( 2 ) 作成上の留意点 メディア特性からみた「詰めこみすぎない」という大前提のもと , を確認しよう。 、スライド数 95 スライド作成の基本 概ね 25 枚を限度 ( 最大数 ) と考えるとよい。 1 スライド 1 分間を目安に , 15 分のプレゼ ンテーションなら 15 枚ほど用意する。 30 分以上話す場合は , 時間中ずっとスライドを見せ 続けると , 聞き手にはかなりの負担となる。プラックアウト / ホワイトアウト 1 ) などの技 法を使い , スライドを見せていない時間を設けるよう心がけたい。 ~ 文字の大きさ / 行数 タイトル文字は 44 ポイント , 箇条書きの文字は 32 ポイント ~ 20 ポイント程度にするのが 一般的である。箇条書きの行数は 6 行ぐらいまでが見やすく , 効果的である。内容にもよ るが , 10 行以上だとかなり細かく , 込み入った印象を与えてしまう。 基本レイアウト 横長・横書きで , 各スライド上部に必ずタイトルを入れる。下部にページ番号を入れて おくと , 質疑応答時に対応しやすい。発表日の記入も忘れないようにする。発表者の所属 ( 会社名など ) や , 管理上の観点からスライドの版数などを入れる場合もある。テンプ レート 2 ) を利用すると , 少ない労力でセンスのいいレイアウトができ , 効率的である。 タイトル入力範囲 文字入力範囲 4 ~ 6 行くらい 2010-03-033d e d. 日付・版数 2010-03-033 ・ d edition. 44 ポイントくらい ページ番 - 号 20 ページ中 11 番目 11 / 20 会社名や会社のマーク ( ロゴ ) などを入れることもある スライド作成の基本 1 ) 話しの途中でスライドを黒一色にして提示を中断するのがブラックアウト , 白一色にするのがホワイトアウ ト。マイクロソフト社パワーポイントの場合 , 前者は B ボタン , 後者は W ボタンが対応する。 2 ) コンピュータ・ソフトに付属した設定済みのデザインパターンのこと。
9 イ第 11 章提示資料はインパクトが大切 1 . スライド作成の基本事項 ( 1 ) メディア特性を理解する ソフトを使ったスライド作りは , 美しい色づかい , かわいいイラスト , 面白い動画など も思いのままに取り込むことができる。しかし , 見栄えのよい資料を作ることが目的なの ではない。聞き手がプレゼンテーション全体を受け入れるのに貢献するかどうかがポイン トであり , そのためにはます , スライドというもののメディア特性を理解する必要がある。 第 1 の特徴は , 次々に画面が入れ替わっていくという点である。 1 枚のスライドを見せ ている目安は 1 分程度であることを第 10 章で説明した。今 , 聞き手の前に提示されている 資料は 1 分後には全く別の情報に変わってしまうのである。 第 2 の点として , 聞き手にとっての記録性がないということである。提示されたスライ ドの要点をすべてメモしていくことは不可能なのだ。この点を補うため , スライドの一覧 をあらかじめ配るやり方もあるが , 提示資料と配付資料を同一のもので済まそうとする安 易な姿勢として批判する声も少なくない。 第 3 に 舌し手の立場からすると , ホワイトボードや OHC, ポスターなどと比べて表 現上の自由度が高い。そのうえ , 聞き手を驚かすようなアニメーション効果を付けること もできるし , 音声や動画の挿入も , ある程度のスキルがあれば可能である。 以上から導き出させることは , スライドは話し手側には自由度が高く使いやすいが , 聞 き手にとっては情報過多になりがちだということである。プレゼンテーションにおけるス ライドは聞き手の情報処理能力を考え , 詰めこみすぎにならないように心がけよう。 一三ロ スライドについての認知 △△ぐ 舌し手側 聞き手側 ・自由な表現可能 ・どんどん進む ・あれも , これも ・記録しにくい スライドプレゼンテーションは情報過多に陥りやすい
702 第 11 章提示資料はインパクトが大切 演習問題 【知識の確認】 以下の記述が概ね正しい場合は〇 , 明らかな誤りを含む場合は x をつけなさい。 1 . 2 . 1 . 言葉のセンスを高めるために過去の名文などに触れるのはよいやり方である。 9 . 文章ではなく箇条書きを多く用い , 体言止めの短文などで簡潔に表わすのがよい。 スライドは統一感第一なので , キーワードも含め全ての文字を同じ色にする。 7 . 平面的な概念や位置関係をわかりやすく表わすには流れ図の活用が適している。 プラックアウトは , 話しの途中で画面を黒にして提示を中断する手法である。 補色関係の色を多く組み合わせて使い , より色鮮やかに仕上げるようにする。 4 . 