9 イ って現れる . 6 章放射性同位元素等の安全取扱い このようなことを防ぐためには , 非放射性同位体や錯化剤を加えた り , 溶液の酸性度をあげたり , あるいは痕跡不純物の混入などに注意することが 必要である . その他 , トレーサー濃度の放射性化合物は , 異常に加水分解しやすい傾向もあ 〔 2 〕時間の重要性非放射性物質を取り扱うときは , 試料が変質分解する 以外には時間の因子はさほど重要ではないが , 放射性物質の場合には時間は重要 な因子である . 特に短半減期の放射性同位元素を取り扱うときには十分に考慮す る必要があり , どんなにすぐれた操作法でも長時間を要するものは無用である . たとえば , 20 分の半減期をもつ 11C を 20 分程度で 50 % の収率で分離・調製でき る方法は , 1 時間かかって 100 % 近くの収率をあげる方法よりもすぐれている . な お , 放射性同位元素の取扱い時間の短縮は , 放射線防護の立場からもきわめて有 効である . また , 目的の放射性同位元素から崩壊して生成する元素についての考 慮も必要である . 〔 3 〕放射線の影響多量の放射性同位元素を取り扱う場合には , 放射線に よる化学作用の影響 , たとえば水の分解 , 試薬の分解なども考慮する必要がある . 特に高比放射能の放射性同位元素標識有機化合物の溶液中での安定性は溶媒によ り大きく変わり得るので , 用いようとする化合物について適当な溶媒をあらかし め調べておくとよい . このような放射線の影響については 3 ・ 3 節を参照されたい . また , 放射性同位元素を用いる化学操作は , 非密封の放射性同位元素を取り扱 うため , 必す放射性同位元素による汚染が起こるものと考えて , 放射線防護 , 放 射線障害の予防には常に気を配り , 必要に応じ特殊な装置を用いる工夫も必要で ある . 基本的には放射性同位元素をできるだけ分散させす , 狭い範囲に封じ込め るように考えることが必要である . 詳しくは 6 ・ 5 節を参照されたい . 6 ・ 3 ・ 2 放射性同位元素の分離・精製 放射性同位元素の分離・精製には , 共沈法 , 溶媒抽出法 , クロマトグラフ法 , 蒸留法および揮発法 , 電気化学的方法などの一般の分析化学に用いられる方法に 加えて , ラジオコロイド法 , ホットアトムを利用する方法など放射性同位元素に 特有な現象を利用する特殊な分離方法も用いられている . 実際には , これらのう ちの複数を適当に組み合わせて用いなければならない場合もある . 〔 1 〕共沈法前述した共沈現象を利用する方法である . すなわち , 目的と る .
100 6 章 放射性同位元素等の安全取扱い ( 左 ) 購入した放射性同位元素入荷時の荷姿 ( L 掣の例 ) ( 中 ) 荷物をあけると , ホ。リスチローール籀などの中に , 密閉された容器が入っている . バイアルなどの中に標識化合物などの溶液が入っている . 栓 ( 右 ) さらに上記容器をあけると , はネジ式キャップか , アルミキャップ ( いわゆる serum bottle ) で , 通常テフロン入りの ゴム膜か貼ってあり , 注射器で中の液を取り出せるようになっている . 図 6 ・ 2 て自分の目的に適うかどうかさらに検討する . 特に溶液になっている場合には , 物質としての溶液中濃度 , pH, あるいは共存イオンなどを確かめておき , 必要に 応じて希釈したり , pH を調整したりする . この場合 , 単に同じ溶媒で希釈するの か , 担体を加える必要があるかも検討する . 希釈による pH 変化にも注意が必要で あり , たとえば 0. IM ( m01 / dm3 ) の NaOH 溶液を , 水で 10 倍に希釈すると , pH が 1 だけ低くなることになる . NaI などの場合 , pH が酸性側に傾くと HI を生す るなどして酸化を受けやすくなり , 揮散しやすい形となる . また , 〔 32P 〕ーオルト リン酸は , 購入入荷時にたとえばピロリン酸に一部変化している場合があり , 塩 酸を加えて加熱しておく必要が生する . 6 ・ 4 ・ 3 実験開始から実験終了まで 放射性同位元素を発注後それを入手するまでの期間は , 実験計画の段階から歩 を進めて , 具体的な点について詳細に検討する時期である . ます実験の順序に従 って検討し , 必要となる実験材料 , 器具や装置などを確認する . 