I 編 緒論および平面図学 1. 論 1 . 1 図学の目白、 end geometrie) の略弥で , 3 次元の空間図月 図学は図法幾何学 (Descriptive geo を , 2 次元で平面上に表示し , これらに関する問題を , 幾何的手法にて考究する幾何学の一部鬥ー ある . 図学の基礎は正投影を基本としており , 一般に実用製図の基本問題よりさらに進んだ図的 現と多くの工学的問題の解法にも応弔される . 図学で研究される問題は正投影の主要図 , すなわち正面図・平面図・側面図だけでは得られなし 手法が必要となり , そのために主要図のほかに , 副図や回転図を使用する . 工学製図に含まれる 題は , たいてい機械製図の分野から起こるが , 図学に関する問題はあらゆる工学の分野からの問気 を含むといっても過言ではない . 図学は将来技術者としての不可欠の「注意力」 , 「忍耐力」 , そし 「構成力」を養成すると同時に , 幅広い思考力を修得することも大きな目的である . またこの目白 を忘れないことが科学者としての基礎知識であり , かつ重要な役割をもつものである . 図学は , ぎのように大別される . ・・・平面図形を扱う . 5 面図 ! 学 (Practical plane geometry) ・ ・・・空間にある平面図形ならびに立体図形を扱い , いろし 立脅 : 図 ( 学 (PracticaI solid geometry) ・ ろな投影を考究する . ・・・図式計算や図式力学など図による解法を扱う . 図式解法 (Graphic solution) ・・ ・・・機械・建築・土木・電気など工学関係の製図を扱う 工業製図 (lndustrial drawing) ・・ 本書では , 平面図学・立体図学を第三角法によって解説し , 図の表現方法は , 工業製図 (JIS 規格 に基づきながら行なう .
24 分類の方法 図面の内容 による分類 2. 図面の種類 製図法の要点 説 明 接 配 配 系 基 据 配 装 外 工 続 線 管 統 礎 付 置 置 形 程 図 図 図 図 図 図 図 図 図 図 構造線図 曲面線図 これにはつぎの 3 つの意味がある 図学と工業製図の違し 船体 , 自動車の車体などの複雑な曲面を示す図 機械 , 構造物などの骨組を示す図 構造物 , 機械の外形を表わす図である . 主要寸法を記入しておくことが必要である 化学工業などにおいて , 各装置および製造工程などの関係を表わす図 レーン , レールその他の運搬装置 , 電源室などとの関連を明らかにするとよい 工場内における多くの機械などを据付ける位置を表わす図である . この場合 , ク 大きさ , 動く範凹 , 基礎に乗せる状態などを明らかにする ポイラ , 機械などの据付関係を示す図であろ 構造物または機械の基礎工事のために作られる図 説明図にも用いる 水 , 泊 , ガス , 電気などにおける接続および作動系統を示す計画図であり , また 配管の位置 , 取付方法などを明らかにする 管の配置を示す製作図であって , ポンプ , パルプなどの位置 , 管の太さ , 長さ , 配線の位置および方法などを明らかにする図 電線の配置を示す製作図で電気機械器具の大きさ , 取付位置 , 電線の太さ , 長さ , 用途的には計画図 , 説明図または工作図に用いられる である 主として電気機器内部および電気機器相互間の電気的接続状態 , 機能を表わす図 的に示したプラント工程図 ③化学工場などで製品が各装置を経て作られてゆく機械設備と流れの状態を説明 程を図示したものである ②説明図として用いられる製造工程図は , 製品または部品の流れすなわち製造工 べき分を明らかにし , 加工法 , 寸法差 , 用具などを記入する必要がある 面であって計画係または作業係というような , 生産管理部門で作られ , 加工す ①製作図として用いられる工作工程図は部品の製作工程における寸法差を示す図 JIS の製図通則に従って述べてきたが , 工業製図と図学の概念は共通しているところがあるのは 当然であるが , 図学は本来立体図形の表現法を 1 つの目的としているので , いろいろの点で , 工業 製図と図学の相違点があることを知っておく必要がある . ( 1 ) 製図は種々の製品を作るときの案内 , 指導 , 命令書であって , 立体図形の表現法を研究す るものではない . 製図においては , 盛んに簡略製図が用いられるが , 図学においては , 特別 なものを除いて完成された作図が最終目的であるため簡略作図は使用しない . ( 2 ) 図学では , 普通寸法は記入せず完成図面をもって表現するが , 製図では寸法記入が重要な 位置を占める . ( 3 ) 図学では , 各物体の頂点など必要な点はすべて記号を入れ , 基線を基準として , その位置 関係を明確にするために , 作図線を引いて表現するが , 製図においては一切用いない . ( 4 ) 製図 ( 機械製図 ) では原則として , 物体を第 3 象限において各面を表現する第三角法をも
