分かり - みる会図書館


検索対象: 論理療法 自己説得のサイコセラピイ
163件見つかりました。

1. 論理療法 自己説得のサイコセラピイ

216 ほど分かっていました。ですから , かれらが怒りはじめたと分かると , たちまち つぎにくる罰の恐怖にとらわれたのは自然のなりゆきでした。私は恐ろしさのあ まり逃げだすか , 早く私を打ってくださいと請うて , 恐怖が早く通りすぎるよう にしたものです」 「分かりました。今の説明はたいへんよく分かります。しかし , あなたはとて も大切な点をひとつ抜かしています」 「何のことでしよう ? 」 「まず , かれらが恐りだすといわれましたね ? そうすると , つぎにかれらが あなたに罰を加えると分かっているから , 自分はすっかりとり乱してしまうので あると。このあとのほうの説明 , つまりかれらがあなたを罰するのが分かってい るという部分については , あまりにも安易に事実を曲げていると思います。たぶ ん , あなたはかれらが怒りだすのを見て , すぐ自分につぎのようにいったのでは ありませんか ? ' まあ , なんてことでしよう。またあれが始まったわ。何もし ていないのに私に向かって腹をたてているわ。なんてひどいんでしよう。こんな ことがあるなんて。こんな理不尽な父 ( あるいは夫 ) が私の父だなんて私はなん と哀れな人間なのでしよう。彼は私にこんな強大な権力をふるって , 一方の私は 身を守るにもこんな無力な存在だなんて / ' かれらが怒りだした時 , およそこう いった類いの言葉を自分にいったのではありませんか ? 」 「はい , そうだったと思います。とくに父の時はそうでした。こんな父親だな んて , なんて恐ろしいことでしよう , とよく自分にいったものでした。それにひ きかえ , 私の親友のミネルヴァ・スキャンランのお父さんはとっても優しい , 楽 天的な人で彼女をどなったりぶったりあるいは罰を与えたりしたことは少しもな いというのに , 私はあんな父親だということをとても恥しく感じました。私の家 庭ときたら本当におぞましいものでしたから , そこで私がどんなめにあっている かミネルヴァだけでなく誰にも知られたくありませんでした」 「最初のご主人の場合はどうだったのです ? 」 「それも同じでした。今度は私は彼のことをたいして恥しいとは思いませんで と結婚したなんて , 私はなんて馬鹿なのでしよう / 家でさんざんこういうめに だして , 私にかかってくるのが分かるといつもこういっていました。 したが , 彼のような人と結婚してしまった自分を恥しいと思いました。彼が怒り こんな人

2. 論理療法 自己説得のサイコセラピイ

第 8 章理性と合理性 91 なのにどうして , 彼の行為があなたの悩みの種になるのです ? どうしてそれ が , あなたがとり乱して大騷ぎをする理由になってしまうのでしよう ? 」 「でも , 私がもう誰も信ずることができないとしたら ? 私が幸福に生きてい けるみこみなんてもうないんだわ」とマーローは半ば泣きながらいった。 「誰も , ですって ? 」と私はつき放していった。「長い生涯において , 今まで に知ったたった 2 人の男性から , どうしてそんなことがいえるのか私には分かり ませんね。仮にあなたの論理に従ったとしたって , せいぜいトウアパルトとジェ イクの 2 人が信ずるに足りない人物だったといえるだけでしよう。あなたは , わ ずかな例でもってすべてを推しはかるという , 途方もない一般化をしているので す。仮にあなたが , 会社の仕事を手伝ってもらうために 2 人の女の子を相ついで 雇ったとしましよう。その 2 人がどちらも信頼できないと分かったら , 誰かもっ と信頼できる人を得られないものか , と考えるのが当然ではないでしようか」 「いいえ , 私はそうは思いません。あなたのおっしやることがよく分かりませ 「いやいや , ではもう一度あなたのいうとおりに考えてみましよう。あなたが 知りあった男性は 2 人ともひどい男だった , こういう類いまれな不運に出会った ことは認めましよう。しかしですよ , その不幸な経験は , あなたは一生詐欺的な 行為にしか出会わないとか , けっして望ましい交友関係が得られないことを示唆 するものなのでしようか ? 」 「あなたは , ジェイクのことも私が彼に捨てられたことも , まるでとるに足り ないことのようにすっかり忘れてしまっているみたいですね」とマーローは , 今 そうおっしやるんですか ? 」 まうのは , 私が自分自身の生きていく価値を十分に分かっていない証拠だと 「なんですって ? では私がこんなにとり乱し , いるのではないでしようか ? 」 ことを , 自分が自分を見失っていることを , とるに足りないことのように考えて 「そんなことは少しもありません。もっと正確にいえば , あなたは自分自身の 非合理的な要求 はもうすっかり平静になっていった。 もうすべて終りだと考えてし

