された自我と高い自尊心なくしては、子どもを健全に育てることはできません。 自分の心の傷が癒されていなければ、「私はダメな人間だ」などと思うことが多くなり、どう しても自分に対する評価が低くなりがちです。 いろいろな心身症にまされたり、うつや不安症に落ち込んだり、 ( 心的外傷後スト ぎやくたい レス後遺症 ) の症状を呈したり、配偶者や子どもを虐待したりするようになります。 自分本位のナルシシストになったり、極端に防衛的になったり、共依存になったりと、その弊 る害は数知れません。自分の心が癒されず、このような問題を抱えていては、健全な親業ができる つはずはありません。 え 増ですから、私の著書『アダルト・チルドレン癒しのワークプック』 ( 学陽書房 ) を読んだり、 族サイコセラピストに相談するなどして、まずもって自分自身を癒すことに力を入れていただきた 家 のいのです。 全そして、その中で、これまで自分がよかれと思ってしてきたこと、周囲がやっているから、あ ~ 月るいは親がこうしていたから自分もやっているというようなことが、ひょっとしたら子どもには いま一度、直視してみてい 思いもかけず障害になっているのではないだろうかという観点から、 章 一ただきたいのです。自分の傷を癒すことは、それまでの自分の無知を思い知らされることになる 第 かもしれません。しかし、そのことを恥じる必要はまったくありません。
親の不幸を子どもに押しつけるのと変わりありません。よく、 「子どもだけが、私の生きがいです」 と言う親がいますが、これでは、子どものほうがありがた迷惑です。親の身勝手な幸福を背負 わされた子どもが、そこに自分自身の幸福を見出せるでしようか。また、子どもに面と向かっ て、 「あなただけが頼りなんだから、頑張ってね」 などと一一一一口う親もいますが、子どもにとってはなんの励みにもならないどころか、プレッシャー となって子どものスピリットを押しつぶすだけです。 子どもが有名校に入ることを、自分の勲章のように思っていないでしようか。自分の不幸を子 どもに慰めてもらおうとしていないでしようか。 自分の老後の保証を子どもに託していないでしようか。「こんなに苦労して育てたのだから ということで、子どもになんらかの見返りを期待してはいないでしようか。自分が子どもに必要 とされる、子どもにありがたがられることで自分の存在価値を上げようとしていませんか。 「子どものために」という名分のもとで自分の願望や欲望が渦巻いていないか、無意識のうちに 自分の願望を押しつけてはいないか、よく調べてみることが必要です。 ほんとうに子どもに幸せになってほしいなら、子どもを自分とは別の人格をもった一人の人間
恐怖心から自分の意見を言えず、耐えることを強制されてきました。家庭以外、自分のもっ能力 を発揮できる場も制限されてきました。 その結果、まわりの人間の世話ばかりして自分自身を見失うという共依存症的な弊害におちい りやすくなっています。 しかし、そのことがもたらす子どもへの影響は、けっして小さなものではありません。それだ けに、母親は自分自身の能力をおろそかにしていないかいま一度チェックして、子どもの将来に かこん 禍根を残さないように共依存症の対処法を身につけていくことが必要になるのです。私の小冊子 と 0 『コ・デイベンデンシー ( 共依存症 ) からの回復』 ( ヘルスワ 1 ク協会 ) を参考にしてくだ 母親は、とくに小さいときから女の子に他人中心の生活を無意識のうちに強いることが多いの で、注意が必要です。 女の子を育てる場合は、自分の思っていることを堂々と表現できるように援助しましよう。適 当な自己主張をしたときには、機会を逃がさずほめてやってください。 また女の子に何かを教えるときは、真正面から目をしつかり見て話すのが効果的だと言われて います。ある研究報告によると女の子の場合、自分の意見をはっきり言えることが、将来の自分 の幸福と自信に密接に結びついているということがわかりました。 260
まず、カずくではダメだということは、すでにおわかりでしよう。それがいかに正しいことだ と思っても、相手をコントロールして自分の思いどおりにしようとする試みは、逆の効果しか生 みません。 親が子どもに聞いてほしいこと、わかってほしいことというのは、あくまでも親自身のニーズ であるということを認識しながら話すことがかんじんです。 その裏に、子どもを自分の思いどおりに改善したいとか、子どもはこうあるべきだといった意 図が隠されていたら、うまくはいきません。 良好な人間関係ができていて、親が子どもの人格を尊重し、プレッシャーをかけず、コントロ ールしようとしなければ、かなりきびしいことを話すことができます。それに対して、子どもが 違う意見をもっていたり、親の一一一一口うとおりにしなくても、それはそれできちんと受けとめる必要 があります。 なんとか子どもを説得して自分の考えを受け入れさせようというのではなく、どういう話し方 をしたら、子どもが親の話を真剣に聞いてくれるかという観点から考えてほしいのです。 そこで、もう一度思い出していただきたいのは、子どもは最終的には親の庇護のもとから離れ ていくもの、親とは違ったアイデンティティをつくり上げていくもの、子ども自身が必要とする 人間関係を築いていくものだということです。
