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検索対象: ガイダンスとカウンセリング : 指導から自己実現への共同作業へ
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1. ガイダンスとカウンセリング : 指導から自己実現への共同作業へ

215 あとがき 本書は , 教育・心理臨床の専門書であり , この領域の専門的仕事に関心を持 つ人々のためのテキストである。ただし本書が臨床学の専門書であるというこ とは , 仮説体系の書であるということであり , さらにこの後も経験科学として の臨床実践を通じて , 資料の集積を重ねる中で理論が推敲されていく途上にあ るものであるということを意味する。 私 , 編著者は , ここ 20 年余りガイダンス , コンサルテーション , カウンセ リング , サイコセラピーの仕事をそれぞれのポジションで行ってきた。病院サ イコロジストとして心理テストを軸にしたガイダンス , コンサルテーション , 次いで精神療法中心のサイコセラヒ。スト , 修学相談のガイダンス , コンサル テーションからカウンセリング , サイコセラピーに至る学生相談 , 同じくガイ ダンス , コンサルテーション , カウンセリング , サイコセラビーのそれぞれを 求められる企業の社員相談 , ガイダンス , コンサルテーション , スーバービ ジョンが中心の専門機関における専門職員の職能相談といった具合である。本 書の他の執筆者は , それらの種々の仕事の場での師であり , 仲間である。受け てきた教育や訓練を基礎にし , それぞれ学術的な基本学派の理論に依拠しなが らも , 自分自身の臨床理論を構築しておられる師であり , その研究 , 研修に励 んでいる仲間である。われわれの経験知は , その臨床的妥当性が絶え間なく問 われ , 効果性が吟味された上で構成される。そしてその集積が , われわれ心理 臨床家のそれぞれの立場の技法論を構成することになる。 本書では , 初頭に提示した課題を追う目的で , 著者自身の受けた教育・訓練 と積んできた経験をもとに , 技法論の基礎体系を整理する試みをした。わが国 の多くの著書は , それぞれの各論の専門家によって書かれた並列的理論によっ て全体が提示されることが多い。しかも各立場の理論情報が豊かな今日 , ーっ の立場から技法全体を見通す試みは , 自己愛者の暴挙のように思われるか , 狭

2. ガイダンスとカウンセリング : 指導から自己実現への共同作業へ

121 1 0 章人格理論とアセスメント ここで問題とするのは , いわゆる一般心理学における人格理論ではない。ま だわが国では正式の講義として行われているところは少ないと思われるが , 臨 床人格理論を問題にする。これまでのカウンセリングおよび臨床心理学におけ る人格理論は , ほとんどテスト法の関連かもしくは病理の関連でのみ扱われ , データ整理のときに利用されるのが主であり , 日々の臨床面接や教育活動にお いて利用するには使い勝手が悪いと見られることが多かったようである。臨床 人格理論は , その意味で , 臨床面接の展開に直接役立っ理論の構成を指すもの であり , 面接の組み立てや , 面接を展開しながらのアセスメントに使える理論 の再構成を行った体系のことである。 10 ・ 1 人格理論の構造 人格理論は図 10 ・ 1 のように , 縦軸と横軸で構成される。縦軸は , 人格が形 成される発達の軸であり , 横軸はその発達の過程の任意の時点における人格の 構造とその人格全体の機能を説明する理論である。 発達および人格構造 , 機能についてそれぞれの基礎を述べてきた。本章では , ↑ 人格構造 / 機能 図 1 0 ・ 1 ↑ 発 達 誕生 人格理論の構造 それらのまとまった歴史的結果としての人格 の型を整理し , そのアセスメントの方法とそ の臨床的な積極的利用法について述べる。そ こで臨床人格理論を整理する上で重要な柱と なる理論が , 3 つある。 3 大心理療法理論と されている精神分析理論 , 行動療法理論 , そ して来談者中心療法理論である。精神分析理 論は , すでに述べたように , その理論の大き な柱が発達理論と人格構造とその機能の心理

