緒に、地球の中心まで地底探検 上はある。しかも梯子は急で、穴も狭い。人がやっ と一人通り抜けられるような幅しかないために、作に出かけるんだよ」 「はあ ? ちょ、ちょっと待って下さい 業は困難を極めた。だが、鑑識や警官たちの必死の しいとも、ちょっとの間だけ待っていてや 「ああ、 努力によってーー最初は、クレーン車の応援も考え たのだがーー何とか遺体を無事に回収することがでるから、早く連絡を取って戻って来い。帰りに鑑識 きた。 に言って、でかいライトを借りてきてくれ。それと z ひど 幸い遺体は、後頭部以外の損傷はそれほど酷くな念のために長い紐も」 く、身元確認を急ぐためにすぐに司法解剖に回され「止めて下さいよ。本当に行くんですか : 「ああ」 「おい」と忍田は片岡に呼びかける。「そういえば「我々二人が ? 」 捜索願が一件出されていたぞ。ちょうど、この地域「うだうだ言ってないで、早く用意をしろ ! 地底 人が待ってる」 の家からだ」

7. QED : 鬼の城伝説

は直径一メートルほどの丸い穴が開いていた。 貯水池。そして井戸のような溜井、と水源の確保も 「これは門礎っていってね、門の扉の回転を受ける完璧だったんだ。あとは : : : そう、のろし場」 穴なんだよ。ここに扉の軸になる柱をはめこんだん「のろし場 ? 」 だね」 「うん。城内の一番高い場所で、熱を受けて岩盤が ということは、柱の太さや長さなどを想像してみ赤く変色していた場所が見つかってるの。これはお るに・ これはやはり相当大きな建物だ。しかもそらく、当時一番迅速な通信手段だった、のろしを それは入り口兼見張り用の単なる「門にすぎない 上げた所だろうっていわれてる あとは当然、 ぞうしゃ のである。つまり全体像はといえば 兵舎、雑舎などの人が生活する場所と、そして鍛冶 場ね。鉄製の武器を作ったり、修理したりするため 奈々は目をパチクリさせて、辺りを見回してみたの」 けれど 。想像しろという方が無理な話だ。 「ーーーっまりここには、何から何まで揃っていたと 「その他にもね」沙織の説明は続く。「ここには、 いうことなのね」 敷地面積百一一十畳くらいの食料備蓄倉庫が六棟もあ「そういうこと」沙織は奈々を見た。「だから、こ z ったんだって」 んな山城は他には見当たらないから、学者の先生も 「二百平方メートルの建物が六棟も ? 」 困ってるらしいよ」 「うん。当時は、それだけ大勢の人たちが居住して「どうして ? 」 たってことだね。でも驚くのはまだ早くてね、その 「うまく分類しきれないみたいで」 他にも、池や湿地から水を引いていた水路と水門と「別に、分類しなくたっていいじゃないの。鬼ノ城 もんそ

8. QED : 鬼の城伝説

ろうか。近づいてみれば、その内部には土と岩で固も、きっちりと版築で一段一段積み上げられてる められた通路があり、まるでどこか異国の遺跡のよし、敷石はアプライト 、つだった。 「アプライト ? 」 かこうがん 「ここが、さっきも言った『角楼』の跡。こんな感 「花崗岩の仲間だよ。この、砂が固まったように見 じで城壁の外側に突出して造られてるから、城全体える石。風化すると、きな粉みたいな砂になっちゃ の死角がなくなるわけ。だから本当は、この石垣の 高さも城壁の高さと同じで六メートルくらいあった 「あなた : ・ ・ : 」奈々は沙織の顔をましましと見る。 んだろうね。今は半分くらいの高さになっちゃって「どうしてそんなことまで詳しいの ? 」 るけど」 「だから、城フリークだって言ったでしょ これだけの高さがあれば、 それでも充分に高い もね、こんな敷石は、日本の他の山城には全く見ら 今登ってきた道が楽に見渡せる。敵を迎え撃つのにれないんだって。特殊例らしい」 充分だっただろう。 「日本のーーー・つていうことは、しゃあ他の国にはあ しかもね、と沙織はノートを広げた。 るってい、フこと ? 」 「うーん・ 「日本の古代山城で、こんな角楼があるのは、ここ 朝鮮にはいくつかあるらしいけれ だけなんだよ。その上広さも、実際には百畳くらい ど、それでもとっても珍しい部類に入るみたいよ あったんじゃないかって」 「百 , ハ十五平方メートル ! 凄い」 一一人は角楼を見上げながら、ゆっくりと歩いた。 「そう」と沙織は石垣を指差す。「この基礎の部分 少し行くと、目の前の景色が開ける。

