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検索対象: 断ち切れ!虐待の世代連鎖 : 子どもを守り、親をも癒す
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1. 断ち切れ!虐待の世代連鎖 : 子どもを守り、親をも癒す

そう、この雪子こそ「ネグレクト」として親権停止を受けた、あの母親だったのだ 通告前、専門病院に移されて受けた宣告。数週間以内に心臓の手術に着手し、その後も他 の臓器を次々と手術していかなくてはならない。完治はない : 雪子の頭は真っ白になった。まだ生後一週間に満たない娘の柔らかいからだが、メスで切 り刻まれていく映像が襲いかかってくる。 夫と相談し、知り合いの牧師のところへ行くと、「この子なりの天寿のまっとうを受け人 鎖 連 れる」という姿勢も示唆された。 しずれの世 頭の中を、二つの選択肢がぐるぐると駆け回る。心の整理をする時間がほしい。ゝ これが雪子の「思い」だった。 道を選ぶにしても、現実を受容するための時間がほしい。 虐 宣告を受けた翌日、病院で医師から言い渡された。 れ 切 「明日、手術にかかります」 ち 断 突然の一方的な決定に、雪子はさらに取り乱した。 「ちょっと待ってください いやです ! 」 このあと、彼女の胸を突き刺したのは「選択の余地はない」という医師の断一一一口。そして残

2. 断ち切れ!虐待の世代連鎖 : 子どもを守り、親をも癒す

女の頬を思いっきりたたいた : このとき彼女が返した涙ながらの鋭い視線。「大人は、たたけば何とかなると思ってるん や ! たたかれたもんの気持ちなんか、お前にはわからんのや ! 」との心の叫び。 「この言葉が心に突き刺さりました。一瞬にして、私の心の中が変わった。あの子の目は ぜったいに忘れません」 「私は本当に相手のことなど考えていなかった : 「相手」とは、子ども時代の自身の姿だ。子どもの思いに向き合わないことで、虐待環境鎖 代 を生き抜いてきたのだった。少女は真実を見事に代弁してくれたことになる。 世 の 待 虐 れ 切 ち 断

3. 断ち切れ!虐待の世代連鎖 : 子どもを守り、親をも癒す

: ・」、「私今まで、なんのために生きてきたの ? 」。 「私、自分のことがわからない : そして、「私は、両親にわかってほしかった ! 」と、絶叫。大きく身をよじった : 「もうがまんしない」と言い捨てた麗子は、夫に離婚を突きつけ、年老いた両親に対して「遅 咲きの反抗」を始めた。そして義父母にも意見した。 ここまでくれば、暴力の再現にも転機が訪れたことになる。これから家族は、変化へ向け て動き出すのだ。 夫婦の間題を解決しようなどと考えなかった麗子をカウンセリングに向かわせたのは、幼鎖 い息子の暴力だった。まだ子どもが小さいうちに再現性に気づくことができれば、子どもの世 の 待 間題は、親にとって紛れもなく「宝物」になる。 虐 れ 切 ち 断

4. 断ち切れ!虐待の世代連鎖 : 子どもを守り、親をも癒す

妻がダウンしたことで、夫は自ら体職を申し出て、家族のために食事を作ったり、娘と買 い物に出かけたりするよ、つになったのである。 「あんなやつら ( 千恵子と娘 ) に死なれてしまっては、腹の虫が収まらない」というのが、 夫の理屈だった。 苦労する親の姿を見せることで伸び伸びと子どもが生きられないとすれば、これも虐待と 呼ばねばならない。その人たちの心の辞書には、「前向き」の言葉がないから。前を向こう とするときは、その矛盾を生きるために、しばしばとんでもない理屈を考えだす。 連 千恵子に「死ねばたましいはなくなりますよ」と言うことは、死なない理由を奪い取って世 の 待 しま一つことにほかならない 虐 「勇気がないから」というのも、死なない理由を作って精一杯に生きようとしていること れ に変わりはないのだ。 切 ち

5. 断ち切れ!虐待の世代連鎖 : 子どもを守り、親をも癒す

教師をしていた父親から暴力や暴言を受けて育ったこと。母親は、道夫が小学生のときに いなくなったこと。以前、他の自治体で教師をしていたが、体罰沙汰が間題となって解職さ れたこと : そして彼は、「もう子どもをカで押さえつけることはしたくありません」と 締めくくった。 その翌日、道夫は出勤した。相変わらずクラスは混乱状態が続き、周囲からは厳しい指摘 が浴びせられた。しかし彼は、子どもを怒鳴ることも、棒を叩いて脅すことも、平手打ちす ることもしなかった。「ダメ教師」のレッテルは決定的となった。この年を最後に彼は教員連 代 世 を辞め、遠い地に住まいを変えた。 の 最近、私は道夫に会ったという人から、彼がこう語ったと聞かされた。 虐 れ 切 ち 断 「あの三十分がなかったら、自分はいない」

