タスク ・特定 , 定義 要求仕様の詳細化を行い , プロジェクトの仕様 ・策定 ムの選定を行う ・選定 を定義する 図 3.1 ク ツ ド イ フ 正 修 評 要求仕様を満たすために要するタスクとシステ 画と技術の策定を行う タスクを実行可能とするスケジュール , 資金計 ・実施 , 監視 , 制御 策定結果を有機的に結合し実施へ導く 画より外れた場合は修正を行う プロジェクトの進行状況のチェックを行い , 計 手法 QFD(Quality Function Development) ワークパッケージ (WorkPackage) CPM (CriticaI path Method) Technique) PERP(Program Evaluation and Review 1 OBS(Organization Breakdown Structure) WBS(Work Breakdown Så•ucture) SBS(System Breakdown Sfructure) (Earned VaIue AnaIysis) アーン・バリュー分析 プロジェクトにおける業務プロセスのタスクとそれに対応するプロジェクトマネジメン トの手法 ( 文献 [ 1 ] を参考にして著者作成 ) 3.2 フロジェクトとプロジェクトマネジメントの定義 43 特定使命の価値を認め , 資源投下が決定される」と定義される。 方針 , 手段 , 行動指針などについて規定することが必要である。プロジェクトは る。特定使命を明確にするためには , プロジェクトに対する考え方 , 目的 , 目標 , である。この要求を明確にすることが , プロジェクトマネジメントの出発点とな 造事業である。特定使命とは , プロジェクトに期待される総合的達成要求のこと 制約条件のもとで , 始まりと終わりの特定期間内に実施する将来に向けた価値創 ック [ 2 ] によると , プロジェクトとは , 「特定使命を受けて , 資源 , 状況などの プロジェクトマネジメントの知識を体系的に取りまとめた P2M 標準ガイドプ 3.2.1 プロジェクトの定義 32 プロジェクトとプロジェクトマネジメントの定義
e ラー二ングと ビジネス なにことも基本は大切であり , e ラーニングとて例外ではない。本書は , 学 びの可能性を広げる e ラーニングという学習形態を様々な側面から取り上げ , 解説を加えたものである。第 I 部は , e ラーニングの基本的な知識 , 企業内教 育との関わり , そしてプロジェクトマネジメントを取り上げた 3 つの章から構 成されている。 第 1 章 e ラーニングの基礎知識では , e ラーニングの定義や活用される学習 メディアなど , 実際に e ラーニングを実施するうえで必要不可欠な基本的な 知識を紹介する。第 2 章℃ T 活用による企業内教育と新たな人材開発では , 企業内教育に関わる基本的な知識の説明から ICT ( 情報通信技術 ) 活用の現状 そして課題を紹介する。そして , 第 3 章プロジェクトマネジメントと e ラー ニングでは , 概要・定義など基本的な知識の学びから , e ラーニング専門家が インストラクショナルデザインプロセスに対応してどのようにプロジェクトマ ネジメントを活用していくのかを紹介する。
3.2.3 プロジェクトマネジメントの定義 プロジェクトマネジメントとは , 「特定使命を達成するために有期的なチーム を編成して , プロジェクトマネジメントの専門職能を駆使して , プロジェクトを 公正な専門的手段で効率的・効果的に遂行して , 確実な成果を獲得する実践能力 をプロジェクトに適用することである」と定義される [ 2 ] 。 つまり , プロジェクトマネジメントとは , 適切な知識 , 技術 , ツールそして技 法を適用して , プロジェクトの事業主体やその他のステークホルダー 1 ) の当該プ ロジェクトに対する要求や期待を充足して , 成果を上げるための活動といえる。 プロジェクトを成功させるためには , 単にプロジェクトの目標を達成すればよい のではなく , プロジェクトを取り巻く様々な制約条件を満たしたうえで目標を達 成しなければならない。そして , 制約条件の各事項は互いに関連するものが多く , ひとつを優先すると他の制約事項に影響が出てくる。例えば , プロジェクト期間 の短縮のために「時間」を優先すると , 割高な作業費が生じて「コスト」という 制約事項に影響を及ばすことになる。このため , 複数の制約事項のバランスをと りながら , プロジェクトを成功に導くために行う活動である , プロジェクトマネ ジメントが必要になる。 プロジェクトマネジメントの要件は , 「公正な手段 , 効率的遂行能力 , 効果的 遂行能力」の 3 っといわれている。 3.3 マネジメントプロセスおよびマネジメントタスク 3.3.1 マネジメントプロセス プロジェクトには , 大規模プラント建設からソフトウェア作成までの種々の対 象が存在する。しかし , プロジェクト対象の遂行プロセスには , プロジェクトの 最終成果物にかかわらす , 「共有となる部分」と「最終成果物によって異なる部分」 とが並存する。両者は次のように定義されている。 ①共通部分 : プロジェクトマネジメントプロセス プロジェクトを運営するためのプロセスであり , プロジェクトフェーズにあま り関わりなく , ほとんどのプロジェクトに共通な業務遂行構造をもつ。 3.3 マネジメントプロセスおよびマネジメントタスク 45