〔主要引用参考文献一覧〕 秋 足 磯 磯 磯 市 岩 古真 田 浦 田 田 田 立 山 大久保 大久保 武太郎 わかる三角法 図学概論 製図基本 第三角法による図学総論 基礎図学 高等平面立体図学 幾何学大辞典 1 第三角法による図学 ( 改 ) 第一角法図学 機械図学 建築図学 図学 やさしい立体図の画きかた 透過図 / 図法・表現・占旦 平面図学 図学概論 ( 増補 ) 図学 図学演習 第三角法の図学 第三角法による図学大要 図学通論 初等何幾学に於ける包絡線 図学と製図 ( 新 ) 第三角法図学演習 ( 増訂 ) 透視画 いろいろな曲線 図学 高等平面図学 等角図入門 図学 図形と式 図学及び機械製図 代数学幾何学の演習 JIS にもとづく標準製図法 便覧 JIS にもとづく機械設計製図 東京電気大学 至 正 正 郎 浩ほか 浩 浩 健ほか 康 夫 夫ほか 清 清 長 中 中 中 成 ハ 北 馬 原 平 福 福 尾勝 根孝 村貞 村芳 瀬政 ケリマ 原康 馬 治 男 彦 男ほか ンほか 彦ほか訳 大 大 奥 示 金 川 木 西 西 川 山 田 ロ 村 場秋次郎 正敏 山嵩ほか 田正雄 永節夫 光太郎 久保田 熊谷 栗田 黒田 克 数 圭 貞 正 正 毅 郎 右 男ほか 稔 巳 工業高等専門学校 図学教育研究会 幸 小 近 近 沢 沢 須 回 滝 竹 田 谷 イ田 田 林 藤 藤 田 田 藤 木 沢 村 中 川 幹 誠 誠 詮 詮 俊 利 健 俊 正 彰 雄 造ほか 造 亮 亮 夫 児 彦 保 己 勉 細川藤右衛門 溝ロ好忠 滞ロ好忠 森田 鈞ほか 山口章三郎ほか 山中秀男 リュステルニク著 筒井孝胤ほか訳 渡辺要 Char1es E1mer Rowe Harold Bart1ett Howe Hiram E. Grant Hood & Pa1mer1ee Leighton Wellman Müller & Kruppa Sa1kowski Warner & Mcneary 立体図の描き方 建築の新透視図法 図学 図説図学 三角法 図学 反転・包絡線 平面幾何画法の図法と証明 図学 図学 ( 改 ) 高等図学 図学概説 射影幾何学 立体図学 ( 上 ) 立体図学 ( 下 ) 第三角法図学 図学 図面の見方 凸図形と凸多面体 図学演習 Engineering Descriptive Geometry Descriptive Geometry Practical Descriptive Geometry Geometry of Engineering Drawing Technical Descriptive Geometry Lehrbuch Der Darstellenderu Geometrie Darstellende Geometrie AppIied Descriptive Geometry
推薦の とは 図学が一般工学に必須な重要学科の 1 っとして取り上げられて久しいが , 今日では必ずしも一般 工学者に必要欠くべからざる学科かどうか疑問視する向きも少なくない . その原因として図学関係 者が工学に必要な教養科目・基礎科目としての地位を強調するあまり , 専門学科との関連 , または それとの融合などをおろそかにし , その方面の努力が足りなかったためではないだろうか . あまり にも自主的 , 独善的であったためではないだろうか . 専門科目への橋渡し , 関連 , 具体的にいえば 設計製図への導入的役割に目を向けなかったことに原因があるように思われる . その点住友君は大学卒業以来日本大学生産工学部で流体力学 , 機械要素 , 機械設計製図などの専 門科目の授業に当たられ , 数年前に図学教室の担当主任となられて専門科目と同時に図学教育に携 わっている新進気鋭の学徒である . したがってその内容も単に図学の範囲を限らず , 製図設計への 橋渡し的配慮が随所に見られ , 第三角法を採用されていることもその配慮の 1 つである . 高所より 図学を説かれ , 工学を志す初心者には誠に好適な書と確信し , あえて推薦するゆえんである . 昭和 53 年 2 月 茨城大学教授片 岡 久