3. 論理療法 自己説得のサイコセラピイ

第 8 章理性と合理性 89 当然のこととして , その日はたいへんな面接になった。いろいろ慰めたにもか かわらず , マーローは , われわれが面接を始めた時は , ヒステリックになってい て , 彼女を落ち着かせるのにおよそ 15 分ほどかかった。その後急に彼女は「そう です , 私のなすべきことは分かっています。彼が 3 年間遅らせたあのことを今や ればいいのです」といいたした。 「自殺しようというのですか」 「ええ」 「もちろん , それはあなたの権利ではありますよ」私は , ほとんどひょうきん とさえいえるような声で続けた。 「あなたはじっと時期を待っことができるのに , なぜ自分の喉を切ってあと 50 年もその後遺症に悩むようなことをしたいのですか ? どうしてそんな気持にな るのか , 私に話してみませんか ? 」 私は , 自殺念慮に関しては多くの経験があり , 効果的な反論は , 時にかれらの 自殺の意図を隠しだてしないで , 率直に多少のユーモアを交えて話し合うことに あると分かっていた。それは , また私が論理療法の面接において深刻な問題を論 じる時の方法でもある。さらに , 論理療法の実践者として , 私は個人的に強く確 信していることがある。つまり , 人生とは楽しい側面も多々あるのだが , そうい う人生とはまったく違う生き方をする権利もある , と私は思っており , したがっ て , 私のところに来る来談者も含めて誰もが自分の人生を停止しようと決意す る特権をもっていると考えている。 たから , 誰かが自殺のおそれがあるという場合でも , 私は , それゆえに心を乱 されるようなことはない。そして , そういう人の非論理的な考え方を , 別に自殺 とは関係のないケースをとり扱う時と同様の方法で扱っていくのである。もっと も , 論理療法の実践者なら他の誰でも同じであると思うが , 私は来談者が自殺に ついてまじめに考えぬいたことを知っている。私はまた , それを行なう特権がそ の人にあることも否定はしない。そういう私の考えを来談者も理解する。それで もなお , 私は , 彼らに生きることに関する 2 , 3 の点を再考してほしいし , とり わけかれらは本当に死ぬことを欲したのかどうかをよく分かってもらいたいと考 えている。 さて , 話をマーローに戻そう。「私に死ぬ権利があるということは分かってい

4. 論理療法 自己説得のサイコセラピイ

232 この話について考えればはり楽な ' 道 , つまり自己鍛練をしないで困難や責 任から逃れようとしても , それは結局 , けっして楽な道ではないことが辛い経験 によってはじめて分かるだろう。自分が ' 楽だ ' と思って選んだ道が , 結局辛い 道に他ならぬという場合もあれば , 実際時間も金もかからず楽にみえる時もある だろう。しかしそれは , つまるところ何の生きがいも与えてはくれない。 ひとつの例として , ェルマー・ビンカームについて考えてみよう。彼は数年前 に私 ( R ・ A ・ / ー ) のところへ来た法学部の学生であるが , 頭もよくなかな かの能力を秘めた人物だった。彼は安易な生活態度にすっかり慣れてしまってい て , まじめにとりくむことを避ける方法をしつかり会得していた。勉強に熱中せ ず , 教授のくせー - ーー何が好きで , 何が嫌いかなどーーを知るのに精力を費し , そ のおかげでいつも暇つぶしばかりしているくせに , 教授から良い点をもらうのだ った。 抜けめのない方法 ェルマーは私のところに来た時 , 仲間の女子学生とうまくいかないといって悩 んでいた。彼がいうには , 「サリーは大きな子供みたいで , 依存的な性格をむきだ しにします。彼女とは普通の恋愛はできません一一なんせ彼女はいつもつきまと ってくるのです。本当にびったりとくつついて離れないのです。こんなことでは 私は何もできません。勉強が忙しくて何もできないというのではなく , 彼女がま つわりついてくるからできないのです。私たちは愛しあった , でもそれだけのは ずです。そうです , ただそれだけだと私はいいたいのです。彼女ときたら何でも 思うままにしようとして , 夜昼を問わず私を呼びますから , 彼女と離れてはトイ レにも行けない始末です。いつもつきまとわれて , 背中が痛くなるような気持で す。ときどき他の女の子にも会いたいと思っても , 彼女がいつも私のあとにくっ す。なすすべがないのです。だからといって , 彼女と手を切ることもできませ 「改善することなどとてもできません。サリーはどこまでいってもサリ うのなら , なぜ彼女との関係を改善するとかやめるとかしないのですか ? 」 期計画が妨げられ , もっと自由な時間が欲しいという希望がかなえられないとい 「サリーとの関係が原因で , 卒業して弁護士の試験を受けるというあなたの長 ついていますから , 誰も相手にしてくれません」 ーで

