政治的 - みる会図書館


検索対象: 仏教のこころ
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1. 仏教のこころ

宗教と政治は明確に分離されるべきものか 今日、精神的な人たちは、宗教が政治によって脅かされていることに対して不満を表明 しています。というのは、彼らは、政治によって倫理が犯されるのを不安に田 5 っているか らてす。彼らによれば、宗教の純粋さがそれによって汚されるというのてす。しかし、こ の考え方は、おそらく矛盾しています。 本来すべての宗教は、人間のためにあり、人間を救うためにあります。政治と宗教を明 確に分離してしまうことは、社会的な利益を追求するための強力な手段を棄てさることて す。宗教と政治は、それぞれの立場を主張しつつも、正しい倫理的概念によって鍛えられ たとき、人間の利益のための有効な組合わせとなるに違いありません。 教 仏 倫理と政治との相関関係の中て、もし政治家が、さらに深い道徳的な信念を持つならば、 人 代 人類およびその社会は、飛躍的な利益を得ることてしよう。宗教や道徳は政治に関係がな現 章 いと老ノえたり、 宗教を信じる者および道徳を守る者は政治から遠ざかるべきだと考えるの 第 は、おろかなことてす。

2. 仏教のこころ

なった社会を改善しようとする努力が、これまて幾度となく試みられてきました。そして間 これらの社会的問題に対処するため、高邁なイデオロキーが確立されてきました。こうし た趣旨や目標そのものは賞讃すべきものてしたが、不幸にもこれらの考え方は、人間に付 随する利己主義によって打ち負かされてしまったのてす。 今日、正しい倫理、正しい道徳原理は、悲しいことに利己主義の陰に隠れてしまってい ます ( 特に政治分野においては顕著てす ) 。倫理および道徳原理を欠いた今日の政治状態を まのあたりにみて、道徳的な人のなかには″政治にはロをはさむな〃と主張する人もいま すが、これは誤っています。 なぜならば、倫理を欠いた政治は、人間およびその社会に対し、なんら利益をもたらさ ないばかりか、道徳心のない生活は人間を野獣と化するからてす。本来の政治的概念とは、 今日汚れたものと見られている政治とはまったく異なったものなのてす。 残念なことに、私たちの政治文化がそれを変えてしまいました。政治家たちの利己主義 が、本来私たちの社会に利益をもたらす素晴らしいものてあるはずの政治概念をゆがめて しまったのてす。

3. 仏教のこころ

こうした考え方が生まれるのは、私たちの生活における政治の重要な役割をよく認識し囹 ていないからてす。強力な道徳倫理は、宗教を信じる者と同じように、 政治を行なう者に とっても重大なのてす。 なぜならば、政治家たち、およびそれを支配する者が、道徳的倫理および信念を忘れた 時、危険な結末が予想されるからてす。私たちが信仰者てあるか不可知論者てあるか、あ るいは神を信じるかカルマを信じるか、 に ~ 関係なく、道徳的倫理は、誰もが追求するこ とのてきる規範てあり、理法てあります。 私たちは、道徳、あわれみ、ヒューマニティのような、人間的な性質を必要としていま す。この必要を満たすためには、あらゆる努力が真剣になされなければなりません。物質 万能主義ては、道徳や人間性はけっして育たないという考え方に立つべきなのてす。 現在の教育システムは変革されるべきだ さまざまな宗教も、お互いに偏見をなくし、人間のこれらの性質を作るために、そして 調和のとれた理解溢れる社会をつくるために、一体となって働かなければなりません。

4. 仏教のこころ

一九六一一年に中国人がヒマラヤを越えてインドに侵入してきたとき、インド人は何もて きなかったことを法王猊下は忘れていません。また法王猊下の存在自体が、すてに中国と インドとの関係を悪化させていることも知っています。人の視界からはずれていた方が好 都合ぞあり、こうして、忘れられることが期待されているのぞす。 ニューデリーの家て私は、一週間早く、法王猊下の私設秘書から電報を受け取りました。 それは、ここ数年の間て、ダライ・ラマ法王猊下がアメリカ人に許した初めての謁見につい ててした。 私は自分の考えをまとめたり、さらに背景を追求したりしながら、法王猊下が私と会う象 ことに同意してくれるかどうか不安だったのてす。法王猊下に会見を求めた私の手紙には、の 法 私が興味を持っていた多くの政治的質問が示してありました。そのころ私は、第三世界にマ おける開発努力と政治的不安定との関係を研究する学者として、インドに住んていたのて ダ す。 集 他の人たちは私に、ダライ・ラマ法王猊下は政治のことは討論しないだろう、と忠告し寄 てくれました。しかし私は、抑えきれずに手紙を書いたのてす。そして、すぐに好意的な

5. 仏教のこころ

現代アジアの政治の中て、法王猊下の祖国、同胞といったものは、いわば末梢的なもの てした。もし世界的な政治家が、アジアの政治問題と何らかの関係があったとしても、そ れは変わらなかったことてしよう。法王猊下はこのことを知っていました。そして限みや 欲求不満を抱くこともなく、それらの問題について討議しました。 法王猊下は賢明さと実利主義によって、容易に自分自身の置かれている現在の立場を充 分に把握した上て、自分の立場や行動の過程を分析してくれました。そして時には哲学的 てあり、時にはユ 1 モラスになり、常に印象的な、また驚嘆すべき人物てした。 法王猊下が満を持している間に、アジアは変わっていきました。インドても新政権が誕象 印 の いかなる変化のなかにあっても このよ , フな、 生し、新しい首相が官邸の主となりました。 王 法 マ 自分の将来や願望について、法王猊下はわきまえているのてす。 しかし、今日、私の心のなかてうごめいているのは、神にして王の人てもなく、また難 ダ 民の一人てもありません。高地ヒマラヤにおける陽光の朝を思い出させ、神に感謝する生 集 活の典型を示してくれたのは、逆境のなかにあっても潔い態度を保っている人物の、さわ寄 ( 一九七八年 ) やかな率直さと、静かな威厳てあったのてす。

