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検索対象: これ一冊でわかるeラーニング専門家の基本 : ICT・ID・著作権から資格取得準備まで
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1. これ一冊でわかるeラーニング専門家の基本 : ICT・ID・著作権から資格取得準備まで

テレビの教育番組や電子掲示板 (BBS) や SNS が授業で活用されているのはその成果である。 コンピュータを教育指導の補助として使う試みとして , 北米ではすでに 1960 年代の中頃には ドリル練習式プログラムなどいくつかの CA コンピュータ支援による教授 ) のプロジェクト が始まっている。そして 1980 年代にはデジタルゲーム ( ビデオゲーム , マイコンゲーム ) を使 った教育方法の研究が始まっている。当時は , テレビ世代の生徒の受け身の授業態度が問題に なっていた時期でもあり , 生徒の積極的参加を促すために「挑戦」や「難易度」といったデジ タルゲームの要素を学びに取り入れることが模索されていた [ 4 ] 。 一方学校の外でも , テジタルゲームの要素を取り入れた教習が広がってきた。例えば , 日本 国内では 1 990 年代後半の道路交通法改正にともない , 全国の自動車教習所でシミュレータ教育 が取り入れられている。 こうしてゲーム的な要素を取り入れた実験授業や新製品が登場する一方で , それらの間には 共通の基準がなく , 教授方法も評価方法も確立していなかった。そこで , 学校教育など社会に 役立つゲームを「シリアスゲーム」という傘の下に集め , その開発経験を共有する動きが進め られている [ 5 ] 。 e ラーニングにおけるデジタルゲームの導入事例が集められるに従って , ゲームも万能の教 材ではなく , 学習者および学習形式に合わせた設計が必要なことがわかっている。学習者のゲ ーム経験はもちろん , 学習形式に適したゲームデザインであることが重要である。 例えば , 一人学習や競争学習よりも協調学習が有効である授業については , 1990 年代末まで は多人数参加によるテキストべースでのチャットの利用が紹介されていた [ 6 ] が , 2000 年代 からは MMORPG ( 大規模多人数型オンラインゲーム ) が注目を集めるようになった [ 刀。こ の場合 , 学習者にゲームの中で共通のゴールを設定できるスキルが必要である。さらに , 調べ るだけでなく「ものづくり」まで扱う場合は , セカンドライフなどの仮想世界の利用も考えら れる [ 8 ] 。 インストラクショナルデサインはメディアを選ばないため , デジタルゲームを選択すること も可能である。しかしながら , どのようなゲームが学習者を魅了するのかという知識がないと , 学習者の時間を奪うが学習効果は低いという結果に終わる危険性がある [ 9 ] 。その解決のため には , ゲームデザイン技法の知識が必要だが , 知識を形式化するための研究が立ち遅れている のが現状である。今後はゲームデザイナとの協働作業が必要になるであろう。 「新人の学習意欲が低い」「新人社員の質が落ちた」という指摘は珍しくない。しかし , 新世 代を評価する際には注意が必要である。例えば , デジタルケームによる学習を推進してきたマ ーク・プレンスキーは , 幼いときからデジタル機器に慣れ親しんでいる世代を「デジタルネイ ティブ」と呼び , 新しい世代には従来とは異なる教育コンテンツが必要であると , 次のように 主張している。 1 . 1 e ラーニングとはどのような学びなのか 9

