大手広告代理店などからイベントの企画制作、運営を受注し ていた。 2005 年の「愛・地球博」で日本館を手掛けるなど、 キッズコーポレーションの本社が実績があった。リーマン・ショックや東日本大震災で受注が 入っていたヒル ( 右から 2 番目の 減る中、対応が後手に回った。 建物 ) イベント受注減で信用不安 対応が後手に回り万策尽きる キッズコーホレーション〔イベントの企画制作、運営〕 1 5
生ー、 2009 年は 258 小卞と世卩んた。 だが、錦織社長らは、リー マン・ショックの影響は徐々に薄らぐと判断。てこ入れに 踏み切る時期が遅れた。結果的に、 この見通しの甘さが、それ以降の対応で後手に回る きっかけとなった。 業績の伸び悩みに、 2011 年 3 月の東日本大震災が追い打ちをかけた。広告自粛で、 イベントを中止する企業が続出。震災後の 2012 年 3 月期の売上高は、ビーク時のお よそ半分の約億 4100 万円に減った ( 東京商工リサーチ調べ ) 。 こうした過程で、錦織社長ら経営陣に、コスト削減を徹底する意識が働いたのか、成 果主義の賃金体系にしていた従業員の給与水準が下がった。すると、これに不満を持っ たと見られる一部の従業員が独立し、キッズコーポレーションの顧客から仕事を引き受 けるよ , つになった。 成果主義の賃金体系は、丁寧に運用しなければ、業績悪化に伴う給与の減り方が激し 従業員の士気が下がりやすい。キッズコーポレーションでは、まさにそのリスクが 露呈して人材が流出した。 こうした中、自治体のアンテナショップの運営を受託するなど、新規案件の穫得に奔 183 第 2 章ビジネスモデルが陳腐化したときの分かれ道
プ 1 ム沈静化に対抗する増収策がなかった 破綻の要因 ランニングプームに乗り、相次いで出店した大型店による負債が重荷に テニス、自転車プームの後、有効な増収策を打ち出せなかった 東日本大震災やインターネット通販台頭などで顧客離れが進んだ 144
寝苦しい夜にひんやりとした肌触りで暑さを和らげる冷感寝具。東日本大震災による 節電意識の高まりをきっかけに、注目を集めた。その 1 つが、敷布団の上に広げる敷 きパッドで、室温より 1 ・ 5 度低くなる性質のジェルを用いた「ひんやりジェルマット」。 まどのヒット商品になった。 2 011 年には前年の 2 倍以上売れ、生産が追いっかない ( これを製造・販売してきたヒラカワコーポレーション ( 東京・中央 ) が、東京地方裁判 所に破産を申し立て、 2016 年Ⅱ月 9 日に開始決定を受けた。東京商工リサーチによ れば、同年 1 月期の負債総額は約億 8000 万円。既に同年 8 月に全従業員を解雇し て弁護士に事後処理を一任、事実上事業停止に追い込まれていた。 同社の設立は 1989 年。寝具や寝装品などの製造と販売を手掛けてきた。法人登記 簿には、羽毛寝具、衣料製品や畳材料の輸出人なども設立の目的と書かれている。 製造は中国で行っていた。 1994 年、江蘇省に合弁会社を設立して羽毛製品の製造 を始め、寝装品の製造工場や畳材料を扱う会社を合弁または独自資本で、次々中国に開 几双ー ) に。 2 0 0 7 年に中国で「ひんやりジェルマット」の製造を始め、翌年には日本での販売を く。国内では、ディスカウントストアやカ 開始。そして韓国や米国にも販路を広げてい
込んだが、応じてもらえなかった。主力取引先の上場企業にも取材を依頼したが「状況 を完全に把握してはいないので話しにく、 し」 ( 広報担当者 ) とのことだった。 ヒット商品に恵まれて業績が伸びれば、それで得た資金に借入金を加えて設備投資を 行い、次なる事業展開を図ろうとするのは経営者として自然な考え。だが、辛しい ビルまで購入する必要があったかどうかは疑問が残る。 「ひんやりジェルマット」のヒットが、東日本大震災という未曾有の大災害による〃特 需〃に支えられた面が大きかっただけに、なおさらだ。 東京商工リサーチ情報部の担当者は、ヒラカワコーポレーションの例を踏まえ、「思い がけない売り上げ増に恵まれたら、それが実力によるものなのかそれともッキによるも のか、さらにどのくらい続きそうかなどを十分見極める必要がある」と話す。 事業拡大のために設備投資を行って借入金が膨らめば、特需が去って通常の売り上げ に戻った場合、返済が困難になることは十分あり得る。ヒット商品を出せた場合でも、 理に拡大に走らず身の丈に合った経営を続けることが、成熟した経済の中で中小企業に 求められるのかもしれない。 ( 2017 年 1 月号掲載 ) 057 ー第 1 章急成長には落とし穴がある
