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検索対象: 毒になる親
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1. 毒になる親

を及・ほす」と語っているが、実際、英語では、「心」に有害な感情や、それを引き起こすもとになっ た人間のことも toxic ( 有毒な ) という表現をする。また、 contamination ( 汚染 ) という言葉も、 環境問題ばかりでなく「心」の問題でも用いられ、「心が汚染される」という言い方をすることがあ る。著者も述べているように、本書の原題 TOXIC PARENTS とは、そのような親をあらわすのに まさにびったりの表現である。 今後、二十一世紀には、「心」や「感情」の問題が人間にとってますます重要な課題となってくる ことは間違いない。国の将来も、ひいては人類の将来も、一人ひとりの人間が「毒」で「汚染」され ない「心」や「感情」を持っことができるかどうかにかかっている、と言ったら、大げさだと笑われ るだろうか。私にはどうもそのように思えてならない。少しでも多くの人々がこの問題について関心 を持たれ、理解を深められることを願ってやまない。 本書の出版にあたっては毎日新聞社出版局の永上敬氏に大変お世話になりました。この場を借りて 厚くお礼申し上げます。 玉置悟

2. 毒になる親

このように、多くの状況のもとでは、感情がわき起こる直前に、常に家で培われた「考え」が無意 識のうちにあなたの全身を駆けめぐる。この「考え」がどんなものか、そして、それと「感情」との 道 す つながりを理解することが、自減的な「行動」に走ることを止めるための第一歩だ。 取 を 「感情」のチェック 生 人 ら どんな人間でも、「親」というものに対しては感情的な強い反応が起きるのが普通である。その感 親 については、よく自覚している人もいれば、無視することで自分を守ろうとする人もいる。自分の 自然な感情を心の奧深くに埋めてしまうことに置れてしまった人は、ますそれを掘り起こして、自分 の感情というものに馴染む必要がある。その練習のために、つぎに示すチェックリストを見てはしい。 その際、自分の感情がはっきり自覚できない人は、自分の親と同じような人間を親に持った人はど のような感情を抱くだろうか、と他人事のように想像してみるのもよいだろう。セラピストの助けな しには自分の深い感情をさぐることができない人も多いが、そういう場合でもその人の感情はなくな っているのではなく、どこにしまい込んだのかわからなくなっているだけなのである。いすれにせよ、 どのような方法を取るにしても、自分の「感情」をはっきり認識することなしに、これより先に進む ことはできない 押さえ込まれて自覚していなかった感情が表面に出てくる時には、しはらくの間、非常に不央な気 分が続くことがあるので、ゆったりと構えてあまり先を急がないことが大切だ。専門家のセラピーを

3. 毒になる親

あっても、子供のむには計り知れないネガテイプな影響を与えてしまうことがある。 私たち人間にとって、子育てというのは決定的に重要な技術を必要とする仕事のひとつなのだが、 残念なことに、ほとんどの家庭においては経験から学んだ勘を頼りに手探りで進んでいかなくてはな らないのが実状だ。この分野の研究が進んだのはごく最近のことであり、私たちの親の世代までは、 子育ての方法については、ほとんどの場合あまりそれが上手ではない人々、つまり彼ら自身の親から 学ぶ以外になかったのである。私たちは親が自分を育てたやり方を見て気づかない間に学び、自分に 子供ができた時には無意識のうちにその多くを模倣してしまう。こうして世代から世代へと受け継が しまでははっきり言って間違っていると一三ロえるものが れてきた子育てのための古いアドバイスには、 ) たくさんある。「子供は叩いて育てろ」などはそのいい例である。 「毒になる親」は子供の将来にどのような影響を与えるか 「毒になる親」に育てられた子供は、大人になってからどのような問題を抱えることになるのだろう か ? 子供の時に体罰を加えられていたにせよ、いつも気持ちを踏みにしられ、干渉され、コントロ ルされてはかりしオ ) こにせよ、粗末に扱われていつも一人ばっちにされていたにせよ、性的な行為を されていたにせよ、残酷な一言葉で傷つけられていたにせよ、過保護にされていたにせよ、後ろめたい 気持ちにさせられてばかりいたにせよ、いすれもはとんどの場合、その子供は成長してから驚くはど 似たような症状を示す。どういう症状かといえは、「一人の人間として存在していることへの自信が 19 はじめに