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→オープンエンド型の問題やシナリオ課題 , リサーチ , 作品の制作 , 学生の ポートフォリオからの評価 , パフォーマンスチェックリストの使用など 8.4 学習目標の分類と課題に対応した教授方略 145 スキル , 学習 ) 方略 , ④態度 , ⑤運動技能 ) に対し , 教授方略とその効果につい 分類 ( ①言語情報 ( 宣言的知識 ) , ②知的技能 ( 手続き的知識 ) , ③認知的 ( 学習 こでは , ガニエの学習成果の 5 学習を促進させるような教授方略を選択する。 小さなゴールによって大きなゴールは構成されている。それぞれのゴールに対し , 学習目標の分類と , それに対応した課題別の教授方略の違いを簡単に説明する。 8.4 学習目標の分類と課題に対応した教授方略 具体的にどんな方略が効果的かを整理したい。 ゴールになっているかを考えなければならない。次に , 学習目標と課題に対して い , どんな学習活動を行うのかを決めるには , どんな知識やスキルを学ぶことが 2 つのモデルの特徴の違いを上手に組み合わせるために , どちらのモデルを使 主義的学習モデルを使用することが勧められる。 ル , 学び方の学習 , 創造的な工程などの基礎知識の応用力を学ばせるために構成 デルでは , 基礎知識の習得を行い , 環境や状況などのコンテクストに合ったスキ を構成主義的学習モデルに分配するのが効果的だとしている [ 3 ] 。方向性教授モ テニソンは , 定められた学習時間のうち , 約 30 % を方向性教授モデル , 約 70 % では , どう統合すればいいのか。構成主義的学習モデルには時間がかかるので , ている。 かかって仕方ないという批判がある。そこで , これらのモデルの統合が提案され 応用できなくなるなどの恐れがある。構成主義的学習モデルでは , 学習に時間が の学びでなくなってしまうことや , 学習者が習得した知識やスキルを他の場面に 教師 ( または , 授業設計者 ) が教育の方向性を決めてしまうために , 学習者主体 特徴を活かすように教授方略を考えることが大切である。方向性教授モデルでは , デルのうち , どちらか一方が効果的だとか決めることは困難である。それぞれの こで紹介した 2 つのモ 学習理論においてどのアプローチが優れているとか ,

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「今日の教育が直面する最大の問題は , 前デジタル時代から移民してきた親や教師たちが , ま ったく新しい時代の言語を操るネイティブ世代を教えようと苦心している状況にある」 「デジタル移民の親や教師は , 『子どもたちは自分たちの子どもの頃と変わらない』という仮 定のもと , 「自分たちが受けた教育の方法が , やり方が今の子どもたちにも同じように通用す るはすだ』と考えている。だが , もはやそのような古い仮定は有効ではない」 [IO] インストラクショナルデザインのプロセスを実施するにあたっては , 学習者のメディア体験 に注目し , 効果が期待できるコンテンツを提供する必要がある。現在行われているゲームの教 育利用もそうした試みのひとつであり , 単なる流行ではない。そして次世代育成に少なからぬ 影響を与えることになるであろう。 10 第 1 章 e ラーニンクの基礎知識 e フー ニングとはどのような学びであり , そしてどのような経緯 1.2 e ラーニングの学習形態 こまでに 学習者それぞれが異なる時間に学習する形態を非同期学習と分類することができ なる時間帯に学習するかである。学習者が同一の時間に学習する形態を同期学習 , 次に時間の視点からだが , ポイントは同一の時間帯に学習するか , それとも異 ら問題を解決する学習形態である。 を持っ複数の学習者が , コンピュータを利用してコミュニケーションを取りなが (CSCL : Computer Supported Collaborative Learning) とは , 共通の学習目的 や VOD を活用した学習がそれにあたる。 e ラーニングにおける協調学習 Self-Regulated Learning) とは , 学習者個人が自律的に学習する形態で , WBT 整学習と集団で学習する協調学習に分類することができる。自己調整学習 (SRL : e フー ニングは , 実際に学習する学習者の視点から見ると , 個人で学ぶ自己調 う 3 点を軸に見ていくことにする。 する場合 , どのような授業形態があるのかを , 学習者の学び方 , 時間 , 場所とい ここでは , e ラーニングを別の視点から眺めていく。実際に e ラーニングを実施 ル化 , インタラクテイプ性 , さらには学習目標に沿って編集された教材であった。 で発展してきたのかを説明してきた。その際に重要な尺度となったのは , デジタ る。 最後に場所の視点からだが , こちらのポイントは同じ場所か別な場所かである。

