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検索対象: 機能不全家族 : 「親」になりきれない親たち
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1. 機能不全家族 : 「親」になりきれない親たち

ら、自分本位のナルシシストか、他人のことばかり気にして自分を見失う共依存の人間をつくり あげてしまいそうです。それを考えたらぞっとして、それで家族ともどもアメリカに移ることに したのです」 私は、アメリカでの長年の精神療法家としての経験から、再度、反論を試みました。 ーしいるでしよう。機能不全の家族の中 「アメリカにだって、ナルシシストや共依存の人はいつよ ) で育ったアダルト・チルドレンたちは、そういうタイプになりやすく、私のところにもわんさと る治療にやってきますよ てすると、彼はここぞとばかり、たたみかけてきました。 増「そこが日本と違うところなんです。日本人は、自分に問題があって、治す必要があるというこ 族とに気づいていないのです。 の多くのアメリカ人は少なくも現実を見つめ、自分の息苦しさを認めて、なんとかしようと、サ 全イコセラピー ( 精神療法 ) の門を叩きます。自分自身の不全な行動や人間関係を子どもには伝え 能ないように、自分の行動や思考を調べ、新しい健全なコミュニケーションのあり方を学ばうと努 力します。この違いは大きいと思いますよ」 章 これには私も反論できず、こちらがロごもったまま論争は終わってしまいました。 第

2. 機能不全家族 : 「親」になりきれない親たち

そんなふうにして、成績や業績一辺倒の働きバチをつくっておきながら、バブルがはじけたと いって、簡単に従業員の首を切ってしまう。そこには、人間としての豊かさなんて、微塵も感じ られません」 彼の日本人批判は、どんどんエスカレートしていきます。私も日ごろは同じようなことを感じ ていましたが、アメリカ人にそこまで一方的に言われたら、ムラムラと〃愛国心。が湧き上がっ てきて、反論せずにはいられませんでした。 「アメリカ人だって同じようなものじゃありませんか。ダウンサイズとかいって、簡単に社員を 解雇するでしよう。子どものアルコールや薬物の乱用、銃を使った暴力や殺人 : : : 無茶苦茶じゃ ないですか。子どもの育て方がおかしいのは、日本だけじゃないと思いますけど」 「たしかに、そのとおりです。ただ、大きな違いは、アメリカでは問題があったとき、私たちで なんとかしようとはたらきかけができることです。たとえそれが成功しないまでも、自分と同じ ような意見をもった人たちと協力して、問題に正面から対処しようとします。 でも、日本では、『くさいものにはフタをしろ』で、事実を見ようとしない、あるいは見て見 ぬふりをする。しかも、それをまわりの人にも要求するんです。 そして、子どもにも、個性をつぶして、他人の顔色をうかがいながら生きるように教え育てま す。そんな日本の家族には、ほとほと愛想がっきました。こんな社会で自分の子どもを育てた みじん

3. 機能不全家族 : 「親」になりきれない親たち

日本の家族もなんと約八十パーセントが機能不全 私はこれまで何千人というアメリカ人を診療してきましたが、自分の育った家族の中で、親か ら受けた心の傷 ( トラウマ ) を癒し、自分の子どもに同じ傷を与えないようにと、治療や勉強を 続ける父親や母親たちのけなげな姿が浮かんできました。 私の経験では、約八十パーセントのアメリカ人が機能不全の家族の中で育っており、身体的、 性的、精神的虐待 ( アビューズ ) を受けて成長した人たちです。 こういう人たちが、健全な父親、母親のあり方を知らないのは当然だと思います。このような アダルト・チルドレンと呼ばれる人たちは、精神療法を受け、山ほど出版されているその関係の 本を読み、自助グループに参加し、ワークショップや勉強会に出席して、なみなみならぬ努力を して自己の改善につとめています。いまや、これは草の根的な社会ムープメントとでも呼ぶべき ものとなって、全米に広がっています。 ただ、日本もアメリカ人の彼が言ったとおりではなく、このごろは変わってきたと思います。 私も七、八年前までは、日本では、精神的な問題を認め、真剣に考え、自分の人間としての成長 に関心をもって精神療法やカウンセリングを受けたりすることは一般には受け入れられないだろ うと思い込んでいました。

