96 6 章放射性同位元素等の安全取扱い 〔 4 〕蒸留法および揮発法 この方法は気体または揮発性化合物になりやす いものの分離に有効である . 操作は一般の蒸留法と同じであるが , 無担体分離に この方法を用いるときは , 留出を容易にするために不活性気体を通じながら行わ れることが多い . ただし , この方法は放射能汚染を起こしやすいので , 密閉系で 行うか完全なフードあるいはグロープポックス中で行う必要がある . その他 , ラジオコロイドのろ紙への吸着を利用するものや , イオン化傾向の差 を利用する電気化学的な方法も用いられる . なお , 得られた放射性同位元素の純度を表すとき , 放射化学的純度という言葉 が用いられることがある . すなわち , 他の放射性同位元素 , あるいは化学形を異 にする同一の放射性同位元素が混入している場合で , その質量百分率はきわめて 少なく , 化学的純度から見れば全く無視できるときでも , 放射能的には大変不純 となる場合もある . このようなとき , 放射能の面からみた純度 , すなわち目的と する , あるいは目的とする化学形の , 放射性同位元素の放射能と試料全体の放射 能との割合を放射化学的純度という . 6 ・ 3 ・ 3 標識化合物の合成 放射性化合物をトレーサーとして用いる場合には , それらの目的に合った標識 化合物を必要とする . 近年 , 市販される標識化合物の種類が非常に増大し , その 結果化学や生物学などのトレーサー実験に使用するものは大部分市販されてい る . しかし , それでもなお標識元素 , 標識位置 , 比放射能など実験目的に最も適 した標識化合物そのものが市販品のリストにない場合は , 適当な前駆体を用いて 目的とする標識化合物を合成する必要がある . 標識化合物の合成法は , 本質的には普通の有機化合物の合成法のそれと同じで あるが , 次のような点に注意を必要とする . ます , 標識化合物の比放射能を高く する必要があることが多いので , この合成は微量で行われなければならない . そ のため普通の実験では , ほとんど問題とならない揮発や反応容器への吸着による 損失も見逃がすことができす , これを防ぐためこの合成には連続した各反応をで きるだけ同一容器内で行うような反応装置 , たとえばガラス製の真空装置を組み 立てて使う多岐管システムなどを利用する必要がある . また , 合成法はなるべく 簡単で , しかも同位体の濃度を薄めることなく , かつ高収率であることか望まし い . このためには合成の最終段階にできるだけ近いところで放射性同位元素を導 入するように工夫する必要がある . それにより放射性同位元素の損失を防ぎ , ま
98 ておく ). 6 章放射性同位元素等の安全取扱い たとえば , 標識有機化合物において 14C と 3H の両標識化合物があるとき , 通常 は分子の骨格部分を形成する 14C の標識化合物を使いたい . 3H 標識には , はすれ やすいものがあること , また大きい同位体効果を示すものがあることも , この考 えを支持する . しかし , たとえば分子内の特定の基の運命を追跡したい場合 , そ の基の標識が 3H でなされているものしか入手できない場合には選択の余地がな い . 逆にミクロオートラジオグラフのように , 特に高い解像力を要する場合には , 低エネルギー線を放出する 3H のほうが望ましい . また , ョウ素について一般に 1251 , 1311 の両者が入手しやすいが , 長期にわたって使用したい場合は半減期が長い 1251 ( 60.2d ; 1 当は 8.04d ) のほうを選ぶ . しかし , / 線のエネルギーは 1311 が高く , 測定・検出には便利である . さらに , なるべく比放射能の高い状態で使いたい場 合には 6 ・ 3 ・ 1 項に記したように , 無担体で 3.7X107Bq (1mCi) の量は , 半減期 の短い 1311 は , 8.06X10 ー 9g : 1251 は 5.76X10 ー 8g となり , 前者が有利である . 