6. 断ち切れ!虐待の世代連鎖 : 子どもを守り、親をも癒す

「私ごとで大変恐縮です : : : 」 控えめに始まる、陽子から届いた手紙だった。 「小四の息子が、病院でと診断されました」 鎖 と私は田っ なるほど、子どもの「病気」の相談か : 代 世 「それから、とても悩んでいるのです」 の おや ? 彼女は、子どもの間題の原因が明らかになってから悩みだしたというのだろうか 虐 専門家たちが口をそろえて指摘するように、「しつけのせいではなかったと気づくこ れ 切 とで、親たちは救われる」はずなのだが ち と診断される子どもたちは、小学校で学級崩壊現象が問題にされた頃から爆発的断 に増えた。今では小学校教師たちが日常的に用いる言葉になっているし、私もこの診断を受 けた子どもたちに本当によく出会う。

7. 断ち切れ!虐待の世代連鎖 : 子どもを守り、親をも癒す

宿題 楽しい夏体み。しかし子どもたちの歓声も、すぐに悲鳴に変わるだろう。そう、山と積ま れた宿題が待っている。 それを出した教師には思いもよらないことだろうが、一部の子どもにとって、宿題は虐待 される理由なのだ。 代 世 「これ、見てください」と、典子は一人息子 ( 小四 ) の漢字ノートを指し出した。それは の 見るも無残に折れ曲がり、あちこちが裂けている。はじめの数ベージには、勉強のあと ( 漢待 字の書き込み ) があった。 れ 切 典子は続ける。 ち 断 「夫がこれで子どもの頭をめった打ちにしたんです ! 」 なかなか宿題をやらないので、夫は激怒してこのノートで何度も殴ったのだった。 「これはもう使えないから、新しいのを買ってやります : : : 」と典子は涙する。

8. 断ち切れ!虐待の世代連鎖 : 子どもを守り、親をも癒す

「あそこ」とは父親の性器のことだった。私は一瞬、返す一一一口葉を失った。 絵里が「父親」を握り返すようになったのは、高校に人学した頃だった。そうすることで、 父親の機嫌がよくなるのだ。 私「お母さんの見えないところでするの ? 」 鎖 絵里「見てるところだよ」 連 代 私「注意してくれない ? 」 世 の 待 『お父さんはじゃれてるのよ』って言う」 絵里「別に : 虐 私の脳裏に「止めない母親」の問題性が浮かび上がる。最近、同じような二組の事例にか れ かわったが、これら親子には共通した特徴がいくつかあった。 切 母親が父親の「ちょっかい」をかばうこと。娘も父親にやり返していたこと。父親が暴力断 をふるった時期があったこと。 私は絵里に続けてたずねた。 絵里「あそこを : : : 」

9. 断ち切れ!虐待の世代連鎖 : 子どもを守り、親をも癒す

率直に書こう。などの子どもの脳機能障害を「子どもの病気」と見るべきではな それは、親と子の「ぶつかり」が凝縮して表れたサインなのだ。サインは、正しく読み 解かれることに意義がある。 手紙には、教師から言い渡された一言の引用もあった。 「診断名のある病気ですから、学校でどうにかできるというような範囲ではありません。 病院に聞いてください」 鎖 ムは、学校の「病気なら、教育ではなく医療の領域なのだ」という腰が引け 代 世 た姿勢によって後押しされている。 の 陽子の手紙を読んで、私はつくづく思う。「病気」を見ることをやめ、「人間」、すなわち待 家族の「思い」を見ていこう ! れ 切 陽子の手紙は、私への「試し」で締めくくられていた。 ち 断 「助けてください。この手紙を燃やしてください」 陽子のように、「体罰 ( 虐待 ) で育てたから、落ち着きのない子になった」と理解する親

10. 断ち切れ!虐待の世代連鎖 : 子どもを守り、親をも癒す

「あのお : 私の不注意からなんですけど : ・ こう言いかけて、ひとみは話すのをやめた。そしてはにかむように微笑むのだった。 「どうしてそんな場所に行ったのか、自分でもよくわからないのですが : また少し話し、すぐに止まる。そして一段と大きく微笑むと、意を決したかのように、衝 撃的な経験を告白したのだった。 犯罪被害 親から裏切られてきた人たちは、心に、闇を包み込む膜をもつ。それが分厚く、固いのは、 「期待しない」を信条として、さらなる傷つきから心を守ってきたからである。 だからその人が真実を語り始めるとき、この膜の「周辺」で、長いらせんの道を辿らなけ 鎖 ればならない ひとみの場合もそうだった。彼女が「核心」を語るまでに、実に二年にも及ぶ時間を要し世 の 待 ていた。 虐 れ 切 ち