場合には , ジオメトリーに適合するものを鋳造したり , あるいは鋼板を組み立て熔 接して特製しているが , アマチュアの場合は , 既製のものにピックアップポイント を上下に移したり , 自製のブッシュ , スペーサーやインサートピン等を使って , 設 定したジオメトリーに合わせている。これは最初に決めたジオメトリーでトライし , あとはセッティングを変えて煮つめていくのに良いやり方である。 しかし , すぐあとでわかることだが , 異なった条件で誰かが設計した既製のア ップライトを使う限りは , そのサスペンションのジオメトリーは最終的に決まってし まうことになるのである。 5 ジオメトリー ウィッシュボーンのアーム長さ , 角度 , ピックアップポイント位置を設定してや れば , スプリング , スタビライサー , 荷重の移動量 , ホイールの振動数を決め られるが , 重心位置とロールセンターを好都合に配置させるには , マシンのライ ドハイトも低くセットしなければならない。 こでサスペンションに関しては核心ともいうべきロールセンターに触れるこ とにしよう。 著者はこの問題に取り組んで数年というもの , サスペンションの設計にあたっ て , これ以上に重要と考えるものはないといえるのが , この、、ロールセンター〃で ある。 マシンが静止状態にある時のロールセンターは , そのサスペンションの設計 図面に明確に図示することができ , 説明は要らないほどだ。理論的には , コー ナーでマシンが外側に傾斜する時は , 空間のある点を軸に回転しようとする動き をするが , その軸となる点がロールセンターである。この一点を中心として , サ スペンションのピックアップポイントの動き , タイヤとホイールの動きを説明できる のである。この空間の一点をコントロールすることがサスペンションのジオメトリ ーにとって , どれほど重要であるかはご理解いただけると思う。 サスペンションの動きを理論的に説明する際に起こるやっかいな点は , いった んマシンが動き出すと , 今まで静止状態だから説明のついた各要素が一斉に 変動し , それに応して他の力が加わって , 静止していたロールセンターは , 上 下にも水平方向にも移動しにれをダイナミック・ロールセンターと呼ぶ ) , 瞬時 も一定しないことである。したがって , ロールセンターは今どこにあるのか , なか なか解答が得られないのが問題をややこしくしている。 ロールはロールセンターと同様 , 目に見えす絶えす移動する重心 ( 加減速時 には前後方向に , コーナリング時には左右方向に ) に伴って現われるが , これら 166
第 9 章アマチュアのためのサスペンションセッティング かを知ることができるのではないだろうか。実際 , デザイナーというのは , 数多く のターゲットが互いに拮抗し合ってる状況の中から , ひとつを選び出さなくては ならない立場に立たされている。それらの大まかなアウトラインを次に述べること 1 . ロールセンター デザイナーによっては , この正確な位置がさほど重要な問題でないという意 見をもつ人もいると聞くが , 私は , これは絶対に肝要であるという考えをすてるっ もりはない。コーナリング中 , ある G を受けてロールする車両は , 空間のある点 のまわりを回転するという点では話は共通しているが , 論議の分れるところは , そ れが理論上の位置から , なぜはすれて , どこにいってるか , という点である。し かも , 何とか位置をつき止め , そこに固定して置きたいと懸命に主張してもそうは いかないものなのだ。いすれにしても , 静止時と動態時におけるフロントとリアの ロールセンターの位置や , 移動の仕方をよく考えなくては , 間題に当面した時 , 論理的に解決方法を導き出すことはむすかしい。 状況が変動するにつれ , 車両の前後の側のロールセンターが移動し , それ によって荷重や重量は前にも後にも , 対角線方向にも移っていく。