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検索対象: アメリカ南部危機の政治論―J.C.カルフーンの理論
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1. アメリカ南部危機の政治論―J.C.カルフーンの理論

加えたものとする。実際の人口算定は、連邦議会の最初の集 会の後三ケ年以内に行い、その後一〇年ごとに法律の規定に 従って行うものとする。下院議員の数は三〇、〇〇〇人に対 し一人を超えてはならないが、各州は少なくとも一人の下院 議員を持つものとする。なお、右の算定がなされるまで、ニ 州は三名、マサチュセッツ州は八名、ロー ハンプシャー デランテーション ド・アイランド州とプロヴィデンス入植地は一名、コネテ 第一条 イカット州は五名、ニューヨーク州は六名、ニュージャージ 第一節この憲法により賦与される一切の立法権は、上・下両 州は四名、。ヘンシルヴァニア州は八名、デラウェア州は六 院からなる合州国連邦議会に属する。 名、メリーランド州は六名、バージニア州は一〇名、ノース・ 第二節〔一項〕下院は二年ごとに諸州人民によって選出され カロライナ州は五名、サウス・カロライナ州は五名、そして た議員から構成され、各州の選挙人は州議会の議員数の多い ジョージア州は三名を選出することができるものとする。 方の一院の選挙人資格要件を有することを要す。 〔四項〕いずれかの州の代表に欠員が生じた場合、当該州の 〔二項〕何人も二五歳の年齢に達していない者、七年以上合 行政府はその補充選挙の命令を発しなければならない。 州国市民でない者、また選挙された時に選出した当該州の住 〔五項〕下院はその議長および他の役員を選任し、また弾劾 民でない者は下院議員となることはできない。 の専権を有する。 録〔三項〕下院議員および直接税は、この連邦内に含まれる諸 州の間にそれぞれの人口数に従って配分されるものとし、各第三節〔一項〕合州国上院は各州選出の二名の上院議員で構 成される。彼らは当該州議会によって選出され、その任期は田 州人口数は、年季奉公人を含めるが、課税されないインディ 付 六年とする。なお、各上院議員は一票の投票権を有する。 アンは除いて、自由人の総数に他の一切の人々の五分の三を 合州国憲法 われら合州国人民は、一層完全な連邦を形成し、正義を樹立 し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、全体の福祉を促 進し、われらとわれらの子孫に自由の至福を確保する目的をも って、ここにアメリカ合州国のためにこの憲法を制定、確立す る。 0 ロ ュ ( 2 ) コノグレス

2. アメリカ南部危機の政治論―J.C.カルフーンの理論

分 ) 不可分性をよりどころとしながら第一条八節八項をもってナショナルな性格を主張する論者に反論する。 第四に、カルフーンは、「憲法は完全にフェデラルであることを認めはするものの、政府は一部フェデラルであ 一部ナショナルであると主張する人々ーに反論する。例えば、・マデイソンは、『フェデラリスト』第三九篇 および第四〇篇において合州国の政治体制と憲法に占めるフェデラルな性格とナショナルな性格を指摘したうえで、 「提案された憲法は、ゆえに、厳密にはナショナルな憲法でもフェデラルな憲法でもなく、両者の複合体である」と している。カルフーンはこのような理解を否認する。以下、この点に関し彼の主張する反論を要約しておこう。 マデイソンは、憲法の批准行為に止目して、この点で憲法はフェデラルではあるが、他方、連邦政府の権力源泉やその機能 と範囲の点では、ナショナルな性格とフェデラルな性格とを兼備すると主張するが、政府の基本的性格を規定するものは憲法 であり、憲法がフェデラルであって政府がナショナルなものであることはありえない。これは相矛盾する。 マデイソンは下院の権力の源泉をアメリカ人民に求め、この点で政府はナショナルなものであるとしているが、その権力は 一体としてのアメリカ人民に発するのではなく、「独立し主権ある諸州人民」に由来し、連邦下院議員はネーションに包括さ れた単なる選挙区としての州を代表するものではなく、諸州人民の代表である。また、各州人民は、憲法第一条二節三項によ り「各州の人口に比例して」という「一つの一様な割合あるいは比率」に基づいて代表され、さらには、下院議員の選挙人は、 第一条二節一項により、「州議会の議員数の多い方の一院の選挙人の資格を有しなければならない」としているところからも フェデラルな性格を明示するものである。 各州の大統領選挙人 (electoral vote 「 ) の数は、憲法第二条一節二項により、各州の上・下両院議員数に一致する。マディ ソンは、上院の権力源泉をもってフェデラルな性格を、また、下院のそれをもってナショナルな特徴とするがゆえに、両方の 性格を具備する行政権を「極めて複合的源泉に由来する」としているが、下院のフ = デラルな性格については①で示されたと ころであり、また、各州の選挙人の任命を憲法は「各州議会の定める方法」に従うものとしていること、さらには、大統領の 164

