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検索対象: ユダの福音書を追え
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1. ユダの福音書を追え

イスラエル幻笋し 工ルサレム ヨルダン 地中海 アレクサンドリア シナイ半島 つ , 285 m ・ サウジ アラビア カイロ アントニ ロ発見地 ジ 工 院 聖バコミウス 修道院 紅海 地図中の海岸線・国境は 現在の状態 一 0 km 100 みノ / 、マディ .. / ん NGM MAPS 180 年頃 リョンの司教 工イレナイオスが グノーシス派の デ 教えを批判し、 ユダの福音書を 「偽りの歴史」と非難 200 ユダ イエス 27 5-300 年 初期キリスト教 信徒の間で正統派の 教えが優勢に 30 年頃 」ナザレのイエスが 十字架にかけられる 初期キリスト教の歴史 紀元 ( CE ) 1 年 主な文書ー 100-130 年 キリスト教 グノーシス派が台頭 " 100 300 200-230 年頃 150 年頃 110-150 年 49-62 年 ユダの福音書、真理の福音、 大いなるセッの 新約聖書 ( 以下 トマス福音書、 ヨハネのアボクリュフォン 第ニの教え 新約と路 ) の ペテロ福音書 ( いずれもグノーシス派 ) ( グノーシス派 ) ( 外典つ、ベトロの 最も古い文書 150-200 年頃 手紙ニ ( 最も遅く ( バウロの手紙の マルコ、マタイ、ルカ、 成立した 一部 ) か成立 外典 : 経典外聖書 ヨハネの四書がこの頃 ともいい、教会が 新約の文書 ) 、 65-95 年 聖書として正式に採用 初めて正典福音書 マリア福音書 マルコ、マタイ、 した「正典」以外の として認められる ( グノーシス派 ? ) ルカ、ヨハネの ユダヤ教・キリスト教 四福音書 ( 新約 ) 関係の文書。

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「この文書の重要性は、新たに見つかったというだけでなく、まったく新しい種類の文書だと いう点にある。従来のグノーシス主義のテキストはたしかに興味深いが、どれも似ていて、同じ ような主張を同じような方法でくり広げるばかりだった」 「だがわれわれはいま初めて、古代のキリスト教徒たちを憤慨させた著者が著した、彼自身の 言葉を手に入れたのである。つまり、彼が間違っていたとか、裏切ったとは単純に言いきれない のだ。それはこの文書をつぶさに調べれば分かるだろう」 「これは、ナグ・ハマディ文書の発見に劣らない、驚くべき発見だ。従来、グノ 1 シス主義に 関する文書といえば、古代キリスト教会の教父たちによる間接的な記述だけで、、 クノーシス主義 者が直接著した文書はほとんど存在しなかった。それがいま、グノ 1 シス主義の文書を使って、 教父たちの言葉のニュアンスを理解できるようになったのである。もはや、グノーシス主義者た ちは間違っていたと断言することはできない。より真実に近づくための文書が見つかったのだ」 「グノーシス派は、旧約聖書に描かれている神は悪魔であると主張してカトリック教徒に衝撃 を与えた。『ユダの福音書』では、新約聖書の要となる記述に対して、ほば同時代に成立した文 書が異議を唱えているのだ。『ユダの福音書』は、新約聖書とほば同時代か、ほんの少し後で書糴 かれたものだ。そしてこの文書は、ユダが正しい行動をとったと擁護している」 マ カッセルにとって、それはまさしく啓示だった。ナグ・ハマディ文書に携わった中心的な学者 ナ 集団のなかでも、ひときわ重要な存在だったカッセルが目にしてきたどんな文書よりも、ずっと 高い研究価値を持つものだった。