マシンのこと がよくわかるレースドライバーなら , ステアリングホイールを素早く左右に振って , この移動の仕方に異常を感じたら , 次の周にはすぐピットインし , その改善策を要 求することがあるかもしれない。しかし , デサイナーはドライバーの技術的ではな い表現から , それを知る心要もあるといえる。 現行のマシンでのロールセンターの位置は , たいていは , マシンの軽く低い 側 , つまりフロントでは地面下 1 インチから地上 2 インチの間くらいにあり , リア では , 路面上から地上 4 インチの間にあるものが多い。前後のロールセンター の動きが大きい場合には , マシンのセンターラインに沿ってロール軸は傾斜する ため , 他に原因はなくても , 悪影響がコーナリング中に出てくることがある。しか し打つべき手は , 今まで述べてきた中にきちんとあるはすで , その手を打っか 打たないかはデザイナー次第である。したがって , このダイナミック・ロールセン ターの位置は , フロント・リアともにできる限り落ち着いたところにとどめておきた 2 . ロール中の外側ホイールを垂直に立てる コーナリングフォースを受けた時 , 外側の 2 輪が最大の働きをするので , この ふたつのタイヤが最大の接地面積をもてるようにするのが良い。ただし常時垂 207
荷市の移動及びロール剛性の計算 強くなり , 逆にトレッド幅が広くなるはど移動する傾向は少なくなる。 ロールセンターを通して直接外側ホイールにかかるばね上荷重の計算は次 3 ロールセンターを通して起こる荷重移動 最初からやり直すしかないだろう。 ば , 個々の集合体である全体重量の移動を少なくする方法はなく , 設計全体を 構造部分も充分肉抜きや穴開けなどをして軽量化の手段を講じていなけれ 600X3.0 十 55 = 32 .732b 300X1.5 十 58 = 7 .762b の通りである。 ・ SWRXCR + TR = CtR ( ロールセンターを通して移動するリア荷重 ) ・ SWFXCF + TF = CtF ( ロールセンターを通して移動するフロント荷重 ) はエンジンをリア・ミッドシップに搭載している ) 。 約 2 / 3 のところ , すなわちちょうど工ンジンの前あたりに位置するといえる ( マシン この数値から , ばね上重量の重心は , フロントアクスルからホイールべースの 600 + 900 = 0 .666 ・ SWR + SR = WDR ( 後車軸にかかる全重量の比 ) ばね上重量の割合を計算してみる。リアアクスルについては , これらを算出する前に , 車両のどちらかひとつの車軸の上にかかっている全 のトレッド , 中央 ( 位置 ) のロールセンター , 中央 ( 位置 ) の CoG ( 重心 ) と呼ぶ。 係なく , 独自のトレッド , 独自のロールセンターをもっており , これらを中央 ( 位置 ) ロント・リアのロールセンターにかかわりなく , フロント・リアの CoG ( 重心 ) には関 車両のバネ上の、、重心〃℃ oG ) は , フロント・リアのトレッドにかかわりなく , フ ことに理解するにも計算するにも最もむすかしい対象である。 の荷重移動こそ最も注意を集中して防がなくてはならないものであるが , 残念な イサーを使って押さえられるロールは , その一部分でしかない。それゆえに ス ) のまわりに回転 ( ロール ) する車両全体の重量であり , スプリングやスタビラ フロントのロールセンターとリアのロールセンターの間にある軸 ( ロールアクシ 4 スプリングを通して起こるばね上の荷重移動 でいえば , この要素の占める部分は小さいのである。 させることができる。しかし , 実際のレーシングマシンでは , 全体移動重量の中 ールセンターの高さを変えるだけで , 他方に直接の影響を・与えることなく , 変動 上の計算式からわかるように , この部分の荷重移動量は , 単に前か後かのロ
