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検索対象: レーシングカーのサスペンション
97件見つかりました。

1. レーシングカーのサスペンション

第 7 章マニアのためのサスペンション設計入門 をもち , 何らかの才能を持ち合わせた人の方が , 正規の過程を踏ますとも , トッ プの座を占めるに至るというのが , この限られた特殊な分野に通用するようであ る。何か技術的な難点を解決したり , 課題を達成する際に , その才能と情熱に 恵まれているかどうかによって , 結果に大きく差がついてくるように思われる。技術 的な難点をたくさんかかえている点で , どの設計者も悩みは同じであり , ある時 間内に解決しなければならないのであるが , その解決の方法も異なるし , 解決 する優先順位のつけ方も , それぞれ異なっているのである。 たとえば , サスペンションを設計する時は , ますタイヤの問題から取り組まね ばならない。その理由は , ホイールの振動数 , ジオメトリー , 荷重の移動など は , タイヤのカーカスとコンパウンドの発揮するばねとしての役目や特性に対応 して変わってくるものである。この場合 , 実際の対応を誤ると , その影響は倍加 して現われる。そして , タイヤは遭遇する状態に応して , どれだけの性能を発揮 するものであるか正確に予測するのは , 非常にむすかしいものである。仮りに 予測できるにしても , 一般のアマチュアではその数値をタイヤメーカーから入手 するのはほとんど不可能に近いし , 入手し得たにしろその数値を変えることはで きないと思われるからである。 しかし , 本当はアマチュアでも変えられる手立ては , あるのだ。ひとつは空気 圧を変えることで ( すなわちばねレートを変えることを意味する ) , もうひとつはリ ム幅の異なるホイールに組み替える ( カーカスの安定性を調節 , コーナリングフォ ース性能を変える ) 方法である。これはタイヤメーカーのプロが , 顧客のエントラ ントに対してサービスしているタイヤのコントロール方法でもある。 大昔の地図の出版元なら , 信頼に足る情報を得られないヨーロッパから遠く 離れた僻地は , から先は龍が住む恐ろしいところ〃といってそれですますこ ともできたかも知れないが , レーシングマシンにとっては , タイヤの他に路面にパ ワーを伝えるものはないから , タイヤの接地面がどのような役目を果たしてくれる のかを , そこから先は闇だからと目をつむってはいられないのである。タイヤに最 大限の働きをさせるには , いすれにしろ , 路面に対し接地面を最大限にとり ( タイ ヤを垂直に立てる ) , 路面に対し接地面をできる限りねしらない ( コーナリング時 もころがり方向と進行方向が一致していること ) , 前後ともに荷重を片寄らせな い , 天候やスピードによってもタイヤ温度を適度に保っことは重要なポイントで ある。 これに対し , シャシー / タブを詳細に調べて見ると , その重要度はタイヤほど 高くない。各種のプラケットをはしめシャシーにとって最重要点は , サスペンショ ンの各ピボットを正確な位置に強固に保持し , しかもドライバーの身体をしつかり

2. レーシングカーのサスペンション

スタヒライサー : その機能は誤って理解されることがある。スタビライザーはロールに対 してスプリングのように働き、荷重の移動をもたらす。その複雑な働きのすべてか受けい れられるものではないが , フロントサスペンションについてはほとんど必須のものとなっ ている。 もしないが , いったんコーナリングに入れば , シトローエン 2CV はいうに及ば す , 80 年代の FI マシンといえども , ボディは外側に傾くにつれて , スタビライザ ーが働き始めるのである。 スタビライザーは , 次の三つの働きをしていると考えられる。 ①サスペンションに連結されてマシンがロールしようとする力に抵抗する働きで ある。ロールする時 , 外側のホイールはもち上がり , 同時に内側のホイールは 押し下げられるが , その方向に動くには , 両者をリンクするスタビライザーをね しらなければできない。 ②もち上がろうとする外側のホイールに対しては , それを押さえ込もうとするスプ 44

