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検索対象: 「イスラム国」よ
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1. 「イスラム国」よ

僕たちを疲れ 僕たちがつくってきた資本主義や新自由主義の経済のあり方などは、 させただけではなく、イスラム教徒たちの生きる目標、新しい価値も見えにくくした。 原点に徹底的に戻ろうとするほんの一部のイスラム原理主義の中で、過激派が生まれ てしまったのです。 それを認めるのが僕たちのつ 暴力を持たないかぎり原理主義が悪いわけではない くろうとしている真の自由主義社会です。 彼らの勢いを一時的に止めるために武力が使われることは、僕もいたしかたないこ とだと思っている。けれど、けっしてそれのみに頼らないことです。その武力は極力 小さく、極力短くあってほしい。非軍事の解決策こそが王道であるべきです。 戦い方を間違えれば禍根を残す。世界に「イスラム国」的な爆弾が散り、予想外の 大きなテロが世界中の町で起きる可能性があるのです。 絶対にテロを許さないという強い意志を持ちながら、違う宗教や文化や考え方に寛 宀谷にはることか 僕たちには大事なのです。 刀第 2 章なぜ「イスラム国」は生まれてしまったのか

2. 「イスラム国」よ

第 2 章 なぜ「イスラム国」は 生まれてしまったのか

3. 「イスラム国」よ

が起きても支援ができることなどを話すと、お母さんは安心してくれたようです。 彼女は妊娠 4 か月の時に、「イスラム国」の脅威から逃れるため、シリアを脱出し てきました 「不安だったけれど、このキャンプでは日本人がやとってくれた看護師さんに定期的 に診てもらうことができました。日本の ZQD 〇のおかげで、病院の診察が必要なと きは医療費の支援をしてもらえると噂を聞きました。とてもありがたいです」 子どもが生まれてどんなことを考えたかと聞きました。 「初めての子どもなのでとても不安でしたが、無事に生まれて安心しました。この子 は私のすべての希望です」 お母さんはニコニコしながら話してくれました。 「祖国から逃れてきました。家も『イスラム国』に奪われました。も , っ帰るところが ないかもしれません。この子がすべての希望です」 「この子に将来どんな風に成長してほしいと思ってる ) ・」と聞くと、お母さんはニコ ニコしなが、ら、 「この子に勉強のチャンスを与え、できたら医者になってもらいたいたくさんの人 を助けられる人間になってもらいたいと思います」 136

4. 「イスラム国」よ

「イスラム国」の憎悪に憎悪でたたかいたくない カマタ流新戦争論ワ 第 2 章なぜ「イスラム国」は生まれてしまったのか 貧しさが世界を不安定にしてい テロとウイルスを生み出す要因は同じ 格差を最低限に抑えるための「知恵」が必要い 少しすつでも武器を減らしたい だれの心の中にも獣はいる 人種差別の芽が出始めています イスラム教徒への反感はさらに多くのテロリストを生む 「自由」と「秩序」について考えよう 世界は今、寛容さを問われている 新自由主義ではなく「真・自由主義」が平和をつくる イスラム世界が「イスラム国」をコントロールすべき

5. 「イスラム国」よ

る「新自由主義」であってはならないと思います。 本当に深い意味での「自由」を追求する自分の自由と他者の自由を共に大事にする 「真・自由主義」でなければならないのです。成熟した自由主義を確立することによ って、自由主義とイスラム主義は手を携えられるのではないかと考えています。そう なった時、常に過激な暴力を伴う思想を持っ組織、グループは、生き延びることがで きなくなると思 , つのです。 真の意味で自分は自由であるか。 他者の自由を認めて生きているのか。 刃や暴力を向けるのではなく、 僕たち自身に問い直さなくてはいけないのではない でしょ , つか。 僕たちの世界がまっとうになった時、初めてイスラム社会もまた、資本 主義や自由主義や民主主義を真に理解しようとしてくれるのではないでしようか。 69 第 2 章なぜ「イスラム国」は生まれてしまったのか

6. 「イスラム国」よ

「イスラム国」に心を奪われ戦闘員として参加している人もまた同じ人間です。そこ にきっと何か世界を変えるヒントがあるはす。そのことをこの本で考えてみたいと思 「イスラム国」がやがて武力で制圧される時は来る。必す来ると思います。 しかし、そ , つだとしても「イスラム国的なモノ」は、「イスラム国後」にも、次々と 生まれてくるのではないかと心配しています。 武力で手にした安全と平和は、やがて武力をもって破壊される。 大変な状況になったこの幻世紀を、人類はどう考え、どう生き抜いていったらいし のか、僕は何をしたらいいのか、あなたは何をしたらいいのか、世界はどうしたらい いのカ この本を書きながら、僕自身がそれを考え続けてみたいと思っています。 ) 0 41 第 I 章「イスラム国」が僕たちに与えた衝撃