3. アメリカ南部危機の政治論―J.C.カルフーンの理論

雑な政治的画策が介在していた。すなわち、ジャクソンが大統領に当選するためには、中西部諸州のジャクソン派の 保護関税論者の支持をとりつける一方、南部の離反を阻止することが必要とされていたのである。かくして、工業委 員会で多数を占めるジャクソン派は、新関税法が南部にとっては勿論、ニューイングランド諸州の造船業者、貿易商 人、蒸溜業者にも満足のいかないものにすることによって、たとえ中西部諸州のジャクソン派の保護貿易論者がこの 法案を支持したにしろ、ニューイングランドと南部諸州の反対によって廃案とされ、その結果は、ジャクソン派は中 西部諸州の信を失うことなく、その責をアダムズ派に帰することができるよう画策したのである。カルフーンもまた この結果を予測し、それを期待していた。しかし、これが功を奏するためには、ニューイングランドに受け入れられ るような関税率の修正を阻止することが必要な条件となる。 三月初旬、関税法をめぐる討議が下院で始まった。二八年関税法は、原毛にかかわる関税率を修正して、四月二三 ( 幻 ) 日、一〇五対九四の僅差で下院を通過し、上院に送付されることになった。上院の審議に付託されるに先だって、ジ ヨージアのワイルド (Richard H. Wilde) とサウス・カロライナのドレイトン (William Drayton) は、それぞれこの法 案を「国内の製造業を奨励するための」法案、「一部の製造業者の利益を増大させることを目的としたー法案と呼び、 八二八年四月二二日、下院において「ユニオンのほ また、ロアークのランドルフ (J0hn Rand01ph, 1773 ー 1833 ) は、一 ぼ半分から略取、強奪せんとする法案」と呼んで、その違憲性を主張し、この法案を憲法問題にまで転化させんとし 同年五月五日、この法案は上院工業委員会に付託され、ヴァンビューレンやイートン (J0hn H. Eaton) 等の提案に なる一四の修正を経て、二八年五月一三日、二六対二一の少差で「二八年関税法ー (AnAct ina と teration 0fthe seve 「 al Acts imposing duties on lmpo 「 (。) は上院を通過したのである。サウス・カロライナは、この法律を「嫌悪の