3. レーシングカーのサスペンション

第 7 章マニアのためのサスペンション設計入門 ートデザイナーには受け入れられた。 こうして , 目標を限定し数値を計測して進めば , さらに精度を高めていくこと ができるのである。 6 ロールセンター 通常の車両の場合 , ロールセンターは , 路面下 1 インチ ( 25.4mm ) から地上 12 インチ ( 約 305mm リジッドアクスルの場合 ) の間にあるが , レーシングマシンで は , 路面下 1 インチ ( 一 25.4mm ) から地上 2 インチ ( 50.8mm ) ぐらいの間にある。 この位置が低いほど , ジャッキング現象 ( 外側輪が外側に傾き車体が持ち上が る ) も減るか 0 になるが , ロール角は大きくなる可能性がある。これを調整するた めに , スタビライサーがある。そして , 通常は , フロントとリアではロールセンタ ーの高さは違っており , したがって , それらを結んだ線のロール軸は , マシンの 低く軽い方に傾いている。 7 瞬間的ロールセンターとスイングアーム長さ ある瞬間に生しるロールの中心点 (IRC) と同様に , スイングアーム長さ ( SAL ) も目に見えず , たえす変動するものである。 IRC ( 瞬間ロールセンター ) は , 片側の上下のアームの延長線上の交点とタイヤ接地面の中心点とを直線 で結び , もう片方にも同様にして結んだ直線の交点にある。 SAL ( スイングアー ム長さ ) は , 上下のアームの延長線上の交点からタイヤ接地面中心点までの距 離をいう。 スイングアーム長の短い場合 ( 20 ~ 40 インチ : 約 500 ~ 1000mm ) は , ロールセン ター位置は非常に良く , コーナリング中の外側ホイールを路面に対し垂直に立 てるが , リバウンド状態では外側ホイールをポジテイプ ( 外側に傾斜 ) にし , バン プ状態では外側ホイールをネガテイプ ( 内側に傾斜 ) にする。 スイングアーム長の長い場合 ( 70 ~ 80 インチ : 約 1800 ~ 2000mm ) は , ロールセ ンターは低いが , 横方向に移動するのを抑える力は弱く , スクラブ ( トレッド変化 量 ) は小さい。外側ホイールがポジテイプになる傾向を抑える力は弱いが , バン プ / リバウンド両方向の動きに対しキャンバー変化量は少ない。 スイングアームの長さが中間の場合 ( 40 ~ 70 インチ : 約 1000 ~ 1800mm ) は , 中 間の性格をもつ。 スイングアームが特に長い場合 ( 平行に近い ) は , ロールセンターが非常に低 い位置にあり , 上下方向に動くことは少ないが横方向には動く可能性大である。 ホイールのバンプ / リバウンド両方向の動きに対してもホイール角度はほとん 169

4. レーシングカーのサスペンション

第 4 章多様な要素が錯綜するサスペンション アッカーマン式操舵角 旋回の中心点 ラック & ビニオンと ステアリングアーム 前置き型 ステアリングアーム角を , 車両センターラインと平行に前に移動 することによって , アッカーマン効果を減殺することがてきる。 ラッワ & ピニオンと ステアリンクアーム 後置き型 参照の図は , このジオメトリーの相関関係をわかりやすくするために , 取り付 け角度をやや誇大化して表示してるが , 実寸ではきわめて小さく , おそらく 12 ~ 15 インチに対して 0.5 インチ ( 305 ~ 381mm に対し 12.7mm ) ぐらいの割合でわ すか 1 。を超える程度のものである。したがって , 外観を見た程度では , こついつ ジオメトリーをとっているかどうか , ほとんど気づかれることはない。 109

5. レーシングカーのサスペンション

自動車の車体を支えている車輪と車軸は , 海や山などの自然界の生成過程 のように太古までさかのは、るはどではないが , その生い立ちは意外と古い。木の 幹を輪切りにして車輪を作った何千年も昔から , 現代の FI のホイールを形成す る先端技術に至るまでの長いプロセスは , それだけで充分に論するに値する内 容をもっている。 どんな自動車でも最終的には , 車輪がなくては車重を支えることも , 駆動する ことも , 制動することもできない。この車輪を車体と結びつけて車輪に仕事をさ せ , コントロールするという複雑な働きをするメカニズムがサスペンション ( 懸架 古典的なレーシングカー・サスペンションの典型を , 悧 70 年フェラーリ 512 ・ 5 0 ・肥気筒・スポーップロト に見る。リア ( 右頁 ) では , アップライトが傾斜して装着されたコイルダンバー・ユニットを直接作動させ , 他方のフロントでは , ロアアームがサポートを介して働かせるレイアウトをとっている。

6. レーシングカーのサスペンション

レーシングカ - のサスペンション 目次 第 1 章サスペンション性能とレーシングカー 第 2 章スプリングの種類とスタビライサーの働き 第 3 章サスペンション形式及び構成部品 第 4 章多様な要素か錯綜するサスペンション 第 5 章注目されるアクテイプサスペンション 第 6 章マシン設計者とサスペンション 第 7 章マニアのためのサスペンション設計入門 第 8 章荷重の移動及びロール剛性の計算 第 9 章アマチュアのためのサスペンションセッティング 付録サスペンション関連用語解説 装幀 P. 4 P. 24 P. 56 P. 90 P 』 6 P. 136 P コ 60 P. 186 P. 202 P. 216 藍多可思