幵リ 1991 年 工 2000 年 06 年 08 年 11 年 16 年 17 年 ホンマ・マシナリーの破綻の経緯 売上高のピーク ( 92 年 4 月期 / 35 億 1356 万 円 ) 売上高がピーク時の約半分に減少 ( OI 年 4 月期 / 17 億 2102 万円 ) おおさか中小企業再生ファンドの支援で経営再 建に着手 原発向けの販売強化により売上高が 29 億円に 回復 ( 07 年 4 月期 / 29 億 3649 万円 ) リーマン・ショックで受注が低減 東日本大震災以降、原発関連の受注が大幅減 ロシアの国営鉄鋼メーカーから約 10 億円の受注 新興国の債権が回収困難になり破綻 05 年 HM ・ 6.0 - ・ 30 : 0 ・第 第第・第を Y 第をでれ を量社第 ホンマ・マシナリーの ウェブサイトには工 作機械の写真が並ぶ をン、 - 物・・・ - ニングでンタて、 - プル 第を第ま 2 1 9 リスク管理の甘さはいつでも命取りになる 第 3 章
ため、 2 億円を超える新規融資を受けた。この大型投資が経営の転機になった。 ランニングプームを追い風に、新店舗で売り上げを伸ばす狙いは、裏目に出た。 2011 年 3 月、東日本大震災が発生し、スポーツィベントやレジャーの自粛が広がり、 売り上げ低迷が始まったからだ。 2011 年 5 月には赤字続きだった池袋店を閉店するなどして一息ついたものの、し ばらくすると、再び業績が低迷するようになった。 低迷から抜け出せなくなった背景として、東京商工リサーチ情報部の担当者は「イン ターネット販売の影響がある」との見方を示す。実際、アート破産後の閉店セールでス タッフに尋ねると「商品の特徴を説明した直後に、店の外に出てスマートフォンで購人 するお客様がいた」という。実店舗で商品を見て、価格の安いインターネット販売店で 購入することがスポーツ用品でも増えていた。 再び窮地に立ったアートは、前述のように、 2 013 年秋、スキーや登山用品に強い 石井と業務提携。店舗の整理をするための融資を受けた。 2014 年には御徒町周辺の 店舗を集約し、 2015 年には日比谷店を閉鎖した。その一方で、新宿などにある石井 の一部店舗内にアート専用のコーナーを設けて販売拡大も目指した。
タログ、インターネットなどの通信販売を主な販路とした。 売り上けが 2 倍の億に 転機になったのは、 2011 年。前述したように東日本大震災の影響で、消費者が冷 感寝具を求めるようになったのだ。「ひんやりジェルマット」の売り上げは大幅に増加 これに伴い、ヒラカワコーポレーションの 2 012 年 1 月期の売上高は犯億 5 4 0 0 万 円と、 2011 年 1 月期の約幻億円に比べ 2 倍以上になった。 一方で 2011 年から同社は、積極的な設備投資を行う。 1 つは、福島県白河市内の 工業団地に土地と工場を購入したこと。工場、倉庫、事務所など合わせて 5000 ' を 大きく超える不動産の取得に伴い、同社は 1 億 5000 万円の根抵当権を設定している。 また、東京・日本橋にあった本社を移転し、近隣に 5 階建てのビルを購入した。こち らには 3 億 1300 万円の根抵当権を設定しており、多額の設備投資をしたとみられる。 いて 2012 年には、千葉県浦安市に倉庫と配送センターを建設。翌年には、同じ 浦安市内にショールームもオープン、販路拡大を狙って法人向けに寝具・インテリア商 053 ー第、章急成長には落とし穴がある
しかし再び試練が訪れる。リー マン・ショックだった。新規受注がゼロという事態に、 3 年弱分あった工作機械の受注残は 1 年半分に減った。 2009 年 4 月期の売上高は 立忌 418 万円。 受注が戻ったのは 2010 年後半だった。東芝など大手電機メーカーから原発関連の 受注が増え、 2011 年 4 月期は売上高四億 1882 万円 ( 東京商工リサーチ調べ ) に また「米国では温暖化ガス排出削減のため原子力発電所を年間で 120 基新設する計 画があり、ホンマ・マシナリーも工作機械の販売活動に注力していた」 ( 関係者 ) 。さらに、 中国など新興国向けの工作機械でも社会基盤設備向けが伸び、 2 年分の受注を獲得した。 ところが、 2011 年に東日本大震災が発生。原子力発電関連の受注が世界的に急減 した。それだけではない。 2010 年にビークを迎えた中国経済の減退による受注低迷 も経営を悪化させた。 達之社長は金融機関に返済のリスケジュールなどを依頼し、キャッシュフローの改善 に奔走。海外営業にも尽力し、 2016 年にはロシアの鉄鋼メーカーから約川億円分の 大型工作機械を受注したようだ。しかし入金までは数年かかり、手元資金は確保できな い。切迫した状況の中、中国企業やインド企業の計川億円前後の債権回収ができなくな
破綻の定石 7 危機対応が後手に回る リーマン・ショックに東日 本大震災、テフレ経済 : 倒産の理由として定番のフ レ 1 ズだが、 本質ではない。 あらゆる企業が同じ変化に 直面する中、倒産に至るか どうかの大きな分かれ目が スピード感。危機を察知し、 対応する速さ。わずかな差 が大きく明暗を分ける。