4. アメリカ南部危機の政治論―J.C.カルフーンの理論

地区に会合し、修正第十二条の規定する義務を履行しなけれ ばならない。 第一一節連邦議会は、適当な法律を制定し本条を施行する権限 を有する。 第二十四条〔一九六一一年八月一一七日発議、一九六四年二月四日確定〕 第一節大統領ないし副大統領を選ぶための選挙、大統領ない し副大統領選挙人の選挙、もしくは連邦議会の上・下両院議 員を選ぶための、予備選挙あるいはその他の選挙における合 州国市民の投票権は、人頭税その他の税金未納の理由をもっ て、合州国あるいはいかなる。 ョこよっても、これを拒否ない し制限されることはない。 第二節連邦議会は、適当な法律を制定し、本条を施行する権 限を有する。 第二十五条〔一九六五年七月六日発議、一九六七年一一月一一三日確定〕 第一節大統領が免職、死亡、あるいは辞任した場合、副大統 領が大統領になる。 第二節副大統領が欠けたとき、大統領は副大統領を指名す る。指名を受けた者は、両院の過半数の承認を得てこの職務 に就かなければならない。 録第三節大統領が、上院の仮議長および下院議長に対し、自ら 文書で職務の権限と義務を遂行することができない旨通告し た場合には、その後大統領がその権限と義務を遂行すること 付 ができる旨を文書で宣告するまで、副大統領が臨時大統領と ボウル してこの権限と義務を遂行しなければならない 第四節副大統領および行政各省長官の過半数あるいは連邦議 会が法律で定める他の機関の過半数が、上院の仮議長および 下院議長に対し、大統領がその職務の権限と義務を遂行する ことができない旨を文書で通告してきたときは、副大統領は 臨時大統領として大統領の権限と義務を遂行する。 その後、大統領が、上院の仮議長および下院議長に対し、 職務執行不能の事実がない旨を文書で宣明し、これを送付し てきたときは、副大統領および行政各省長官の過半数または 連邦議会が法律で定める他の機関の過半数が、四日以内に、 上院仮議長および下院議長に対し、大統領がその職務の権限 と義務を遂行することができない旨を文書で通告しないかぎ りは、大統領はその職務の権限と義務を再び取り戻すものと する。この場合には、連邦議会が開会中でないときは四十八 時間以内にそのための集会を開いて、この問題を決定しなけ ればならない。連邦議会が、先の宣言文書を受け取ってから 二十一日以内に、あるいは連邦議会が開会中でない場合には 連邦議会の集会が要請されてから二十一日以内に、大統領が その職務の権限と義務を遂行することができない旨を両院の 三分の二の投票によって決定した場合には、副大統領が臨時 大統領として引き続きこれらの権限と義務を遂行するものと する。このような決議がなされない場合には、大統領はその 職務の権限と義務を再び取り戻すものとする。 215

5. アメリカ南部危機の政治論―J.C.カルフーンの理論

( 9 ) の弾劾審判権を専有し ( 第一条三節六項 ) 、さらには副大統領の決選投票権を有している ( 第二条一節三項 ) 。また、 下院は弾劾発議権と大統領の決選投票に関する専権を有している。、行政権は、憲法第二条一節一項により大統領 に属し、通過法案に対する拒否権を有するが ( 第一条七節二項 ) 、彼の選出基盤は州と州人民にある。なぜなら、各 州の大統領選挙人の数は当該州の上・下両院議員数に一致し、また、州を単位として選出されるのが通例となってい るからである。岡、司法権は、第三条一節の規定により最高裁および下級裁判所に属しているが、その任命は上院の 助言と同意を得て大統領が行うものとされている ( 第二条二節二項 ) 。以上のような連邦政府の憲法上の規定から、 カルフーンは、合州国連邦政府の構成は州と州人民の二つの要素に集約されるものであり、議会においてはこの二つ の要素が上・下両院において「最も明確且っ簡明な形態」で均等に配分され、行政・司法においては混合していると (2) する。 以上の憲法論的指摘から、カルフーンは「数的多数制ーが合州国連邦政府の唯一の構成要素となっていないことを 示すため、次のような仮説を提示する。すなわち、下院が唯一の立法府であったとするなら、最大人口数を有する六 ( ニューヨーク、ペンシルヴェニア 、バージニア、マサチューセッツ、オハイオ、テネシー ) が残り二四州に代っ 、三四一万 て立法権を行使できるところとなり、他方、上院が唯一の立法府であったとするなら、最少人口州一六丿 一、六七二人が残り一四州一、二七七万五、九三二人に代って立法権を行使できるところとなる。しかし、憲法は総ての 廾と州人民の多数のいずれもが絶対的に優先せ 法案が立法化されるためには両院の合意を必要としているがゆえに、ー ー・ライド ず、両者は上・下両院において二元的に分割されている。また、大統領が拒否権を発動した場合、これを乗り越える ためには、憲法第一条七節二項の規定により両院の三分の二の多数を必要としているところから、下院においては、 一三八名の議員総数中の一五二名、上院においては六〇名中四〇名の賛成を必要としており、これを州人口に換算す 174

