連絡 - みる会図書館


検索対象: QED : 鬼の城伝説
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1. QED : 鬼の城伝説

「あ ? ビールは酒だったか。忙しすぎて、すっか 「さっき、そう連絡が入った」 り忘れてた」 「何やってるの ? 」 いいかけんなことを一一一一口、つ・。 「もうちょっと遅れるみたいだな。ひょっとした 「いやとにかく、大変なことになっちまったような ら、到着は明日になるかも知れねえな」 んだ。俺はもう少ししたらーー」腕時計に目を落と「でも : : : 明日は、私たち美作に行く予定になって す。「もう一回出かけてくる。部屋に上がってる時るでしよ。盈泉に」 そうだな 間がもったいないから、荷物も運んでおいてもらう と小松崎はビールのグラスに口を ことにした」 つける。そして一息に三分の一ほど飲み干した。 「出かけるー・ー・つて、明日香さんの所 ? 「しかしどっちみち俺は、温泉旅行はちょっと無理 「そうだ。桃田さんや猫村さんたちは、彼女の所に かも知れねえな。それにタタルも、相変わらすこん まだいるんだ。県警も出たり入ったりしてるしな。 な調子だし : 。もしも俺たちがキャンセルになっ 俺も混ぜてもらう。また途中で連絡を入れるから」 たら、沙織ちゃんたちだけで行ってきてくれ。全員 z 分かった と沙織はコクリと頷く。 キャンセルしやもったいないし、またそんな必要も 「そういえば : : : 連絡っていえば、タタルさんから ないだろう」 は、まだ何も ? 」 「えー。そんなあ」 ああ、と小松崎は脱力したように答える。 不満の声を上げる沙織に、 「あいつは、まだ東京にいるらしい 「仕方ないさ . と小松崎は言い、次に奈々を見た。 「東京 ! まだ出発できないの ? 」 「そんなわけだ。もうちょっと我慢してくれ」 みまさか

2. QED : 鬼の城伝説

ル、高さる城壁の連絡路なども発見されている」 いる。その規模はといえば、幅約七メート ル。城内には、食料貯蔵庫と考えられ「そんな妻い城が、一体いっ頃築かれたのか分かっ 推定六メート ためい そせき る礎石建物跡や、のろし場、溜井 ( 水くみ場 ) も発てないの ? 」 「うん : : : 。築かれた時期に関しては、五世紀から 見されている」 八世紀と、まだ特定されていないんだって」 「 : : : 凄い規模ね。しかも、そんな標高四百メート じゃあ、ど 「すいぶん幅があるみたいだけど どうしてそんな場所に ? ルの場所になんて うしてそんな立派なお城が、この場所に築かれた 「高い所が好きだったんしゃない。景色もいいし」 「まさか」 「その目的もね、 「半分冗談だけど、半分本当ー 一、大和政権に対する吉備の豪族の反抗拠点だった 「どういう意味よ」 とい、つ説。 奈々の言葉に沙織は、 一「渡来民族が自分たちの居住地の背後に築いたと 「そのままの意味だよ」とあっさり答える。「えー いう説。 っと、そして : : : 。鬼ノ城の西門と南門は、復一兀イ メージでは、正面三間ーー約五・五メート ル、奥行三、百済からの渡来集団の逃げ込み城だ「たのでは ないかという説。 一一間ーーー約三・六メートルという、これも大規模な しらぎ 物だった。その他、城壁の死角をなくすと同時に敵四、唐・新羅連合軍からの防衛に朝廷が築いたとい かく う説。 ルの『角 を攻撃することのできる、高さ六メート なんかがあるみたいだね。そしてこの中で一番有 楼』、石組みの排水溝、六カ所の水門、南北に連な ろ、つ