4. 毒になる親

さらに、とかく「今度こそうまくやれるに違いない」と田 5 って過去のトラブルをまたくり返してし まうということもある。無意識のうちに苦しみに満ちた昔の体験をもう一度演しようとすることを 「衝動強迫的な反復」という。 くら強調してもしきれな この衝動強迫がいカ : リ こ虫く人々の人生を支配しているかということは、い い。はとんどすべての自滅的行動、とりわけ男女の関係で必すごたごたする人やいつも相手との関係 を自分でつぶしてしまう人の行動は、この「衝動強迫的な反復」という観点から説明がつく。彼のケ ースはその典型的な例である。彼もアル中の親を持ったほとんどすべての子供と同じように「二度と アル中の人間とは関わり合いを持つものか」と思っていたのだが、心の奧底に深く根づいた無意識の 力は、意識のカよりはるかに強力だったのである。 なせ同じことばかりくり返すのか アルコール中毒者が同じことをくり返す力の強さを物語る例として、「もう一一度と暴力を振るった 親 の りしない」と何度約束しても、またそれをくり返す人間というのがいる。約束を反古にするのはアル 中 コール中毒者によくみられる特有の問題のひとつである。 つぎの例は、ある病院のアルコール中毒治療のリハピリセンターで働いていた女性のケースだ。多コ くの同様のセンターで仕事をしている人たちと同じように、彼女もかっては自分もアルコールと薬物ア の中毒だった。彼女は職場の上司の指示で、私の行っているグループ・セラピーに参加してきた。そ

5. 毒になる親

彼の心に一生消えない恐怖むと孤独感を植えつけた。彼はまだ若いのに、すでに結婚に二回失敗して いたが、それは子供のころに人を信頼することを学んだことがなかったからだった。 親 ん 家を出て社会人になっても、結婚しても、いつも何かが不安で、怯える気持ちがなくならない そんな自分がいやで仕方がないが、親からあのような扱いをされて育った人間が世の中に出てどし 親 うなるというのだ。昔から異性関係では長く続いたことがない。 きっと、心の底から人と親しく る なることができないからなのだろう。とにかく、人生というものがわけもなく不安で、これをなな んとかしない限り自分はどうにもならないだろうということはわかっている。だからセラピーも 一生懸命受けているが、とてもつらい 親から暴力を振るわれ、人間性を踏みにしられた子供が、親に対する信頼感と安心感を回復するの は容易なことではない。人間はだれでも、人は自分をどう扱うか、ひいては社会は自分をどう扱うか、 という概念を、成長していく過程で親との関係をもとに形作っていく。それゆえ、もし親との関係が 基本的に子供の安定した情緒をはぐくみ、人格を大切にするものであるなら、その子供は情緒的に安 定した人間に育ち、世の中は基本的には自分を受け入れてくれる場所であるという感覚を持った人間 になることができる。そしてそのようなポジテイプな感覚を持っことにより、対人関係においても他 人に心を開き、自分の弱点を外部にさらしても比較的平気でいられる人間になれるのである。 だがその反対に、子供時代に常に緊張と不安にさらされ、苦しみを強いられてきた人間は、成長す

6. 毒になる親

ギリシャ神話に登場する神々はオリンポス山の項上に住み、地上を見下ろしては人間のするあらゆ ることに裁定を下した。そして、人間が何か彼らの気に入らないことをすれば、ただちに罰を下した。 彼らは優しい神々である必要はなく、公平であることも正義を守る必要もなかった。実際、彼らは気 まぐれで、非合理そのものだった。彼らの怒りにふれようものなら、人間はたちまち山びこに変えら れたり、巨石を押して坂の項上まで登ることを永遠にくり返さねはならなかったのだ。神はその時の 気分で何をするかわからないので、人間は常にビクビクして暮らさねはならなかった。心のなかに 「恐れ、の種を植えられていたのである。 多くの「毒になる親 . とその子供たちとの関係は、このギリシャ神話の神と人間との関係によく似 ている。その時の親の気分でどんな〃罰〃を受けるか予測のつかない子供は、内心いつもビクビクし ていなくてはならない 小さな子供にとって、親は生存のためのすべてであり、そういう意味では、いわば神のようなもの である。親がいなけれは、自分を愛してくれる人間を他に見つけることはできす、外部の世界から身 を守る方法も知らす、住む場所も食べ物も手に入れることができす、絶え間ない恐怖とともに暮らさ 一章「神様 . のような親 「毒になる親」とはどんな親か 32

7. 毒になる親

生を取り戻すことは不可能だからである。それゆえ、その間題を抱えている方は、ますそちらのはう の治療に専門家の助けを求めることを強くお勧めする。この第二部に書かれている方法を試みるには、 アルコール類や薬物を少なくとも六か月は断っことができる状態になってからでなくてはならない というのは、断ってまだ日が浅い段階では、感情が極度に敏感になっているので、子供時代の体験を 解き明かしていく時の苦しみから再びそれらのものに手を出す危険性が高いからである。 また、本書を読んで、そこに示されているアウトラインに従ったからといって、「毒になる親 , に : けれども本書で解説さ よって引き起こされている間題がたちまち消え去るということはあり得なし れている内容をよく理解し、時間をかけて実行すれば、間題の親をはじめ、あなたを取り巻く人々と また、自分は何者なのか、自分はどのような人 の新しい関係の持ち方を必す発見できるに違いない。 生を望んでいるのか、ということもよく見えてくることだろう。その結果、新しい自信が生まれ、一 人の人間としての自分の価値が発見できるようになるに違いない。 189 第二部のはじめに