7. レーシングカーのサスペンション

こでいう主要構築物とは , FI マシン ( スポーップロトではその意義は少し 減少している ) では , 工ンジン , トランスアクスルケース , それにモノコックタブを 含んだものであり , 今日のシングルシーター・レーシングマシン ( FI , F2, F 3 , FJ, その他のフォーミュラマシン ) のいすれの場合も , 工ンジン本体はシャシ ーの構成体として応力を受けるメンバーとなっている。したがって , フォーミュラマ シンのリアカウリングを開けて見れば , タブのリアバルクへッドにエンジンプロッ クが結合され剛性を高めている構造が見られる。 ェンジンプロックやクラッチのベルハウジングは , ともに大きなねじり応力を受 けるものであるから , 設計に当たってそれを計算に入れなかった場合には , 工ン ジンは原因不明のトラブルに見舞われることになる。ギアボックスもそこからアウ トリガーをつけて , リアサスペンションのピックアップポイント ( 支持点 ) となるケー スが多いが , 中にはギアポックスやベルハウジング周辺に偶然見つかったネジ 穴やフランジを , サスペンションジオメトリーのピックアップポイントとして利用し たと見られるものがある。そうする気持ちもわからないではないが , 安直なやり方 ではレースで成功することなどあり得ないのである。 5 スプリングを圧縮する方法 コイルスプリングは , これに作動するレバーアームに対して常に作用角を 90 。 にするのが理想的であるが , 実際には理想の作用角を得るレバーアームを製作 するのはむすかしい。通常は 90 。から士 10 。くらい , 最悪の場合でも 15 。くらいの幅 は許されるだろう。この範囲内ならば , コイルスプリングは正規の伸び縮みをす るのであり , 前述した、、フォーリングレート〃 , ( バネ定数が漸減するタイプ ) の欠点 はスプリングの運動量でなく作用角によって左右することを忘れてはならない。 現在大勢を占めるコイルスプリングを作動させる方法は , 次の 3 通りある。 a . アウトボード・スプリング シャシーやタブ側のアッパーピックアップポイントに直接作動するよう , コイル / ダンパーユニットを傾斜させて装着した例が多かった。その取り付け角が時に は 45 。になることが長年続いたのである。これはもちろん , スプリングレートの実効 値を下げ , 特にバンプ時には急激に現出する。 1970 年に登場した FI マシンの マーチ 701 はこれに気づいてすぐ取り止め , アッパーのマウントができるだけア ウトボードに出るよう 3 本チュープで構成したプラケットで支えるように改めた。 一方のロアマウント部は逆に内側に移してロアのアームを長くし , それによって 得たレバーレシオからロアアームは高い応力を受け入れ , 強いスプリングを使う ことを可能にした。これとは逆に , コイルスプリングの作用角が 45 。よりもかなり傾

8. レーシングカーのサスペンション

DATE EXP. NO CHASSIS PICKUP P07 引 0N5 (FRONT/REAR) GROUND し E V E L DATE EXP NO 2E3 CHASSIS PICKUP LEVEL GROUND CAR C AR RO は CENTRE HEIGHTS STATI C . OIJ T E R W H E E し C A M B E R ANGLES (NEG/POS) •nS ・ lns AT 30NEG ROLL: ins AT fPOS ROLL: INNER WHEEL CAMBER ANGLES (NEG / P05 ) tnS 10 RO しし 20 ROLL 3 ROLL SCRUB 猷 30 1 ins BUMP 2 旧 5 BUMP 10 ROLL RO は 30 ROLL SCRUB at 3 い ns 0R00P 2 ins lnS SC RIJ 8 わ ns 20 ROLL with ltns BIJMP ROLL CENTRE HEIGHTS 51A 引 C . OUTER WHEEL CAMBER ANGLES (NEG/ P05 ) 10 ROLL を 5 2 。 ROLL - う第第こ 5 3 。 ROLL SCRUB ⅵこ ns 1 旧 5 BUMP / 2 •ns BUMP コ・を・ 5 SCRUB 0 ー 21n 、′第旧 5 0 し′ア 2 。 ROLL with い n 、 BIJMP ツ。、」を SCRUB 幻 ns InS 2 ROLLwlth lins 2 。 ROLL with い ns 00P 当。 ~ ど SCRUB 猷 2 旧 5 クと & 2 ー 0R00P ・ 3 ・ , 貧 6 1 •ns DROOP ち。 / 「 SCRLJB 3 。んにれ 5 3 。 ROLL 20 ROLL 1 。 RO は。・ 5 ANGLES (NEG / P05 ) INNER WHEEL CAMBER ATfNEG RO しし : ィー rnsAT 3 。 P05. RO しし : 41 lns 糸を使って計測したテータシート ( フォーマッ ト ) フランクフォ - ムと実数を記入したもの。 206 めに当面するいろいろな課題について , 決定するためのプロセスがどんなもの 至らなくても , この状況におかれたデザイナーがウイニングマシンを設計するた もし , あなたがこの本を読むだけで , 実際にサスペンションを設計するまでに て求める方法に比べれば , 大変な飛躍といえる。 くようにすれば , 傾向をつかめるようになるはすだ。それは一つ一つ図面に画い れないが , ある結果を得られるよう目標を定めて , 変更ポイントを変動させてい この作業は , 少しばかり骨の折れる , 時間を浪費するやり方に思われるかも知 限定されているから , 小さな範囲内で緻密に動きを煮詰める必要がある。 ーターレーシングマシンでは , ホイールのバンプ / リバウンドの移動量はすっと 次々とトライできるわけだ。普通の乗用車やスポーッカーに比べて , シングルシ で , アッパーアームとロアアームの取り付け場所や寸法を変えてみての実験を こうして , ロールセンターを固定したままでも , ホイールの動きや傾きを選ん タイヤホイールの上下動をチェックすることも , もちろんできるのである。 などが見られる点にある。シャシー型をグラウンドレベルに平行に置いたままで , にかなり忠実に再現して , タイヤホイールの動きに伴ってロールセンターの動き このやり方の特色は , 実際のシャシーの上下運動を , 大きなべースポードの上 を 2 。まで傾けて見る。③と④を繰り返す。 ⑤糸を張り直し , 必要ならロールセンターピンも打ち直す。今度はシャシー型紙