使用量 ( ここでは放射能 ) は , その放射性同位元素が測定試料中に取りこまれ る割合 ( P ) や抽出率 ( R) , さらに測定機の測定効率 ( E ) を考え , また半減 期と関連して減衰も考えておかなければならない . P x R x E という比率での損 失である . したがって , P と R がともに 2 倍にできるなら , 同程度の精度の実験 結果を得るのに , 放射性同位元素使用量は 4 分の 1 でよいことになる . 原則とし て使用量は必要最少量に止めるべきである . これは購入時の経済的負担に加えて , 使用量が必要量を超えて増大してもそのメリットはほとんど増大しないが , 使用 に伴うリスク ( 被曝 , 放射性廃棄物処理に要する時間や労力 , したがって費用も ) は , 使用量にほば比例して増大するからである . なおトレーサー実験における放 射性同位元素の使用量は一応放射能の考慮から決まるが , 実験系における物質量 に注意を払う必要がある . 適切なグラム数 , モル数などになるように担体を加え なければならない場合が非常に多い . 実験における 1 回使用量が決まれば , 当面の実験予定回数を勘案して適当量を 発注すればよいが , それに先立って施設の放射線取扱主任者と連絡をとり , 使用 予定量か施設で核種ごとに定められている 1 日最大使用数量 , 年間最大使用数量 の範囲内であることの確認を得ておく必要がある ( 5 章 5 ・ 6 節参照 ). 6 ・ 4 ・ 2 購入手続き 日本アイソトープ協会の放射性同位元素購入申込用ハガキ ( 図 6 ・ 1 ) に必要事
8 ・ 5 測 定 の 義 務 177 8 ・ 5 測定の義務 所で行う . 表示付放射性同位元素装備機器は放射線の量を機器表面で測定する . ( 3 ) 測定の項目と場所を表 8 ・ 7 のように定めてあり , それぞれ最も適した箇 難な場合 , 計算で算出してよい . ( 2 ) 測定は放射線測定器を用いて行う . ただし , そのような測定が著しく困 当量率や 70 〃 m 線量当量率を測定しなければならない場合がある . ( 1 ) 放射線の量の測定は lcm 線量当量率について行う . ただし , 3mm 線量 各号に定められている . 〔 1 〕場所等について場所については障害防止法施行規則第 20 条第 1 項 条に定められている . の作成や保存等も義務づけられている . これらの詳細は障害防止法施行規則第 20 についても放射線の量および汚染の状況について測定しなければならない . 記録 場所と人を対象とする測定の義務は障害防止法 20 条に定められており , いすれ 表 8 ・ 7 測定すべき項目と場所 項目 場 所 放射線の量使用施設 , 詰替施設 , 廃棄物詰替施設 , 貯蔵施設 , 機器設置施設 , 廃棄物貯蔵施設 , 廃棄施設 , 管理区域の境界 , 事業所などのうちで 人が居住する区域 , 事業所などの境界 放射性同位作業室 , 廃棄作業室 , 汚染検査室 , 排気設備の排気ロ , 排水設備の 元素による排水口 , 排気監視設備のある場所 , 排水監視設備のある場所 , 管理 汚染の状況区域の境界 ( 4 ) 測定の時期については作業開始前に 1 回 , 作業開始後は次のようである . ( i ) 放射線の量の測定〔 ( ⅱ ) および ( ⅲ ) 以外〕と , 作業室 , 廃棄作業室 , 汚染検査室および管理区域境界における汚染の状況の測定は , 1 カ月を超えない 期間ごとに 1 回 . ただし , 排気・排水設備にある排気・排水口 , ならびに排気・ 排水の監視設備のある場所での汚染状況の測定は , 排気・排水するごとに行う . 排出が連続的な場合は連続的に行う . ( ⅱ ) 密封放射性同位元素や放射線発生装置を固定して取り扱う場合 : 放射 性同位元素や装置を固定して取り扱い , 取扱方法やしゃへい物の位置が一定して いるときの放射線の量の測定〔 ( ⅲ ) の測定を除く〕は 6 カ月を超えない期間ごと ・・・使用施設 , 貯蔵施設 , 管理区域の境界 , 事業所などの境界 . に 1 回 .
