13 章カウンセリングの技法構造論と過程理論 165 観点から , それぞれに貴重な論を展開されているので , 詳細は他書に譲ろう。 ここでは , カウンセリングにおけるクライエントとカウンセラーの作業や経験 に関する機能の要点についてのみ述べる。 くシステム間の情報伝達〉 言葉の最も直接的な道具的働きは , システム間の情報伝達にあることは明白 であろう。言葉は , 一方のシステムから他方のシステムに情報を伝える。カウ ンセリングの場合その際に重要なのは , その情報の内容と質である。著者は , カウンセラーの体験過程を踏まえた応答プロセスの訓練法を考案し ( 小谷 , 1976 ) , 以来その実践を重ねてきている。臨床知と訓練の経験から , 分化でき る重要な情報の内容と質は , 概略以下のように整理できる。 内容 : ①出来事の事実的記述 (description) ②出来事についての未分化なままの情動反応 ドバックできる感情のプロセス ③自己フィー ④主体者の思考 , 解釈 , 意志 これらの情報内容は , 通常上記のように分化されたものが提示されるわけで はなく , 混在したまま発せられるものである。それを , われわれはカウンセ ラーとして読み取るのであるが , その際には , さらに別の読み取りの軸も必要 である。それが質の次元である。言葉に託される情報は , 優れてダイナミック なものであり , それ自体 , 生きたシステム (living system) の性質を持って いるといってよい。①の内容は , カウンセラー自身の側のコミュニ ケーション においてなお重要になるものであるが , 比較的に中立的で客観的な性質を持っ たものである。しかしそれ以外の情報は , それぞれにべクトル性を有し , 情報 としての力学的性質を有している。すなわち方向性とエネルギー量である。 れら内容 , 方向性 , エネルギー量をカウンセリングにおける情報の 3 要素と , 著者は考えている。これらの情報 3 要素のかみ合わせの分析的理解によって , われわれは , キャッチした情報を以下の側面において分化し , また総合できる のである。 ①客観的 , 経験的事実の側面 : ここでの事実は , 自然科学的 , 実験心理学
12 章ガイダンスの技法構造論と過程理論 153 接法の基礎は , 多田 ( 1988 ) が参考になろう。工ントロピーによって先に 8 章 で説明した , ここでのプロセス課題が達せられるメカニズムは , 基本仮説⑩ , ⑨ , ⑧の順で働く基本仮説原理によって展開する。以後の展開を効果的にする この位相の作業のこつは , 達成可能な目標を見いだすことである。 これらの作業経緯が順調に流れれば , 自然に問題解決に抗する力すなわち抵 抗もこの過程において逐次処理されていくことになるが , 変化に対する抵抗は 常にあることに留意し , その分析も並行して行うことが肝要である。その際に 基底に流れているものが , 人格発達にかかわる「依存性」の問題である。その 表れを観察 , 分析していくことがもう一方のカウンセラーの作業の軸である。 第 3 位相 : 情報探索 プロセス課題は , 問題解決にかかわる資源情報の一定量の獲得と , その作業 就労感および作業責任の実感体験である。この課題作業は , 潜在しがちな上述 の依存性の問題の表出を刺激する。資源情報を得ることと同時に , 依存性の問 題 , 抵抗の問題の確認と , とりわけ重要な共同作業の基盤となる勤労能力の起 動が課題であり , その作業責任の確認が , 以後の作業の効果性を左右する「作 業同盟」の基盤になる。 したがって , この位相では , 明確に資源情報の探索主体が , カウンセラーシ ステムとクライエントシステムに分化する。つまりそれぞれが , それぞれの視 占をもって , 解決に使えるかあるいは何らかの関連性があると思われる資源の 情報集めを行うのである。回数を重ねるガイダンスの場合 , この探索は , 面接 室内と外の両方でなされることもあり , クライエントにとっては , 情報収集そ のものが社会技術の学習になる。情報の領域としては , 個人情報と , 環境情報 の 2 種があり , この位相では , 情報の質を問うよりも情報の収集 , 掘り起こし の作業そのものになじみ , 楽しむことができれば理想的である。 資源情報とは , 個人情報領域では , 1 ) 人格構造 , 2 ) 知能 , 3 ) 特殊能力 , 4 ) 興味 , 向性 , 適性 , 5 ) 業績 ( 成績 ) , 6 ) 経験 , 学歴 , 7 ) 人間関係資源 ( 交友関係 ) 等であり , クライエントによる自己記述から始め , カウンセラー による半構成的面接 , さらに必要に応じて心理テスト用具を用いた検査を行う。