第 5 注Ⅱされるアクテイプサスペンション マイクロプロセッサー ライド八イト、ロール角、サス ペンション系の振動数等を常時 調整するための情報や指令を受 発信する本体 センターコンピューター 水平・垂直方向とヨ - インクの 加速度センサー 往復 2 方向のメッセージを伝達 する多重回路 全方向にわたって変動する動き を計測する 油圧ホンプ オイル 冷却器 油圧貯蔵 タンク 動力源 作動液 オイル フィルター 加減圧する負荷の変動を信号に 変換して伝達する 変換器 0 0 出力を調整する 負荷を分担する 多方向支持点 接地面 断して指令信号を機械各所にあるアクチュエーターに作動するよう伝達する。これを受けたサスペンションの各 部は , 3 圓 km / h て走行してるとして毎秒 42 回転しているタイヤホイ - ルに作用し , 接地面は 0. C24 秒の短時問にな すべき仕事を果たさなけれはならない。この膨大な仕事量をこくわすかな時間内に処理するという , とてつもな い課題をかかえているのである。 この困難さはスキーヤーの場合は , いちばん最初にスキーを習う時がアクテイプシステムで , この時の身体に 相当するのは , 精緻にコントロールされるエレクトロ・メカニズム ( 通称メカトロ ) 機構てある。 ロータスがまず手をつけなけれはならなかったのは , このメカトロ機構をプログラムする前に , メカトロ機構 そのものを創作し動かすことだったのである。 1 2 5
第 8 章荷重の移動及びロール剛性の計算 って移動する荷重は大きくなる。 5 全荷重移動 強さ , それに作用するレバーレシオ ( てこの作用 ) について考えみよう。ロール剛 そこで , ロール剛性を構成する各要素 , つまりスプリングとスタビライサーの ンションがどの程度かたいのか見なければならない。 上重量に応用できることになった。そのためには , ます , フロントとリアのサスペ こで再び , 上の公式で習得したものを使って , 車両の一端に移動するばね 6 ロール剛性 えるのである。 をもっ側が , 移動する荷重のより多い部分を支えるのであり , 残りを弱い方が支 分が決められないのである。表現を変えていうと , 車両の中で強いロール剛性 比によって配分されるが , この前後配分がどうなるか不明なので , St の前後配 係にある。 こで , スプリングを通るばね上荷重移動 ( St ) は前後のロール剛性 が大きくなれば , スプリングを通るばね上荷重移動 ( St ) は , その分小さくなる関 は一定である。したがって , ロールセンターを通るばね上荷重移動 ( CtF 十 CtR ) ないことがわかるはすだ。全荷重移動のうち , 全ばね下荷重移動 ( UtF 十 UtR ) て , フロントサスペンションのもの , リアサスペンションの数値と分けて算出でき ば , st ( 移動するばね上荷重 ) で表わされる数値は , 他の要素の数値と違っ しかしもう一度 , 全荷重移動量を算出する公式を見てみよう。注意深く見れ う人がいるかも知れない。 決まるものを , なぜこんな面倒な計算をする必要があるのだろうかと , 疑問に思 ここにきて , ある条件下では , 全荷重移動量は , 車両寸法が決まった時点で これが , 全荷重移動となる。 17 . 24 十 26 . 18 十 7 . 76 十 32 . 73 十 200 . 89 = 284.82b 上式に数値を導入すれば , ・ UtF 十 UtR 十 CtF 十 CtR 十 St=Wt 得られる。 こうして , 今までに算出した各要素を次の通り加算すれば全荷重移動量が スプリングレート ( ばね定数 ) の他に , ダンパーストローク ( 移動量 ) に対するホ 7 スプリング 性をつくる古くからあるデバイス ( 道具 ) を , ますみよう。 193