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機器なのだ。 一般に , e ラーニングは「 PC やインターネットに代表される IT や ICT 技術 を活用した学習」と表現されることが多く , なかでも , インターネットを活用し たオンラインによる遠隔学習を指すケースをよく目にする。しかし , そのとらえ 方は人それぞれ , 実に様々である。 1.1.1 デジタル化とインタラクティブ性 すでにご存知の方も多いはすだが , e ラーニングの「 e 」は electronic の e を 指す。この点から見れば , 学習者は electronic ( 電子的 ) な , デジタル化された 情報を学ぶことになる。この点は , e ラーニングを考えるにあたってキーとなる 大切なポイントである。しかし一方で , IT や ICT を活用してデジタル化された 情報を学ぶだけでは , 従来のテレビやラジオ , さらには FAX などを活用して学 の中には , 以下のような項がある。 イントは , 『 e ラーニング白書 2007 / 2008 年版』 [ 1 ] の中に見て取れる。同白書 デジタル化は大切なポイントだが , もうひとつ大切なポイントがある。そのポ ぶ方法と , その学習効果は大差ないように見える人もいるだろう。 「 e ラーニングとは , 情報技術によるコミュニケーション・ネットワーク は , 学習成果に対するフィードバックや質問への返答にはタイムラグが存在し , 従って作成されたコンテンツ」にある。通信講座などに代表される従来の学習で ここから見えてくるポイントは , 文中の「インタラクテイプ」や「学習目標に り , 双方向コミュニケーションが実施されたりすることを指す。」 [ 1 ] ( p. 11 ) めに , 人またはコンピュータから適切なインストラクションが提供された されている。このインタラクテイプ性とは , 学習を効果的に進めていくた 習者 , さらに学習者同士の間で , 必要に応じてインタラクテイプ性が確保 コンテンツは学習目的に従って作成・編集され , コンテンツ提供者と学 替する場合 , 集合教育と組み合わせて利用する場合がある。 等を活用した主体的な学習である。これは , 集合教育を全部または一部代 1 . 1 e ラーニンクとはどのような学びなのか 3

5. これ一冊でわかるeラーニング専門家の基本 : ICT・ID・著作権から資格取得準備まで

コンテクストは同様に学習環境を構成する様々な要素の総称である。 ここで , コンテクストを分析することの重要性について少しふれておきたい。 野中・竹内は , コンテクストについて「情報と知識は両方とも , 特定の文脈 ( コ ンテキスト ) ゃある関係においてのみ意味をもつ。すなわち , それらの意味は状 況に依存し , 人々の社会的相互作用によってダイナミックにつくられる」と述べ ている [ 4 ] 。またジョナセンは , 自身が構築した構成主義的学習環境設計モデル で学習環境を中心から外縁まで 6 層に分け , 中心を構成する 3 つの要素のひとっ に「問題の文脈」を , 外周部に「社会的 / 文脈的支援」を配置するなど , 構成主 義的学習観におけるコンテクストの重要性を強く認識している [ 5 ] 。このように 人間の知識はコンテクストとの関わりなしには意味をなさないことから , 知識だ けを取り出してどのように教えるかを考えるのではなく , 学んだことが " 現場 " で最大のパフォーマンスを発揮できるように , 現場を構成する様々なコンテクス トを分析し , 考慮すべきだというのが , コンテクストを分析する目的である。 しかしながら , コンテクストという概念には外来語特有の馴染みにくさを感じ ることはないだろうか。わかりづらいことをわからないままにして学び続けるの は , ID の観点から見ても避けたいことである。そこで本書では ID の初歩を学ぶ ことを目的としていることから , あえてこの優れた用語を用いず , 厳密な意味が 変化するリスクを受け入れて環境分析という言葉に置き換えることにする。それ にともない , 分析の対象もいくぶんか簡略化する。 この環境分析には 2 つの側面がある。ひとつは学習したことがすぐに実務で活 用できるように , 実務環境を想定したコースを用意するための情報を入手するこ と , もうひとつは学習環境として , 学習者に提供可能な教室や研修室などの実施 環境 , および学習者が使用するコンピュータの動作環境を明らかにすることであ る。本書では , 前者を実務環境分析 , 後者を学習環境分析と呼ぶ。 企画している学習コースの種類によっては , 該当する環境が存在しないことが ある。例えば , B to C (Business to Customers) 教育サービスにおける学習者 は一個人として学ぶため , 共通の実務環境が存在しない。このように e フー ングを提供する主体者を企業内教育 , 学校教育 , B to B (Business to Business) 教育サービス , Bt 。 C 教育サービスに分けてみると , 環境分析をどのように実 5.6 環境分析 91