5. 論理療法 自己説得のサイコセラピイ

184 をいわず , いっそうやさしく接するように努めた。それからのちはまるで奇跡と でもよぶべきことが続いて起った。 4 回ほどたったあと , マナ , 、ン夫人は前とは 全然違う話をしてくれた。 「私は , テイムをどう理解したらよいかよく分かりませんが , あなたのいわれ たことが実にびったりだったことはたしかです。 10 日間ほど , 彼はこれ以上ひど い人はいないというありさまでした。カ仕事さえ私に任せつきりで , ほとんど毎 晩のように遅くまで会社に居残り , あまっさえ昔の女友達のひとりをまた好きに なったというようなことをほのめかしたりしました。最初のうち私は苦しみ悶え ましたが , そこで歯を食いしばって ( あなたが何度も私にいい聞かせたとおり ) 自分にいいました。・わかりました , 彼は以前とちっとも変らぬ見苦しい人間だ。 でも , そのために私が死ぬわけじゃない。たしかに嫌なことにはちがいないけ ど , 私が一晩中お酒を飲んで騒いだってしかたがない ' 私は何もいわず , 事態を 好転させるためにやり方を変えてみました。セックスも避けずにいつもより精一 杯努力することにしました。驚くほど早く変化があらわれました。彼は今 , 毎晩 とても早く帰宅します。よく花を買ってきてくれます。私の身体のことを気遺っ てくれるのですが , 信じられないような気持です。彼は別人になったような感じ です。 2 週間前とくらべたらなんという違いでしよう / 先生 , この報告は本当 なのです。テイムの愛を得ようと , 私がとりかかった途端に , 彼は私に愛情を示 してくれるようになったのです。いつもいつも私が不満を叫びたてていた時にく らべて , なんという違いでしよう / 」 無意味な人生 マイラ・べイスンの例もまた , ものの見方を変えることは , とり乱した人が根 深い欲求不満と苦痛の感情から脱するのに最も有効であることを示す実例のひと つである。マイラが , 私 ( R ・ A ・ ー ) のところへ来たのは , 彼女が 2 年来 の恋人と別れ , 彼がもっとお金持の女性と婚約した直後だった。彼女は寂しさの どん底にあり , 恋人をとり戻すことももはやできないし , もう生きることも何の 意味もない , と私にいいはった。私はおおいに同情したが , 頑として彼女のいう ことは馬鹿げていると反論し数カ月か , 1 , 2 年以内に , 前の時と同じように 愛せるような恋人ができるだろうと述べた。

6. 論理療法 自己説得のサイコセラピイ

第 16 章怠 から頑張るだろうと思います」 「是が非でもやってみようと思います」 惰 243 「やってみようと思いますというのは気持としてよいのですが , まだ確固とし たものではありません。そうではなく , 子供つぼい反抗や失敗の恐怖にうちかっ のだと決心してほしい。前向きの姿勢でかたく決心するのです。敷衍すれば , 自 分が何年もかけて自分の内部に成長させてきた愚かしい構え , 自己訓練を嫌う傾 向を見つけだしてこれを根絶するべく活発にそれに挑んでいくことです」 「こんどこそ分かりました。前向きの活動こそー番重要だということですね。 本当によく分かりました」 そしてわれわれはその道を歩みはじめた。オスカー・ジムスンは数週間後に論 文題目について承認を得るや , ただちに調査にとりかかり , 1 年後には実験心理 学の学位を得たりつばな研究者として私のところにやってきた。彼は依然として 良い教師であり , さらに , すべての面で自己訓練をやりとげた人の 1 人として活 躍していた。最近 , 心理学関係の会議で彼をみかけるときにはいつも , 彼は立ち どまって気をつけをし , 私にプロシャの軍人のような敬礼をして , おどけた大声 でこういうのだ。「活動 / 努力 / 自己訓練 / 」と。ところが彼に限ってそれ ほどこつけいには聞こえなかったものである。