3. QED : 鬼の城伝説

片手を挙げる小松崎に向かって、 ここから真っ直ぐに総社に向かってもらい、そこ 「仕事しつかりね。またあとでね」 沙織は明るく手を振る。そして、 で小松崎と、桃田・猫村コンビは降りる。明日香に 会って取材をするのだ。 「鬼ノ城はなかなか良い所なので、ごゆっくりと見 一方奈々は、沙織と一一人で仲良く鬼ノ城を目指す物を。景色を充分に楽しんできてください」 のである。 「もし良かったら、夕方にでも私のお店で。美味し 「取材が終わったら連絡してね」 い鳥料理を用意しますよ」 沙織か小松崎に念を押す。 という桃田たちの声に送られて、奈々たちを乗せ 「ああ、そうする。しかしどっちみち、ホテルで会たタクシーは出発した。このまま総社市内から山道 うことになるだろうな。もしも見物が早く終了したを登り、一路、鬼ノ城へ向かう。 ら、先にチェックインしておいてくれ。もしかした 奈々は、急に広くなったシートに体を預けた。 ら、タタルも到着してるかも知れねえしな」 「到着してたら、小松崎さんのケータイに連絡が入 るでしよ、フ」 「ーーの予定だがな」 小松崎はとばけた顔で答えると、桃田たちと一緒 にタクシーを降りた。 「じゃあ、また後で」 103 CALCULATION

4. QED : 鬼の城伝説

でも、しようがないよ。熊崎さん、仕 「残念ーー 事がんばってきてね。何かあったら、またケータイ によろしく」 「おう、承知した」 「ーーーとまあ、こんなところらしい」 小松崎は片手を挙げると、一一人に背を向けてホテ 小松崎は話を終えると、吸いかけの煙草を灰皿に ルを出て行った。 押しつけて消した。そして、 、ト型録音 「さて : : : 」と立ち上がり、デジカメ 「さあて : : : 」沙織は大きく伸びをした。「これか 機、メモ帳、携帯電話ーーと、持ち物を確認する。 らどうしようか、お姉ちゃん」 「しゃあ、そういうわけで俺はもう一度出かけてく 「そうねーー、。夕食はこのホテルで摂りましよう。 る。何か変わったことがあったら連絡するよ」 もしかしたら、タタルさんや小松崎さんから連絡が 「熊崎さん、夕食は ? 」 「適当に済ませる。沙織ちゃんたちは、折角だから入るかもしれないから」 いつまた予定変更 ゆっくりと食べてくれ。このホテルのレストランも「そうしようか。この調子しや、 になるかも知れないからね。というわけで : : : 取り 美味いらしいし、何なら近くにも店はあったぞ。こ あえすシャワーでも浴びて、旅の埃を落とすとしま んな事件が起こらなければ、桃田さんの勤めてる、 鳥料理を食わせてくれる小料理屋にみんなで行こうすか」 沙織が言って、奈々たちは席を立った。 と思ってたんだがな : ・ まあ、仕方ない。また次 の機会にしよう」 せつかく はな」り・ 162

5. QED : 鬼の城伝説

「ああ : ・・ : そうですね。確か : ・・ : 妙見、とかいって いたような」 「本部と連絡を取って、確認を急がせてくれ」 鑑識たちの手によって、遺体引き上げの作業が開「分かりました ! しかし : : : 警部は、この後どう されるんですか ? 」 始された。 しかし、地下室の床までは地上から二メートル以「決まってるだろうが」忍田は片岡の肩を親しげに 叩いた。「お前と一緒に、地球の中心まで地底探検 上はある。しかも梯子は急で、穴も狭い。人がやっ と一人通り抜けられるような幅しかないために、作に出かけるんだよ」 「はあ ? ちょ、ちょっと待って下さい 業は困難を極めた。だが、鑑識や警官たちの必死の しいとも、ちょっとの間だけ待っていてや 「ああ、 努力によってーー最初は、クレーン車の応援も考え たのだがーー何とか遺体を無事に回収することがでるから、早く連絡を取って戻って来い。帰りに鑑識 きた。 に言って、でかいライトを借りてきてくれ。それと z ひど 幸い遺体は、後頭部以外の損傷はそれほど酷くな念のために長い紐も」 く、身元確認を急ぐためにすぐに司法解剖に回され「止めて下さいよ。本当に行くんですか : 「ああ」 「おい」と忍田は片岡に呼びかける。「そういえば「我々二人が ? 」 捜索願が一件出されていたぞ。ちょうど、この地域「うだうだ言ってないで、早く用意をしろ ! 地底 人が待ってる」 の家からだ」