9. QED : 鬼の城伝説

「変ですねえ : ・ 「しゃあ、やつばり被害者らしき人物は、お堂から しばらくすると、鑑識たちの顔に困惑の色が浮か ここまでやって来たってわけか」 「そうですね び始めた。というのも、血痕も、何かを引きすった ただ、ここから先の足取りが全 痕跡も、両方共にこの近辺で綺麗に消え失せていた く無くなってる」 のである。 「ふん : : : 」 「おかしいですね : ・ 鑑識は立ち上がって腕を組 忍田が腕を組んで不満げに鼻を鳴らした時、 んだ。「血痕は、明らかにこの近くまでは来ている。 「警部 ! ー鐘楼の周りを捜索していた片岡が大声で でも、ここから先の痕跡が何もない 叫んだ。「こんな所に、血痕らしきものが ! 」 「足跡はどうだい ? 「どこだ ! 」 「それが ここらへんは草むらですしね、もう と忍田と鑑識たちは、片岡のしやがみ込んでいる 少し土が露出していれば分かりやすかったんでしょ 場所に集まった。そこは鐘楼の向こう側、竹藪の近 、つけ・、れど : それに、このところすっと晴天が続 くだった。その向こうには、鬼野辺家の塀が見え る。 いていますから、ちょっと厳しいですね」 「だが、誰かがあの地蔵堂からここまでやって来て 片岡が指差しているのは、鐘楼の台座の一部分だ ることは確実なんだろう ? それとも、こっちが現った。古ばけた台座の高さは、ちょうど忍田の腰の 場ってことはないのかい ? あたりまでーー・とい、フことは、高さ一メートル立だ 「いや、それはないでしよう。それならば、それころう。そしてその台座の地面から一一十センチメート そもっとはっきりと痕跡が残ってるはすです」 ルほどの所に、赤黒い染みがあった。

10. QED : 鬼の城伝説

が尋ねる。 「きみたちは、当然、あの鬼ノ城にも行ってきたん たろう・ ? 奈々たちはタクシーを呼んでもらい、岡山市に帰 「え、ええ。沙織と二人で」 ることにした。 「すつごかったよ ! 」沙織が奈々の隣から身を乗り すっかりしょげてしまっている笙子や、複雑な表出して叫んだ。「その跡しかなかったんだけれど、 情のまま顔をこわばらせているトキや丸部、そして大きくて立派で。ここらへんなんかが一望できちゃ 久蔵たちに挨拶をした。 忍田と片岡は、もう少し細かい状況を調べてか 「まあこの辺りも、昔は鬼ノ城の一部だったわけだ ら、そのまま遠童の医院にまわるらしかった。もし からな。広大な城だ」 も何かあればーーおそらく何もないと思うけれど「疋 、 ? こんな所までが鬼ノ城の一部 ? 」 小松崎の携帯に連絡を入れるという。 「そうだ」 なごり 名残惜しそうな明日香と、まだもう少し明日香の 「まさかあー 側にいるという桃田と猫村たちに、奈々たちは別れ「いや、今俺たちが走っている場所ではないけれ を告げて、鬼野辺家を後にした。 ど、奥坂地区の田圃などでは、民家が一列に並んで タクシーの窓から振り返れば、鬼ノ城ーー鬼城山 いるんだ。しかもそこは幅一一十一メートルもの土手 はんちく がどんどん遠くなって いく。少しセンチメンタルな になっていて、これが版築で築かれていた」 気分でそれをじっと眺めていた奈々に向かって、崇「版築 ! 鬼ノ城と一緒 ! 」 272