ヒッチ - みる会図書館


検索対象: ミセス・コロンボ
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1. ミセス・コロンボ

答える。 「ええ、いちおうそういうことに」 「わたしの持論どおりだわね。ヒッチ ( イカーを車に乗せるべからず。とんでもない災難にま きこまれるのよ」 指をソースにひたしてからそっとなめる。ケイトは首をふった。味が気に入らないらしい 塩をふりかける。あらためて味見をする。こんどはいい。 ソースをスパゲッティーの上にかけ 「カルメンさん、知ってるわね」 スパゲッティ ーの小山のてつべんにソーセージをのせながら、ミセス・コロンポはきいた。 「わたしの義理の伯母にあたる人よ。リチャ 1 ド、あなたの母方の伯父さんと結婚した人」 「知ってますよ、ケイト 「あの人、一度だけだけど、ヒッチ ( イカーを車に乗せてやって、ひどい目にあったわ。牧師 を乗せてやったのよ。牧師のヒッチハイカーなら問題ない、あなた、そう思うでしよう。とこ ろが大まちがい」 彼女は片手にスパゲッティーの皿を持ち、もう一方の手で冷蔵庫のドアをあけ、。 ( ルメザン チーズを出した。皿とチ 1 ズをロッセ リーニ刑事の前に置く。 8

2. ミセス・コロンボ

形ばかりのあいさつをして、ブレアーはミセス・コロンボの耳もとでささやいた。 「申しわけないんだが、ふたりだけでちょっと話をしたい。そんなに時間はとらせませんから、 つきあってください」 ミセス・コロンポは灯がともったように顔を輝かせた 「いいですよ、ブレアーさん」 ゆっくりと立ちあがって、女たちのだれにともなくいった。 「わたしにレモン・ティーを頼んでおいてちょうだい。それに、チーズケーキをひときれ。す ぐもどってくるわ」 ふたりは店のすみのバ ーに行った。ブレアーはスコッチ・ウォーターを注文し、ミセス・コ ロンポはソーダ水を頼んだ。 「せつかくの会合をじゃまして悪いんだが、ヒッチ ( イカーのことをもう少しくわしく知りた くてね」 並んでストウールに坐り、前を向いたまま、ブレアーは低くいった。ミセス・コロンポも前 を向いたまま聞き返す。 「だれのこと ? 」 「ヒッチハイカーについてです、コロンポ夫人」 ェ 88

3. ミセス・コロンボ

ックされていることをたしかめた。 「助手席のドアはどうなってたの ? 車が発見されたとき、こんなふうにロックされてたの ? 」 「ええ、ロックされてました」 答を聞いて、ミセス・コロンポは指さきをこめかみに当てる。 「混乱してきたわ。変なことだらけ。どうして助手席のドアはロックされてたの ? 」 「混乱するほどのことじゃないと思いますがね」 こんどは、そうとは気づかずに試験でミス といってみたが、落ち着かない気分は去らない をおかし、しかも、どの問いをどのようにまちがえたのかいまもってはっきりせず、ただミス をおかしたという不安だけが高まってくるというような、いやな感じにおちいった。 ハンドルを握りなおして、ミセス・コロンポがいった 警察が考えている線をもう一度復習してみるわ。いいわ 「整理してみましよう、リチャード。 ね」 ハンドルを握る彼女の手に力がこもる。 「キャロライン・ブレアーは車を運転していてヒッチ ( イカーに出会った。そうね ? キャロ ラインはヒッチハイカーを車に乗せた。彼はこの助手席に乗りこみ、ドアをロックした。とち ゅうで何回かタバコをすって、灰皿に捨てたー ワ 5