12 序人間理解と人間の成長 込む。個人に対するガイダンスの場合も , 伝統的にテストやその個人の成育歴 や家族状況などの外部よりの情報が用いられることが多いけれど , この場合は もし相手の内面に触れて , 共感による理解を得ることが心がけられるなら , そ の情報による理解が得られる。 カウンセリングの場合 , グループカウンセリングにおいては , グループ全体 の現在の凝集のあり方 , お互いの交流の様相を読み取ることによって , グルー プ全体への共感的理解が持てるし , 交流している個々のメンバーの個人的心情 に触れての理解が生ずる。個人力ウンセリングの場での共感的理解が重視され ていることはいうまでもない。 しかし , 個人力ウンセリングの場でも , テストによる理解や , 外部からの情 報が , さまざまな形で , さまざまな程度に活用されていることは見逃してはな らない。カウンセリングの学派や立場による相違はあるにしても , インテーク 面接において , クライエント個人やその家族からの情報を得て , それに基づい て , カウンセリングの方針や , 何が中心問題かについての最初の見通しが立て られるのが通例である。また HTP の描画や , サンドプレイ ( 箱庭 ) などの作 品は , 見方によっては , 疾患分類に役立っ外部情報とも , 精神内界に共感する ための内的情報ともなるし , 普通は両者にまたがる理解の材料であると考えら れる。 重要なのは , このような理解が , どのようなプロセスを経て , その個人の成 長に役立つものとなり得るかという点である。外部情報にせよ , 内部情報にせ よ , それがガイダンスをする側やカウンセラーにのみ蓄積されているのでは , クライエントにとって役に立たない。テストで得た情報や , 生活史を聞くこと で得た情報は , それがカウンセラー ( ガイダンスカウンセラー , 治療的カウンセ ラーを両者含めて ) とクライエントの共有の資源として生かされる必要がある。 一例として , 生活史に関連する外部から得た情報でも , それをクライエントに 適切なときに共感とともに伝え返すことができれば , それは , 今まで自分に とって意味あることと受け取っていなかったクライエントが , 自分を理解する 大切な資源となる。テストの結果にしても同じように用い得る。他者によるそ
166 第Ⅳ部技法論 的意味における物理的事実に加えて , メタ心理学でいう個人が経験する心 のプロセスの紛れもない個人心理学的経験事実 , すなわち心的現実 (psy- chic reality) の 2 種がある。通常中立的記述によってなされる。 3 要素の ニュースを読むアナウンサーの提供する情報がこれに うち内容が主であり , 方向性はなく , エネルギー量は一定している傾向が あたる。 ある。例としては , ていたほど大変なことではないように思えたり , 逆に話してみると自分はとて で思い巡らしていたものを , 言葉にして第 3 者に語ってみると , 心の中で思っ る。この経験の延長として生じることが , 意味の創造の一側面である。心の中 きる。「話しただけで少し心が軽くなった」 , 日々われわれが経験することであ ネルギーも一緒に外に連び出す。そのことだけで , 心の中の秩序には変化が起 換が行われる。イントラすなわち個人の心の中の情報は , たびたび心の中のェ ことによって , 新たな意味が加わったり , そこで出会う変数によって意味の変 ルギーの交換によるものである。情報とエネルギーは , システム間を通過する 面である。意味の掘り起こしが起きる原理は , システムの階層性と情報とエネ として扱う側面であろう。この意味を掘り起こす機能こそが , 心理学が扱う側 キャリアとしての高集は , 言語子やコミュニケーション論がむしろ主要な仕事 あることを強調して , 著者は応答構成のトレーニングを展開してきた。意味の 言葉の機能は , 意味のキャリアであるだけでなく , 意味を掘り起こす側面の く意味の発掘と創造〉 この第 3 の側面が , 言葉のもう一方の重要な機能に関係するのである。 信者も意識していない情報も含む , すなわち無意識の情報が含まれている。 て理解される。この情報の特徴は , 解釈を要するという性質から , 情報発 ギー量のそれぞれが , ①の経験事実に基づいたそれぞれの解釈キーによっ ③意味の側面 : 受け手の解釈が必要とされる情報。内容 , 方向性 , エネル 表現 , 伝達される。 要素がそろっている情報であり , これによって情報を発する者の主体性が ②意志の側面 : べクトル性が最も強く , 内容 , 方向性 , エネルギー量の 3