6. 仏教のこころ

政治に今こそ必要な倫理と道徳 道徳的基盤の確立を富 宗教と政治は明確に分離されるべきものか行 現在の教育システムは変革されるべきだ爲 第三章仏教の修行 チベット仏教の修行方法 さまざまな修行方法がある理由 私たちの存在そのものが自由てあることを認識する カーラチャクラの実践について すべての生物が満足を求め、苦痛を避けようとしている 苦痛は何から起こるのか 生きとし生けるものの幸福についての責任を感じる 密教の四つの実践方法 自分に最も適した体系を学ぶことが大切 仏陀による神秘的顕示川 一般の人に対しても開かれている、より高度な瞑想燗

7. 仏教のこころ

バーしきれぬことを示しています。てすから、広大な世界に存在するこの二つの偉大な思 想が、互いをよく認め合うことに価値があるのてす。 仏教理論は、この複雑な現代社会の社会的、経済的側面を捉えきれませんが、共産主義、 社会主義あるいは民主主義政体から、多くのものを得ることがてきるてしよう。 同様に、こうした政治思想は、仏教理論から、特に、社会を発展させるのに必要な心が まえについて、多くを得ることがてきるてしよう。 この協調精神があれば、人々の経済は容易なものとなるに違いありません。 信仰や政治、経済システムに選択の幅があると同時に、平和て友好的な国々に満ちた世 界を創り出すためには、私たちのひとりひとりが、努力を積み重ねなければなりません。 他に道はないのてす。 73 第 2 章現代人と仏教

8. 仏教のこころ

象 最初の印象は、ひ弱な苦行僧 印 の 王 法王猊下は小柄な人てした。ふつくらと厚味のある大きな椅子に腰かけ、外衣にくるま 法 っていました。私が想像していたよりも、か弱そうてふけて見えました。わすか三十七歳「 ノー だとは、すぐには信じられませんてした。度の強いメガネと刈り込まれた頭は、ひ弱な苦 ダ 行僧の感じをいっそう強調させていました。 集 この人物が、現代アジアという目まぐるしい世界のなかて、六百万人もの人々の精神的 しつまて かっ政治上の指導者として、チベットの土地を取り返すという希望を、いったい、 さわやかな率直さと静かな威厳 ト・・ショ アメリカ人。南アジア、とくにその開発と政治的 不安定の問題についての研究家。流暢なヒンズー 語を話す。

9. 仏教のこころ

世界は今日、情報伝達システムの進歩のおかげて以前よりすっと小さくなりました。ど 、愛、正義、平等 んな国民も、孤立してただ一人て生きることはてきません。それだけに に満ちた世界を創り上げることに、私たちは強い関むをもっています。全人類が、道徳的 私たちの存在および存続は危機に陥るに違いあ 自覚に目ざめ、責任感を強めないかぎり、 りません。 そのような世界を創り、守り育てるために必要な性質は、最初から植え付けられなけれ ばなりません。すなわち幼児の頃からてす。私たちの世代または次の世代が、たやすく変 化するとは思えません。もし変化があるとすれば、それは将来の世代においててしよう。 とはいえ、もし私たちが、世界的規模て、現在の教育システムを大きく改善したならば、 次の世代て実現が可能かもしれません。道徳的倫理に基づく政治的文化を作り上げようと教 仏 して、いま活発な改革が大規模に企てられていますが、そのような改革には強力な後ろ楯 代 現 が不可欠てす。 章 なぜならば、少数の、非力な国民による、そのような試みは成功しそうにないからてす。 第 しかし、もし力をもった多くの国民が、しつかりした道徳的倫理に基づいた政治を選択す

10. 仏教のこころ

ると聞かされていましたのて、前口上としての冗談を捜しながら、まず初めはほほえんて いました。しばしの沈黙が続きました。法王猊下もまた期待を抱きながら微笑しているだ けごったのてす。ついに私の方からロ火を切りました。 「猊下、私はあなたが政治的間題については議論をしたくはないと考えていらっしやると 聞いています。しかし、私は差し上げました手紙のなかて、この謁見には政治的質問もあ ることをお願いいたしました。お許しを得て、そんな間題も追求したいと思いますが、い か力、てしょ , フか」 象 法王猊下はメガネの奧て、少しからかったように笑いながら、 印 の 王 「どうぞ、何ても好きなことを聞いてよろしいてすよ」と答えてくれました。 法 マ それから私たちは会話を始め、それはおよそ二時間も続きました。はじめのうちは、会 話はためらいがちに進みました。主に法王猊下は通訳を介して話をしていましたが、私はイ ダ 直接話しかけていました。そんなとき、法王猊下は通訳の一一一〔葉を待っていましたが、その 集 間、私のいいたいことは理解しているとの自覚を示す、明るく鋭い視線て私を見ていたの寄 てす。