言葉でうまく説明できない情報は , 写真やイラスト・グラフなどで表現する。 1 回のプレゼンテーションで使うスライドは常に 25 枚までにとどめるのがよい。 1 枚のスライドには出来るだけ多くの情報を効率的に配置するよう心がける。 スライドの向きやタイトルバーの色と形などは全スライドで統一する方がよい。 10. 8 . 6 . 5 . 3 . 1 . 【考え方の整理】 プレゼンテーションのスライドを作成するための留意点を挙げ , 自分で大切だと思う 順に 10 個並べて書き出してみよう。 以下の用語の意味を確認しよう。 フローチャート , 補色 , グラデーション , アニメーション効果 , キャッチフレーズ , 【発展学習】 ート , 一文書一件主義 , ホワイトアウト フォント , テンプレ 「今年の私の 5 大ニュース」と題してプレゼンテーションをするときの , キーワード とキャッチフレーズを考えてみよう。 2 . 新聞から任意の記事を選び , その内容を整理して 5 枚のスライドを作成してみよう。
0 第 11 章提示資料はインパクトが大切 世界的に有名な建築物を説明するのに , 写真がない場合だと , 聞き手はどのように感じる だろうか。いかにうまく説明しても , 右の独創的な形を思い浮かべてもらうことは不可能 である。効果的なイメージ化は言葉の限界を補い , 聞き手に強いインパクトを与えること 3 . ができるのである。 同じような枚数・色づかい・レイアウトの資料でも , センスのよさを感じさせるものと センスのよい資料とは よい。タテ・ヨコ・上下の端を合わせることによって , 整然とした印象の資料になる。 る。近年のプレゼンテーション・ソフトには「整列」機能がついているので , 活用すると また , 図形やテキストボックスなどを多用すると , 位置が微妙にずれてしまうことがあ そ , はじめて生きてくるものなのである。 を使ったりすることはよい。しかし , そうしたポイントの強調も全体に統一感があってこ 系にし , 同じ背景を使う。もちろんキーワードだけ目立つ色にしたり , 異なったフォント すべきである。全体がバラバラな印象にならないように , 全てのスライドの色トーンを同 スライドのフレームの向き , タイトルバーの色と形 , 文字の大きさなどは基本的に統一 ( 2 ) 全体トーンの統一 分けるのがよい。 複数のポイントがあると感じたら , 迷わずスライドを 1 枚増やして , 1 メッセージずつに 簡潔な短文で表わし , 以下はその主張についての詳細説明や補足データを示すようにする。 1 行目のタイトルで , そのスライドで伝えたいことを 的に複数のメッセージを入れない。 プレゼンテーションにおいても , この考え方は適用できる。 1 枚のスライドには , 原則 にくい。一文書一件は , 文書の受信者に配慮した文書作成の基本原則なのである。 いう考え方である。 2 つ以上の案件が書かれていると , その文書を受け取った方が管理し 則って行う。これは 1 枚の文書 ( ペーパー ) には , 基本的に 1 つの用件しか書かないと のっと ビジネスで文書を作成するときには , 「一文書一件主義」 ( または一件一葉主義 ) に ( 1 ) メッセージの絞り込み そうでないものがある。この分かれ目はどこにあるのか。 3 つの視点から考えてみよう。
97 2 . 表現効果を高めるために 前節でみた基本事項を守って取り組めば , ビジネスパーソンとして恥ずかしくないレベ ルのスライドが作成できる。しかし , まだこれだけでは十分とはいえない。聞き手に強い インパクトを与え , 興味をもってもらい , なおかっ記憶にも残るような効果的なスライド の作り方を , 4 つの視点から見ていこう。 い ) キーワード化 プレゼンテーションのスライドでは , 長い文章は禁物である。不要な言葉を省いて短文 化し , 箇条書きで示すのが原則である。また , 簡潔で , 歯切れのよい表現にするため「体 言止め」を多用する。カッコ記号や感嘆詞などでアクセントを付けるのもよいだろう。 れン、 例 縮し , イリオモテヤマネコの紹介 イリオモテヤマネコは、沖縄県の西表島の原生林に生息する動物です。 世界中で、この西表島のみに分布する日本固有 ( 亜 ) 種で、生存数は 1 00 頭を切るともいわれ、国の特別天然記念物に指定されています。 体長 60cm 、体重は 4kg 前後で、コウモリ・爬虫類・両生類・昆虫などを 食べて暮らしています。動きは敏しようで、主に地上で暮らしていますが、木 登りや泳ぎも得意です。地元の方言では、「ヤママヤー」「ヤマビカリャー」 などと呼ばれてきました。 近年、このイリオモテヤマネコの生息数が減っていることを示唆する報告 がありました。原因の第一は、人間による島の開発で、これによりイリオモ テヤマネコが棲むための環境が脅かされているのです。