8. 毒になる親

始めることはできない。 「嘆き悲しむープロセスにはいくつかの段階があり、人間の心はこのフロセ スを順番に通過していかないと癒えることはないのである。「嘆き悲しむ , ことを避けていると、「深 す い悲しみ , はいつまでもなくなることはない。 を 嘆き悲しむプロセス 生 人 ら 嘆き悲しむプロセスは、ますその原因となる出来事に接した時の「ショック , 、そのつぎに「激し 親 い怒り」、そして「信しられないという気持ち」、それから「悲しみ , へと進む。「悲しみ」の段階の 最中では、永遠にその状態は終わらないのではないかと思えることもあるかもしれない。 「怒り」の場合とは逆で、一般的に言って、ほとんどの男陸は嘆き悲しむのは男として恥すべきこと だと感じている。世間一般でも、男性が悲しみや心の痛みを表現するのは、怒りや攻撃性を示すこと より受け入れられにく い傾向があるのは事実である。だがそのために、多くの男性は心身の健康に大 きな代償を払っている。 それゆえ、男生は自分をごまかさすに〃深く嘆き悲しむみ練習をするとよい 強がらすに事実を見 つめ、受け入れるのである。それにはつぎのような方法がある。つぎの言葉を声に出して言ってみて 私は、いつの日か自分の家が幸せな家庭になってくれたらという幻想を、いまここに捨てる。私

9. 毒になる親

アルコール中毒の親本人による「事実の否定」 だれがみてもその人間はアルコール中毒だという圧倒的な証拠があるにもかかわらす、そして、 その人間の行動は家族にとって苦しみであり恥であるという事実にもかかわらす、本人がその事 実を否定する。 ・本人以外の家族のメンバ ( たいていは配偶者と子供 ) による「事実の否定」 これには通常、「ママが飲むのはただリラックスするためなんだよ」、「いま転んだのは何かにつ ますいたからさ、、「パパが失業したのは意地悪な上役がいたからだ」などの言い訳が用いられる。 3 ・自分たちは″ノーマルな家″なのだという取りつくろい この取りつくろいは、家族のメンバー同士の間でも、外部の人間に対しても行われる。自分たちを 〃ノーマルな家〃のように見せかけようとする家族の態度は、とりわけ子供の心を歪めてしまう。な ぜなら、子供は生まれつき自然なので、家のことについては当然疑問がわくが、そういう自分の感覚毒 を無理やり否定しなけれはならないからだ。自分が感じたり考えたりしていることと違うことを絶えル す自分や他人に言っていなくてはならない状態では、自分に対する信頼感を育て、自信ある人間となコ ることは不可能である。その子供の内面には無意識のうちに罪悪感が生まれ、自分が人から信用されア るかどうかの自信が持てない。その感じは成長するとともに続き、その結果、自分のことを積極的に

10. 毒になる親

人間はみな、生まれ落ちた直後から「家族」と呼はれるるつばのなかに入れられて育ち、人間とし ての形を作られていく。最近の研究によると、「家族」というのは単に血縁者が集まっただけのもの の ではなく、ひとつの〃システム〃であることがわかってきた。。 とういうシステムかというと、「一人 る ひとりのメンバーが複雑に結びつき、それぞれがお互いに根本的な、しかし表面的にはよくわからなを い影響を及ばしあう集まり、というものだ。すなわちこの集まりは、愛情、嫉妬、誇り、不安、喜び、行 罪悪感、など人間の持っさまざまな感が、最大の振幅をもって潮のように満ちたり引いたりする、 よ の 複雑なネットワークなのである。 これらの感情は、薄暗い海の波間にわき起こる泡のように、その家の雰囲気や内部の人間関係や価 値観などのなかで、絶え間なくあらわれては消えていく。そして「家族 , というシステム内部での微 親 る 妙な心理的動きは、表面からはほとんど見ることはできないが、やはり海と同しように深く潜れはた くさん見えてくる。 子供にとっては、この〃家族というシステム〃が現実世界のすべてである。子供はそこで教えられ た通りの見方で世界を見、その体験をもとに、「自分はだれなのか気「自分を取り巻く世界はどうい 八章「毒になる親」はなぜこのような行動をするのか