次いで本実験に 先立ちコールドラン (coldrun) を行う . これは放射性同位元素を使用しないこと を除けば本実験と全く同し操作を ( 放射性同位元素が入っているとの想定のもと に ) 行うことで , 本実験と同しスケールで行うことが最も望ましい . その結果 , 本実験での思いがけない突発事故に対して前もって対処できるうえ , 実験の所要 時間がはは、正確に把握できて都合がよい . 全体のスケジュールは実験の所要時間 に放射性廃棄物処理の時間 ( たとえば動物を乾燥する時間 ) を加味して立てるわ
158 RD3 区分 RAI RBI RB2 RC 1 RC2 RD2 7 章保健管理 表 7 ・ 8 指導区分と事後措置の一例 内容 事後措置検診について 勤務を休む必要があり , かっ医師による 主治医に適宜 医療行為を必要とするもの 受診のこと 要休養 放射線作業を禁止し , かっ医師による直 要軽業 放射線作業を制限し , かっ医師による直 接の医療行為を必要としないもの 放射線作業を禁止するが , 医師による直 接の医療行為を必要とするもの 要注意 師の観察を要するもの 業務は平常に行ってよいが , 定期的に医 接の医療行為を必要としないもの 放射線作業を制限するが , 医師による直 接の医療行為を必要とするもの 1 カ月ごと 3 または 6 ヵ 全く平常の生活でよいもの 月ごと 指導区分を決め , 同時に健康保持のため必要な措置を指示し , その指示内容が実 線業務従事者の一般健康状態のチェックを行うと同時に , 万一の事故や障害発生 ることを否定できないからでもあろう . むしろ , 健康診断の主要な目的は , 放射 その一つは , 環境管理や個人管理には , 技術的制約を含め , 現実的な制約があ 務づけられている理由は , あえて次のように理解される . うことができる . にもかかわらず , 検査項目や検査期間を指定して健康診断が義 いいかえれば , 健康診断は決して個人被曝のモニターの代用にはならないとい である . 敏とされる血液所見が影響を受ける線量からは , 問題にならないほどに低いから 被曝線量に関する現在の目標になっている管理レベルは , 検査項目の中で最も鋭 の発見を目的とした健康診断の意義は , ほとんどないと考えるのが妥当である . 環境の管理が十分であり , 個人の被曝管理が適正に行われていれば , 放射線障害 人の保健といえば , すぐ健康診断を思い浮かべるかもしれない . しかし , 作業 7 ・ 9 保健管理の意義 第 24 条 , 別表第 4 に準拠した表を示す ( 表 7 ・ 8 ) 則に定められている ( 8 章参照 ). ーっの参考例として , 人事院規則 10-4 , 第 23 条 , 行されていることを確認することが保健管理の実務であり , この措置は法令 , 規
1 章放射線の取扱いに当って 3 呼んでいる . この利益とリスクの評価を行って , 両者のバランスの上に最適な使 用条件を求めるという考えがあり , ICRP の勧告にみられる微妙な表現もこれを 反映している . しかし , この考えにも批判があることに留意する必要がある . 利 益とリスクの評価はそもそも次元の異なる尺度でなされるものであるし , バラン スが適当と判断するのは誰かということもある . 大学等での研究においては , 学 問上の利益を前提にしていることは明白であるが , 社会的利益につながるかどう かは未知数のことが多い . したがって , 対社会的リスクに対する配慮はより一層 慎重でなければならないであろう . 大学その他の研究機関で管理に携わる者は , 取扱者に対する教育訓練の義務を 負っている . この人たちも技術的教育の重要性はもとよりであるが , 折にふれて 上述の基本的な理念を理解させる努力をする必要がある . 同時に取扱者各自は自 分が末端における放射線管理の当事者であることを理解してほしいと思う . 管理 に関する基本的知識と , 取扱いについて熟練している者だけが取扱いの有資格者 といえる . もちろん , すぐれた指導者の下で作業を通じてこのことを身につけて ゆくことは許されることであるが , 本来の取扱者は上述のような人たちとすべき であって , 教育訓練の重要性は強調しなければならない .
