聞こえる - みる会図書館


検索対象: グリーンベンチ
27件見つかりました。

1. グリーンベンチ

215 向日葵の柩 金宮は傘を奪い、スクラップの上に放り捨て、栄貴をスクラップの陰に連れて行き、 押し倒す。 栄貴助けて ! お兄ちゃん ! お兄ちゃん ! 助けて ! 助けて ! 金宮の強引な接吻で栄貴の唇が塞がれる。 暗転。 服が引き裂かれる音がし、栄貴の絶望的な悲鳴が聞こえる。 おえっ そして、栄貴の悲鳴は短い嗚咽になり繰り返される。 シーン四金宮と栄敏 Part3 〈夜の街〉 韓国の懐かしいメロディーが遠くで聴こえる。 ( 遠いのだが、シーン 8 の時よりは近くなっている ) くらやみ とも 暗闇の中、・ほうっとハングルのネオンサイン ( サラン ) が灯る。 せつぶん ふさ

2. グリーンベンチ

220 シーン朝鮮女の服の紐 Part2 〈鉄屑置き場〉 秋風に乗って栄貴の甲高く泣き叫ぶ声が戻ってくる。 青白い血のほとばしりのような月が照っている。 月の光で青く洗われた鉄屑置き場。 あと トタンが傷口に残った白い縫い痕のように見える。 遠くから猫の鳴き声が聞こえてくる。 かす うめ スクラップの陰から栄貴の幽かな呻き声が聞こえる。 ふらふらと栄貴が立ち上がる。月の光を浴びてその眼差しは空虚に透き通っている。 手探りをするように両手を前に突き出したまま歩いて、スクラツ。フにつかまる。 足を止めて、少し呻き声をあげながら立ち尽くす。 栄貴のロの端には凝固してどす黒くなった血がこびりつき、髪はばらばらに乱れて 顔に垂れ下がっている。上半身には何も着ていない。 猫の鳴き声が聞こえる。 まなざ

3. グリーンベンチ

239 向日葵の柩 栄敏ルイだ。 栄敏はルイの鎖を持って外に出る。 夜空には月が昇っている。 コオロギの声が時計仕掛けのように絶え間なく聞こえてくる。 栄敏の思いは凄みを帯びて流れている。 シーン囹永玉と栄敏 Part3 〈鉄屑置き場〉 右手に犬の鎖をぶらさげて、栄敏はロ笛を吹きながらスクラップの上に腰を下ろす。 まるで夢の中のように永玉がやってくる。 永玉は当たり前のように栄敏の横に腰を下ろす。 栄敏がロ笛を吹いたまま、自分の方を見ようとしないので、永玉は哀しそうな表情 とおぼ どこからか犬の遠吠えが聞こえる。 すご

4. グリーンベンチ

136 シーン 4 不在 Part2 〈李家の居間〉 ゅうやみ 李家の居間はタ闇に落ち込んでいる。 時計の秒針の流れる音が栄敏の耳に鋭く突き刺さる。 栄敏は自分が息苦しくなりそうだということに気づく。 お、つと 嘔吐をもよおしそうなときのように、息が苦しくなりかけているのをはっきりと感 じる。 季節はずれの風鈴の音が聞こえる。 栄敏は数学の参考書を開き、難しい数式を解き始める。栄敏の頭の中で風鈴の音と いたずら 時計の秒針の音が強まる。栄敏は冷汗をかき、しきりに汗を拭いながら悪戯がばれ つぶや て母親の前で言いわけをする子供のように、もごもごと方程式を呟いている。 栄敏は風鈴を軒下から外し、ポンポン時計を壁から外し、掛け布団を時計にかぶせ 音が聞こえないようにする。それでも栄敏は息苦しい。彼の呼吸する空気はどこに もないようだ。 数式の答えは出ず、代わりに栄敏の口から笑い声が出る。笑い声は栄敏の口から出

5. グリーンベンチ

217 向日葵の柩 栄敏今日は遅い出勤だな ? 金宮遅刻だ。 金宮は苦しげな溜め息を吐く。 金宮じゃあな。 金宮は足早に立ち去る。 シーン朝鮮女の服の紐 Part1 〈夜の街〉 遠くから男と女がもつれあうように歩いてくる。 女の笑い声が聞こえる。栄敏はその女の笑い声に聞き覚えがある。 その女は白い花びらのようなチョゴリを着ている。白いチョゴリの紐がひらひらし ひも