3. ガイダンスとカウンセリング : 指導から自己実現への共同作業へ

122 第Ⅲ部運用理論としての人格理論 カ動におかれていることからも , 臨床人格理論においては中軸的内容を提供す るものである。行動療法理論は , 行動形成の仕組みを実証的に明らかにし , 精 神分析学のメタ心理としての人格理論を強く批判したが , これもすでに述べて きたように , むしろ自然科学的因果論の特徴を持っていることから精神物理学 的精神分析の流れとは融合しやすく , 大きな人格理論のシステムの中では , お 互いによくかみ合う。また来談者中心療法も , 前章で論じたように対象関係論 とのなじみが良く , これもかみ合いは悪くない。 3 大理論を基盤に置き , システムズ理論を運用コントロール理論として用い , パーソナリティーの類型論を , 機能的連用論に近づけてみよう。 10 ・ 2 アセスメントとバーソナリティースタイル理論 個々人のパーソナリティーは , 本来 , 非常にユニークなものであるから , 分 類することがそもそもふさわしいことではない。したがって分類することも難 しいが , 分類したところで , それを実践の教育や臨床の場で生産的に用いるこ とは , よほど熟練した臨床家でなければ難しい。この意味において , かって口 ジャースが診断に反対したことは当を得ている。余分な時間を取り , 調べる側 と調べられる側の関係を規定し , やっと取った資料は直接に生産的には利用で きないばかりか , クライエントの今ここでの理解をくもらせてしまうとすれば , 確かに百害あって一利なしである。 著者は , カウンセリング , 心理療法の面接によるアセスメントをミロン (Millon, 1981 ) およびカーンバーグ (Kernberg, 1984 ) の理論を基礎に , チョ カ (Choca, 1980 ) にならい , 積極的に使える機能的理論として実践に使い , システムズ理論を用いて理論の再構成をして , 発展させつつある精神分析的シ ステムズ理論に組み込んできた。面接によるアセスメントが可能な理論体系と して , 以下に改めて整理してみる。 パーソナリティースタイルの定義 個人の行動 , 対対象反応は , 状況によって変化していく面があるが , 本来 パーソナリティーの概念は , 状況の変化によっても変わることなく , その個々人

4. ガイダンスとカウンセリング : 指導から自己実現への共同作業へ

目 次 9 ・ 2 発達位相モデル・・ 9 ・ 3 教育・心理臨床ノートとしての発達的視点・ 人格理論とアセスメント 10 章 10 10 ・ 2 10 ・ 3 10 1 1 章 12 章 12 ・ 1 12 12 12 12 13 章 14 章 ・ 4 ・ 1 人格理論の構造・・ アセスメントの留 ~ 音占・・ アセスメントとノヾーソナリティースタイル理論 機能理論としての有用性・・ 第Ⅳ部技法 シャーロック・ホ ・ 1 プロとアマ・ 1 1 ・ 2 プロの要件・ 11 ・ 3 推理の学・・ ームズにみる専門性・・ ガイダンスの技法構造論と過程理論 ・ 2 ・ 3 ・ 4 ・ 5 ガイダンスの必要性・・ ガイダンスの意味と目的・・ 領域・・ 技法構造・ 成果・ カウンセリングの技法構造論と過程理論 13 ・ 1 カウンセリング理論のシステムアップ 13 ・ 2 基礎理論・ 13 ・ 3 技法構成・ 13 ・ 4 成果・・ 第 v 部効果の意味 ガイダンスの効果 14 ・ 1 病院臨床場面での実際・・ 5 ・ 106 ・ 121 ・ 177 ・ 177 ・ 176 ・ 169 ・ 160 ・ 159 ・ 159 ・ 157 ・ 149 ・ 149 ・ 147 ・ 145 ・ 145 ・ 143 ・ 139 ・ 135 ・ 135 ・ 132 ・ 130 ・ 122 ・ 121