1 イイ 6 章放射性同位元素等の安全取扱い 思いのほか強いことが多い . こからの X 線の漏れを防ぐ設計も種々あるので , メーカーがそれを採用していることか望ましいが , 使用者のほうでもこの部分か らの漏れについて常にチェックし , 必要なら鉛の小片でカバーするなど , 注意が 大切である . ( ⅱ ) 試料によって散乱または吸収されすに通り抜けた X 線束は直射 X 線 ( ダイレクトビーム ) とも呼ばれ , 強い二次散乱の原因ともなるので , 直射 X 線を 受け止めると同時に散乱 X 線をも防ぐ構造のビームトラップを取り付けること になっているが , これが変形したり , 取付け方が悪くて位置がずれたりしている と , こから強い散乱 X 線を生する . ( ⅲ ) 試料自身からの散乱 X 線は , 普通はあまり強くないが , 回転対陰極方式 などの強力な発生装置では十分に注意する必要がある . 特に単結晶を用いる回折 計や , ある種のカメラでは , 構造上試料からの散乱 X 線が防ぎきれない . 全体を 防 X 線カバーで覆わない限り実験室全体に弱い散乱 X 線をまきちらすおそれが ある . また , 電圧が高いときには透過力の大きな連続 X 線の二次散乱にも注意す る必要がある . いすれにしても , 実験を行う者自身が , そのつどサーベイメータなどでチェッ クを行うことが望ましい . このチェックは定期検査などのように定量的である必 要はなく , 定性的でもよい代わりに , まめにチェックを行うことが大切である . ( ⅳ ) X 線発生装置自体から X 線が漏れていた例もある . Mo ー K 特性線を使 うとき , 管電圧の高いときなど , 特に注意が必要である . ( v ) このほか , 単結晶を用いる回折装置では , ピンホール系と X 線管の焦点 とのコリメーションを確かめることが重要であるが , その際に指先などに強い X 線を浴びないよう , 装置上の工夫と操作上の注意が必要である . 6 ・ 10 ・ 11 蛍光 X 線装置 試料に連続 X 線を入射し , 発生する蛍光 X 線 ( 特性 X 線 ) を分析用結晶でスペ クトルに分け , 試料を構成する元素の分析を行う . 最近の装置ではエネルギー分 散型のものも含めて密閉式のものが多く , それだけ外部に漏れる X 線は少ないは すであるが , やはりチェックは必要であろう . 1950 年代の製品では , 60kV, 50 mA くらいの強力な X 線を試料に入射するものが多く , 試料からの蛍光 X 線よ りも短波長の一次 X 線 ( 主として透過力の大きい連続 X 線 ) が漏れて出る可能性 に注意する必要がある .
141 X 線を発生する装置の安全取扱い 6 ・ 10 100 Br Ag 1 0 200 400 600 800 1 000 1 200 エネルキー (kev) エネルキー -keV keV0ff 図 6 ・ 21 G-M サーベイメータ 図 6 ・ 22 フィルム感度の X 線エネルギー依存性 エネルキ 一依存性 の素子を用いれば実効エネルギーが 10keV での感度が非常に良いだけに有効な 方法だといえる ( 図 5 ・ 20 ) . GM サーベイメータなどで , 簡易に軟 X 線漏れを調べることもできるが , カバ ーを外して線を測定する条件で検出する必要がある . GM サーベイメータのェ ネルギー特性が示すように光電効果を起こす 100keV 付近の感度が最高で 300 keV が最低になっている ( 図 6 ・ 21 ). GM は軟 X 線に対して感度はそれほど良く ないので , 低い値が出ても大して漏れていないと安心するのは危険である . 漏れ ている場合には , 専門家に相談するようにしていただきたい . なお , フィルムも X 線に感度よく使え ( エネルギー依存性を図 6 ・ 22 に示す ) , 5 ・ 7 ・ 1 項にも述べたように個人被曝測定に汎用されるとともに , 場所の測定にも よく用いられる . 6 ・ 10 ・ 6 X 線を発生する装置を使用するうえでの注意 X 線発生装置およびそれが目的ではないが必然的に X 線を発生する装置の安 全な取扱いに関し , 装置のタイプによらす共通して留意すべき点をますあげてお ( i ) 周囲の人の安全をます確かめる ( スイッチを入れるとき , 発生装置の X 線窓をあけるとき ). ( ⅱ ) X 線が思いがけないところから漏れていないか , 予期以上に強い散乱 線が出ていないか , などをチェックする . ( ⅲ ) 必要に応して防具を付ける ( 眼鏡 , 防御衣など ). 400 100 4