6. アメリカ南部危機の政治論―J.C.カルフーンの理論

( 貯 ) ~ こ vol. IV, pp. 347 ー 348. ( ) 前頁の第 2 表のとおり。 ( ) Calhoun, TI ミ = 、ミ・ k. vol. IV, p. 396. ( ) マルクスは次のように指摘している。「周知のように、連邦議会下院における個々の州の代表数は、それぞれの人口に依存している。自由 諸州の人口は奴隷諸州とは比較にならぬほど急速に増大するので、北部の下院議員数は、南部のそれをはるかに凌駕して急速に増大せざるを えなかった。そこで南部の政治権力の本来の座は、ますます各州がその人口の大小によらず一一人の上院議員を送りこむアメリカの上院へと移 行した。上院での影響力を強め、その上院によって合衆国にたいするヘゲモニーを維持するために、南部はつぎつぎと新奴隷州の形成を必要 としているのである」 ( 『マルクス日エンゲルス全集』第一五巻、三二〇頁 ) 。 ( ) 占拠者主権説は、一八四八年の大統領選挙で民主党より指名された・キャス (Lewis Cass, 一 782 ー一 866 ) が一八四七年一一月その著『ニ コルソン書簡』で公にしたものであるとされている。 ( ) C 0 、 0 Co 洋にミい Dec. 16, 一 847 , quoted in Charles M. Wiltse,John C. Ca 戔 ~ 0 ミこ Se ミ list, p. 326. ( ) Calhoun, ミ .. vol. IV, p. 513. の日付 ( 一八四九年八月一九日 ) は、編者 Richard K. Crallé ( 一 800 ー 1864 ) の間違いであるとされて いる (Charles . WiItse, op. 、こ p. 537 ) 。 ( ) Calhoun, op. ci 、こ vo 一 . IV, や 513. ( ) 「提言」の最終タイトルは、 "Address to the people of the United States" に変更された。 ( ) Calhoun, op. 、こ vol. ミ , pp. 291 ー 294. ( ) lbid. , を . 296 ー 297. ( ) 7 ~ こ pp. 302 ー 303. ( ) 7 こ vol. IV, pp. 535 ー 54L (S) ニュ 1 ョ 1 クの上院議員ウィリアム・Ⅱ・シュワ 1 ド (WiIIiam H. Seward, 1801 ー 1872 ) が一八五八年、ロチェスタの演説の中で語った 言葉といわれている。 ( 礙 ) CaIhoun, op. 、 . vol. IV, p. 542. ( ) まミこ pp. 543 ー 544. ( ) ミ . , p. 544. ( ) ミこ pp. 544 ー 546. 102

7. アメリカ南部危機の政治論―J.C.カルフーンの理論

コ政府に独立を認めさせた。かくして、合州国は綿花栽培地として、また工業製品の販路としてニ = ーヨーク州の五 倍にもおよぶ広大な土地を入手した。そして、南部の奴隷主達はこの地方を奴隷州として合州国に併合することを欲 したのである。 テキサスの連邦併合問題は、しばらくは奴隷州の増加をおそれる北部諸州の反対にあい争点となることを阻まれて したが、この問題が議会の政治的争点となるのは、第一〇代大統領・タイラー (John T を異一 790 ム 862 ) のもとにお いてである。タイラーは、一八四〇年の大統領選挙において、民主党のヴァン・ビ = ーレンを破って第九代大統領に 当選したハリソン (William Hen 「 y Ha 「「 ison, 一 770 ム 84D が就任間もない四一年の四月四日に肺炎で急死したため、憲 法の規定により副大統領から第一〇代大統領として昇格していた。 一八四四年四月一二日、テキサス併合条約が調印され、憲法の規定により、四月二二日上院の承認を得るべく議会 に提出された。かくして、六月八日、上提された併合条約は採決に付されたが、三五票対一六票で必要な三分の一一の 景多数を得ることができなかった。 ジョイント・リゾリューション 史条約の批准に必要な三分の二の多数を得ることができなかった併合論者は、「共同決議、によってテキサス併 論合を図ることを画策し、四四年六月一一日、 o ・マクダフィが、否決された併合条約を「ユニオンの基本法、とする という決議案を上院に、また、 O ・・インガソルが同主旨の決議案を下院に提出した。かくして、テキサス併合に フ関する共同決議は一部修正された後、翌四五年、上院を二七対二五、下院を一三二対七六で通過成立し、三月一日、 カ辞任間近の大統領タイラーがこれに署名するに至るのである。また、テキサス議会も特別会議を開いて、同年七月四 一日、この共同決議を承認し、ここにテキサスは合州国領土として併合され、同年一二月二九日、奴隷州として連邦を マニフェスト・デスティ = イ ( ) 構成する一州に編入されるところとなった。ここに、「明日なる運命 . を旗印に内乱を起し、独立させた後併合する