5. ガイダンスとカウンセリング : 指導から自己実現への共同作業へ

160 第Ⅳ部技法論 ことを意味する。また , かってはアイゼンクが精神分析をこっぴどく批判し , ロジャースも精神分析を彼岸において独自の療法を打ち立て , かっスキナー (Skinner, B. F. ) との間に大論争を展開し , 行動療法と対立した経緯がある。 3 者は互いに排斥的な関係にあった。しかし今日では , 3 領域の相互作用が認め られ , 臨床理論と技法においての交流は , 無理なく展開され始めている。 一方カウンセリング理論における学派としての人格理論と技法は , それぞれ の一貫性と体系性があり , 安易に崩せるものではないし崩すべきではない。前 章において , 著者が開発 , 展開しつつある精神分析的システムズ理論 (PAS 理論 ) の基礎を提示し , その理論構成によると , 各学派の独自性を壊すことな く , ネットワーキングのできることを示した。ミラーによってアイデアが出さ れ (MiIIer, 1955 ) , わが国においてはいまだかって顧みられることのなかった 一般システムズ理論であるが , カウンセリング心理学内の長年にわたる作業領 域の分裂に対して , 新たな連携 , 統合の実務的機能論を展開するときがすでに 来ていると考える。その具体的な第 1 歩として , ここでは , PAS 理論を基盤 に , 3 大理論をそのまま生かして , カウンセリング理論を実践的にシステム アップする技法構造論と過程理論の構成を提示する。 13 ・ 2 基礎理論 〔 a 〕インターとイントラの関係 図 13 ・ 1 の第 2 次元を指す「インター」 , すなわち対人関係のカ動 , 第 3 次 元を指す「イントラ」 , すなわち精神内カ動の , 両者の関係を知るうえで優れ たストーリーを提供してくれているのが , イソップの有名な「キツネとブド ウ」の話である。 豊かに実ったブドウの房が , ブドウ棚のつるにたわわにぶら下がっている のを , お腹のすいたキツネが見つけた。キツネは , しめたとばかりあらん限 りのカでジャンプしプドウを取ろうとしたが , ブドウは彼のジャンプカの及 ばぬ高さにあった。勢いよく取りにいった彼の試みは , 空しい努力に終わっ

6. ガイダンスとカウンセリング : 指導から自己実現への共同作業へ

10 章人格理論とアセスメント 本来 , 状況の変化によっても変わらない個人の本質的属性を , 133 ハーソナリ る。たとえば , シゾイドを例に取るなら , このスタイルが優勢であれば , 「人 ろう。この理論は , その対応の具体的素地を提供していると見ればよいのであ 現化されれば , 受容や , 共感のかみ合いが生まれるかが容易に想定できるであ タイルが起動しているのが認められれば , カウンセラーのどのような対応が具 知・行動 , 情緒 , 対人関係によって整理してある。したがって , それぞれのス パーソナリティースタイルの構造を , 認 理論は , 3 大理論の特徴を軸に 体系化して紹介したい。ここでは , 以下の原理を指摘することにとどめておく。 の人格構造への変化を促すことができる。このことは技法論として稿を改め , 刺激していく介入を体系的に進めていくことによって , 彼らに新しいバランス 発達的資料や , 。今ここでの " 関係資料から , 潜在しているスタイルの起動を 化している人格障害の心理治療において顕著に有効性を発揮するものであるが , とができる。その技法は , 起動するスタイルが限定され片寄っているのが常態 たが , このような機能論を生かせば , 介入はより積極的に開発的に展開するこ までの臨床理論は , 変化に対しての心理臨床的介入は基本的に受け身的であっ かりではなく , 臨床理論としての直接的効用がある。行動療法を除いて , これ このシステムズ理論に基づく機能論は , これまでの理論的矛盾を解決するば れているのであ。 の要素スタイルのシステムが起動するかによって , 変化するものとに理論化さ なっている。つまりここでの人格特徴は , 静的に固定されたものではなく , と ークな組み合わせとして見るわけであるから , 変化を説明できる構成概念と は , どの基本スタイルが起動し顕在化しているか , 起動しているスタイルのユ ているとみなしている。その上で人格機能のひとまとまりの特徴としての性格 は個人の人格形成の過程においてそれぞれの要素スタイルが内在化され潜在し しかしここで再構成したわれわれのパーソナリティースタイル理論は , 普通 説明は不可能となる。 1964 ) が指摘したように , 人格変化は理論的にはあり得ないものとなり , その ティーと定義するのであるが , その定義に従えば , ジェンドリン (GendIin,