7. 「イスラム国」よ

イスラム世界が「イスラム国」をコントロールすべき 僕は、厳しい戒律を守りながらも「喜捨」の精神を豊かに持ち続け、世界から称賛 されるようなイスラム教徒が増えていくのを、忍耐強く信じながら待ちたい。 僕は医療支援のために通い続けているイスラムのあたたかさに、偬れ抜いています。 イスラムの世界に人り、ホテルで夜明けにアザーンが流れた 彼らの世界は心地よい。 りすると、僕はイスラム教徒でもないのに、なんだか心が洗われるような気がするの です。 ・ % のイスラム教徒は自由主義社会に生きる僕たちの友達です。そのことを忘 。大事だと思います。まっとうなイスラム教徒を大切にする。 大切にされた彼らが過激なイスラム原理主義を許さないようにして、イスラムの中 で自己規制がおこなえるようになるのが一番です。 「イスラム国」は欧米や国連や、キリスト教徒の説得には耳を傾けません。イスラム 教徒の中で話をつけるのが一番いいのです。 世界中の人々の生き方が関係しているのだと思 「イスラム国」か生まれたことには、 います。

8. 「イスラム国」よ

だれの心の中にも獣はいる なことです。 僕たちは自由主義を選択しました。「自由」は何よりも大切 僕は爲歳の夏、父に「大学に行きたい」と泣きながらお願いをしました。 「バカ野郎貧乏人は働けばいいんだ」 と言われた瞬間、僕の心は切れました。僕はとっさに父の首に手をかけ、手に力を 入れました。泣きながら父の首を絞めたのです。人間は、自分の思い通りにならない とこんなことをしてしま , つのです 父は泣き出しました。 我に返りました。 父の涙を見た瞬間、ハッと と思いました。手が緩みました。床にへたり込んで、父としばらく泣いていました。 やがて父は言いました。 「自由に生きろ。それほど勉強したいのか。自由に生きていい」 僕は自分の「自由」を得るために、とんでもないことをしてしまいました。人間の 心の中には獣がいるということを、自らの行動からもよくわかっているつもりです 55 第 2 章なぜ「イスラム国」は生まれてしまったのか

9. 「イスラム国」よ

「イスラム国」は砂上の楼閣である。砂の上の城は近々少しすっ、砂に飲み込まれる よ , つに、崩れていくだろう しかし、やっかいな「幻の国家」である。 か国に四の過激派組織が暴れ、ある領 域を実効支配しだしました。単なるテロリスト集団のネットワーク化ではありません。 まるで幻のイスラム主義教国のように見えないこともありません。かなり危険な存在 この幻の国を打ち負かした時は、さらに布い。生き残ったテロリストの細胞が地下 にもぐるだろう。砂の下に新たにカリフ制の国家を超えた国家がつくられると、世界 中が時限爆弾がセットされたような状態で、生きていかなければならなくなってしま います。 「イスラム国」よ、おまえの狙いは何か 「イスラム国」よ、おまえたちはなぜこれほどまでに残虐なことをするのか。 おまえはどうやって生まれてきたのか。 「イスラム国」よ、ど , ) へ行こうとしているのか。何をしょ , っとしているのか 同じ人間として考えてきました。これからも、考え続けていきます。

10. 「イスラム国」よ

世界は社会主義、共産主義よりも資本主義、自由主義を選びました。これしかなか ったのです。しかし資本主義とは競争の論理です。競争がある以上、資本主義と自由 しにつなか 主義は必す大なり小なりの格差を生む。この格差を、殺し合いや憎しみ合、 らない「ほどほど」のところに微調整する知恵を、世界は今こそ身につけなくてはな らないように思うのです 国内で、ほんのちょっと考え方や意見が違うといって、ヘイトスピーチや内ゲバみ たいなことをやっている場合ではないように思います。 ウイルスとの戦いも、テロとの戦いも、これは今まで世界が経験したことのないよ , つな戦いです。だからこそ、欧米も、ロシアも、もちろん日本も「これが正しい」と 確信できる戦略が立てられない。それぞれが「こうするべき」「いやそうではない」と 国家間でも意見が違い、もちろん国内でも意見が食い違う。その結果、何も生み出さ ない議論の空中戦が始まってしまうのです。 「正解」を見出すのは、決して容易なことではありません。 けれど、ただひとつはっきりしているのは、「暴力」で解決することはけっしてで きないということです 49 第 2 章なぜ「イスラム国」は生まれてしまったのか