6 ・ 3 非密封放射性同位元素の安全取扱いの基礎 93 の吸着損失が著しくなる . したがって , 水溶液中の放射性無機物質を用いる実験 に , ガラス器具を使用するのは好ましくない . もちろん , 吸着のされやすさは , 濃度のほかに溶質の化学状態 , 溶媒の種類と状態 , 特に pH, 共存物質などにも関 係がある . 一般に , 酸性溶液中のほうが中性や弱アルカリ性溶液中よりも吸着さ れにくく , また荷電状態が低いほど吸着されにくい傾向がある . しかし可溶性 錯塩をつくるような錯化剤を加えれば , 吸着を防止することができる . たとえば , Fe3 + は中性やアルカリ性溶液からは顕著に吸着されるが , 錯化剤として EDTA を加えると可溶性錯化合物となり吸着されない . なお , EDTA のような強力な錯 化剤は , 次に化学操作を施そうとした場合には , 不都合に作用することも多いの で , 錯化剤の使用には注意を要する . また , 一般にはガラス器具よりもポリエチ レン器具のほうが吸着されにくいが , 疎水性の高い有機化合物の放射性同位元素 標識体では逆の傾向を示すことが多い . 吸着に関する知見は放射性同位元素を保 存したり , 放射性同位元素溶液を他の器具へ移したり , ろ過したりする際に重要 である . ( b ) 共沈沈殿反応を行う場合に , 溶解積を超えないようなトレーサー 濃度の放射性同位元素イオンで , 本来沈殿を生成しないが , ある沈殿剤を加える とこれが沈殿のほうへ移るという共沈現象を起こすことがある . 放射性同位元素 イオンが沈殿剤のイオン形と同形の結晶化合物をつくる場合や , 大きな表面積を 有する沈殿結晶が生成するとき , それに放射性同位元素イオンが吸着する場合な どに起こる現象である . たとえば , 140Ba とそれの崩壊系列中の 140La を含む溶液 ~ 20mg の Ba2 + を加え , 硫酸塩で沈殿させるとき , 140Ba は当然共沈する ないために , イオン交換 , 透析 , 拡散 , 吸着などの際に , 化学挙動の異常性とな くなり , その性質は分離法にも利用されるはどであるが , 真の溶液として行動し いる場合もある . ラジオコロイドを生成すると , ろ紙や器壁などに吸着されやす イドである場合も , また溶液中のコロイド状粒子に放射性同位元素が吸着されて 動をとることがある . このような現象をラジオコロイドという . それ自身がコロ 位元素を水に溶かした場合 , 真の溶液の性質を示さす , しばしばコロイド的な行 (c) ラジオコロイドその物質の溶解度よりはるかに低い濃度で放射性同 が生成する系では , しばしばこのような共沈現象が起こるので注意を要する . 加えてから沈殿をつくると 140La は共沈しなくなる . また , Fe(OH)3 や AI(OH)3 が , 140La も少しではあるが共沈してくる . もっともあらかしめ非放射性の La3 + を
112 6 章放射性同位元素等の安全取扱い る , ( 3 ) 汚染区域を決定したら境界線を明示し , はきかえなしに中へ入らせない . また , 特に高い汚染スポットは白墨などで囲んで印をつける . 〔 2 〕早期除染小さい汚染箇所はペーパータオルを水で濡らしてぬぐい取 ることができる . 一般的にはばろぎれ ( ウェス ) に洗剤液をしみこませ , 区画こ とにぬぐい取っていく . ウェスは再使用しない . 早期に作業をすれば中性洗剤と 温水の組合せで除染できることが多い . 頑固な汚染に対しては短寿命核種の場合 には , そのままシートで確実に覆って減衰を待つほうが得策なこともある . しか し , 頑固な汚染でしかも除染が必要な場合には汚染物質の性質を考慮してキレー ト剤など適当な除染剤を併用しプラシでこするなど物理的な除染が必要になる こともある . 床材の頑固な汚染はその部分を切り取ってはがし , 新しい床材を溶 接して修復するなどが必要な場合もある . 広範囲の汚染の場合 , 室の出入口や階段の踊り場など歩行時に足の裏に力の入 りやすい部分に汚染が著しいことがあるから , そのような場所は特に念入りに除 染しておくのがよい . 〔 3 〕担体添加または化学希釈汚染物質がはっきりわかっている場合 , そ れと同じ化学形の物質の水溶液で表面を濡らすと除染が容易になる場合がある . 担体添加または化学希釈の応用といってよい . 32P の場合リン酸緩衝液を用いる などの例があげられる . 〔 4 〕汚染の諸形態に応じた除染人体 , 特に指先などは手袋をはめすに不 注意に操作すると汚染しやすい . 中性洗剤をつけて軽くこする . 爪プラシなども 用いる . しかし , 特に浸透しやすい物質でなく軽度の汚染の場合には , 完全に除 染できなくとも皮膚の代謝によりいすれ脱落してゆくから , 強引にこすり落とす 必要は必すしもない . 皮膚に傷をつけて体内へ放射性同位元素を取りこむことも あるからである . なお , 皮膚除染後クリームを塗るか皮膚科医に診てもらい適切 な処置をしておく . 器具や机は , なめらかな表面の場合除染しやすいが , 木製品などは場合によっ ては汚染部分を削り取る必要もある . 塗料の塗ってある物の除染は , 塗料をはが すことによってできることが多い . この場合 , 後に必す塗料を塗り直しておく . 除染に有機溶媒を用いることは禁物である . かえって汚染を広げることが多い . 小さい物品で除染が困難な場合 , 超音波洗浄器が有効な場合が多い . しかし , 物 によっては放射性廃棄物にしてしまうはうが経済的なこともある .