7. ガイダンスとカウンセリング : 指導から自己実現への共同作業へ

35 3 章人間性心理学的基礎 3 ・ 1 人間性心理学の成り立ち 人間性心理学は , それまでの心理学の 2 つの大きな流れである行動主義理論 と精神分析理論に対する批判として , いわば心理学上のルネッサンス的な動き として 1950 年代の米国を中心に台頭し , 心理学における第 3 の勢力として展 開してきた。人間性心理学の流れのなかで大きなものは , 米国における Hu- manistic psychology の流れと , ヨーロッパにおける現存在分析・実存分析 の流れである。 Humanistic psychology についてみると , 当時米国では行動主義理論が支 配的であり , その中心にある実証主義の論理志向は , 人間を機械形態的存在 , 決定論的モデルとしてとらえる傾向に陥っていた。 Humanistic Psych010gy は , そういった実験的操作的心理学に対して , フッサール (Husserl, E. ) やハ イデッガー (Heidegger, M. ) などの影響の下に現象学的方法を主張し , 内的 な自己実現傾向や , 価値指向性といったものを持った自立的・創造的存在とし ての人間観を提唱した。それらの初期の代表的理論家が , マズロー (Maslow, A. ) やゴールドシュタイン (Goldstein,K. ) である。 ゴールドシュタインはその理論において , 人間を有機体としてのゲシュタル トとしてとらえることに着目し , 人間を規定しているさまざまな動因の中で唯 一基本的なものとしての「自己実現傾向」というものを提唱した。それにより , 旧来の人間の存在 , 欲求を分化し , 無機的なモデルに還元してとらえる行動理 論や精神分析学の限界に対して , 人間性心理学的な , 新しい人間観 , 人間論の 視点をもたらした。その有機体理論の流れをくんで新しい基本的欲求と成長動 機の理論を切り開いたのがマズローであり , 有機体理論の影響の下で独自のカ ウンセリング理論を展開したのがロジャース (Rogers, C. R. ) である。

8. ガイダンスとカウンセリング : 指導から自己実現への共同作業へ

120 第Ⅲ部運用理論としての人格理論 この臨床発達ノートは , いうまでもなく , 前章の心理カ動理論に連なり病理 発達や自己実現過程の理論にさらに展開するものである。また次章のノヾーソナ リティースタイルの形成理論にも連なる。本書ではそこまで触れないが , 本書 の理論構成の吟味を重ねたうえで , 続いて執筆する技法論の基礎として , それ らの理論のさらなる展開を整理するつもりである。 1 ) 2 ) 3 ) 4 ) 5 ) [ 小谷英文 ] 引用文献 Erikson, E. H. , e 厩″ ) れ d the ん Cycle ; selected papers in psychological issues, lnt. Univ. press, 1959. ( 邦訳 , 小此木啓吾訳編『自我同一性』誠信書房 , 1973 ) Guntrip, H. J. S. , Ps c ん〃た T ん eo T ん e 2 ) , 0 れ d the Self, Basic B00k, 1971. ( 邦訳 , 小此木啓吾 , 柏瀬宏隆訳『対象関係論の展開ーー - 精神分析・フロイト以 后 - ー - 』誠信書房 , 1981 ) Mahler, M. S. , Pine F. , Bergman A. , The Psych010gical 召耘肱 0 / the 〃″襯 0 〃加厩 , Basic Books, 1975. ( 邦訳 , 高橋雅士他訳『乳幼児の心理的誕生ーーー母子共生と個体 』黎明書房 , 1981 ) 化 小谷英文『カウンセラーのための応答構成』日本精神技術研究所 , 1981. 小此木啓吾 , 「解題」 , 前掲 1 ) 邦訳書 , pp. 237 ー 315.