3. 平 面図学 平面図学は平面上に存在する点 , 直線 , 円 , 曲線などで構成された図形の作図問題を , 平面幾何 学を利用して解くことができるから , こでは用途の多い問題を取り上げ , 立体図学の基礎として の必要な概念を養うことにする . 3. 1 直線と円周の等分法 作図題 1 直線 AB を 2 等分せよ ( 図 3.1 参照 ) . 解法 A および B を中心として任意の大きさを半径とする円弧をそれぞれ書き , 両弧の交点 C, D を求め , CD と AB との交点を M とすれば , M は AB の 2 等分点であり , CD は AB の垂直 2 等分 る . 朝一 1 ) ・ 4 ' 3 2 ' 1 ・ 図 3 ・ 2 作図題 2 直線をれ等分せよ ( 図 3.2 照 ). 解法 AB と任意の角をなす直線 AC を引適当な長さ A 1 をデ / くイダーにつて AC 上 引けば , AB との CB に に順に 1 , 2 , 3 , ・・℃とれ回とる . これらの各 交点 1 ′ , 2 ′ , 3 ′・・・がが求めるが等分点である . この作図法は用途がきわめて多い . 円周を〃等分ぜよ ( 図 3.3 参照 ). 作図題 3 こでは 7 等分の例で説明する . まず円 0 の直径 AB を 7 等分し , A および B を中心 解法 とし , AB を半径とする円弧をそれそれ書き , その交点を N, Ⅳとする . これらと AB
Ⅱ編 並 体 図 6. 0 投 6. 1 投 影 空間にある立体や図形を平面上に書き表わす方法を研究する学問を立体図学という . 立体や図形の主要点から平面へ任意の直線を引く . この線を投射線 (Projecting line, または Proje ・ ctor) とよび , 投射線と平面との交点を結んでできる図形を投影図 , 投影中心 ( 視点 ) 投射線 ( 視線 ) 投影面 0 0 投影 CO (a) 透視投影 または投影 (Projection) という・ 対影立体 対影立体 投影面 N 無限遠点 投影中心は 投射線 ( 視線 ) は平行 eN 図 6. 1 ( b ) 平行投影法 D
序 音楽家が自分の考えを人に伝えるための言葉が楽譜であり , また登山家の案内役として地図があ ると同じように , 工業製品を作る技術者が自分の頭のなかにもっている考えを人に伝えるための言 葉として図面がある . 楽譜でも地図でも , それを描くために一定の規則があるため , 私達は誰が見ても誤りなく曲が け , また山に登ることができる . したがって , 図面にもやはり規則がなくては正しい工業製品を作 ることができない . 規則に従って描かれた図面を製図法にもとづいた図面という . 製図法によらな い図面は誤りのある楽譜や地図と同じで , 工業製品を誤らせることになり , ゆえに製図法こそは , 図面の生命であり , 技術者として製図ができなければ技術者の能力は半減するといっても過言では ない . とくに機械工場では , 対生産活動の全部はすべて図面によって支配されるもので , 図面のい かんが作業能率を左右するが重大なウェイトを占めていることがわかると思う . 図学は製図の基礎となるもので , 図学の知識なしに製図に入っていこうというのは無理である . 製図を始めるために何をおいても一応は修得しなければならないのは図学であるが , 実際について みると , 図学は大変に軽視されている面が見出される . 一般につぎのようなことがいわれている . 図学という学問は大変わかりやすい . また反対に大変わかりにくいという相反することがいわれて いるのはなぜであろうか . 図学は製図の基礎であるといわれながら , 一般に図学が実際の製図と離れ離れになってきている 幾多の事実が見出されるのである . 離れた理由としてまずあげられるものは , わが国でも世界各国 ( アメリカを除く ) の図学が第一角法であり , 実際の製図の様式は第三角法で行なわれている事実が あげられる . そこで , 本書は技術者が生産に必要な製図に入りやすいように , また製図を取扱うものの基礎と なるように , 第三角法による図学を取り上げ , JIS 規格にそって , 平面から立体図学の概論を述べ てある . 多くの考えや理想を頭に描きながら執筆を始めたのだが , 原稿を書き終わった今日 , その半分も 実現できなかったように感じる . また学生からの多い質問に関しての問題には , 必要以上にくどい 説明を加えるなど , 簡潔にと思いながらも長ったらしい部分は読み飛ばしていただきたい . 本書を 利用された諸氏がさらに深く研究を進めていかれる場合の教科書 , 参考書として , また自学 , 自習 の書としてもお役に立てば著者の喜びこれに過ぎるものはない . 本書の執筆にあたっては , 内外の数多くの先輩諸氏の諸高著に負うものであり , 多数の資料とと もに御教示を参考させていただいた . そのうちおもなものを掲げ深く敬意と感謝を捧げる . また , とくに快く監修の労をとられ , 多大の御指導を賜わった茨城大学の片岡久教授に厚くお礼申し上げ るとともに , 種々の御協力をいただいた日本大学生産工学部機械工学科大学院生 , 鈴木康司君 , 岡