②最終成果物によって異なる部分 : プロダクトオリエンティッドプロセス 成果物をつくりあげるためのプロセスであり , 成果物 ( 建造物からソフトウェ アまで種々にわたる ) に合わせてプロジェクトフェーズ ( 例えば , 製造業にお ける製品開発・製造プロセスでは , 事業計画 , 製品企画 , 仕様確定 , 製品設計 , 調達 , 製造 , 検査など ) ごとに異なる業務遂行構造をもつ。 3.32 マネジメントタスク プロジェクトマネジメントプロセスとして , プロジェクトの成果物にかかわら す行わなければならないプロジェクトマネジメントタスクがある [ 1 ] ( 表 3.1 参 それぞれのタスクのワークフローを図 32 に示す。この図では , 選定タスクよ り監視・制御タスクにおける監視対象として , 成果物と作業に関わる情報が入力 されており , 定義タスクより評価・終了タスクに対してプロジェクトの終了条件 として当初定められたゴールが入力されている。 特定 製品またはサービス に対する要求事項 定義 プロジェクトのゴール 選定 プロジェクト評価尺度 策定 スケジュール 評価尺度を : ー用いたチ 予算 統合 技術コンセプト 当初計画したゴールと 実際に達成したゴールの比較 図 3.2 プロジェクトマネジメントのワークフロー ( 文献 [ 1 ] , 図 32 を一部改変 ) プロジェクト計画 実施 プロジェクト実施 監視・制御 ー計画の見直し一 プロジェクトの評価と終結 評価・終了 プロジェクト活動 46 第 3 章プロジェクトマネジメントと e ラー二ング
3.2.2 プロジェクトの特性 プロジェクトの特性は , 「個別性 , 有用性 , 不確実性」の 3 つに集約される。 第 1 の「個別性」は , プロジェクトの非反復的な特性を指している。例えば , 車 の新製品開発では , 常に新たなデザイン , 部品 , 生産方法の開発が求められてい る。したがって , 毎回結成される新車開発プロジェクトの成果物は , どこにも類 似のモノがなく , 個別性 ( 背反的な特性 = 独自性 ) があるといえる。プロジェク トには類似性が見えても , 同一環境下で実施されることはない。特定使命による 個別テーマが問題解決を促す場合が多く , プロジェクトには差別性 , 新結合 , 新 奇性 , 革新性など多様な非定型性がある。 第 2 の「有期性」は , プロジェクトの明確な「始まり」と「終わり」を特色と する基本属性のひとつである。前述の例では , プロジェクトは , 新製品開発の発 案をスタートとし , 新製品の完成が終了を意味するので , プロジェクトの存続期 間は有期性 ( 明快な開始と終了の設定 = 一時的 ) であるといえる。「始まり」は , プロジェクトの使命によってチームが新しく立ち上がり , プロジェクトの責任者 が決定されるので明確だが , 「終わり」は必すしもそうではない。特に , どこが 「終わり」なのかを明確にしておく必要がある。 プロジェクトの使命達成は , 特殊な条件や状況を想定して実行される事業であ ることから , 第 3 の「不確実性」に影響される。時間の経緯とともに当初想定さ れた社内側の資源 ( ヒト , モノ , カネ , 情報 , 技術 , 時間など ) が変化する不確 実性も考えられる。一方 , 外部側の不確実性により , 例えば未知な情報 , 予測不 可能な環境などにより , ビジネスリスクが発生することがある。 プロジェクトの定義にあるように , プロジェクトが「独自」で「一時的」な活 動であるだけに , プロジェクトの実行は目標を絞った 1 回勝負と考える必要があ る。したがって , いかに過去の事例に精通していても , 実際に動いているプロジ ェクトがどのように進行し , どのような成果を出すかを , 経験のみで推しはかる ことは困難である。プロジェクトを成功させるには , 「使命を達成するために有 期的なチームを編成して , プロジェクトを公正な専門的手段で効率的に遂行し , 確実な成果を獲得する実践的能力の総称」とされるプロジェクトマネジメントが 44 第 3 章プロジェクトマネジメントと e ラーニング 重要になる。