9. レーシングカーのサスペンション

第 9 章アマチュアのためのサスペンションセッティング に転しるなど , トレッド変化が助けになるかも知れない。 これを , 糸による計測具を使って , 対処してみたい人のためにガイドラインとし ていくつかサジェスチョンしよう。 ます , 最初は , ロアアームをグラウンドレベルに水平にしかもできるだけ長く設 定する。次にアッパーアームに相当する糸を長く伸ばしてシャシー側の延長線上 で , ロアアームの糸と交点を作る。その交点とアッパーアームのアップライトとを 結ぶ糸が , ロアアームの糸 ( 水平 ) に対して 15 。くらいの角度になるようにして , 交 点からアッパーアームのアップライトに向かって約 2 / 3 のあたりを , シャシー側のピ ックアップポイントとして仮り止めする。以下 , いろいろとトライしてみてほしい。 ただし , トライした実験値をすべて克明に記録しながら進めること。 このトライの方法とその効果は , ①アッパーアーム長さを変更することーーあまり大きな効果はない。 ②上下 2 本のアームを同時に延ばすことーーー効果はあまりない場合が多い。 ③シャシー側のマウント位置を上下に移動して見ることーーー効果は大きい。 209

10. レーシングカーのサスペンション

パナールロッド ワッツリンク 現在のレーシングカーとしては , いかんともし難いほど重く , ロールセンターも高 い。この欠点を克服し , ひとつのタイプに 40 年も固執し孤軍奮闘を続けるマロッ ク U2 ( イギリス製 FJ 版は 1960 年のニュルプルクリンクで優勝した ) は , 現在唯一 の例外的存在であろう。その後に生まれた新世代のサスペンション形式は , い すれもロールセンターを低く , ホイールの動きを良くコントロールするものだから である。シャシーの支持方法は , 次の通り数多くある。 リーフスプリングによるもの。リーフスプリングに押さえとしてパナールロッドを 付加したもの。リーフスプリングとコイルスプリング併用に , パナールロッドとトレ ーリングリンクでコントロールするもの。コイル , ワッツリンケージで押さえたも の。コイルとトレーリングアームにマロック式 WOB リンク ( ロールセンターを低く するためにワットリングに似た疑似直線ガイドを考案して取り付けたもの ) を追 加したもの ( 63 頁の図参照 ) 。リーフ / コイル併用とスライディングセンタープロッ クを付けコントロールするもの。トルクチュープにコイル / リーフスプリングあるい はパナールロッドを付けコントロールするもの。 b . ド・ティオン・チュープタイプ 自動車の起源と同じくらい古くからあり , 初期のレーサーの一部にも使われ た。重量のかさむディファレンシャルやドライプギアをシャシー側に固定し , ホイー ル / ハプはチュープに支持されており , 通常ホイールは路面に対し垂直を保って いる。 このタイプはインポードにプレーキを移すことを可能にし , それによって駆動 力や制動力にかかわる荷重を軽減した。アウトプレーキの場合には制動力など は , このチュープを介しシャシーにストレートに伝わるからである。 19 世紀末ド・ ディオン伯爵によって開発されたこのタイプは非常に優れており , 前述のように チャッブマンが使ったし 70 年代にはフェラーリが FI マシンにボルトで脱着でき るタイプをトライしたはどだ。その他 , このタイプはギアボックスをフロントから移 しファイナルドライプギアと一体化してリアに置くこともできる。 70