6. グリーンベンチ

162 申 ( 韓国語で ) これ、もう一本 ! 、水玉は、。 永玉は立ち上がり、カウンターに向かう。 そこへ、栄敏が人って来る。 永玉と栄敏の視線が絡む。 ( この一瞬、照明は少し変えるとよいだろう。栄敏と永玉以外の人間は飲んだり、笑 ったりしているのだが、この一瞬だけは静かに ) 最初に絡んだ視線を断ち切るのは永玉である。 永玉はカウンターの中に入る。 ( ここで一同の笑い声が人る。これまでよりも、ひときわ高く聞こえる ) 栄敏は一同に近づく 申 ( 驚く ) ああ、 ( 韓国語で ) びつくりした !

7. グリーンベンチ

132 用件をどうぞ」 発信音の後、電話のモニターから、栄敏の高校時代の友人の声が聞こえてくる。 留守番電話「えーっと : : もしもし : : : 元気ですか ? 武司です」 栄敏は慌てて受話器をとる。 栄敏 ( 異常に明るく、早ロで ) 武司 ? ああ : : : ちょっと : : トイレ入っててさ : おれ ・ : 俺 ? : : : 一兀気。ハ当 ハリだよ ? ( 笑う ) すっげえ、久しぶりしゃない ? : え ! 一一一年 ! : : : もうそんなかよ ! ・ : お前、何してんのフ えっ : : : 大学 ? ( 声が少し曇る ) ああ : : : そうだよな : : : 慶応だったよな : 。元気 ?

8. グリーンベンチ

23 グリーンべンチ 泰子陽子、明から聞いたでしょ・ 陽子 ( サンドイッチを喉につまらせ、咳き込みながら ) 何を ? 泰子川島と別れたこと。さっき、明、ネットんとこで陽子に話したでしょ ? ママは聞こえなくても何を話してるかなんて分かるのよ。 陽子と明、曖昧な表情をする。 泰子ママはね、全然落ち込んでなんかないのよ、かえってせいせいしたくらいよ。ママ には、新しい生活の計画があるんだから : 陽子 ( 恐る恐る ) どんな ? かす 泰子 ( 幽かに微笑んで ) ねえ、オレンジの花が咲くのは九月だったかしら ? 明えフ 陽子オレン : 泰子の微笑は幽かであるけれど、それは木を揺すって通る風のように彼女の全身を わななかせる。

9. グリーンベンチ

134 栄貴は兄の顔をじっと見詰めているが、立ち上がって外に出て行く。 栄敏おい 栄敏は壁に掛けてある犬の鎖を、立ち止まった妹に手渡す。 栄敏鎖を放さないように注意しろよ。 シーン 3 栄貴と九官鳥 Part1 〈家の前の通り〉 栄貴は犬の鎖をぶらぶらさせながら外に出て、鉄屑置き場の前を通り過ぎようとす る。 鉄屑の山に鳥籠が捨てられている。鳥籠の中から幽かなはばたきの音が聞こえてく る。 栄貴は気づかない。 とりか 1 」 かす

10. グリーンベンチ

陽子まあね。 よっ。ほど大事な用がなぎやこないもんな。ホレーする ) 陽子あっ ! 陽子、明がポレーした球を打ち返すのたが、ネットにひっかかる。明、ネットにひ つかかった球を拾いあげる。 陽子、明に近寄る。 陽子 ( 泰子に聞こえないように ) ママ、なんでテニスやろうなんて言いだしたんだろ う ? それに此処、学校のテニスコートでしょ : : : ? 日曜だからって勝手に使っ チ明ママ、昔つから、このテニスコート の前を歩くと、立ち止まって女学生がテニスや ってるの眺めてたじゃないか。 「私もあそこでテニスしたいわあ」ってさ : グ それがさあ、半年前にテニスラケットを買ったんだよ。 ( 姉が使っているテニスラケットを指さして ) それだよ、それ : : : 。俺が学校から おれ