第 8 章荷重の移動及びロール剛性の計算 SWF = ばね上重量 , フロント SWR = ばね上重量 , リア SW = ばね上全重量 UtF = は、ね下荷重移動量 , フロント UtR = は、ね下荷重移動量 , リア CtF = ロールセンターフロント沿いに移動した荷重 CtR = ロールセンターリア沿いに移動した荷重 WDR = リアアクスル上にかかるばね上重量の比 TM = ばね上重量の中央のトレッド CM = は、ね上重量の中央のロールセンター GM = ばね上重量の中心 LM= は、ね上の重心とロールセンターの距離 St = ばね上の荷重移動量 Wt = 全体の荷重移動量 ArF = スプリングによるロール剛性 , フロント ArR = スプリングによるロール剛性 , リア Rr = ロール剛性リア全体 Fr = ロール剛性フロント全体 BrR = スタビライザーによるロール剛性 , リア BrF = スタビライザーによるロール剛性 , フロント BR = スタビライサーのは、ねレート , リア BF = スタビライザーのばねレート , フロント WtR = リアへの移動荷重 WtF = フロントへの移動荷重 DrR = ロール剛性の全体の中のリアの比 DrF = ロール剛性の全体の中のフロントの割合 201
第 8 章荷重の移動及びロール剛性の計算 ・ (StXDrF) 十 CtF 十 UtF = WtF ( 外側前輪に移動した荷重 ) ・ (StXDrR) 十 CtR 十 UtR = WtR ( 外側後輪に移動した荷重 ) 上式に数値を導入すれば , 199 数値を決めることから , ロール角度を減らすにはロールセンターを高くすればよ の高さを調節でき , さらにこれが LM ( ばね上重量の中央のロールモーメント ) の こで , フロントかリアのロールセンターの高さを上げ下げすれば , ロール軸 ( 900X12.5 ) + ( 7565.46 十 8113.94 ) = 0.72 。となる。 上式に数値を導入すると , ・ (SWXLM) + ()r + (r) = ロール角度 ルする角度は , 次の計算式で求められる。 の合計 ) とによって決定される。コーナリングフォース IG で , このシャシーのロー さ ( 中央のロールモーメント ) と全体のロール剛性 ( フロントとリアのロール剛性 グフォースの下でロールする量は , ばね上重量の全体とそのロール軸の上の高 シンがロールする時に傾斜する部分である。したがって , ある一定のコーナリン ばね上重量というのは , 当然 , ばねの上に担われている部分であるから , マ ( 11 ) ロール角 ( 度 ) いのである。 をかたくリアを柔らかいスタビライザーにかえて , ロール剛性の配分を変えればよ ことになる。そして , さらに荷重の移動量を増加させたい場合は , もっとフロント く , リアは 30 2 b 軽く , 荷重が移動し , 全体配分では 5.4 % がフロントに移動する つまり , マシンがコーナリングフォース IG で旋回すれば , フロントには 302b 重 163 ー { 〔 ( 900X0.666X12.5 十 56 ) 十 26.18 十 32.73 } = ー 302 b ( リア ) となる。 122 ー { 〔 900X ( 1 一 0.666 ) X12.5 十 56 〕十 17.24 十 7.76 } = 302b ( フロント ) 上式に数値を導入して , 動する重量 ・ WtR— {(SWXWDRXLM+TM) 十 UtR 十 CtR } = 後輪あるいは後輪から移 輪から移動する重量 ・ WtF— { 〔 SWX( 1 —WDR) XLM+TM 〕十 UtF 十 CtF}= 前輪あるいは前 車両の一端から他の端に移動したばね上重量は , 次の計算式で算出できる。 スタビライザー , スプリング・レバーレシオとロールセンターの働いた結果 , なる。 ( 200.89X0.517 ) 十 32.73 十 26.18 = 1632b ( 外側後輪に移動した荷重 ) と ( 200.89X0.483 ) 十 7.76 十 17.24 = 1222b ( 外側前輪に移動した荷重 ) ,