4. 機能不全家族 : 「親」になりきれない親たち

ところが、一九八九年以来、日本から依頼がくるようになり、毎年、講演、ワークショップ、 グループ精神療法を日本の各地で行なっています。年々、心理学に興味をもつ日本人が増え、自 分の人間性を見なおし、心の成長に努力したいという人が増えています。 たしかに、アメリカより二十年ほど遅れているような気はしますが、家族から受けた心の傷を 癒したい、 次の世代に同じような不全な人間関係を伝えてしまいたくない、健全な行動、思考、 感情、コミュニケ 1 ションの仕方を習いたいという切実な声が、私のところにも届くようになっ るてきました。 っ私の見たところでは、アメリカと同様、日本の家族も八十パーセント近くが機能不全を起こし え 増ているように思われます。そして、まだ多くの日本人が、現実を直視しようとせず、家族のあり 族方が子どもにおよばす影響について、真剣に考えようとはしていません。でも、変化は確実に起 のこっています。 全 ただ、そのことに気づきはじめても、まだ、自分が機能不全な家族から受けた心の傷をどうや 不 能って癒したらいいか、、 とのようにしたら機能する家族をつくっていくことができるか、健全なペ アレンティング ( 親業 ) とはなにか : : がわからないでいます。 一そこで、アメリカで二十五年にわたって世界中のいろいろな民族の人たちを治療してきた経験 第 から、人間生活の基本ともいえる家族関係の中での父親業、母親業、すなわち親という仕事のあ

5. 機能不全家族 : 「親」になりきれない親たち

日本から逃げ帰ったアメリカ人 サンフランシスコの友人宅で開かれたパーティの席で、最近、日本から逃げ帰ってきたという アメリカ人男性と出会いました。 日本に四年間住んでいたのだけれど、とうとう耐えられなくなったというのです。日本人の奥 さんと子どもも、まもなくカリフォルニアに引っ越してくるそうです。 彼は大の日本びいきで、日常生活に不自由しないくらい日本語も話せたし、日本の伝統文化や 家族を大切にするところなどに憧れていたので、四年前に東京で働くことになったときには、願 いがかなって有頂天だったそうです。 それなのに、なぜ、逃げ帰ってくる羽目になってしまったのでしようか。 「最初のうちはなにもかもが目新しく、京都にも何度か通って、お寺めぐりをしたり、庭園を訪 ねたりしていました。会社の人たちもすごく親切で、楽しい毎日でした。日本人女性と結婚し、 子どももでき、私は日本に骨を埋める覚悟でした。 たてまえ でも、二年くらいすると、だんだんアラが見えてきたんです。こんなに本音と建前が違う社会 をいままで経験したことがなかったので、びつくりしてしまって : 当初は海外からのお客さんとして丁寧にあっかってくれたけど、社会になじむにつれてだんだ あこカ

6. 機能不全家族 : 「親」になりきれない親たち

ま、んかき 第一章「機能不全」の家族が増えている 日本から逃げ帰ったアメリカ人 日本の家族もなんと約八十パ 1 セントが機能不全 親 00 」げ 0 」一 = 一〔』 0 」』〈 0 響 0 与、 0 一 「親になれば子どもの育て方は自然にわかる」なんてウソ 自分自身が健全かどうか考えてみよう まずは自分を愛し、大切にすることから 虐待された子どもは、親になってまた子どもを虐待する 親からの性的虐待ほど子どもを傷つけるものはない 目次◎

7. 機能不全家族 : 「親」になりきれない親たち

私は長いあいだ、アメリカと日本で何千人という人たちの精神療法にたずさわってきました。 これらの人たちの多くは、自分が育った家族の中で、心に傷がついた人たちです。その影響の ため、現在、大人になってからも、心苦しく生きています。 うつに落ち込んだり、心身症で身体の調子が悪かったり、他人とうまく人間関係がもてなかっ たりと、いろいろな障害にまされています。 こういう人たちのカウンセリングをしながら、いつも思うのは、なんとかこのようにむに傷が ついて後遺症が残ることを防げないだろうか、ということでした。 もし親たちが健全な人間関係を子どもと築いたならば、これほどまでに傷つくことはないので 。ないかということが、私の強い思いでした。 きそこで、私のところへ相談に来る人たちに、自分が育った家族で、どういうことが傷つき体験 、カ えになり、どういうことが自分の人間形成に役に立ったかをインタビューしつづけてきました。 ま それをもとに、機能する家族とはどんな家族か、そういう家族を築くにはどうしたらいいかを ま、んかき