また、車の交通量 増加に伴う交通事故の危険性や、人間が飼うイヌやネコ、それが野生化し た野良ネコの生活上の競合も指摘されています。 良 例 イリオモテヤマネコの紹介 ・絶減の危機とその理由 ・夜行性で、虫や爬虫類などを捕食 ・日本固有 ( 亜 ) 種で特別天然記念物 キーワードを一つひとつつないでいくと , ある結論へつながる。この結論を言語的に凝 相手に強いインパクトを与える短文にしたものが , キャッチフレーズである。 便利 + お得 + 安心 會キーワード會 キャッチフレーズ これ一枚でグルメもショッピング も電車も割引もあって便利でお得 やつばり 「スルッと JAPAN 」 キャッチフレーズの例 3 ) 大島武「プレゼンテーション・マインド「相手の聞きたいこと」を話せ ! 』 ( マキノ出版 ) p. 152 ~ 155. 次頁以降の図も同様。 2004
砌第 7 章表現技術を工夫しよう ( 2 ) 使い分けのポイント 上記 3 つの表現手段は , 多くの場合 , 組み合わせて活用される。口頭表現のみで発表す る場合もあるし , 最初から最後までパソコンの画面に従って進めていくプレゼンテーショ ンもある。この使い分けはどう考えたらいいだろうか。 第 1 は , 時間との関係である。 3 分程度の自己紹介や簡単な挨拶などは口頭だけで行う 方がすっきりする。一方 , 聞き手の立場からすると , 資料も何もなしで長い時間 , 他人の 舌しを聞き続けるのは辛い。 l() 分以上のプレゼンテーションの場合は , 必ず何らかの視覚 資料を用意するように心がけるとよいだろう。 次に , 目的との関係である。「情報提供型」プレゼンテーションの場合は , 聞き手に情 報が正確に伝わらなければならない。聞き間違いや忘却を防止するのに威力を発揮するの はレジュメである。一方 , 聞き手の心を動かすことが重要な「説得型」には , インパクト のある提示資料が欠かせないし , 「好感獲得型」の場合は , プレゼンター自身の人柄をア ピールする上手な話し方 ( 口頭表現 ) が何よりも大切になる。また , パソコンのスライド を利用しながら , 同時にレジュメを配るのが , 丁寧なプレゼンテーションといえるだろう。 この場合 , スライドをすべて印刷することが必ずしも最良の方法とは言い切れない〇スラ イドが 100 枚あった場合 , その要点の部分を抜粋してコンパクトにまとめたものを手元に 配る方法もあるのである。 また , 国際学会などで配慮が感じられるプレゼンテーションは , スピーカーが外国人で 英語 ( 同時通訳付 ) で行われながら , スライドではあらかじめ翻訳された日本語で表示さ れたものがある。聴衆の大部分が日本人の場合 , 理解が増すことはいうまでもない。 最後に , プレゼンターの立場からみると , 最も難しいのは口頭のみのプレゼンテーショ ンである。視覚情報に頼らす , 言葉のみのカで話しに説得力をもたせることは , 初心者に は難しい。話し方の力不足を補ってくれるレジュメの存在は , 経験不足のプレゼンターに とって大きな強みである。また , 「パソコンがあると , それを見ながら話せるのでやりや すい」という声もよく聞く。技能があってセンスのよい提示資料を作ることができれば , これも大きな武器となる。 ① 口頭プレゼン ② 配付資料プレゼン ③ ) ノヾソコンプレゼン 一三ロ 好感獲得型 / べテランのプレゼンター向き 情報提供型 / 初級者のプレゼンター向き 説得型 / スキル ( 技能 ) のあるプレゼンター向き
87 2 . 演出としてのツール活用 プレゼンテーションにおけるツールは , あくまでも手段であり , それ自体には基本的に 価値はない。ツールに意味があるとすれば , それは目的達成のためにどの程度貢献できた かという点に尽きる。用意したツールをプレゼンテーションにどのように取り込むか , 第 6 章で取り上げた「演出」 (). 53 ) という視点から検討しよう。 い ) 演出の心構え ツールを活用するときの基本的な心構えを「さしすせそ」でまとめてみる。 さしすせそ さりげなく提示 主役 ( しゅやく ) はプレゼンター スライドは 1 枚 1 分 正確性の徹底 即応が大切 「さあ , こちらをご覧ください / 」あまりにもハイテンションで「見せるぞ / 」「どう だ / 」という気持ちが前に出すぎると , 聞き手は逆に気持ちが引いてしまう。自信満々の 資料もあえてさりげなく提示しよう。また , プレゼンテーションの主役はあくまでプレゼ ンター。決して資料の方が主になってはいけない。 プレゼンテーションソフトを使って提示するときは , スライド 1 枚を 1 分間で見せると よい。それ以上短いと消化不良になるし , 同じ画面が長く続くと , 聞き手は飽きてしまう。 また , 持ち帰りが前提の配付資料は , 後からクレームにならないよう正確性が第一である。 データそのものの正確性はもちろん , 著作権や個人情報保護などにも配慮したい。 そして一番大切なのは即応性である。用意していた資料がうまく表示できないといった トラブルの可能性は , いかにリハーサルを重ねてもゼロにすることはできない。予定外の ことが起こっても , 焦らず , 落ち着いてその場の状況に対応できるような臨機応変さが肝 要である。