9. ガイダンスとカウンセリング : 指導から自己実現への共同作業へ

第Ⅲ部 85 運用理論としての人格理論 8 章心理カ動論 : PAS 理論の基礎 心が生きているということを , 心の保持者であるわれわれは , 経験的によく 知っている。よく知ってはいるが , その生きている心をどうとらえ , どう描い てその様子をお互いに伝え合うかということはなかなか難しく , 古来よりそれ は芸術家や文学者の秀でた表現能力に頼るのが常であった。しかしそれらの芸 術や文学は , 鑑賞の対象となることが多く , われわれはそれらを味わい , 自分 の代理表現に酔い , 共感して多くの情緒体験を得るものの , それによって日々 の生活の中の , 生きた心にかかわる手立てが得られるわけではない。 心理学 , 中でも精神分析学の流れにある心理学は , この生きた心をどうとら えるかということに多大な研究努力を傾注しているものである。この生きた心 の動きの原理やメカニズムのことを , 心理カ動という。ここでは , 精神分析学 を中心に置き , 一般システムズ理論の積極的導入により , 人間性心理学 , 行動 科学論との連携のうえで , ガイダンスおよびカウンセリングにおける人間関係 および自分との出会いの探検に必要な理論道具としての心理カ動論について , その基礎概念を整理する。性格の持っ心理学的意味 , 人格構造や機能の理解 , さらに人格の成長について考える際の理論的基本軸を提示しよう。

10. ガイダンスとカウンセリング : 指導から自己実現への共同作業へ

90 第Ⅲ部運用理論としての人格理論 えて , 定位しておく。自己に内在するく自己駆進能力〉である。精神分析は , 元来 , 神経症病理の分析によって理論体系を構築してきたことから , 人間の自 己実現的営みについての理論化は注目してこなかった。そのために 1970 年代 に人って , 一般システムズ理論との出会いの際 , その理論体系は閉鎖システム としての弱さを有していると批判された。その流れは日本には紹介されること なく , 自己の積極的成長傾向は , 共感 (empathy) の強調とともに「自己心理 学」に託されたようであり , それが今日の自己心理学プームの到来を招いたよ うに思える。著者はそれとは別に , Humanistic Psychology の大きな流れを 作ったロジャース (Rogers, carl R. ) の自己駆進 (self- pr 叩 eled) 的能力の概 念をシステムズ理論の心理学的概念として採用した。それはロジャースの理論 をさらに発展させたジェンドリン (Gendlin, Eugine T. , 1964 ) の体験過程 (ex- periencing) の中に包含されているものでもある。精神分析学の中では , ハル トマン (Hartman, H. , 1959 ) の葛藤外の自我領域の機能として論じられている 側面をもっと積極的に概念化していると , 理解されるであろう。 この能力は , 人間が自ら学習しつつ発達する , 換言すれば自分で自分を育て るべく , 喜び進んで新しい体験に取り組む動因が DNA の中にあらかじめ組み 込まれているという仮説によっている。そのことを表す顕著な例を , われわれ は幼児の新奇な世界への飽くことのない冒険心と探検心 , そして失敗しても失 敗しても歩く練習をやめないその姿に見ることができるであろう。 また「結局は本人のやる気次第」という , よく使われる言葉がある。その意 味するところは , その時々に応じて必ずしも一様ではなく , 関係者の半ば諦め の気持ちを込めて使われるときもあれば , それこそ本人の主体的なかかわりの 成果を讃えて使われるときもある。これはどういうことかと考えてみれば , こ こで著者の提出している「自己駆進」の意味は , おのずと明らかになってくる であろう。実際に , われわれの創造的仕事は , 自らが進んで主体的に動き始め たときにこそ起動し始める。それを , 著者のいい方に直してみると , 本人がや る気になったとき , それはその個人の自己駆進のプロセスがまさに起動したと きだということになる。われわれは , 自己内のエネルギーを必要以上に先に整