第 一本章の学習目標 プロジェクトマネジメントと e ラー二ング それらがプロジェクトとして管理できる理由を理解することを目的とする。 セスによって , プロジェクトの最終成果物がソフトウェアであれ建造物であれ , を展開することで , 図中に示す業務プロセスを設定する。さらに この業務プロ (Work Breakdown Structure) とそれに関わる経営資源の計画・管理へと OBS Structure ) の作成を出発点としている。次に , SBS 形成に必要となる WBS それを構成するために必要な構成要素を示す SBS ( System Breakdown に目に見えるモノや , サービスをつくるプロジェクトの最終成果物の仕様定義と , 図 3.1 に示す業務プロセスとエンジニアリング手法の連携のなかでは , 物理的 活動全般を統括的に管理する方法を学ぶ。 要となる経営資源 ( ヒト , モノ , カネ , 情報 , 技術 , 時間 ) の管理方法を通して , 意識しつつ , モノおよびサービスづくりをプロジェクトとして遂行するうえで重 「プロジェクトマネジメント」では , モノおよびサービスをつくるプロセスを めなければ成功は得られない。 らない特殊業務であり , 定常業務とは異なり , 未知な点が多いため , 戦略的に進 「プロジェクト」とは , 限られた資源で特別なミッションを達成しなければな 3.1 プロジェクトマネジメントの概要 きるようになる。 ・協働プロジェクトマネジメントのための e ラーニング専門家の役割と活動を説明で 性を説明できるようになる。 ・ ID プロセスに対応した e ラーニング専門家と協働プロジェクトマネジメントの関連 ・プロジェクトマネジメントとはどのようなものであるのかを説明できるようになる。 42 第 3 章プロジェクトマネジメントと e ラーニング
表 3.1 タスク ①特定タスク ②定義タスク ③選定タスク ④策定タスク ⑤統合タスク ⑥実施タスク ⑧評価・終了タスク ⑦監視・制御タスク プロジェクトマネジメントタスク ( 文献 [ 1 ] をもとに作成 ) タスクの内容 顧客要求仕様の詳細化。 プロジェクトスコープ ( 業務範囲 ) の設定。プロジェクトとして受け 入れることのできる要求 , 受け入れるには条件を付ける必要のある要 求 , 受け入れがたい要求等の仕分け。 顧客の製品に対する要求仕様を満たしていると判定するための基準と なる成果物と作業の選定。 選定タスクにより選択された複数機能仕様 ( 代替案 ) の評価を行う。 3 つのサプタスクがある。 ・スケジュール策定 : プロジェクトの遂行計画の策定。 ・予算策定 : プロジェクト実行予算の策定。 ・技術コンセプト策定 : 製品の概念設計を行い , この製品設計によっ て成り立つ技術 , 製品 , サービスとその提供を行う専門部署 ( また はアウトソース先 ) の確定。 策定した各プランを有機的に結合することで , プロジェクトの実行を できる限り効率化。 プロジェクトの実際の実行。実施タスクでは , 策定タスクで立てたス ケジュール , 予算 , 技術内容をより深く詳細化する必要がでてくるが , 最初の基本計画をいかに守るかがプロジェクトの成功のキーポイント。 選定タスクで定めた成果物が , 策定タスクで定めた計画どおりに生成 されているか否かを監視し , 計画より外れた場合には , 随時計画の策 定し直し。 定義タスクで定めたプロジェクトのゴールが達成されているかを評価 し , プロジェクトの終結。 3.4 マネジメントタスクのワークフローに対応したプロジェクトマネジ メントの手法 ここでは先に掲げた図 3.1 および表 32 のプロジェクトマネジメントタスクに 対応した , プロジェクトマネジメントの手法を紹介する。 3.4.1 「特定タスク , 定義タスク」における仕様確定 定義タスクでは , 顧客の最終成果物に対する「要求仕様 (Requirement Speci- fication = 性能要求 ; Performance Requirement) 」を策定し , これに対して , 工 3.4 マネジメントタスクのワークフローに対応したプロジェクトマネジメントの手法 47