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C 叩 yright ◎ 2006 Krosney Productions, Ltd. AII rig hts reserved. Reproduction Of the WhOle or any part 0 「 the contents without permission iS prohibited. AII photographs by Kenneth Garrett, except image ofC0dex Tchacos on firstinsert page, courtesy 0fFlorence Darbre. Timeline images: Judas by Leonard0 Da Vinci, Royal Collection of Windsor Castle, U. K. ; Photograph by Jennifer MoseIey; Jesus and St. Peter courtesy St. Catherine s Monastery, Sinai. Scripture quoted by permission. Quotations are 伝 om the Net Bible ⑩ copyright ◎ 1996 ー 2006 by Biblical Studies Press, L.L.C. http://www.bible.org/. AII rights reserved. 本文中の聖書の引用部分は、「聖書新共同訳」 ( 日本聖書協会 ) に準じる。 また、新約聖書外典の書名は荒井献 [ 編 ] 「新約聖書外典」 ( 講談社 ) に準じる。

4. ユダの福音書を追え

をまとめた著者ハ ート・クロスニーは、最初にこの写本の存在と重要性をナショナルジオ グラフィック協会に知らせ、出版の可能性について真剣に検討すべきだと説得した人物である。 約三十年前に発見されて以降、数奇な運命をたどってきたこの文書を、クロスニーは誰よりも熱 心に追い続けてきた。一流のジャーナリストが持っ粘り強さで、写本の発見と修復について、あ らゆる面から精力を注ぎ続けてきたのだ。専門家としての巧みな才能で、ばらばらだったデータ をジグソーパズルのように組み立て直して、私たちに多くの詳細な情報を提示してくれた。 彼の努力がなかったら、これらの情報は永遠に失われていたに違いない。本書では、『ユダの 福音書』の発見から、その後、この写本がたどった運命、最終的に出版にいたるまでのいきさっ を詳しく紹介している。死海写本やナグ・ハマディ文書などの、現代考古学上の重要な発見でも、 これほど詳しい情報が公開されたことはないだろう。 そしてもちろん、最も重要な点は、この新たに発見された写本の内容にある。本書を読んでい ただけば分かることだが、私の最大の希望はかなえられた。この福音書はイエスを裏切ったとさ れる、イスカリオテのユダの視点から見たイエスの物語である。想像どおり、その見解は正典と 認められている新約聖書のものとはまったく異なる。マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる福音 書に登場するユダは悪役だ。だが新たに発見された福音書の中の彼は、英雄である。 ここで思い出していただきたいのは、新約聖書の福音書がすべてユダを悪者扱いしているもの の、彼の裏切り行為に関する詳細については、それぞれの福音書でかなり食い違いが見られる点 だ。最初に書かれたのは、イエスの死から三十五 5 四十年後にあたる紀元六五 5 七〇年ごろに書 15 はじめに

5. ユダの福音書を追え

前で堂々としていることのできた唯一の人物である。 『ユダの福音書』の主張に納得できず、神への冒涜とみなす読者もいるだろうが、この福音書 の作者がユダに歴史上の新しい位置づけを与えていることは否定できない イエスの生きた時代に続く百年の間に書かれたことを考慮すると、この福音書は初期段階のキ リスト教信仰やその多彩な活動についてこれまでにない見方を提供する衝撃的な書だ。新約聖書 の四福音書とは異なる伝承に基づいた福音書であり、執筆者はイエスの神性をグノ 1 シス主義の 観点から信じている。新約聖書の四福音書とは異なる出来事が語られるが、キリスト教の基盤を 揺るがすものではない。むしろ、イエスの人格に新たな一面を付け加えることでキリスト教をさ らに強化するといえるかもしれない。 作者が暮らしていた場所は、どことでも考えられる。近東地域のどこか、エルサレム、カイサ リア、アレクサンドリアといった都市で執筆されたのかもしれない。伝承された物語の一部を作 者が伝え聞いたのだろう。この伝承を信じていた人々は、卓越した規範を示し、人それぞれの内 に宿る神へと人々を導いたイエスこそが本物の救世主であると確信していた。この福音書の作者 が、イエスに身を捧げる最も忠実な者として、ユダの側から見た物語を書こうとしたのは明らか だ。ユダに関する " 良い報せ ( 福音 )s を意味する『ユダの福音書』という題名にその姿勢が誇 らしげに一小されている。 め 6