6. これ一冊でわかるeラーニング専門家の基本 : ICT・ID・著作権から資格取得準備まで

が異なる [ 6 ] 。インストラクショナルデザインでは , 学習目標はあらかじめ教え 手によって設定され , 教材や授業は , 学習者がより効果的に目標を達成できるよ うデザインされる。 一方 , 学習環境デザインでは , 学習とは学習者がある社会活動に参加すること を通じて主体的に行うものである。このように , あらかじめ決まった段階的なカ リキュラムではなく , 学習者や周辺の状況に応じて , 学習目標や学習内容を変え ていこうとする考え方を , 学習者中心主義と呼ぶ。 学習環境デザインが目指すのは , 学習者が学習できる環境 ( 職場や教室といっ た ) にアクセスしやすくすることである。例えば , 上司や先輩を育成担当者とし て新人につけたり , 新人にもできる仕事を割り振ることによって , 学習者は職場 での活動に参加しやすくなる。このように , 学習者が学習活動に参加しやすくし に学ぶ仲間 , 仲間とともに行う活動など様々なものがある。学習環境デザインで 職場で働く環境には , マニュアルやテキストだけでなく , 2.3.2 学習環境の構成要素 ようとするのが , 学習環境デザインの考え方である。 その場の空間や一緒 ツール ( 道具 ) 共同体 空間 活動 表 2.3 学習環境の構成要素 ( 文献 [ 7 ] より作成 ) 構成要素の内容 ・学校の教室や , 企業の「職場」など , 学習が行われる「場」のこと。 ・活動の場 : 物理的なスペースだけでなく , 人間関係 ( 上司や先輩 , 同僚の社 員 ) , 仕事のルールなど明文化されたルールだけでなく , 誰がどのような仕事 をするかという分業等のインフォーマルなルールも含まれる。 上記の空間で用いられる「ツール」。例えば , 営業先の知識を得るための顧客リ ストや , 業務日誌 , 上司や先輩や同僚と連絡をとるための携帯電話やメールと いった様々なツールがある。 これらのツールを使って , 実際の活動を行う , 例えば営業活動など。学習には , 空間やツールだけでなく , 実際の活動が行われる場に参加することがとても重 要になる。 職場で , 様々なツールを使いながら , ともに活動に取り組む仲間。共同体は , 空間 , ツール , 活動を支える基盤であり , 学習者を取り巻く人的ネットワーク 2.3 学習環境デザインとこれからの e ラー二ングの利用可能性 35 といえる。