6. QED : 鬼の城伝説

サラリとシャワーを浴びて、髪を整えて時計を見「なんだ、意外に朝寝坊だな、きみたちは」 聞き慣れた声がした。 れば、もう九時を回っていた。そこで棚旗姉妹は、 奈々の胸が、ドキンと波打つ。 揃って少し遅い朝食に出発した。 驚いて足を止め、振り返る二人の前には、ロビー 「熊崎さんから連絡なかったね」エレヴェータの中 で、沙織が髪を直しなから心配そうに呟いた。 「大のソフアで新聞を広げてくつろいでいる男。 寝癖のままかと見間違えるほどポサポサの髪に、 丈夫だったのかなあ・ : まっげ 「大丈夫だから連絡がないんでしよう。何かあれ色白の顔、高い鼻、切れ長の目、長い睫 ば、また大急ぎで知らせてくれるわよ。それに、チ桑原崇がいた ェックアウトまでは、まだ充分に時間はあるし」 「タ、タタルさん : : : 」 そうだね、と沙織は微笑んだ。 絶句する奈々たちに向かって崇は、 「きっとまた、バタバタと走って来て、いきなり 「乗り遅れないように朝まで飲んで、東京駅六時発 z 『事件だ ! 』なんて、人目も気にせすに叫んでね」 の『のぞみ一号』に乗ってきた」新聞をパサリと閉 「そうそう」 奈々たちは笑いながらエレヴェータを降りて、ラじ、ゆっくり立ち上がると、相変わらすぶつきらば うに呟いた。「きみたちも、これから朝食か。俺も ウンジに向かう。そこが朝食バイキングの会場にな あさがゆ 一緒に、朝粥と日本茶でももらおうかな」 っているらしかった。すでに朝食を終えて戻ってく る人たちに逆行するように、一一人は歩く。 そしてフロントの前を通り過ぎようとした時、

7. QED : 鬼の城伝説

・ : 間違いじゃないんですか ? 」 かそうけん 「非常に残念ですが 先ほど科捜研の方から、 確認が取れたという連絡が入りました」 それを聞いた途端に風見子は、 忍田の前には、再び鬼野辺家の人々がいた そして横には、メモ帳を広げた片岡が立ってい 「ああ : : : 」という泣き声ともため息とも取れない 声を上げると、自分の両手の中に顔を埋めた。 る。場所は例によって広い応接間である。 目の前のソフアには左から、今日も遠童医師に付 そして久蔵は、膝の上に載せた両手の拳をプルプ き添われた笙子が。そして順番に、圭佑、風見子、 ルと震わせたまま、ただしっと俯いていた。 久蔵が腰を下ろしている。誰もが例外なく居心地悪「今、明日香さんの方にも連絡が入っていると思い そうで、そわそわとしていた。 ますが : こちらでも、皆さんに少し確認したい ことと、お尋ねしたいことがありましてーー」忍田 「今日は、お忙しいところをお呼び立てしまして、 申し訳ありません」忍田は頭を下げる。「もうすでは、ゆっくりと全員を見回した。「ちなみに、巧実 z にお聞き及びかと思いますが : 。ます、裏の廃寺さんの死因なんですが、健爾さんと同様に、後頭部盟 のうざしよう で発見されました遺体は、妙見巧実さんであること打撲骨折及びそれに伴う脳挫傷。廃寺の境内に於い が判明しました」 て、何者かに後ろから殴打されたものと思われます駅 そこで皆さんにお訊きしたいんですが、ここ 「そんな ! 」圭佑が息を呑む。「しかし、どうして 数日、巧実さんがこちらの家に顔を出されたという またーー」 「嘘でしよう : ようなことはありませんでしたか ? 」 ? 」笙子が弱々しい声で尋ねる。 「何かの : こぶし

8. QED : 鬼の城伝説

義務なのか ? へですか ? 」 「それは ! 」沙織が身を乗り出した。「何か今回の 「決まってるじゃないか。当初の予定通り、美作へ 事件と関係があるんですか ? それならば私たちも 「美作 ! 今すぐにですか ? 」 「事件 ? 何の ? 」 「そうだよ。何か ? 」 「何のーーってー 「だって、まだ小松崎さんから何の連絡も入ってこ つやま 「岡山から津山線に乗って金川で降り、タクシーを ないし、それに事件も 「その事件については俺の関与するところではない飛ばして行けば『石上布都魂神社』がある。と崇は すさのおのみこと し、熊っ崎とはいすれ沙織くんの携帯で連絡が取れ話し出す。「この神社は祭神が素戔嗚尊だ。きみたち やまたのおろち るだろう。ゆえに、ここにしっと座っていても、全も知っている通り、素戔嗚尊は出雲の国で八岐大蛇 む を退治した。酒を飲ませて酔わせた大蛇を斬ってそ く無為な時間を過ごしてしまうだけだ。岡山まで、 くさなぎつるぎ の尾から、草薙の剣を取り出したという、あの有名 一体何をしに来たのか分からなくなってしまうしゃ な話だ。そしてその時に大蛇を切ったのが『十握 ないか」 つるぎ この場合『一握』が小指から人さし指まで 「でも : : : 美作まで行って、どうするんですか ? 」剣』 いそのかみふつの 「決まってるだろう。備前国一の宮の『石上布都の長さといわれているから、約八センチメートル強 なかやま みたまじんじゃ くらいだろう。とすれば、この剣は八十センチメー 魂神社』と、美作一の宮の『中山神社』をまわらな トル以上の長さがあったことになる。またこの剣 くてはならない」 あまのははきり おろちあらまさ からさい ならない ? まわらなくては は、別名『蛇の麁正』『蛇の韓鋤』『天蠅斫』とい とっかの 172

