エルヴィス - みる会図書館


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1. 色彩自由自在

◎ ュトリ口がこの世を去った年後、海を隔てた歓楽の 街に、もう 1 人、白をまとった男が現れた。 キング・オ・フ・ロック、″ロックの王様〃と呼ばれたエ ルヴィス・プレスリーた。年代に姿を消したエルヴィ スは、間年にラスベガスのインターナショナル・ホテル のステージで劇的なカムバックを遂げた。白づくめの衣 裳で。 そのイメージチェンジは実に鮮やかで、行年、突然の 死を迎えるまで、彼はその白い衣裳を脱ぐことはなかっ それ以前のエルヴィスは、黒のレザーで。ヒッタリと身 ーゼントヘアーという、野 をつつみ、長いもみあげのリ る人間としての最高の幸せを知った。 白く塗りこめられたほどの悲痛な心であったにせよ、 その悲しみをそらすことなく、ユ トリロはれ歳まで生き つづけた。 エルヴィス、白いカムバック ◎ 62 性的なイメージが印象的だった。 それが、意外にも袖も裾もゆったりとした、大きく衿 を立てたキラキラの白装束に一変したのた。白装束には ダイヤが散りばめられ、エルヴィスはその衣裳以上に派 手なアクションで動きまわった。 復活は大成功で、エルヴィスは″新しいロック・スタ として連続的にコンサートを行った。ラスベガスで のステージは『エルビス・オン・ステージ』というドキ ュメンタリー映画となって人気を高め、再びエルヴィス の時代が訪れた。 歌にヴィブラートをきかせた天才的な唱法に加えて、 野性味と成熟がミックスしたエルヴィスに、僕もあらた めて聴きほれたものだ。 彼がカムバックのステージ衣裳に白を選んだのは自然 なことだったと思う。古いイメージを一新する 8 年ぶり のライブステージともなれば、既成のイメージを払拭し た白がふさわしし 、。心も真白にしてのカム、、ハックだった のだろう。 しかし、派手な復帰とは裏はらに、エルヴィスの生活 は荒れていた。妻との不和やとりまきのスタッフたちと

2. 色彩自由自在

る鳥の姿になる。 この頃のビデオを見ると、舞台で歌詞をまちがったり、 涙もろくなったりしていて、精神的にかなり不安定な様 子がうかがえる。 ここまで原橋を書いた段階でエルヴィスが死期が近ず くにつれ、ますます白という色にこだわっていた事実を 僕は知った。本書に掲載するエルヴィスの写真を借りる ために、ビクター株式会社を訪ねた時のことであ る。制作宣伝担当の方が偶然にも、エルヴィスの死の 2 カ月前のステージについて書かれた音楽評論家の湯川れ い子さんの文章を見せてくれた。 65 ◎白 「近年ますます力ラフルになっていたエルヴィスの、客 席に投げるスカーフが、どれも白一色であったこと。そ して、 ・・バック・ミュージシャンの衣装も : ヴィス自身の衣装も白一色。エルヴィスが、自らの葬儀 に指定していたと言われる白。 3 月に遺言を書きかえて いた王者エルヴィスの、見事な死装束であったー ( 『月刊 エルヴィスし コスチュームの白は、エルヴィスが望んだ心の平安の シンポルだったのか。しかし、彼はこの世で平安に至る 前に、自らの巨体で心臓を圧迫し、犯歳で死んでしまっ

3. 色彩自由自在

の葛藤で、かなり神経が参っていたらしい もともと彼の孤独感は相当なものだったようだ。双児 として生まれたが、その一方は育っていない。マザーコ ンプレックスといっていいほどに頼りにしていた母親も 若くして喪っている。そして安定しない女性関係。 寂しがり屋の彼は人の心をつなぎとめようとして、時 には側近のスタッフにも、キャデラックをプレゼントし スターとしてのエルヴィスに近づいてくる者は大勢い た。しかし、彼らはエルヴィスの名声と富に吸い寄せら れてくるのだ。深まる孤独と緑内障の痛みをやわらげる ために、エルヴィスは強いクスリに頼った。 さらに、過食によって、エルヴィスがみるみる肥満化 していったことはよく知られている。晩年には、その肥 満体のステージ姿がよく戯画化されて雑誌に載ったもの クスリの常用と過食症 : : : 。それでも過食を止めるこ とができず、台所で深夜ひそかにケーキにかじりついて いるエルヴィスの姿が見られたという。 ロックの王様は、孤独の闇のなかで悩みを消すために ◎ 64 1 人苦闘していたのだろう。 アルコールであれ薬物であれ、あるいは過食や強い色 情にいたるまで、人は精神的苦痛を何らかの嗜癖によっ て麻痺させようとする。 このしびれ感覚を色彩におきかえるとしたら、やはり 白しかないのではないか。 色彩のスペクトルは感情のスペクトルをも表現する。 とすれば、色相のない白という色は「感情の麻痺ーに結 びついていくケースがあるのではないかと僕は思う。 画家のユ トリロは、あまりの寂しさに、その感情をア ルコールで麻痺させることをお・ほえた。エルヴィスは、 クスリと過食によって、ぼっかり空いた孤独の穴を埋め てしまおうとした。 人生があまりにつらければ、人は自分の心すら白く抹 消してしまいたくなる。 エルヴィスは死の 3 、 4 年前のハワイでのコンサー で、ステージの最後に白いマントを肩にかけて現れた。 マントには、鳥の羽根模様がプリントされていて、彼が 大きく手を広げてみせると、今にも天に翔び立とうとす