6 ・ 4 非密封放射性同位元素の購入から後始末まで た取扱い上危険を伴う段階を少なくすることができる . 97 なお , 合成方法には一般の化学的合成法のほかに , 同位体交換反応を利用する もの , ホットアトム反応による直接標識法 , 生合成法などがある . 6 ・ 3 ・ 4 標識化合物の保存 標識化合物を保存する場合には , それの分解に注意する必要がある . 分解の実 態がまだ不明である現在 , すべての標識化合物に共通の標準的保存方法はないが , 担体を加えることによる比放射能の低下 , 乾燥状態での保存 , 真空あるいは不活 性ガス中での密封 , べンゼンやアルコールなどの安定剤の添加 , 微生物の侵入阻 止 , 清潔な中性の容器の使用 , 少量ずつの保存 , 冷暗所での保存などの方法が有 効であるといわれている . 放射線分解については 3 章 3 ・ 3 節のほか成書を参照さ れたい 6 ・ 4 非密封放射性同位元素の購入から後始末まで 非密封放射性同位元素を取り扱うには , 使用核種や標識化合物に対する的確な 知識 , 6 ・ 3 ・ 1 項に述べたような実験操作についての十分な理解と技術の習得が必 要である . 一方 , これらの実験はすべて一連の法令の規制下にあることを忘れて はならない . 取扱者はこれらの基礎のうえに立ってはじめて適正な実験計画をた て , それに従って正しく放射性同位元素を使用することができる . 初心者が放射 性同位元素を用いる実験を行う場合 , 単独では行わず必す経験者とともに行う必 要があるのもこのためである . 6 ・ 4 ・ 1 実験の計画 ある課題を解明するために取り得る種々の方法を比較検討した結果 , 放射性同 位元素の使用が非常に有効であるとの結論が得られた場合に , 実験準備が開始さ れる . 取扱者がますなすべきことは , 事業所の放射性同位元素等取扱者としての 登録を済ませ , 法令で義務づけられている健康診断と教育訓練 ( 8 ・ 7 節と 8 ・ 8 節参 照 ) を受けることである . 次に使用する核種とその量について検討する . このうち核種は実験内容から一 義的に決まることもあるが , 利用可能な核種が 2 種以上ある場合には , 実験期間 と半減期の関係 , 欲しい比放射能と得られる比放射能との関係 , 実験目的と放射 線の種類やエネルギーの関係 , 利用可能な測定装置の種類などが判断の基準とな る ( むろん , 使用施設での使用許可核種の範囲内であることはあらかしめ確かめ
18 イ 8 章放射線障害の発生を防止するために制定された法令 8 ・ 9 記帳・記録の義務 放射性同位元素等の安全取扱いは , それらの使用・保管・廃棄について正確に 己帳し , 線量当量率の測定結果を確実に記録することと表裏の関係にある . 使用 者には法令によって , これらの記帳・記録が義務づけられ , その細目が定められ ている ( 障害防止法第 25 条 , 同施行規則第 24 条 ). しかし , 日々変化する放射性 同位元素の受入れ・使用・保管・廃棄の実情を正確に記帳することは , 取扱者を おいて余人にできるものではない . 記帳すべき事項として定められているのは ( i ) 使用に関しては , ( 1 ) 使用した放射性同位元素の種類と数量 , 使用した放 射線発生装置の種類 , ( 2 ) 使用の年月日・目的・方法・場所 , ( 3 ) 使用に従事した者 の氏名 ( ⅱ ) 保管に関しては , ( 1 ) 保管した放射性同位元素の種類・数量 , ( 2 ) 保管の期 間・方法・場所 , ( 3 ) 保管に従事した者の氏名 ( ⅲ ) 廃棄に関しては , ( 1 ) 廃棄した放射性同位元素の種類・数量 , 廃棄の年月 日・方法・場所 , ( 2 ) 廃棄に従事した者の氏名 などである . 