9. QED : 鬼の城伝説

力視されているのは最後の、朝廷が国土防衛のため「それは : : 記録していた人が、ただ単に書き落と に築いたとする説」 しただけなんじゃないの ? 」 「なるほどね。説得力はあるわね」 「まあ、素直人間の奈々ちゃんらしい真っ当な意見 でもね、と沙織は眉根を寄せた。 だけどね。そこらへんはど、フでしよう。分からない 「この『唐・新羅連合軍からの防衛』っていうのはみたいだね」 ねーーお姉ちゃんは絶対に知らないと思うから説明 沙織はノートをめくる。 てんじ しておくけどーー天智一一年 ( 六六一一 l) に起こった、 「今の話と連動しそうな説としてね、もともと鬼ノ 朝鮮半島での唐・新羅連合軍対、百済・大和連合軍城はそれ以前からここに存在していたんしゃないか はくすきのえ の戦いに関してのことなのよ。いわゆる、白村江の っていう説も有力なんだよ。つまり、記録に残って 戦い。この戦いで大和朝廷ーー、天智天皇ーーは、百 いないのは、その時に築城した訳しゃない証拠って きしつふくしん 済の鬼室福信からの援軍の要請を受けて大軍を送り いうわけ。もっと昔からあったから、別に改めて書 込んだんだけれど、結局大敗を喫してしまったの。 き一 = ⅱす必要もなかった そのために、唐や新羅が攻め込んでくることを恐れ なるほど、と奈々は頷く た天智天皇は、西日本の要所に、金田城、大野城、 「とい、フ一」 A 」は : やつばり、すっと昔 高安城などの朝鮮式山城を築いたのよ。これは『日津彦命の頃からあったっていうこと ? さかのぼ 本書紀』に記されてる。でもそこには、鬼ノ城の名「さすがにそこまで遡れるかどうかは分からない けどね : 前どころか、それらしき物の名前も出てこないの。 でも、白村江の戦い以前っていう説に かなり不思議くんでしよう」 は可能性あり」 吉備

10. QED : 鬼の城伝説

向かっているのだろうか ? こんな時こそ、そばに盟 連絡が入ったらしい。そこで小松崎のインタヴュー いてくれたら、い強いのに。 はキャンセルになったのだが、桃田たちと一緒に明 日香の家に向かっているという。 奈々は急に心細くなる。 「でも : : : 死体つて : : : 」奈々も顔をしかめ、声を確かに崇がそばにいてくれたとしても、あっとい う間に混沌が収束に向かうとは限らない。かえって 落とす。「どこで見つかったの ? 」 ややこしくなってしまう時も : : : あったような気が それがね、と沙織は一瞬唇を噛んだ。 する。 「変な場所だって」 でも、奈々にとっては崇がいてくれるだけで、な 「 : : : 変な場所 ? 」 「うん。例の邸の近くらしいんだけれどーーー」沙織ぜか心が安らぐ。気持ちが楽になるのだ。 はチラチラと運転手を気にする。「これ以上の詳し緑の森を後にしながら、 / 早く会いた , い話は、会ってからにしようって、熊崎さんが」 素直にそう思った。 「・ : : ・分かった・・ 奈々は頷いて、シートに身を沈めた。 でも 今「事件」という一言葉を耳にして、一番先に奈々 の頭の中に浮かんだのは、崇の顔だった。 今、ど、フしているんだろ、つ ? きちんとこちらに