7. 論理療法 自己説得のサイコセラピイ

128 幸を感じることなく生きることができるし , また一方で集団のなかにあって , そ に好かれないからといって悩むことなく暮していくこともできるので のメン / 、一 ある。したがって他人からの受容を必ずしも必要としない人びとも存在するとい える。人によっては他人からの愛情さえいらないという人もあるくらいだ。しか し , 男性であれ女性であれたいていの人は , 愛情さえ不要だという人には反論し て , ある程度は他人から受けいれられることがやはり必要だというたろう。かれ らは , 他人から受けいれられることを欲し , それを願い , 自分たちの追求する方 法で他人から受容されてもっと幸福になろうと考えている。しかし , 欲すること , 願うこと , そうあってほしいと思うこと , それらはただちにそうあらねばならな いということを意味しないし , 必要性を生じさせることにもならない。なるほど われわれは , 自分の熱望がかなえられたらいいなあとは思う。しかし , それはけ っして実際にそうあるべきだということにはならない。 子供および成人にとって本当に必要なものは何かということがあいまいになっ ているために , 人間にとっての必要性という問題に関しては心理学書にも相当の 混乱があらわれている。子供たちが健康に , 幸せに成長していくためには , 援助 とりわけその両親からの援助が必要であることはきわめてはっきりした理由があ るようにみえる。しかし , それは受けいれてもらえず愛されない場合 , 子供たち が必ず衰えるからそうしているのではない。ハロルド・オーランスキー , リリ ウィリアム・シュアル , ローレンス・カスラーなどの社会心理学者たち が示しているように , 必ずしもそうはならないのである。しかし子供たちは実際 問題として , 他人に依存しており , もしも大人が世話をしなければ食料も衣服も 住居も健康の維持も自分ではできない。 また子供たちは , 他人から言葉で責めたてられることに対しても , 身を守るこ とが容易とはいえない。仲間やあるいは保護者が , お前なんか何の値うちもない 人間だと , いつもいっていたら , かれら子供たちは , ' あの人たちがなんと思って いようとかまわない。私には自分の値うちが分かっているのだから ' などと考え ることは容易ではないのである。子供たちは暗示にかかりやすく , かれらについ ての他人の否定的な評価をそのまま受けいれがちであり , それを受けいれること で自分を卑下するような心理に陥ってしまうのである。 しかし大人たちは , なにも子供と同様に反応する必然性はない。周囲の人が世

8. 論理療法 自己説得のサイコセラピイ

126 にそれが同意への要求などという病的なものになったり , 同意を得るための努力 を完全に拒否することにまでなってしまうのです。このことをもっとよく考えて くだされば , あなたにはよく分かっていただけると思いますよ」 そこで彼女は実際よく考えてくれた。節食をし , 容姿にも注意を払うようにな った。ポーイフレンドともずっとうまくやれるようになった。この事例は , 人間 は合理的であると同時に非合理的に行動しうるということを示しているようだ。 人間は , しばしば知的にかっ愚かに , 熟慮するとともにたやすく暗示にかかっ て , その行動をするようである。自分たちを論理的に行動する動物のように見せ ることがきわめてたやすく , ほとんど無意識にそうしているにもかかわらず , 同 じようにたやすく , まるで半ば白痴にでもなったかのような姿をも見せるのであ る。生活を論理的にするということも , 他のすべての生活のあり方と同様 , ひと つの過程として , 前進的な試み , 実験として存続していくことだろう。完全な結 果に達することは , まずありえないだろうけれど。 あるいはつぎのようないい方をすることもできる。つまり , 成人といえども , しばしば , 未熟者のように , 幼児のように行動する傾向を有している。それは , 実は人間性の本質に根ざしていることなのだ。人間は不可避的に幾多の過ちをお かすものであって , 軽率な考えをあらわしたかと思えば , 敬虔な信仰心を見せた り , その他 , 人を不適切な感情に導いてくるような偏見にとらわれるのも , たい へんありがちなことなのである。 しかし , 子供っぽく振舞うのが容易であるということは , そうあらねばならな いということではまったくない。人間は , 成熟した思慮深い考え方をするように 教育することが可能なのである。そのように教育したとしても , 完全な幸福や , 悲しみと失意をまったくなくした状態などにたどりつくことはけっしてないだろ 陥らないよう訓練することが実際可能なのである。もうお分かりいただけたと思 努力と精進によって , 長期間絶望的な悲惨や抑うつに しかしそれでもなお ,