( 1 ) 荷重の移動 これまでに , スタビライザーは荷重の移動に影響を及ばしていること , また荷 重の移動はロールセンターの位置にある程度かかわっていることを説明した。し たがって , これから話を進めるに当たって , 共通事項を理解することから始めた い。ます , 荷重がどのように移動するかを理解するため , 車両重量全体を構成 する各要素を , 車両のどこに所属しているかで配分することから始める。 次に , 配分された各要素にコードをつけ , 200 頁にリストアップするが , 以下 いろいろな計算式で使うのにわかりやすくしてある。さらに , このイラストと一緒に ある数値のデータを紹介するが , これは中型のヒルクライム用シングルシーター のものそのままではないが , 実際の数値のサンプルとして使われている。ここで は , コーナリングフォースは便宜上 , すべて IG と仮定している。 また , 車両の各部所の相互位置と個々の重量は , 次の通り算定している。 ・ WF ・ WR = 車両全重量のうち , 前・後車軸にかかっている重量。 ・ UWF ・ UWR = 前・後のばね下重量 , 即ちホイール , タイヤ , アーム , アッ プライト等の合計である。 ・ UGF ・ UGR = 前後のばね下重量の重心位置 ( 高さ ) , 通常はタイヤの半径内 にある。 ・ TF ・ TR = 前あるいは後の車輸 / タイヤの中心間の距離 ( トレッド ) ・ WF—UWF=SWF ( 前ばね上重量 ) ・ WR—UWR=SWR( 後ばね上重量 ) ・ SWF 十 SWR=SW ( ばね上重量合計 ) ※参考例 : ( 上式に数値を導入すると ) WF400 2 b—UWF100 2 b=SWF300 b ( 前ばね上重量の例 ) WR720 2 b—UWR120 2 b=SWR600 2 b ( 後ばね上重量の例 ) 300 十 600 = 900 2 b ( ばね上重量合計 ) となる。 上の試算ができたので , 荷重移動の 3 例を次に計算してみよう。 2 ばね下重量の移動 下の計算式は , 前側と後側のばね下重量の移動の計算式である。 190 もちろん , 重量がかさむほど , 位置が高くなるはど , 荷重の移動する傾向が 120X12 十 55 = 26 .182b ・ UWRXUGR+TR=UtR ( 後ばわ下荷重の移動 ) 100X10 十 58 = 17 .242b ・ UWFXUGF+TF=UtF ( 前ばね下荷重の移動 )
測すべき対象としての不等長のウィッシュポーンを仮りに設定し , その先端にア ップライトとホイールに相当する形を・与え , ウィッシュボーンに対して作動すると ともにシャシーに対しても , ロールセンターに対しても作動するような , 動きの自 由なモデルを作っていろいろな角度に動かしてみる。 こうしていろいろな方向に動かしてトライしているうちに , 糸が , ロールセンター の動きが小さなある一定の幅 ( 変化量 ) の中に収斂してくる様子を示してくれる。 これは , 作るコストは知れてるし , 扱い方も簡便この上ない , きわめて原始的な 方法ではあるが , 基本的に正しい点をきちんと示してくれるから , のちにコンヒ。ュ ーターの価格が手の届くものになった時に , この計算をやらせてみれば , 糸が示 したデータが大差なく正しいものであることをクロスチェックできる。大差なくとい うのは , 糸を使った道具であるから , その精度は上手にやれば 0.125 インチ ( 3. 175mm ) ぐらいまで出せるということである。コンピューターを使ってやるとなれば , うまくやらなければ , 、、はてな〃と首をかしげる結果になろうというものである。 この方法は , きっかりとした数値ではないにしても , だいたい理論的に納得で きる範囲内の近似値を求めることができるものであり , とんでもない誤りを犯すこ とがないという利点をもっている。やりにくい点は , ダブルウィッシュポーンの両ア ームが限りなく平行に近い場合である。この時は , スイングアーム延長線が無限 に長くなって , 糸の扱いがむすかしくなるからである。こうした場合は , 縮尺を 1 / 2 にとるとか , 友人を呼んで糸の一端をもって遠くまで行ってもらうしかないが , れは極端なケースである。この道具の作り方と扱い方は , 巻末に詳細を記載し ている。 最初の実験から , ロールセンターは , 上下方向と同様 , ある条件下で左右方 向にも移動する様子が見られる。