放射線施設に立ち入る者に対する教育訓練の実施年月日・項目・受 講者名も帳簿に記載される . これらの帳簿は 1 年ごとに閉鎖し , 閉鎖後 5 年間保 存される . 8 ・ 5 節に述べた , 放射線障害の発生するおそれのある場所についての放射線の 量の測定結果と放射性同位元素による汚染状況の測定結果は , 帳簿に記録して 5 年間保存しなければならない . 管理区域に立ち入った者に対する放射線の量の測 定結果 , 放射性同位元素による汚染状況の測定結果は永久保存される . 8 ・ 10 事故・危険時の措置 放射性同位元素の盗難 , 行方不明 , その他の事故が発生した場合には , 使用者 は直ちに警察等に届け出なければならない ( 障害防止法第 32 条 ). 地震・火災な どの災害の発生によって , 放射線障害が発生し , または発生するおそれのある危 険な事態に至った場合には , 使用者は放射線施設から取扱者等を退避・避難させ , 放射性同位元素による汚染が生した場合には , 汚染の除去 , 汚染の広がりの防止 等の措置を講じなければならない ( 障害防止法第 33 条 , 同施行規則第 29 条 ). 危 一三ロ
170 8 章放射線障害の発生を防止するために制定された法令 8 ・ 4 ・ 1 使用の基準 放射性同位元素等を使用する場合の技術上の基準は , 障害防止法施行規則第 15 条において詳細に規定されている . これらの規定は法令のうえでは使用者と取扱 主任者に対するものであるが , 実際はそれぞれの取扱者が遵守すべきことである . その主要な点は次のとおりである ( 障害防止法第 15 条 , 同施行規則第 15 条 ). ( i ) 放射性同位元素等を使用する場所は , 使用施設に限定すること . この規 定が適用されないのは , 密封されていない放射性同位元素等を広範囲に分散移動 して一時的に使用する場合や , 届出使用者が密封された放射性同位元素を使用す る場合などに限られる . ( ⅱ ) 密封されていない放射性同位元素は , 作業室で使用すること . 作業室以 外で使用してはならない . ( ⅲ ) 密封された放射性同位元素は , 開封・破壊のおそれのない状態および漏 えい , 浸透などによって散逸して汚染するおそれのない状態で使用すること . ( ⅳ ) 密封された放射性同位元素を移動させて使用したときは , 使用後直ちに 異常の有無を点検すること . ( v ) 放射性同位元素等の取扱いに当たって , しゃへいを設けること , 距離を おくこと , 被曝時間を短くすること , などの措置を講じて線量が実効線量当量限 度および組織線量当量限度を超えないようにすること . ( ⅵ ) 作業室内の空気中の放射性同位元素濃度および室内の表面汚染密度を 濃度限度以下および表面密度限度以下にすること . ( ⅶ ) 作業室での飲食および喫煙を禁止すること . ( ⅷ ) 作業室から退出するときは , 放射性同位元素による汚染を検査し , 汚染 があればそれを除去すること . ( ⅸ ) 作業室または管理区域から , 表面密度限度またはその 1 / 10 を超えて汚 染された物を , みだりに持ち出さないこと . ( x ) 放射線業務従事者以外の者が管理区域に立ち入る場合には , 放射線業務 従事者の指示に従わせること . いすれの事項も , 各事業所ごとに取り決められた放射線障害予防規定や放射線 施設ごとに申し合わされた実施要領などに , 具体的に規定されていて , 施設内の 目につきやすい場所に掲示されているはすである .