6. ユダの福音書を追え

二年ごろに没したとされる。キリスト教受難の時代だった二世紀に、信仰の理論的な基礎を固め、 当時興隆し始めた " 普遍。、つまりカトリック教会の神学体系をつくりあげるのに貢献した人物 だ。司祭から司教になったエイレナイオスは、死後はロ 1 マ・カトリック教会と東方正教会から 聖人に列せられた。 初期キリスト教は教義や教典がはっきり定まっていなかったと聞くと、現代の読者は驚くかも しれない。新約聖書は当初から信仰の規範とされていたが、あくまで非公式にすぎず、キリスト 教会の正式かっ基本的な聖典として認められるまで、三〇〇年以上かかっている。エレーヌ・ペ イゲルスは『ナグ・ハマディ写本初期キリスト教の正統と異端』のなかでこう書いている。 二世紀以前は、さまざまなキリスト教集団のあいだで多くの福音書が用いられていた。新約 聖書に入っているマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの福音書はもちろんのこと、『トマス福音書』 『真理の福音』と呼ばれるもの、さらにイエスあるいはその弟子が書いたとされる秘密の教義 や神話、詩などもあった。 マービン・マイヤーは、そのあたりをさらにくわしく記している。 キリスト教正典としての新約聖書は徐々に形成されていき、完成するまで何世紀もかかった。 一五四五年に開かれたトレント公会議で、カトリック教会は聖書および正典の一覧を定め、以

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ガン大学のチームを支援していたのは、同大学のパピルス文書コレクションに対する資金援助に加 えて、有名な死海写本を保管しているイスラエル博物館の「聖書の殿堂」も支援しているドロッ ト財団であった。ドロット財団最大の後援者は、ジョイ・アンガ 1 レイダ 1 で、彼女は父親のサミ ュエル・ゴッテスマンから資産を受け継いでいた。考古学と聖書の歴史に対してこの家族とドロ ット財団が行なった寄付は、二十世紀で最も大規模なものに数えられている。ただし、アンガー レイダーが関心を持っているのは、聖書に関連した文書だけであった。聖書の外典 ( 古代キリス ト教会が新約聖書をまとめたときに含めなかった文書 ) に関しては、特に熱心ではなかった。 コプト学者の側にも支援者がいた。ロビンソンは、昔からの知り合いの一人で、テキサス州ダ ・アトリッジ教 ラスにあるサザン・メソジスト大学 ( >) で新約聖書を研究しているハリ 授の助力を仰いだ。ますは、そのパピルス写本が実際にどのようなものなのかを調べる必要があ きこう アトリッジはすぐにこのプロジェクトを支援する準備を整え、稀覯本のセクションがあ ったが、 る同大学のパーキンス神学部プリッドウエル図書館から購入資金の援助を取りつけた。金額は五 万ドルだった。パピルス写本が本物で重大な意味のあるものなら、購入に必要な資金は調達でき ると確信していた。 会合は、オテル・ド・リュニオンで五月十五日の正午過ぎに行なわれた。 ハンナの通訳を務めるギリシャ人のベルディオスが学者チームを迎え エジプト人のハンナと、 148