4. ミセス・コロンボ

ゆず 固い信念となっていて、何をいわれようとも人に譲らない。 コロンポ警部がコロンポ警部でい られるのも、自分の手助けがあってこそだと自負してもいる。 趣味はミステリーを読むことと、たえまなく人に質問をあびせること。自分では、ミステリ 1 小説以外に趣味などないと思いこんでいるらしいが、夫のコロンポ警部やいとこのロッセリ ーニ刑事はいつも彼女の質問攻めの犠牲者になっている。 リチャード・ロッセリーニ警部補は台所のすみのテー・フルに頬づえっき、香ばしいソーセー ジの匂いに鼻をひくつかせていた。 見る人によっては乱暴とも見える手つきでフライバンを揺り動かしつつミセス・コロンポは セリーニをふりかえる 「そのキャロラインという人、即死だったの ? 」 ロセリーニはフライ。ハンから目を離さずに、フなずいた。ケイトはいとこに背を向け、また 質問する。 「状況からして、ヒッチ ( イカーの犯行なのね ? 」 ロッセリーニは黙ってうなずくが、その姿はむこうを向いたケイトの目には見えない 「どうなの ? ヒッチハイカーの犯行 ? 」 ミセス・コロンポは重ねてきく。ソーセージの匂いに圧倒されたロッセ リーニはうわの空で

5. ミセス・コロンボ

「手がかりはないんですが、ヒッチハイカーについてはどうお考えです ? 」 きいてからロッセ リーニは後悔した。そんな質問をしたら、ミセス・コロンポはますます事 件に深入りしてくる。だが、手おくれだった。彼女はにつこりと笑い、しかし、いちおうは遠 慮がちに溜息をついた。 「わたしは刑事じゃないわ。集めた材料にも限度がある。でもね、その限られた材料であえて 推理をすると、この事件はヒッチ ( イカーとはなんの関係もないみたいね。彼女がだれかを車 に乗せたとしたら、それは顔見知りの人よ。それとも、スティームケトル通りまで、だれか知 っている人に会いに行ったかね。一時間以内で帰れる程度の用件で : : : 」 そういってミセス・コロンポはうなずき、ウインクをし、本を開いて読みはじめた。ロッセ リーニは困りはてたようすでしばらく彼女の横顔を見ていた。それから膝の上に立てた腕で顎 を支え、陰気な表情で考えはじめた。足もとの犬がのっそりと身を起こす。陽だまりが暑くな ったらしい。短い脚でいやに長い胴を運んで、べンチの下にもぐりこんだ。 「うちのパ。ハがいないのは不幸ね。リチャードには、なんだかこの事件は無理みたい : リーニはじろりとジェニーを見てつぶやい ジェニーはおさげの髪をゆすって笑った。ロッセ 「警官をばかにする悪い子は、逮捕しちまうぞ」 148

6. ミセス・コロンボ

「じゃあ、失礼します。まだ仕事があるんです。二階を片づけなきゃいけないのでー エルザは網戸をあけてなかへ入った。しばらくあいだをおいて、ミセス・コロンポもなかに 入る。台所のドアをあけてのぞきこんだ。家庭雑誌にでも出てきそうな台所だった。大きなオ 1 プン、電気調理具の数々、壁にはめこんだ大型冷蔵庫。必要なものがなんでもそろっている だけでなく、きちんと整頓され、小ぎれいに飾られている。窓にはプリント模様のかわいらし いカーテンがかかり、棚やキッチンテーブルにはスラを生けた小さな花びんがある。 ミセス・コロンポはなかに足を踏み入れた。そこは女の部屋だった。機能的にできているが、 キャロラインの暮らしがのぞいている。一日じゅうここにいた。キッチンテープルの上には、 (_5 そうこう 、、セス・ のテレビがあり、タイプライターまである。そして、書きかけの草稿らしきもの。 コロンポはかがみこ、タイ。フライターにはさみこんだ紙を見る。なんと、キャロライン・ブ レアーは料理の本を執筆中だったのだ ! 台所はキャロラインが出ていったときのままになっている。ミセス・コロンポはそれをつぶ さに見た。計量カップにソースの原料と思われるものがあり、調理台にはきざんだ野菜がのつ ている。 こ、ぎっしり それから彼女は冷蔵庫をあけた。スー マーケットが引っ越してきたみたいー と食料品が詰まっている。扉の内側におさまっているコークの罐を手にした。そのままキッチ しつびつ かざ かん