9. 論理療法 自己説得のサイコセラピイ

第 8 章理性と合理性 8 「 やや安堵したようであった。たしかに彼女は , ジェイクを最も愛すべき信用のお ける人だとよく分かってはいたが , 他面彼女は , 本当のところジェイクは私を好 きではないのではないか と感じるのである。感じる一一つまり確たる証拠は 何もないのにかたくそう思ってしまうのである。 彼女は , 最初の恋人が彼女を愛しているようにみえて実は愛していなかったの だから , ジェイクの愛だって同様に疑わしい , と内心思うのみならず , ・私の最初 の恋人は私のもとを去っていった。あれは彼が無責任だったからではなくて , 私 がずっと考えているとおり , 私なんか何の値うちもない人間だ , と分かったから なのだわ。私はこんなに値うちのない人間であり , ジェイクは明らかにとても良 い性質をしており , 人間として大きな価値をもっているから , 彼が思っているほ ど , 彼が私を愛することなどあるはずがない。彼が私の真の姿を知るやいなや ( そう , 最初の恋人は数カ月かかったんたわ ) , 彼もまた , 私との仲を続ける意味 を失い , 前の時と同じように私のもとを去っていくだろう。だから , 結婚するま でに 1 年間あるのはとてもよいことだわ。その 1 年が過ぎるまでに , きっと彼は 私の真の姿を知って , 私のもとを去っていくにちがいない。そうなれば , 結婚・ 離婚という悪夢を長びかせることが避けられるというものだわ ' このすばらしく聡明で有能な女性であるマーローは , 以上のような・判断 ' を こういう奇妙な考え方をして , 彼女は , ひそかにジェイクとの婚 したのだった。 約が解消されるのを待ちうけていた。彼が , 彼女の真の姿を見抜いたら , ただち に解消になる , とマーローにはよく分かっているつもりなのだった。 それから , この非論理的な思考は , つぎの段階へつながっていった。マーロー が , ジェイクは本当に信じるに値する人だから , 自分も彼を愛そうと決心する と , 今度は彼女は , 極端な嫉妬と強い所有欲を感じるようになった。日勤でも夜 勤でも , 病院の仕事が終ってから 2 人が会うまでに 10 分でもたっていれば , それ はそれはきびしく彼を詰問するのだった。もしも彼が , 患者や看護婦や病院の受 付係に愛想よく徴笑んだりしようものなら , 彼女は彼を不実な多情者と非難する こに , 再びマ のだった。 まうのである。しかし , ジェイクは本当に彼女を愛しているようにはみえるけれ の男が彼女を捨てたから , 今度の男も同じようにするかもしれない , と考えてし ーローの非論理的な思考が拡大されているのが看取される。前

10. 論理療法 自己説得のサイコセラピイ

220 除されていくはずなのです。二番目の夫はあなたの言葉によっても前の 2 人にく らべてずっと人間味のある人なのですから」 「そうです。彼は信じられないほど優しいし , けっして暴力をふるったりしま せん」 「それなのにお嬢さんが一緒にいるだけで心が乱れてしまうというのです か ? 」 「そうなのです。自分でもなぜだか分かりませんが , そうなってしまうので 「あなたは事実をもっとよく観察し , 自分が過去の経験によって条件反応を獲 得するのは自然のなりゆきであると考えるのをやめれば , このことはよく理解で きると思います。いいですか , 現在のご主人の行動が , あなたの条件反応的恐怖 を強めるものではないことがはっきりしている以上 , まだこの恐怖が残存してい るのは , まさにあなたがそれを強化し活動させているわけですよ」 「ほんとうにそうでしようか ? 」 「そうですとも一一何か魔法の類いでも信じれば別ですがね。たしかにお父さ んや最初のご主人が恐怖に満ちた状況を作りだした側面は大きいとしても , あな たも少なくとも部分的にはその状況づくりに加担したのはいまみたとおりです ね。そして現在のご主人がかかる状況を再現することが少しもないとしたら , あ なたをおいて他に誰がいったい未たに恐怖を保存しているのでしよう ? 」 「なるほど , あなたのいわれる意味が分かりました。それでは , 私の恐怖が未 たに残っているのは , 私が自分に何といっているからですか ? 」 「それを私に尋ねるのですか ? あなたは論理的に考えることを学びはじめた のですから , まず自分でそれを考えてごらんなさい」 「私のいった内容は , あなたが前に指摘したとおりだと思います。つまり , 私 はいつも自分の弱さと無能力を表にあらわしていたと思いますし , 今も同じて す。ですから , 今もってなお私に不安をひき起すものが心のなかにあるのです。 それは自分の弱さです」 「それはよい点を突いています。こういうことは , あなたが述べているように 循環的に起るものです。まずお父さんがあなたを虐待しました。その時あなたは そのひどいしうちをやめさせるすべがないと自分にいいました。そしてはげしい