のスケジューリングの表現手法として , ガントチャート形式とネットワーク形式 のものがある。 ①ガントチャート形式のスケジューリング 工程表を表形式で作成する方法で , 左辺に業務を配し , 上辺に時間軸 , そして 業務遂行に要する時間をバーの長さで , 業務開始から終了時期を時間軸の位置に よってプロジェクトを計画する。それぞれのバーの計画日程に対して , それぞれ の業務の進捗状況について , 実績の進み方や遅れが生じたときには対策を打ち , プロジェクトの工程管理を行う。この形式の利用例が「工程表」である。 ②ネットワーク形式のスケジューリング ネットワーク形式の工程表は , ボックスとそれをつなぐ矢印 (Arrow) で構成 され , 次の 2 形式がある。第 1 の PERT ( Program Evaluation and Review Technique) 法は , アクティビティとその進行方法を矢印で表現し , イベントを ノードで表現する (AOA 型 : Activity On Arrow と呼ばれることがある ) 。作 業の順序関係が存在する複数の作業で構成されるプロジェクトを能率よく実行す るためのスケジューリング手法である。 第 2 のクリティカルバス (CPM : Critical path Method) 法は , アクティビテ ィをノードで表現し , 矢印はアクティビティの先行順位を表現する方法で , 特に スケジュールの短縮期間とその費用を考慮していることが特徴といえる。プロジ ェクト開始から終了までの期間を , 余裕 (Float, フロート ) なしの最小にする 作業の選択も考慮した手法である。 ( 2 ) プロジェクト予算の決定 製造企業におけるプロジェクトの費用の構成を , 一例として図 3.5 に示した。 このなかで , 直接費であるプロジェクト人件費 , 資材費 , 機材費が SBS と WBS との組合せから見積もることができる。その見積りは , CBS (Cost Breakdown Structure) によって , プロジェクトに関わるコスト構造が決められている。 一方 , WBS で管理するプロジェクトコスト計算例は以下のとおりである。 ・成果物を生成するための作業コスト 作業コスト = WH (Work-hour) コスト + 作業のために必要となるコスト 3.4 マネジメントタスクのワークフローに対応したプロジェクトマネジメントの手法 51
◎注 1) プロジェクトには , それぞれ利害関係をもつ多くのまた種々の人たちが関係しており , 彼ら をステークホルダーと呼ぶ。直接的関係者 ( 事業主体 , 顧客 , チームメンバーなど ) , 協力 者 ( 提携機関 , 部品供給会社 , 流通会社など ) , 監視・監督者 ( 行政府 , 地域住民など ) な どが挙げられる。 ◎参考文献 ニング専門家のためのインストラクショナルデザイン』東京電機大学出版局 . [ 3 ] 玉木欽也監修 , 齋藤裕・松田岳士・橋本諭・権藤俊彦・堀内淑子・高橋徹著 ( 2006 ) ラ ト標準ガイドブック』日本能率協会マネジメントセンター 日本プロジェクトマネジメント協会 ( 2007 ) fP2M プロジェクト & プログラムマネジメン 究部会『サイバーマニュファクチャリング』青山学院大学総合研究所 . [ 1 ] 越島一郎 ( 2004 ) 「プロジェクト・マネジメント」 , サイバーコンカレントマネジメント研 [ 2 ] 64 [ 4 ] 松田岳士・原田満里子 ( 2007 ) 『 e ラーニングのためのメンタリング』東京電機大学出版局 . 第 3 章プロジェクトマネジメントと e ラー二ング
目次 部 第 第 第 第 e フーニングとビジネス e フーニングの基礎知識 e ラーニングとはどのような学びなのか 章 章 章 1 . 1 1 .2 1.3 1.4 1.5 e ラーニングの学習形態・・ ブレンディッドラーニングとは・ e ラーニングを支える専門家・ eLPCO が提唱する 5 職種の e ラーニング専門家・ ・・ 22 参考文献・ ・・ 24 ICT 活用による企業内教育と新たな人材開発 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 職務遂行能力の開発と企業内教育・ ・・ 26 企業内教育における e ラーニングの動向と今後の動向・ 多くの職務経験によるキャリア開発・ 学習環境デザインとこれからの e ラーニングの利用可能性・・ ・・ 36 組織学習とこれからの e ラーニングの利用可能性・ 参考文献・ プロジェクトマネジメントと e ラーニング ・・ 38 ・・ 45 ・・ 43 2 26 ・・ 34 42 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 プロジェクトマネジメントの概要・ ・・ 42 プロジェクトとプロジェクトマネジメントの定義・ マネジメントプロセスおよびマネジメントタスク・・ マネジメントタスクのワークフローに対応したプロジェクトマネジメ ロジェクトマネジメント・・ ・・ 47 ントの手法・・ 目次ⅲ ・・ 54 ID プロセスに対応した e ラーニング専門家同士さらに教員との協働プ