154 第Ⅳ部技法論 環境情報は , 達成課題に関与する 1 ) 各社会システム , 2 ) 利用可能な介在シ ステム , 3 ) 種々過去の実績 , 統計 , 事例資料であり , 通常相談機関において , データベースを整えておき , 逐次の相談実践の経過で収集が行われ , 補充され ていくものである。近年はコンピューターの普及によって , 情報は相当に整理 されたものが提供できる。 プロセス課題は , いわば基本仮説の具体的な内容の情報化の作業であり , 何 の援助が最も必要とされているか ( 基本仮説① ) , 固有の素質は ( 基本仮説② , ③ ) , 未開発の素質は ( 基本仮説④ ) , どのようなものがあるかが , やはり口 ジャースによる面接の基本 3 仮説 ( 基本仮説⑤ , ⑥ , ⑦ ) を基盤に探索される。 この探索の過程が , クライエントの自己システム整備としても働き , カウンセ ラーをはじめとした外世界との情報とエネルギーの交換を活性化させ ( 基本仮 説⑧ ) , 生きたシステムとしての活動性を高めることになる。 第 4 位相 : 情報評価 プロセス課題は , 問題解決にかかわる情報に対する各視点を , 構造的 , 立体 的に定位させ総合的評価を定めること。それをもとにして情報の価値を確かめ る行動計画をデザインすることである。情報の統合アセスメントは , まずは D クライエント自身が行う , 2 ) 並行してカウンセラーも独自に行う , 3 ) そ の両者を突き合わせて , 目標の課題解決に照らした両者の相互吟味過程を通し , 現実に即した問題解決のための試行行動計画を立てる。 ここでも , ロジャースのカウンセリング 3 条件 ( 基本仮説⑤ , ⑥ , ⑦ ) が満 たされる必要がある。その上で , クライエントがそれまで自らの内に生産でき なかった情報を自己内に試験的に取り入れてみることをするわけであるが , 明 瞭に取り入れた体験をする必要がある。そこでガイダンスカウンセラーは , 自 身のアセスメントを伝えるときも , クライエントの自己バウンダリーを明確に 保ちつつ行うことが重要である ( 基本仮説⑧ , ⑨ , ⑩ ) 。 第 5 位相 : 試行 プロセス課題は , アセスメントと試行計画において整理されたそれまでの個 人情報と環境情報を , 具体的な活動を通じて確かめ , 実践レベルにおいて問題
13 章カウンセリングの技法構造論と過程理論 167 も意味のあることを考えていたことに気づいたりする。われわれが心の中の内 容物を外に出してみるだけで , その内容物の自分にとっての意味は変化する可 能性が高いのである。ここにはふたつの原理が働いている。ひとつは , 多少の 混乱が生じているシステムから , ある情報エネルギーを外に出すだけで , その システムのエントロピーは下がるからであり , 心理療法の領域ではこれをカタ ルシス効果と呼んでいる。もうひとつの原理もエントロヒ。ーに関係があるが , システム内のある内容物が外に出るということは , その内容物がその個人に よって対象化されることであり , その内容物はその意味を検討する位置に置か れるということである。精神分析学的にいうと , 観察自我が働きやすくなると いうことである。 システムから外システムへの情報 / エネルギーの移動がスムーズに行われて いると , そこにまた並行して面白いことが生ずることを , 精神分析学は発見し ている。自由連想の創造的機能の発見であるが , 自由連想をして内システムの 情報 / エネルギーを外システムへ出していると , その過程において内々システ ムすなわちシステム内の階層性のより下位のサプシステム , 精神分析学でいう なら則意識 , 無意識のサプシステムの情報 / エネルギーが心の内の意識レベル まで上がってくるということが生ずるのである。システムの階層性におけるア イソモルフィーの原理が , 実際に働くのである。 このように , 意味の掘り起こしのプロセスにはふたつの流れがあり , その両 者が機能的には連なっている。システム内からシステム外へ情報 / エネルギー が出されることによる , システム内のエントロピーの低下 , 情報 / エネルギー の対象化による観察自我の活性化 , そして外システムまたは内システムでの新 たな変数による意味の掘り起こしが , もうひとつの流れである。この前者のプ ロセスは , 基礎理論の最初に問題にしたインターの次元における言葉の意味の 展開である。もう一方の流れがその図式でいうならイントラの次元の展開であ り , 内システムの階層システム間の相互作用による意味の発掘と創造の過程で ある。すなわち最上位システムとしての意識システムの変化によって , 前意識 , 無意識の下位システムの情報 / エネルギーが浮上することによる , 潜在し隠さ