7. これ一冊でわかるeラーニング専門家の基本 : ICT・ID・著作権から資格取得準備まで

齋藤長行 ( さいとう・ながゆき ) 最終学歴 : 慶應義塾大学大学院メディアテザイン研究科後期博士課程修了 / 博士 ( メディアデザイン学 ) 所属 : 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科付属メティアテザイン研究所リサーチャー 著者から一言 : e ラーニングを運用していくうえで , 著作権の処理は必要不可欠のことといえるでしよう。 学習コンテンツの数が増えるほど , 著作権処理の業務は煩雑になるでしようし判断に苦慮する場合も増 えるでしよう。この本が , 読者の方々の日々の著作権処理業務に , 少しでも役立てば幸いです。 【担当部分 : 第 1 0 章 , 1 1 . 2 節】 長沼将一 ( ながぬま・しよういち ) 最終学歴 : 東京都立大学大学院工学研究科博士課程単位取得退学 / 修士 ( 工学 ) 所属 : 東京通信大学情報マネジメント学部助教 著者から一言 e ラーニングは主として PC で行われてきましたが , スマートフォンや電子書籍リーダー の登場をきっかけにして , さらに適用領域が広がっていくと考えられます。℃ T も目覚ましい進歩を遂げ ていますので , 最新動向をキャッチアップしつつよりよい教育を行っていっていただければ幸いです。 【担当部分 : 第 1 2 章 , 第 1 3 章 , 第 1 4 章 , 第 1 5 章 , 第 1 6 章】 山根信二 ( やまね・しんじ ) 最終学歴 : 東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学 / 修士 ( 情報科学 ) 所属 : 岡山理科大学総合情報学部情報科学科デジタルメディアコース講師 著者から一言 : e ラーニングの研究開発は国内でも活発になり , 日本教育工学会 , 教育システム情報学会 , 情報処理学会などの学会をはじめ , e-Lea 「 ning World のような展示会も開かれています。また , 教育機 関以外に目を向けても , 従来の人材育成サービス企業だけでなく青山学院ヒューマン・イノベーション・ コンサルティング株式会社をはじめとする産学連携のべンチャー企業も登場しています。さらにゲーム産 業のほか , 「 YouTube EDU 」や「 iTunes U 」といった国境を超えたウェブサービスやげ企業も e ラー 二ングへ進出しています。今後も e ラー二ングは , 多様な専門家によるコラボレーションが進む分野であ り続けるでしよう。 【担当部分 : 第 1 章コラム , 第 17 章】 石井美穂 ( いしい・みほ ) 最終学歴 : 上智大学大学院法学研究科博士前期課程修了 / 修士 ( 法学 ) 慶應義塾大学大学院メディアテザイン研究科後期博士課程在学中 所属 : 青山学院大学ヒューマン・イノベーション研究センター客員研究員 著者から一言 : e ラーニンクを運用していくうえでは , 必然的に学習者の個人情報を扱うことになります。 実務の運用においては , 個人情報保護の問題が発生する可能性のある場面で , それに気づけることが重要 となります。個人情報保護法の全体像を理解し実務に役立てていただきたいと思います。 【担当部分 : 1 1 . 1 節 , 1 1 .3 節】 292 編著者・著者紹介

8. これ一冊でわかるeラーニング専門家の基本 : ICT・ID・著作権から資格取得準備まで

目標とする学習成果によって , 使用するモデルや教授方略が変わることをここ まで説明してきた。紹介した学習理論のアプローチ以外にも , 学問領域や学派を 超えてモチベーション研究やフィードバック研究 , 自律学習の研究なども進めら れている。また , 対象者分析の項でも紹介したが , 学習環境と実務のコンテクス トを考えながら教授方略を考えたりする。そんなときには , プロジェクトべース ニング (PBL) やシナリオペーストラーニング (SBL) などのアプローチ がとられる。 これらは実務でのコンテクストを考えて , 職場や実社会で知識やスキルが応用 できるような学習内容や課題を提供するというものである。また , 学習者の特性 や学習スキルによって , 提供する教育に対する学習の効果が違うという研究結果 表 8.1 学習目標の分類と対応した教授方略例 ①言語情報 ( 宣言的知識 ) ②知的技能 ( 手続き的知識 ) ③認知的方略 ( 学習スキル , 学習方略 ) ④態度 ⑤運動技能 分類の説明 名前や記号 , 事 実やルールなど を思い出すこと ができる 学んだルールな どを新しい状況 へ応用できる 効果的で効率的 な学習方法を選 択できる コンテクストに 合わせ肯定的・ 否定的な感情か ら自分の行動を 選択できる 正確でスムーズ に身体を動かせ る 教授方略例 ( 英語の授業での例 ) 新しい単語を提示し , 単語の意味や品詞 , 使い方を自分 で説明できるようになるまで繰り返し練習させる。この ときには , 記憶しやすいように , 単語を使われる場面こ とに分類したり , もともとのラテン語の意味を提示した りして , 記憶を助けるような教授方略を考える。 学んだ単語を使って , 英作文をさせる。英作文のテーマ から使われそうな英単語の意味や品詞 , 使い方などを思 い出させてから , 自分の意見を英語で表現するために使 わせる。 英単語を覚える際に , 音読 , 書く , 単語のイメージを考 える , 連想するなど , 多様な学習方略を経験させる。ま た , 自分ではどんな方法で記憶しようとしていたのか , リフレクションさせる。 国際人としての前向きな態度を日頃の授業から育成でき るように心がける。学生ひとりひとりがグローバル市民 として国際問題について考えるような認知的学習を取り 入れる。また , 英語圏の英語話者だけでなく , 各国から の代表者が英語で国際間題に取り組んでいる姿などをビ デオで見せるなどして , モデルを示したりする。 正しい発音ができるようになるために , 繰り返し練習さ せる。アクセントに意識させる。難しい場合は , 構成す る音を 1 つずっ確実に発音できるように練習する。 8.4 学習目標の分類と課題に対応した教授方略 147