この動きをコンピューターを使った場合 , 外側 ホイール , 内側ホイール ( 右傾斜 , 左傾斜 ) の動きをプロットしてみると , 普通は 片方のホイールが持ち上がる時 , もう片方が下がるある点の高さに , ロールセン ターが定まる様子が見られる。ロールセンターは同時に二つは発生せず , 上下 のアームの延長線上の交点とタイヤ接地面の中心点とを結んだ点に瞬間的に 移動するのである。糸を注意深く操作すれば , 誤差はほとんど無視できるほど小 さくできる。 このロールセンターとジオメトリーの問題をそれほど重要でないという設計者 もいるが , 実際にいろいろなレーシングマシンのそれを解析したところでは , それ らのロールセンターは , あるマシンではホイールストローク全長に対して ( ロール 時に ) わすか 0.015 ~ 0.20 インチ ( 約 0.38 ~ 0.51mm ) ときわめて狭い範囲に集約 されていることがわかった。これが偶然の結果でないことは , 真面目なプライベ 168
第 7 章マニアのためのサスペンション設計入門 がどのように変動してるか , また不安定なものであるかが大きく増幅されて見える のである。したがって , ロールセンターが変われば , マシンの姿勢は変わり , 荷 重の内側ホイールから外側ホイールへの移動の仕方も変わる。重心位置はあら かじめ設計時にできるだけ低くすることができれば , 不安定になるのを防ぐこと はできる。それでは , 本題にもどってスタートすることにしよう。 サスペンションのジオメトリーを得る方法は , 次の 4 通りある。 イ . 現在レースで好成績をあげているマシンのジオメトリーの設計図面を購入 するなり , 知己を通しるなりして入手し , それをデッドコピーする。それには , 空 間 ( 3 次元 ) を作動するポイントを正確にとらえ , その通りにコピーする。これに 適合するアップライトは既製品にないはすだから , 特製しなければならない。 うしてコピーしたジオメトリーのサスペンションが , 期待した通りのロードホール ディングを発揮してくれない場合は , 何か途中のプロセスでミスが入り込んで いると考えられる。そうなることを防ぐために , 常にプロセスを振り返り , 将来改 良を加えるための備えとするのが良い。 ロ . 自分の考えるレイアウトを実際に図面の上に線で描いてみる。ホイールとシ ャシーの動きやロール , バンプ , リバウンドなどすべての運動を , 次から次へ と図面に引いてみると良い。ジオメトリーの変化の仕方などを描くうちに図面の 数は何十枚にもなり , たちまちのうちに何百枚もの数に達してしまう。だから , これは合理的なやり方とはいえない。 ハ . 頭の中に描き出した数学的モデルをコンピューターを使って , それらの変 化を計算させる方法だ。コンピューターを使う最大の利点は , 結果が出るまで の何百万回の計算をまたたく間にこなしてしまう点だ。コンピューターを使うの に , むすかしい仕事は , ふさわしいジオメトリーを選び出させるためのプログラ ムを上手に作ってインブットしてやることだ。 主要なレーシングチームや大メーカーでは , そのためにコンピューターを導入 して既に久しいが , 未だに確たる成果をあげるに至っていないことも事実だ。 その理由の一つには , しかるべき解答を得られるようなプログラムをまだコンピ ューターにインブットするに至っていない状況にあり , コンピューターからのアウ トブットも , しかるべく解釈されていないということがあるのだろう。 コンピューターの代わりに、、糸 ( 紐 ) 〃を使う方法。これは , コンピューターの サイズが部屋一杯の大きさで値段は百万ポンドもする頃 , リチャード・プラック モアと著者がテラピン 1 号車 ( ミニのエンジンをミッドシップに積むスペースフレ ームのシングルシーター ) を設計した時に , コンピューターの代わりに信頼に足 る手段は何かないかと , 必死の思いから考えついた産物である。扱い方は , 計