13 章カウンセリングの技法構造論と過程理論 171 的位置を占めていると思われる共有仮説を再構成し過程理論の基本仮説とする。 く人格変容に関する基本仮説〉 ①人は誕生から死に至るまで , 外界との間で情報とエネルギーの交換を展 開することで , 自己システムを体制化し , 外界との適応的関係を発達させ る ( システムズ理論 ) 。 ②人格構造のシステムは , 外界の特に成長過程における重要な他者との間 の交流 ( 情報とエネルギーの交換 ) , 換言すれば愛と働く能力の交換によっ て , 発達する ( 精神分析発達論 ) 。 ③人格構造の変容 , 修正は , 深い人間関係の中での心理作業によって可能 であり ( 精神分析転移理論 ) , 他者との真の出会いが自己との出会いを可能 にし自己構造の修正 ( 来談者中心療法 ) や , 問題の反復強迫を生んでいた 情動反応バターンの変容を可能にする ( 精神分析 ) 。 く人格変容を促進する基本仮説〉 ①自己実現能力を起動するものは , 自己過程のための絶対的に自由な空間 の保持であり , 人格構造の再構成を起動する基礎は , 主体者の自由反応空 間と自我による自己システムの検討 , 再統合機能を補助する中立的媒介者 にある。 ②人格変容を進める作業は , 慣れ親しんでいるそれまでの自己を保持しっ っ , それからの一定の距離を持ち , かつ新しい自己のイメージを保持する ことのできる中間領域を作ること , そしてそこでの徹底した納得のいく自 己選択のための検討をすることにある。 ③人格変容の作業の展開を妨げるものは , 古い自己に対するこだわりであ り , それとの別れ難さである。人格変容のための作業は , 繰り返し繰り返 しの別れの作業をすることであるが , それは新しい自己と対象の発見とそ の内在化によって可能となる。 〔 d 〕基本過程 カウンセリングの標準過程を , 臨床実践の具体的作業および現象の生起をも とに , 主として来談者中心療法と精神分析的心理療法をベースにして中立な用
8 章心理カ動論 : PAS 理論の基礎 95 情報である。したがってシステムの安定性は , その構成成分であるところの情 報とエネルギーのシステム内の組織性 , 秩序性にあるということができよう。 ェントロピーとは , それら情報とエネルギーの秩序性の乱れの測度である。 くバウンダリー〉 われわれは , 個人として他の個人と区別されるし , 同時に自分が所属する仲 間集団や組織とも個としての一線を画する。そしてその個の尊厳は , われわれ の社会では , 基本的人権として相互に保証し合う約東ができている。この一線 を画する , 自他を区別する「境」を , システムのバウンダリー ( 境界 ) という。 人は , この他と一線を画するバンウンダリーを保持することによって , 独立し た個として存続することを可能にしている。そしてそのバウンダリーは , 個と しての自分にあるだけでなく , 自分で自分の心が分からなくなるように , 自分 の心のサプシステムにもあり , 自我はその防衛を強くするときには , そのバウ ンダリーを固く閉じて何物にも心を開かなくなるし , 自分でさえ自我が守って いる心の奥に踏み込めなくなる。つまりバウンダリーは , 「固有のシステムを 固有たらしめるものであり , しかも状況に応じて , システム間を移行する情報 やエネルギーの量を制御する働きを持っているものである」。 バウンダリーを通過する情報やエネルギーの量の調整をするこの働きが , ウンダリーの , 個の存続機能に次ぐ重要な機能であり , この調整機能には , 各 種システムに共通する普遍原理があることをシステムズ理論は見いだしている。 それは , バウンダリーの透過性とシステム内秩序との関係に関する原理であ る。バウンダリーの透過性とは , 情報やエネルギーがシステム間移動をする際 のバウンダリー通過の許容度の高低をいい , バウンダリーの機能としてはバウ ンダリーの開放 (open), 閉鎖 (close) という言葉で表す。つまりシステムは , 自分を外界と区別するバウンダリーを開放し , 情報・エネルギーの通過量を高 めたり , 逆に閉鎖し , それらの通過量を制限し抑制する機能を働かせて , 外界 との交互作用を行い , この作用によって自分を生かし , 成長させ , また時には 外界の過大な刺激から自分を守り , 態勢を整えるための引きこもりをしたりす るということである。