8. アメリカ南部危機の政治論―J.C.カルフーンの理論

日、一国民ないし一つの人民に形成されるに至っているとか、 : ュニオンを構成する諸州人民はその成員として主権を保有し ていないとか、さらには、彼ら市民の忠誠は中央政府に移行したという主張は : : : 真実の根拠を欠いているだけでなく、最も明 確な歴史的事実に矛盾するものである。 カルフーンのこの決議案に対し、・ウエプスターは、一体としての合州国人民が連邦憲法を制定したのであり、 連邦法に対する無効宣言は連邦政府の権限を侵し、合州国政治制度の崩壊に至らしめるものであると反論する。かく して、カルフーンは、二月二六日、再び立ち、憲法制定会議の議事録を駆使しながらウエプスターに反論している。 また、 c.5 ・マクダフィは、「強制法」を「この連邦を構成する諸州の主権を破棄し、権力の制限を伴わない集権化した 政府を確立し、市民権を軍事権力に服せしめんとする法律」という名称に修正すべしとする動議を提出するが、これ は否決される。そして、一 八三三年二月二〇日、「強制法」は、バージニアの・タイラー (JohnTylo 「 ) が一票の否 決票を投じ、南北両カロライナと州権派議員が議場から退席するなかで上院を通過し、同年三月一日、下院をも通過 成立をみるのである。 連邦の政治体制をめぐる激しい議論が交わされる状況にあって、一 八三三年二月一二日、・クレイは、再び、 わゆる「妥協関税法」 (Compromise Act) を議会に上提していた。それは、一八四七年七月一日までに、従価 (ad valo 「 (m) で二〇。ハーセント以上で輸入される商品の税率を二〇パーセントまで引下げることを規定するものであっ た。カルフーンはクレイ提案のこの関税法に支持を表明した。かくして「妥協関税法ーは、一 八三三年二月二六日、 下院を通過し、同年三月一日、二九票対一六票で上院を「強制法」と共に通過したのである。 八三三年三月二日、大統領ジャクソンが「強制法」と「妥協関税法ーの、いわば「飴と鞭」の両法案に署名する におよんで、サウス・カロライナは関税問題に関しては一応の成功を収めたと言えよう。かくして、サウス・カロラ ュニオン