4 章放射線の生体への影響 42 直線一二次曲線モデル 直線モデル 宝 7 ミ 二次曲線モデル 線量 図 4 ・ 5 高線量での放射線発がんのデータから低線量域 ( 点線 ) の線量効果関係を推定する三モデル . 実際のデータはばらっきが大きいため , 実線の部分の線量効果関係を正確に求めることはむす かしい えられる場合に限られ , 胎児が被曝したために奇形児として出生した場合は遺伝 的障害ではない . 胎児はきわめて放射線感受性が高く , 放射線の人体影響では重 視されなければならないが , あくまでも遺伝的障害とは別である . 胎児の場合も 細胞分裂が盛んに行われていることが高感受性の原因の一つであるが , それ以上 に器官の分化が行われていることへの障害が奇形発生の主因である . 遺伝的影響を及ほす外的要因は放射線に限らない . 近年環境変異原 , あるいは 遺伝毒性物質として多くの物質の突然変異誘発性が注目されている . これらの物 質は細胞に突然変異を起こすことから遺伝的影響を起こし得る . しかし , 飲食物 などを通して体内に入っても , 性細胞まで達するには多くの障壁があり , 真の意 味での遺伝的障害を与えることが証明された化合物はまだ少ない . 放射線の場合 には生体を透過する力が強いため , 容易に遺伝的損傷を性細胞に起こし得るので 約 0.5Gy 以上の放射線を生殖腺 ( この場合こう丸 ) に浴びると精子をつくる細 胞分裂が止まり , 精子形成が停止して不妊になる . しかし , 5Gy 以下では 2 年以内で回復し , 妊娠させる力をもった精子がっくられるようになる . 女性の場 合は卵子がきわめて早くからっくられていることなどの要因により , 精子形成と はきわめて異なる反応を示し , 突然変異頻度も低いことが知られている .
6 ・ 10 X 線を発生する装置の安全取扱い 137 留放射能がある場合は , 出入口にハンド・フット・クロスモニターを用意す からは開くことができない機構とする . できない機構とする . また , 非常口を設ける . ( 3 ) 出入口 : 通常作業者の出入口は 1 箇所とし , 扉が閉しられなければ運転が る . これは通常は閉じられ , 外部 する . 加速器停止後に発生器室で作業する場合は十分時間が経過した後 , 残留放 イッチにより加速器の運転を即時停止させるか , または出入口 , 非常ロより脱出 もとに戻す . 作業中に誤って運転が開始された場合や火災などの際には , 非常ス パーソナルキーを する際には汚染検査を行い , 作業の内容 , 時間などを記録し , 曝モニターとパーソナルキーを携行し , 扉は開いたままとする . 発生器室を退出 作業者が発生器室を出入りする場合は , 運転者に告げる . 作業中は必す個人被 常が発生した場合は直ちに運転を中止する . 場合も同様の予告を行う . 運転中は放射レベルや加速器の状況を常に注意し , 異 に警報装置により運転開始を予告し , 1 ~ 2 分後に運転を開始する . ビームを出す 運転者は運転に先立ち , 発生器室内に人のいないことを確かめる . 運転の直前 6 ・ 9 ・ 4 安全運転および発生器室内での作業 インターロック系が故障した場合は , 加速器は停止する機構とする . るインターロック系を組み , 加速器の起動および停止と連結する . もし万一 ⑧インターロック : 出入口の扉 , パーソナルキー , ェリアモニターなどによ 場所に設ける . ( 7 ) 非常スイッチ : 加速器の緊急運転停止のため発生器室内の目につきやすい 自動式のものを設ける . ( 6 ) 警告灯 : 発生器室および周辺に加速器の運転およびビーム出力を警告する ( 5 ) 警報装置およびインターホン : 発生器室と運転室間の警報および通話用 . るときにキーポックスに戻す . キーが揃わないと作動できないようにする . ( 4 ) バーソナルキー : 発生器室に入室する際には作業者は必す携行し , 退出す 射能について測定を行って安全を確かめた後立入る . 6 ・ 10 ・ 1 X 線は , 6 ・ 10 X 線を発生する装置の安全取扱い X 線と物質の相互作用 物質と相互作用して , 光電吸収 , トムソン散乱 , コンプトン散乱 , 電