156 第Ⅳ部技法論 の内的課題を発見する人もいるし , これらの作業がカウンセラーの伴走によっ て成し遂げられた面が強く , カウンセラーを失うことに新たな不安を引き起こ す人もいよう。通常そのような課題は第 6 位相において明確化されるものであ るが , 多くの場合 , 情報探索から評価のアセスメント段階で確認され , カウン セリングやサイコセラピーの適用が検討されていることが多い。この時点まで 問題が持ち越される場合の多くは , 基底に依存性の問題が潜在している。依存 性の問題は , 個人の発達の本質的部分であり , その問題に向かい合う抵抗のた めにガイダンスを利用する人もいる。そのような人は , 1 件の問題が終わって もまた次の問題を持ち込み , カウンセラーを保持し続けようとするであろう。 本質的問題が取り扱えるよう , ガイダンス過程のバウンダリーを明瞭にするこ とが大事であり , カウンセリングにつなぐにせよ , 問題の明確化で治めるにせ よ , ガイダンスとしての終結は明瞭にすることが肝要である。 〔 c 〕基本技術 ガイダンスカウンセリングにおける面接は , その機能の本質が , すでに述べ たようにシステム間の情報整理にある。しかもその作業を行う主体はクライエ ント自身であるから , 繰り返しになるがカウンセラーの役割は , 決して代わっ てその作業を行うことではなく , 伴走コーチであり , ガイドである。したがっ てコーチあるいはガイドとしての , その領域における全般的知識を基盤に , 情 報 , 知識の収集法 , その分析・統合法および使用法に長けている必要がある。 そしてそれらの自らの知識や能力を , クライエントに押しつけたり , 機能の肩 代わりをしないで本人の成長のためにむしろ禁欲的に抑制し , クライエントの 探索活動の展開に即して , クライエントのバウンダリー機能に自律性が見いだ せるときには積極的な情報提供も行っていく。したがってガイダンスカウンセ ラーに最も必要な技術は , コーチもしくはガイドとしての情報処理とコミュニ ケーションに関するものである。 情報処理には , いうまでもなくインブット , 処理 , アウトブットの 3 位相が ある。インブットは , 情報収集技術とそのための基礎となるコミュニケーショ ン技術からなる。具体的技術は , アセスメントとカウンセリングに重なる。同
第Ⅱ部基礎理論 かく ) 。 M ( 沈黙 ) 。 IP ( 沈黙 ) 。 Th ()P へ ) 「聞いて欲しいことがあれば・・・」 32 込む。その結果限られた範囲の情報だけを扱うことで満足してしまうことにな 療者自身が必要な情報と不必要な情報の区別がっかない , 情報のカオスに落ち る。もしこの活用の目的性があいまいであったり , 不明確であるとたちまち治 し蓄積した情報をどう活用するか , その目的を最初にはっきりさせることであ は蓄積された情報なしには完成されない。しかし大切なことは , 治療者は収集 家はそれぞれ自分の治療システムの設計者である。もちろん効果的なシステム にとっての最適な意味レベルを構築することである。この点では , 個々の臨床 に置いて見るものである。治療者にとって治療システムとは , 技術的には自分 人は観察するとき , 自分にとって最適の最大の快適さをもたらす意味レベル 療〉である。 そして第 3 は , 来談者より低い視線で上記 2 つの視線を支えるく観察する治 療〉といえる。これは教育訓練などで活用されるスーパービジョンも含める。 治療の経過を客観化するために , また自己洞察を深めるための〈付け加える治 療〉であり , それは治療そのものである。第 2 は , 来談者よりは高い視線で , 合して仕事をしている。第 1 は , 来談者と同じ高さの視線で相手をく変える治 う , 共通した専門的な姿勢をもつ。さらに心理療法で専門家は 3 つの視線を統 ず , 治療者は常に間接的関与で相手に直接的な効果を作り出す試みをするとい るありふれた事実を記載しているにすぎない。すべての心理療法は技法を問わ この例は評価するために記載したのではない。多くの面接場面で発生してい をみる , あくび ) 。 ス ) , Th 「何かいいことを探してください」。 M ( 時間をメモ ) , IP (M 書くの いてください」 ( 次回の予約 ) 。 M 「・・・・・・ 10 時なら大丈夫です」。 IP ( リラック ( 失望肩落ちる ) , IP ( 分離。外を見る ) Th 「何かわからないことがあったら聞 こでこの経過は最終局面で Th 「こういうことを覚えておいてください」。 M めない」 ( 右手で服 , 胸 ) 。 + + + ここでは面接内容を問題とはしていない。そ M ( じっと待っ ) 。 IP 「・・・別にない」。 Th (M みる ) 。 M 「この子がうまくっか