近 沢 148 ~ 149. 大久保 藤 田 正 誠 詮 夫著 造著 亮著 〔引用参考文献一覧表〕 「第 3 角法による図学」昭和 42 年版 ( 株 ) 朝倉書店 引用頁 10. 14. 39. 63. 130. 「第 3 角法による図学大要」昭和 47 年版 ( 株 ) 養覧堂 引用頁 23 ~ 25. 46 ~ 49. 71. 82 ~ 85. 90 ~ 99. 130 ~ 135. 151 ~ 163 「第 3 角法の図学」昭和 44 年版三共出版 ( 株 ) 引用頁 17. 36. 39. 50
I 編緒論および平面図学 23 た場合は図 2.26 (a) のように記入する . また , 図形の大きさが寸法に比例してない場合には , 『比例尺でない』と図面内の適当な位置に記入しておく . しかし , 図 (b) のように明瞭に図形と 2.6.6 図面の呼称 寸法が異なっていることが理解できれば , 記入しなくてもよい . 写図 : 元図の上にトレース紙を置き鉛筆または墨入れなどで写し書きした図面 ( トレース図 元図 : 製図用紙に鉛筆で書いた図面 . 青図 : 複写器などで複製した図面 . 原図 : 複写器などで複製するときのもとになる図面 . 見取図 : 品物の実物を見ながらフリーハンドで書く図面 . ともいう ). 図面を用途および内容によって分類すると表 2.8 のようになる . 2.6.7 図面の分類 分類の方法 用途による 図面の種類 説 表 2.8 明 分 類 計 製 注 承 見 説 組 画 作 文 認 積 明 立 図 図 図 図 図 部分組立図 図面の内容 による分類 詳 ロロ 細 図 製作図作成の基礎となる図面である . 設計計画者の意図を明示するために十分な 内容が必要である 工場 , 作業場における作業者を対象として書かれた図で設計者の意図を作業者に 完全に伝えるために十分な内容をもつ . 加工を容易にし工費の節減を図ることが 望ましい 注文者が注文書に添えて要求の大綱を受注者に示すための図である . 機械につい ての大体の大きさ , 形状機能の概要 , 所要精度などを示すことが必要である 受注者が注文者の検討を経て承認を受け , これによって計画および製作を行なう 基礎となる図である 承認図は特に作成することなく , 承認用図またはこれに訂正を施したものに承認 印を受けて承認図とするのが普通である . 製作上の基礎になるという重要度と , 保存上の問題から承認図と承認用図とを区別して呼ぶこともある 見積書に添えて見積照会 , あるいは注文として被照会者から照会者へ授受される 図である 構造 , 機能の説明を目的とした図面である . 必要な部分を太い実線で表わした り , 切断 , 透視 , 彩色などを施してだれにでもわかるように書くことが望ましい 全部の組立を示す図であって , その構造を明らかにし , 各単位または部品の関連 がわかるように書く必要がある . この場合の全部の組立とは , 構造物 , 機械およ び器具においてその大きさおよび構造の複雑さによって全機構または独立した 1 単位を表わすものと解釈してさしつかえない 一部分の組立を示す図であって , 特に複雑な機構を明らかにして組立を容易にす るために用いられる 部品の詳細を示す図である . これによって製作されるのであるからできるだけ現 尺で表わし , 設計者の意図が十分にかっ正確に作業者に伝えられるように寸法そ の他の記述について詳しく記入する必要がある . 部品図は工場の管理上一品一葉 とすることが望ましい 大きな縮尺を用いて製図する場合 , その一部の縮尺を変えて形状 , 寸法および機 構を明らかにするために用いられるもので , 同一図面の一部に書かれるか , また は用紙を改めて書かれるものである . この場合 , 何図のどこの詳細であるかはっ きりしておく
26 2. 製図法の要点 って示すように約東されている . 図学では物体を第 1 象限で各面を表現する第一角法が多く 用いられているが , 第三角法で表現してもよい . まだ , 種々あるが , 両者の基本的な表現の相違点を図 2.27 に示しておく . 図 2.27 (a) に示した図は図学的表現を用いて書いたもので , 図でもわかるように記号 , 基線 , 対応線 , 作図線をはぶかず全部書かねばならない・図 (b) は製図的表現で書いたもので , 記号 基線 , 対応線 , 作図線は書かなくてよく , 寸法線が必要となってくる . また , 品物を製作する立場 から , 図 (b) のように書いても , あまり意味がないので , 一般に製図においては , 図 ()D また は図 (b2) のように簡略図面で表現する . 2.7.1 図学学習上の基本態度 ( 1 ) 作図するときの , 文字 , 記号 , 線の種類は製図通則に従って書くこと . ( 2 ) 図学では過程を必要とするのではなく , 作図した図面が正しく書かれていることが主目的 であるので , 絶対にフリーハンドで作図しないこと . ( 3 ) 作図法にはいろいろの解法があるが , そのうちで最も簡単で正確に解ける方法をもって作 図すること . ( 1 ) ( 2 ) 練習問題 文字 線