のようなレイアウトが考えられる。 く流れ図〉 パワーポイント作成手順 タイトル決定つタイトルバー作成つ ポイント箇条書きつイメージイラスト挿入 つキャッチフレーズ ( 吹き出し ) 色づかい 美しい色づかいはスライドの印象をよくするが , 多くの色を使いすぎると逆効果になるので注意が尼 要である。基本的には , ますスライド全体のトー を決め , プラウン系なら全てプラウン系 , プルー系 ならばプルー系と , 同系列で統一した方がよい。例 ン ー装飾 の向かい合う色 , 赤ーシアンなど ) を使う場合もあ いときは , あえてコントラストを狙って補色 ( 右図 外的に たとえば 2 つの異なったプランを強調した 96 第 11 章提示資料はインパクトが大切 レイアウトのバリエーション 箇条書きの配置のしかたで , それぞれの概念の関係をわかりやすく示すこともできる。 時間の流れ , 作業プロセスなどを示したい場合は左 , 対立する概念を際だたせた場合は右 1 . 2 . 3 . く対立〉 (M) マゼンタ 青 (B) 明るい 般的 おだやか 追加に欠ける 特徴がない 落着きがない 色相環 しきそうかん シアン ( C ) 赤 (R) 黄 (Y) 緑 (G) 文字色を変えたり , 太文字にしたり , フォントを変えたりしてアクセントを付けること ができる。図形の場合も「立体化」「グラデーション」「影付き」「白抜き」「塗りつぶし」 などの技法がある。これらはいすれも , やりすぎないことが大切である。また , 全体の統 一感を損ねないように , 十分注意して活用したい。 アニメーション効果 途中で文字が飛び込んだり , 図形が浮き出てきたりなど , アニメーションの効果を入れ ることで , 強調したいポイントをダイナミックに提示することができる。この機能で注意 すべきことは , 時間のかかりすぎるものを避けるという点である。文字があまりにもゆっ くり浮き出たりすると聞き手はイライラする。また , クリックのタイミングを間違えると 全体が台無しになってしまうので , リハーサル時に何度も操作を確認しておく。
( 3 ) 言語のセンス スライド作成というと , パソコンの操作やデザインセンスが注目を集めるが , 実は言語 のセンスがとても重要なのである。大切なことをいかに簡潔に言い切るかなどである。 のような言葉力を高めることは , なかなか一朝一タにはできない。言語センス向上のため に , 代表的なリズム感やインパクトのある名文を , 声に出して読むことをお奨めしたい。 北原 からまつの林を週ぎて , からまつをしみじみと見き。 からまつはさびしかクけ久 たびゆぐはさびしかクけ久 川端 廱秋 松尾 与謝 小・な 国の長いトンネルを抜けると雪国であった。 夜の底がぐなった。 信号所に滝車が / たまった。 向こうの座席から娘が立って来て , 島村の前のガラス窓を落した。 雪の冷気か読れこんだ。 古池や飛ひ込むオの音丿 んの海ひねもすのたクのたクかな丿 んすずめの子そこのけそこのけお悪か通る丿 代表的な名文
93 第 1 1 章 提示資料はインパクトが大切 この章のねらい 本章では , プレゼンテーション・ソフトを使用して提示資料を作成する場合の留意 点について考える。あらかじめ作成したスライドをパソコン上でデモンストレーショ ンしていく , 現在のスタイルが一般化したのは 1990 年代に入ってからである。それま では , トランスペアレンシーと呼ばれる透明のシートに切り貼りやカラーベンで書き 込んで資料を作っていた。この OHP 中心のプレゼンテーションは , パソコン利用の 本格化によって一変した。クリックーっで画面がどんどん変わっていく , その美しさ とダイナミズムは , 聞き手に驚きを与え強い印象を残すものとなった。 しかし , パソコンプレゼンテーションが定着するにつれ , 今度はそのマイナス面も 多く指摘されるようになってきた。「情報量が多すぎる」「ペースが速すぎる」「単調 で飽きてしまう」などである。現在は , パソコンを使ってプレゼンテーションするこ と自体は何の評価にもならない。いかにわかりやすく , 効果的な資料を提示できるか が厳しく問われているのである。 聞き手に肯定的に受け入れられる提示資料を作るには , どのような点に気を配った らよいのか , ポイントを確認していこう。