4. 色彩自由自在

〔赤〕 〔黄〕 〔緑〕 〔青〕 〔紫〕 〔黒〕 〔白〕 4 一 デヴィッド・ボウイの真っ赤な髪の秘密・赤い靴、赤い手を描いた子どもたち・ : 2 2 イエロー。ハワーがフィリピンを変えた・戦争とニつの黄色い花・ : 2 手術着が白から緑へ・地球の皮膚が剥がされていく・ : 青い・ハリアの調整機能・制服になぜ青が多い ? 0 ープル」その再生のエネルギー 「病気の色」伝説は本当か・「カラー 4 〔。ハステルカラー〕 ・ローランサンの恋 : ティズニー・アニメの色彩仕掛け・思春期カラー 2 映画「ガープの世界』で黒い手袋が宙を舞った・コム・デ・ギャルソンの人気の秘密・ アルコールと白壁とユトリロ・エルヴィスの白いカムバック : はじめに 9 色が語る

5. 色彩自由自在

0 63 ◎ △カムバックからその死まで、白装束を好んだ工ルヴィス ( 提供 B G M ビクター )

6. 色彩自由自在

参考・引用リスト一覧 『愛の讃歌ーエディット ・ビアフの生涯』シモーヌ・ベルト 三和秀彦訳新潮社 ビクチ 『カラー・イメージ事典』小林重順監修日本カラーデザイン研究所編講談社 梨の木舎 『「体」発、宇宙ヘー子どものからだから見えるもの』毛利子来岡島治夫末永蒼生 『ガープの世界』 ( 映画 ) ジョージ・ロイ・ヒル監督ワーナープラザース テイメント 『カラーパープル』 ( 映画 ) 製作監督スティーヴン・スヒ。ルバ ーグアンフ・リン・エンタ 『カラーパープル』アリス・ウォーカー柳沢由実子訳集英社 『カラー・ミ ・ビューティフル』キャロル・ジャクソン佐藤泰子訳講談社 『カラーコミ ニケーション』赤司直創英社 『カラーウォッチングー日本語版』本明寛監修小学館 「カラー 8 色で心が読める』 M. ルッシャー滝沢清人訳かんき出版 ヤ 『エメラルド・フォレスト』 ( ビデオ ) 製作監督ジュン・プアマンエンバシー・ 『絵と子育ての相談室』末永蒼生雄鶏社 『英語色彩の文化誌』赤池鉄士研究社出版 『売れる色はなに色』伊吹卓につかん書房 『宇宙からの帰還』立花隆中央公論社 『遺伝と光線』黒田保次郎光線研究所 「イライラ増す超高音遮断」朝日新聞 1988.2.12 付 『色を心で視る』千々岩英彰福村出版 「色の手帖』編集尚学図書・言語研究所小学館 『色のはなし』 I & Ⅱ色のはなし編集委員会編技報道出版 『色の博物誌』フランクリン・ブランレー滝沢淳子訳白揚社 『色の彩時記』朝日新聞社編朝日新聞社 『色の語る日本の歴史』村上道太郎そしえて文庫 「色と形の深層心理』岩井寛 N H K ブックス 「色ーーその科学と文化』江森康文大山正深尾謹之介朝倉書房 「色」 is 総特集ポーラ文化研究所 『アントニオ・ガデス舞踊団』 1987 年日本公演プログラムジャパンアーツ制作 「甘い生活」ブルータス 1986.5. 1 号ゲイサイエンスマガジンハウス 『カラー・イメージ感覚』小林重順日本カラーデザイン研究所編著講談社 『黄色い花の革命ーフィリヒ。ン 1986 』芝生瑞和毎日新聞社 『黄の花びら一二つの祖国』斎間新三郷土出版社 「キッチン』吉本ばなな福武書店 『ロ紅から機関車まで』レイモンド・ローウィ藤山愛一郎訳 『グリーン・ポリティックス』シャーリーン・スプレットナク 吉福伸逸他訳青土社 「月刊ェルヴィス』 「月刊テニスジャーナル』 1983.3. NO. 53 スキージャーナル 「原初からの叫び』アーサー・ヤノフ中山善之訳講談社 鹿島出版会 フリッチョフ・カプラ 『現代アメリカ健康学』アーヴィング・オイル上野圭一訳日本教文社 「現代のエスプリ NO. 229 色彩とこころ』編集徳田良仁至文堂 『現代の美術』座右宝刊行会編河出書房 「ゲーテの色彩論」ゲーテ全集 14 潮出版社 「恋ごろも一明星の青春群像』尾崎左永子角川選書 『子育ての社会学』石川憲彦朝日新聞社 「ゴッホの手紙』 J. V. ゴッホーポンゲル編硲伊之助訳 岩波文庫