4 ・ 2 放射線の人体への影響ー - 広島・長崎のデータを中心に 43 精子形成能力は回復しても , 精子をつくるもとの細胞である精原細胞には放射 線による損傷が残っているので , 精子のもっている遺伝情報に異常が生じている と考えなければならない . これが遺伝的影響の原因である . 現在までのところ , ヒトにおける放射線の遺伝的影響の存在は , 広島・長崎の データでも確認されていない . 広島を中心に こ数年間 , 多数の被爆者を対象 に 28 種の酵素の遺伝子を調べるという大規模な生化学的調査研究が実施された が , 遺伝的に異常であると確認されたのは約 5000 人中 1 人だけで , 有意の差は認 められなかった . これは調査前からある程度予測されていたことで , 突然変異の 頻度から考えて今後も有意の差を見出すことはできないであろう . それでもこの 調査研究で , これまで推定されていたヒトの突然変異率がほは、正しく , ヒトで放 射線による突然変異が特に起こりやすいことはないことが明確に示された意義は この調査で検出できなかったからといって , 遺伝する損傷が原 大きい . 同時に 子爆弾からの放射線で生じなかったといえないことは申すまでもない . 10 ー 5 以下 の頻度と予期される突然変異を定量的に検出するには , 被爆者 ( 調査可能な ) の 数が十分でないにすぎない . 広島・長崎の被爆者に関する限り , 今後も遺伝的影 響は定量的に増えることは確認できないであろう . 動物実験で , 比較的大線量の放射線による突然変異の線量効果関係を求める研 究はアメリカとイギリスで約 100 万匹のマウスを用いて行われた . 特に関心を集 めたのは同一線量を 1 回に短時間で浴びた急照射と , 長時間にわたる緩照射の比 較で , 線量率依存性がみられるかであった . 結果の一部を模式的に示すと図 4 ・ 6 のようになった . 線量率を低くすると突然 変異頻度は低下するが , それでも同じような比例関係が全体として低下するにと どまり , 突然変異は直線的な比例関係があると考えられる . そこで低線量の突然変異誘発効果を大線量から推定するのに直線モデルでよい かを検討する必要があるが , 線量が低くなれば突然変異頻度も下がるため , 大量 のマウスが必要となる . ある計算によれば , 0.01Gy で起こる突然変異を有意に検 出しようとするには 9 億匹のマウスが必要と推定され , これでは実験は不可能で ある . 最も重要な問題は , ある線量以下では遺伝的影響は起こらないという「し きい値 ( 閾値 ) 」があるかどうかで , ショウジョウバエを用いて解明が試みられて きた . 今日までのところ , 0.05Gy ( 1 回短時間照射 ) まで大線量のデータから延 長した直線での推定とほば同し突然変異頻度を示すことが報告されている . この
6 章放射性同位元素等の安全取扱い 122 •RI 使用の記録 放射性同位元素使用・保管記録票へ必要事項を記録する川 〔注〕 11 ) ()I を入手した時点で ) 使用目的 , 実験方法 , 共同実験者名などの欄に該当事項 を記入する . 次に , RI の使用 , 廃棄 , 持出し , 分離転記などのたびごとに記録欄へ 己入する . ■後始末 ガラス器具のうち , メスフラスコ , ピべットなどは必す内容液を廃液溜に移し , 2 ~ 3 度少量の水でゆすぎ 12 ) ( 洗液はやはり廃液溜へ ) , そののち「流し」で洗う . この実験で出る廃液は無機液体の分類とする . すべて用意した廃液溜 ( ポリ瓶 ) に入れる . ( 図 6 ・ 12 ~ 図 6 ・ 15 参照 ) こではそのまま不燃物に分類する 13 ) 原液の入ったバイアルについては , 固体性廃棄物は可燃物の中に不燃物を混入させない注意が肝要である . また , 針やガラス片など危険なものは別容器に入れ ( 夕、、ンポール箱や缶など固い容器 ) , 詰替え作業に支障のないようにする . 廃棄物の容器 ( 袋や箱 , 瓶など ) の表面は , 汚染しないよう扱う . 袋 , 箱など廃棄物の入った容器には , 必要事項を記入した 廃棄物カードを付け 14 ) , 所定の廃棄物保管庫へ . 12 ) 多数のピペットやスポイトを洗う場合 , 洗液を入れた数本の試験管を一列に並べ ておき , ピべットなどをその試験管の端から順にゆすいでゆくようにし , 洗液を何 本ものピべットに繰り返し使えるようにすると汚染液量をふやさすにすむ . 13 ) バイアルの中に長半減期の RI が残っている場合には , 中の溶液を抜いて不燃物と 水溶液に分けて廃棄する . このとき , 注射針で中の溶液を抜くのがよい . 抜き取っ た溶液の濃度が高い場合には , 希釈してから〔 370 kBq()0 gCi)/cc 以下に希釈〕保 管する . また , 残液の放射能量が 100MBq ( 数 mCi) を超える場合には , その溶液 を石膏で固めることもできる . 14 ) RI 廃棄物カードには , 以下の項目について必要事項を記入 , あるいは相当する記 号を〇印で囲むこと . ①分類・内容物 , ②核種 , ③数量一原液 ( バイアル ) から実験で取り出した数量を 寸算する . また , RI がどのような割合で廃棄物の中に含まれているのかを考えて求 める . GM サーベイメーターによる表面線量率の測定も参考になる . ④見かけ容積 , 一三ロ = 一口