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1.2.4 学習上の課題とファシリテータの必要性 ひとくちに e ラーニングといっても , 様々な学習形態があることがおわかりい ただけたはすだ。例えば , 現在の主流である WBT を活用しての SRL による自 己調整学習では , 集合形式の場合を除き孤独な学習となるため , 学習の進め方を 自己管理できることや , いかにモチベーションを維持するのかが重要なポイント になる。 一方 , 協調学習の場合は , 電子掲示板などオンラインのコミュニケーションツ ールを用いたテキストによるコミュニケーションが主となる。そのため , 対面時 よりも積極的に意見を発信することが予想されるが , テキストの解釈に違いが出 たり , 学習者のタイピングスキルによってはスムーズなディスカッションができ ないといった問題も発生する可能性があることも , 事前に十分に理解しておく必 要がある。 特に e ラーニングにおける協調学習では , 学習者とのコミュニケーションやデ イスカッションなどを活性化させるためのファシリテーションに関する知識やス キルが必要になる。この役割は , 教員やインストラクタ , 後述する学習支援の専 門家であるメンタが担う場合が多い。オンライン特有の特徴の理解も必要だが , 基本的なファシリテートに関する知識も書籍などで学習しておくことをお勧めす る。 1.3 ブレンディッドラーニングとは プレンディッドラーニングとは , 読んで字のごとし , 従来の集合型授業と e ラ ニングを組み合わせて行う授業である。 e ラーニングは , 日々進歩する IT や ICT 機器の恩恵を受けてはいるが , だからといってすべての学びを , 効果・効 率よく学ぶことができるのかといえば , 残念ながらそうはいかない。 音楽演奏 , スポーツ , 料理などは , 私たちの知覚 , つまり五感を活用する必要 があり , 実践の場面で実演・実践することが求められる。例えば , 料理における 味覚 , スポーツ技能の習得に関わる自己受容感覚は , e ラーニングで十分に学習 1 .3 プレンティッドラー二ングとは 15 できるか ? と問われた場合に即答することはできないであろう。

10. これ一冊でわかるeラーニング専門家の基本 : ICT・ID・著作権から資格取得準備まで

表 5.5 環境分析を行うケース 学習環境分析 実務環境分析 実施環境 動作環境 〇〇〇〇 〇△〇 x 企業内教育 学校教育 B toB 教育サービス B toC 教育サービス 施するかは少しすっ異なってくる ( 表 5.5 ) 。 動作環境は , 技術分析結果から得ることができるので , 施環境の分析について説明する。 5.6.1 実務環境分析 実務環境と異なる環境で研修を行うと , それだけ学習の成果が業務の成果から 遠ざかることになる。そこで , 実務環境をあらかじめ把握することで , 研修と実 務のミスマッチを防ぐ。こで分析する実務環境は , 自然環境と , 学習の目的で ある業務に関わる要素の 2 っからなる。 自然環境は , 運動技能に及ばす影響が高い。そこで気温 , 湿度 , 明るさ , 風向 や風速 , 音量などを測り , パフォーマンスに強い影響を与えるものを見抜いて対 策を立てられるようにする。工場や倉庫 , 屋外など , 特殊な環境で行われる業務 では , 自然環境の分析は特に重要さが増す。 業務に関わる要素とは , 職場に戻った学習者が実際に業務を行うときに , その 業務遂行のために環境が提供しうるあらゆるものを指す。業務を支援する情報や 資料 , 機器 , 用具は職場内のどこにどれほど配置してあって , どのような形で業 務を遂行している社員に提供されるのかを明らかにする。これには作業場のレイ アウトも含む。コンピュータを使う業務なら , 少なくとも実務で使用するコンピ ュータの OS や業務遂行に必要なソフトウェアはバージョンまで把握しておきた 学校教育では基本的には実務の場というのは存在しないが , 実験や実習などの 学習方法を学ぶための授業を設計する際には , その実験や実習を実務の場とみな △△△△ こでは実務環境と実 92 第 5 章分析フェーズ