9. アメリカ南部危機の政治論―J.C.カルフーンの理論

保護関税の原則に全く変更を加えるものではなく、非立憲的で不平等を助長するものであると強い不満の意を表明し 反論した。しかし、五月二三日、工業委員会作成の関税法案が議会に上提され、六月二八日、「一八 三二年関税法」 は下院を一三二対六五で、また、七月九日には上院を三二対一六で通過成立した。この関税法は、木綿、羊毛製品、 鉄等の商品に高率の関税が賦課され、その平均税率は約三三パ ーセントにのぼった。従って、この関税法もまた対外 市場に依存する商品作物生産州の負担を軽減するものとはならなかった。 ナリファイアーズ 八三二年秋、サウス・カロライナでは州議会と市議会議員選挙が行われた。「無効宣言派ーと「統一派ーは、そ れぞれ「青記章とやしのボタン」 ( ナリファイアーズ ) および「アメリカ鷲」 ( ュニオニスッ ) を象徴として争った。 九月のチャールストン市の議員選挙において「無効宣言派」の勝利は辛勝ではあったが、翌月の州議会議員選挙にお いては、上下両院とも「無効宣言派ーが三分の二以上の多数を制した。そんな中で、知事ハミルトンは、一〇月一三 コンヴェソション 日、臨時議会を召集した。その席で、特別会議の開催の是非を問う決議が採決に付され、その結果、三一対一三 ( 上 院 ) 、九六対二五 ( 下院 ) で特別会議の開催に必要な三分の二以上の多数を「無効宣一言派ーが占めたのである。かく 八三二年一一月一九日、特別会議は州知事ハミルトンを議長として下院ホールで開かれ、同月二四日、「無 効宣言」 (OrdinanceofNullification) が一三六対二六の圧倒的多数で採択されるところとなった。それは一八二八年お よび三二年関税法を「無効且っ違法であり、本〔サウス・カロライナ〕州、その官吏、市民に対し何の拘束力をも持 と述べ、さらに、「本〔サウス・カロライナ〕人民は、ゆえに、他の諸州人民との政治的結合を保持ないし 維持すべき総ての義務から解放され、別の政府を組織し、主権ある独立州が当然果すべき他の行為と事柄の一切を行 うに至るであろう」と宣言したのである。そして同時に、中央政府の武力介入に備えて一万人の常備軍と武器弾薬を 調達する権限を州知事に授権するよう勧告された。 ュニオニスッ

10. アメリカ南部危機の政治論―J.C.カルフーンの理論

付録 大統領を選出する場合は、投票は州を単位とし、各州の議員 人民に留保される。 団が一票を有するものとする。この目的のための定足数は、 第十一条〔一七九四年三年月四日発議、一七九八年一月八日確定〕 全州の三分の二の州から一名ないしそれ以上の議員の出席を 合州国の司法権は、合州国の一州に対し、他州の市民あるい 要し、全州の過半数をもって選任の要件とする。もし下院に は外国市民もしくは臣民によって提起され、起訴された普通 右のような選出権が発生した場合にも、次の三月四日まで大 法または衡平法上の訴訟にまで及ぶものと解釈されてはなら 統領を選任しない時は、副大統領が、大統領の死亡あるいは その他の憲法上の執務不能の場合と同様に大統領の職を行 第十一一条〔一八〇三年九月九日発議、一八〇四年九月一一五日確定〕 うものとする。副大統領として得票の最多数を得た者で、そ 選挙人は、それぞれの州に集まり、無記名投票により大統領 の票数が選任された選挙人総数の過半数に達しているもの および副大統領の投票を行うものとするが、そのうち少なく が、副大統領となる。もし何人も過半数に達しなければ、右 とも一名は、選挙人と同一州の住民でないことを要する。選 の表の最高得票者二名の中から、上院は副大統領を選出しな 挙人は、その投票用紙に大統領として投票する人と、別の投票 ければならない。この目的のための定足数は、上院議員の総 用紙に副大統領として投票する人の氏名を記さなければなら 数の三分の二を要し、総数の過半数をもって選任の要件とす ない。また、選挙人は、大統領としての得票者の総てと副大統 る。ただし、何人も、憲法上大統領の職に就きえないとされ 領としての得票者の総て並びにそれそれの得票数を示す別々 ている者は、合州国副大統領の職に就くことはできない。 の表を作り、これに署名、確証し封印したうえで、合州国政府 の所在地にむけ上院議長宛てに送付しなければならない。上第十三条〔一八六五年一月三一日発議、一八六五年一二月一八日確 定〕 院議長は、上・下両院議員列席のうえ、総ての証書を開封し たのち投票を計算する。大統領として最大多数の得票数を得第一節奴隷および不任意の労働は、犯罪の刑罰として当事者 が適法に有罪の宣告を受けたもののほかは、合州国国内ある た者で、その票数が選任された選挙人総数の過半数に達して いはその管轄に属するいずれの地においても存在してはなら いるものが、大統領となる。もし何人も過半数に達しない 場合には、大統領として投票された人々の表のうち最高点を 得た者三名以下の中から、下院は直ちに無記名投票によって第二節連邦議会は、適当な法律の制定により本条を執行する 権限を有する。 大統領を選出しなければならない。ただし、この方法により 211