8. ユダの福音書を追え

こうした宗派間の違いは、新約聖書にも多大な影響を及ばしている。たとえば使徒たちは、 ( 彼らは全員ユダヤ人で、割礼を受けている ) 、信者の共同体に受けいれられるためには、割礼が 不可欠かどうか議論し、身体につけたしるしよりも、信仰と信念のほうが必要だという結論を出 している。 しかしェビオン派はそれで納得しなかった。アーマンによると、エビオン派にとってイエスが 神の子である根拠は、「その神性であるとか、処女から生まれたことーではないという。「神がイ エスを『養子』にしたからだ。イエスの磔刑こそ『最後の犠牲』であって、現在行なわれている 儀式的な犠牲は廃止するべきである」 ェビオン派が教義の柱としていたのは、四福音書のうち最もユダヤ教的色彩が濃く、ユダヤ人 に向けて書かれたとされている『マタイによる福音書』だった。ェビオン派は、パウロの書いた ものは一切受けいれなかった。生涯を伝道に捧げたパウロは、ユダヤ教徒はもちろんのこと、よ り広い世界にいる異邦人に対しても、キリスト教の救世主のメッセージを強く訴えたからだ。そ れは、割礼や食べ物のタブーといった制約の多い宗教ではなく、はるかに制約の少ない新しい信 仰への改宗を勧めるものであった。 グノーシス派のなかで、ユダヤ教から大胆な決別を試みたのはカイン派である。旧約聖書は完 いと考え、そのため安息日を守り、戒律にしたがった食べ物しか口にせず、男性は全員割礼を 受けた。 252

9. ユダの福音書を追え

はじめに 二〇〇四年の秋、私のもとに、思いもかけない謎めいた電話が相次いでかかってきた。一本目 は仕事上の友人で、ここ数年、イスラエルで聖書考古学の研究を続けているシーラからだった。 彼女は次の発掘作業について少ししゃべった後、ある質問を切り出した。実は、それが電話をか けてきた目的だったのだ。「ところで、『ユダの福音書』って聞いたことあります ? 」 いきなりそう聞かれても、私には漠然とした記憶しかなかった。確か、初期キリスト教の教父 の誰かが、そういう名前の福音書があるという記述を残しているが、結局、破棄されたか、少な くとも何世紀も昔に失われてしまったはずだ。「アボクリフア。と呼ばれる、初期キリスト教の 新約聖書外典ーー新約聖書に正典としては含まれないが残存する、福音書や使徒言行録、使徒書 には、そんな福音書など入っていない。私がシーラに話せたのは、せいぜい 簡、黙示録など その程度だった。 だがシ 1 ラの質問は、私の心にひっかかった。なせ彼女は、ほとんどの人が聞いたこともない、 バート・・アーマン 9 はじめに

10. ユダの福音書を追え

のギリシャ語原典は二世紀、早ければ一世紀後半に成立したものと確信している。つまり、ギリ シャ語の原典は、新約聖書におさめられている福音書が書かれてから、それほど時をおかずに記 されたことになる。 ナグ・ハマディ文書は、グノ 1 シス主義の思想を述べたテキストを含んでいる。米国力リフォ ルニア州のチャッブマン大学で、新約聖書研究を教えているマービン・マイヤーは、著書「グノ ーシスの聖書』 ( 二〇〇三年 ) のなかで、グノーシス主義をこう説明している。 「グノーシス主義は、知識を通して救済の道を示そうとする、神秘主義的な宗教運動で、グノ ーシス主義の信奉者は、男女を問わず、自己の本質を知ることで、神を認識できると考える。ラ ビや司祭、主教、イマームといった聖職者を通す必要はないー マイヤーは、もうひとつの著書『グノーシス派の発見』三〇〇五年 ) の中で、ナグ・ハマデ イ文書の発見により、「グノーシス主義の研究と、グノーシス思想が古代や現代の宗教に与えた 影響が根本から見直されることになった」と述べている。 写本のほとんどは、イエスの生涯と彼のメッセ 1 ジの意義をめぐるもので、内容はきわめてキ 光 栄 リスト教的だ。だが、記述の多くはイエスの教えを超えて展開され、そこに用いられる神秘的な の 象徴を理解するためには、広範にわたる研究が必要となる。グノーシス思想では、天界や地上界 の複雑な世界観が構築されていて、聖書に出てくる人物や出来事も、一般的なキリスト教文書や グ ナ 旧約聖書の記述と矛盾することが多い。とはいえこの写本は、教養ある思想家たちによって書か れた、きわめて理知的で明晰な文書である。肉体に宿る悪魔や天使について語られているが、人