76 5 章放射線の測定機器と測定法 秒当たりの崩壊数にすれば , 2.22X106X10 + 60 = 3.7X105dps / m / となる . また , 3.7X107 Bq = 3.7X107dps ( = ImCi ) であるから , 3.7X107Bq / m / の 32P1m / をェ倍希釈すると すれば 2.22X106X10 3.7X105 1 1 = 10 2 60 3.7X107 3.7X107 よって , 100 倍に希釈すればよいことがわかる . 例 2 : ライフサイエンスでよく使用される 3H を例にして , ( 1 ) 計数率の標準偏差を士 1 % 以内で求めるとすれば : るに当たり必要とされる放射能・比放射能を計算してみよう . 10 000 カウントは必要になろう . 3H を用いる実験をはじめ ( 2 ) 100 10 000 = 100 , = 0.01 10 000 もし , ーっの試料を 10 分間測定することにすれば : 10 000 = cpm=1 000 cpm 10 の計数率があればよいことになる . ( 3 ) もし , 3H を測定する計測器 ( 液体シンチレーションカウンター ) の計数率を 35 % とすれば : 1 000 dpm% 3 000 dpm 0.35 の放射能の強さが必要となる . ( 4 ) もし試料の数が 10 個あるとすれば : 3 000 >< 10 dpm=30 000 dpm は必要である . の放射能の強さが必要となる . 0.12 dpm=250 000dpm = 4.17kBq ( = 0.113 gCi) 30 000 ( 5 ) さらに , 試料の抽出率が 12 % だと考えれば : の 3H が必要となる . 4.17X1.5kBq = 6.26 kBq ( = 0.17 gCi) 最終的に % 増にするとすれば : ( 6 ) これらの予測計算には , 多くの仮定が入っているので安全性をみこんで全体を 50 ( 7 ) さらに , 3H でラベルした化合物を , 実験系の制約から 0.1 〃 g しか添加できないと
96 6 章放射性同位元素等の安全取扱い 〔 4 〕蒸留法および揮発法 この方法は気体または揮発性化合物になりやす いものの分離に有効である . 操作は一般の蒸留法と同じであるが , 無担体分離に この方法を用いるときは , 留出を容易にするために不活性気体を通じながら行わ れることが多い . ただし , この方法は放射能汚染を起こしやすいので , 密閉系で 行うか完全なフードあるいはグロープポックス中で行う必要がある . その他 , ラジオコロイドのろ紙への吸着を利用するものや , イオン化傾向の差 を利用する電気化学的な方法も用いられる . なお , 得られた放射性同位元素の純度を表すとき , 放射化学的純度という言葉 が用いられることがある . すなわち , 他の放射性同位元素 , あるいは化学形を異 にする同一の放射性同位元素が混入している場合で , その質量百分率はきわめて 少なく , 化学的純度から見れば全く無視できるときでも , 放射能的には大変不純 となる場合もある . このようなとき , 放射能の面からみた純度 , すなわち目的と する , あるいは目的とする化学形の , 放射性同位元素の放射能と試料全体の放射 能との割合を放射化学的純度という . 6 ・ 3 ・ 3 標識化合物の合成 放射性化合物をトレーサーとして用いる場合には , それらの目的に合った標識 化合物を必要とする . 近年 , 市販される標識化合物の種類が非常に増大し , その 結果化学や生物学などのトレーサー実験に使用するものは大部分市販されてい る . しかし , それでもなお標識元素 , 標識位置 , 比放射能など実験目的に最も適 した標識化合物そのものが市販品のリストにない場合は , 適当な前駆体を用いて 目的とする標識化合物を合成する必要がある . 標識化合物の合成法は , 本質的には普通の有機化合物の合成法のそれと同じで あるが , 次のような点に注意を必要とする . ます , 標識化合物の比放射能を高く する必要があることが多いので , この合成は微量で行われなければならない . そ のため普通の実験では , ほとんど問題とならない揮発や反応容器への吸着による 損失も見逃がすことができす , これを防ぐためこの合成には連続した各反応をで きるだけ同一容器内で行うような反応装置 , たとえばガラス製の真空装置を組み 立てて使う多岐管システムなどを利用する必要がある . また , 合成法はなるべく 簡単で , しかも同位体の濃度を薄めることなく , かつ高収率であることか望まし い . このためには合成の最終段階にできるだけ近いところで放射性同位元素を導 入するように工夫する必要がある . それにより放射性同位元素の損失を防ぎ , ま