乂親の役割、母親の役割郵 乂親はもっともパワフルな存在 最初から守れない約束はしない 男の子に性教育をするのは父親の仕事 父親にはない母親の能力 出産、子育ては大変なこと 親業を母親一人でするのは並大抵のことではない 子どもの相談はもっとオ 1 プンに 他人から見たいい親ではなく、自分自身が満足する親に 自分を愛せなかったら、子どもも愛せない もう一度、自分の人生をやり直す方法 子どもとともに、心の中に幸せを 2 5 5
たら、ダメなんだ」というような、 " 親の権威〃だけで押しつけるやり方では、破るためのルー ルにしかなりません。 子どもの生活に直接影響があるようなルールは、子ども自身が参加してつくれるようにもって いくことがかんじんです。 たとえば、兄弟げんかがひどい場合、親が一方的に、「兄弟げんかはするな」と命令するだけ では、なにかが欠けています。 けんかをするからには、双方の意見が異なり、それぞれに言い分があるわけです。それを冷静 に話し合える場をつくってやります。そのためには、ふだんから怒りの処理法や論争処理法を教 えておくことが大切です。 「おたがいに相手からどうしてほしいか、どうしてほしくないかを話し合ってごらん」 そこで、共同生活のうえでは、自分がされたくないことは他人にもしないという原則を教え、 不公平にならないためにはどうしたらいいかを、彼ら自身に考えさせます。そうした彼ら自身の 話し合いの中からルールをつくるように手助けをするのです。 たとえば、チャンネル争いなら、あらかじめ番組表を見ながらおたがいに話し合って、不公平 にならないように順番を決めさせる。スポーツ実況などは即時性におもしろさがありますが、ド ラマなどはビデオにとってあとで見ても、それほど違いはありません。そういったことも考慮に
また子どもに対して、なんでも人を頼ったり、人のせいにしたりすることなく、自分の人生を 自分で切り開き、自らの行動に対しては自分で責任をもつような人間になってほしいと願うな ら、親がまずそういう人間になって、モデルを示すことがかんじんです。 他人を愛する力、いつくしむ心を 自分自身がいかに幸せに感じたとしても、それが利己的なものであり、そのことによって他人 に迷惑をおよばしているとしたら、社会の一員としては失格です。 どれほど独立心があり、自分の行動に責任をとったとしても、そこにやさしさや愛情がまった くなかったとしたら、共同体の中ではうまくやっていけません。 私たちはとかく自分の見方だけで全体を見てしまいがちですが、人それぞれにいろいろな考え 方があり、やり方があります。 自分の考え方、やり方を認めてほしかったら、それを他人に押しつけるのではなく、他人の考 え方、やり方に理解を示すことが大切です。 私たちはものごとを自然に自分の見方で見ていますが、それゆえに、相手の立場に立って考え るためにはそれなりの努力が必要となります。 しかも、そのさい、自分の見方をなおざりにして、他人のことばかり気にしていたのでは意味
ま、んかき 第一章「機能不全」の家族が増えている 日本から逃げ帰ったアメリカ人 日本の家族もなんと約八十パ 1 セントが機能不全 親 00 」げ 0 」一 = 一〔』 0 」』〈 0 響 0 与、 0 一 「親になれば子どもの育て方は自然にわかる」なんてウソ 自分自身が健全かどうか考えてみよう まずは自分を愛し、大切にすることから 虐待された子どもは、親になってまた子どもを虐待する 親からの性的虐待ほど子どもを傷つけるものはない 目次◎
まず、自分の行動に注目し、自分がどうして不健全な行動をとるのか、自分に聞いてみてくだ さい。そのとき、自分を責めたり、恥じたりしないで、自分の感情に規律と責任をもって、ゆっ くり質問していってください 自分を愛していますか。自分を愛せなかったら、子どもも愛せないことを思い出してくださ 自分を肯定し受け入れていますか。自分をやさしく受け入れることが、子どもを温かく受け とめるための前提になります。 局あなた自身の感情のあり方が、子どものものの感じ方に影響します。あなたにはすべての感情 まを感じる権利がありますが、それをそのまま子どもに押しつける権利はありません。そうである あなら、自分の感情のバランスがひどく崩れないように、自分でケアをすることが大切です。 「あなたが疲れていたら、休む権利があります。おなかがすいていたら、食べ物を食べる権利が 、も どあります。適当な運動をして身体を健康に保つ権利があります。ストレスがあったら、リラック のスする権利があります。 な いやなことには、「ノー」という権利があります。気が沈んだり、イライラしたら、思いきり あ 楽しいことをする権利があります。 六自分の考えを、健全な方法で主張する権利があります。自分の生き方、自分の個性を大切にす 第 る権利があります。 269
響力をもっ存在はほかにありません。だからこそ、子どもの健全な発達を願うなら、親業のテク ニックを習得しておく必要があるのです。 いま親である人も、将来親になる人も、まず自分の心を癒し、親や自分自身を責めるのはやめ て、親業の技術を身につけ、次の世代の健全なる発達に貢献していただければと思います。 すでに心が傷つき、障害となっている人を治療するには、長い時間とたくさんの費用がかかり ます。そうした被害をできるだけ少なくしたいというのが、私の切なる願いです。