8. 機能不全家族 : 「親」になりきれない親たち

たあとで考えるとして、今日ここではっきりさせておきたいのは、さっき言ったことだ」などと 言って、本題からそれないよう修正していきます。 あとは、これまでに学んだリフレクテイプ・リスニング、アクテイプ・リスニング、アイ・メ ッセージ、リフレイミング、エンパシー、ヒーリング・スペースなどの技術を縦横に駆使してコ ミュニケーションをとっていきます。 日本人の家庭のコミュニケーションのとり方には、乏しさを感じます。「勉強したか」「宿題は れしたの」「ごはんができたわよ」とか、最初から、子どもから「うん、という返事しか返ってこ ないような聞き方しかしていないケースが、すごく多いように思われます。 の もちろん、アメリカにもこういう家庭はありますが、多くの場合、親と子は対等にコミュニケ っ ーションをしていますし、子どものころからそういう話し合いの練習をしています。 ま てアメリカは多民族国家ですから、言いたいことをはっきり伝えることができないと、社会に出 ざたときに、それだけで相当のハンディキャップとなってしまうからかもしれません。 日本もこれからますます進む国際化に対処できるように、日本の親子の間でも豊かな話し合い ができるようになればと思います。 章 四自己主張がはっきりできて、しかも思いやりのある心のふれ合いを目標としたコミュニケーシ 9 第 ョンでありたいものです。

9. 機能不全家族 : 「親」になりきれない親たち

いは同じような出来事に対する反応でも、そのときそのときでまちまちだったりすれば、周囲の 人はだんだん遠ざかっていくでしよう。とくに父親の怒りの爆発は、家族にとても大きなインパ クトを与えます。 男の子に性教育をするのは父親の仕事 私は毎年、日本とアメリカでリプロセス・リトリートというワークショップを開いています。 局これは、子どものときに家族から心に傷を受けた人が、その体験を再現し、やり直しをすること まによって、その傷を癒し、現在の自分をよりよいものにしていくということを目的としたプログ あラムですが、このときにもっともよく出てくるのが、父親との人間関係の欠如、父親による暴力 、も どそういう体験談に接するたびに、どうしてこんなにエネルギーとパワーを使って妻や子どもを がくぜん の痛めつけなければならないのかと、愕然とさせられます。 宀な これほど弱い立場の人間を虐待するのは、よほど自尊心が低いか、父親自身が心に傷を負って あ いる証拠だと思います。 六あるいは、逆に、ウインプと言われる弱々しい父親になってしまうケースもあります。これ は、自分の主張ができず、いつも妻の言うことにしたがっているだけの、バックポーンのない父 2 ララ

10. 機能不全家族 : 「親」になりきれない親たち

らかしにされているおもちやを指さします。いやいやながらも子どもが片づけたら、すかさず、 「約束を守ってくれてありがとう」 と感謝の言葉を口にします。それでも言うことを聞かない場合は、 「あなたが大切にしているものではないと判断して、チャリティに寄付します。おもちゃがほし い子に使ってもらいますー それでも片づけなかったら、ほんとうに寄付してしまってください。それが、理屈に合った行 を 為です。 レ アメリカ人の親の中には、親が子どものおもちやを拾って自分の箱の中に入れておいて、子ど る え もの小遣いで買い戻させるということをしている人もいます。自分と子どもの尊厳を失わずにで レ」 きる、独創的な方法を考えてください。 子どもが優先的にしたいことと、親が子どもに優先的にしてもらいたいこととは違うのが当殀 ノ もです。 子 1 も 親は子ども部屋の掃除をしてほしいのに、子どもはテレビを見ている。勉強するときはいやい 親 ゃなのに、テレビゲームをするときはいきいきしている。親とは面倒くさそうに話すのに、友人 五と電話で話しているときはとても明るく話す。 第 こうしたことは、親にとっては気に入らないことでも、子どもにとってはごく自然のことなの 2 1 1