たとえば電子の位置を知ろうとして電磁波を当てる場合には、その電磁波の波長は電子 のサイズより小さくなくてはならない。電子のサイズは程度だから、可視光 ( 波長は 程度 ) などては大きすぎて話にならないのだ。当然、当てる電磁波はガンマ線領域になる。 しかしガンマ線はたいへん大きなエネルギーをもっから、電子に当たると電子をはね飛ば これては、電子の位 してしまう。しかもはね飛ばす方向や速度はまったく予測てきない。 置を測定しようとした試みが無意味になってしまう。 電子にあまりインパクトを与えないような電磁波ては、波長が大きすぎて電子を見るこ とがてきないし、電子が見えるような波長の電磁波ては、エネルギーが大きくて位置測定 の目的をこわす。一種のジレンマてある。この事情を原理としたのが、ハイゼンベルクの 不確定性原理てある。 ハイゼンベルクは、電子の位置の不確定さと運動量の不確定さの積は、プランク定数 という次の関係式を導いた ( 運動量Ⅱ質量 x 速度 ) 。 より小さくすることはてきない、 ( △ *)x( △ =) >= ( △は位置の不確定さ、△は運動量の不確定さ ) この式は、△が小さいほど△が大きいことを表している。つまり、位置を正確に知 れば知るほど、運動量の不確定さはそれだけ大きくなるということて、当然の結果てある。 160
時間をもっと短くとれば、もっと大きいエネルギーの不確定さが、エネルギー保存を気 にすることなく許されるわけてある。逆にいえば、質量が大きい粒子ほど、現れて消え去 るまての時間は豆い。 ' 」だしここて注意しなくてはならないのは、不確定生原理だけから考えて、陽子だけが ポッと無から生じうると考えてはならないことだ。それては電荷やバリオン数保存則に氏 触する。実際に許されるのは、陽子と反陽子のペアてある。もちろん電子と陽電子のペア ても、光子二個てもよい とにかく、不確定性原理がいっていること以外の保存則は守ら 1 ・ページ参照 ) 。 れなければならない ( い このようにして無から生じた粒子と反粒子のペアは、いつまても居続けるわけにはいか ない。許された時間内に消えていかなくてはならないのてある。その際、粒子と反粒子の 質量が小さいほど長く居続けることがてきる。なぜなら、エネルギーの不確定生関係の式 △ > (c / △ ) から、△が小さいほど△が大きくなるからてある ( エネルギーは質量 に比例 ) 。 粒子と反粒子が消滅するときは光子を二個出すわけてあるが、この場合の消滅てはそれ そもそも借りもののエネルギーて姿を現したのだから、それを又貸しする も起こらない。 ことはてきず、また元に戻してみすからも消え去るのみてある。 16 う量子力学と宇宙のゆらぎ
第四章量子力学と宇宙のゆらぎ 第不確定性原理の提者 、 . ヴェルナ ー・ハイゼンベルク
も成り立つ。すなわち、エネルギーの不確定さを△、時間のそれを△とすると、両者 の間に次のような関係が成り立つのてある。 これを「エネルギーに関する不確定陸原理」という。どういうことかというと、電子の ような量子的粒子のエネルギーを△という短い時間をかけて測定すると、その時間に反 比例した不確定さがエネルギーの測定値に不可避的に伴うという意味てある。もちろんプ ランク定数の値の小ささ ( 圖 x ジュール・秒 ) を考えれば、マクロな粒子 ( テニスのボール など ) のエネルギーの測定に たたちにこの関係を思い浮かべる必要はない。 やはり例て考えてみよう。ある量子的粒子の系の全エネルギーを測定するとして、測定 時間はに秒てあるとする。△ß> ()X △ e) から△を計算すると、質量に直して ロ >< にグラムとなる ( エネルギーを光速度の二乗て割って質量を出す ) 。これは陽子一個の質量て ある。つまり、これくらいの短い時間内ては陽子一個の質量分はエネルギーの値の不確定 ご。たとえば、陽子が無から現れて、この時間内に再び無に帰して さに含まれてしま , フのオ しまえば、われわれはその存在を原理的にチェックてきないのだ。したがって、その短い 時間内の陽子の存在は、エネルギー保存則に抵触したことにはならないのてある。 164
によって記述される。相対生理論の場合もそうてあったが、量子力学も理解するには常識 との戦いが必要てある。 ニュートンの力学 ( つまりわれわれの常識 ) ては、粒子のいろいろな物理量 ( 位置、速度、エネ ルギーなど ) は確定値をとる。たとえば、ールの位置がある瞬間どこそこて、そのときの 運動方向はこの方向て速さはこれこれてある、という言い方が意味をもっことは、常識て は当然てある。もちろん、測定機器や測定技術の問題があるから、実際問題ては誤差は避 けられないが、これらは人為的な不確実さて、ここて問題にしている原理的な問題てはな 、。ールがともかくその瞬間その位置にあって、そういう速度をもっていたということ は、何ら疑問の余地がない事柄てある。もっといえば、ポールがそういう状態にあったこ とは、観測しようがしまいが、客観的な事実てある。それに何の問題があるだろうか ノイゼンベルクが唱 ところが、量子力学てはそうはならない。量子力学の基本原理は、、 えた「不確定生原理」というものにある。これは、「ミクロの世界の基本法則は、われわれ が測定によって得る知識に、ある制限を課すようなものてあるはずだ」というものてある。 つまり、ミクロの世界においては、測定によって対象の力学的状態に関する〃完璧な〃知 識を得よ - フとい , フ 希望は、放棄しなければならなくなるのてある。 1 5 8
第三章初期宇宙の様子 宇宙背景放射の発見 : : : 放射と黒体放射 : : : ビッグバン宇宙の三つの証拠 : ・ ー過去への 宇宙時間と宇宙の始まりの意味 : : : 宇宙論と素粒子物理の出会い タイムトリップ : : : 現代素粒子物理の概要 : : : 宇宙初期はどのように経過して いったか : : : 開闢から百億分の一秒たったとき : : : 一億分の一秒たった頃 : ・ 一万分の一秒たった頃 : : : 一秒たった頃 : : : 三分たった頃 : : : 三十万年たった 頃 : : : ビッグバン宇宙論の問題点 : : : インフレーション宇宙論 : : : 力の ガット 「大統一理論」 : : : 大域的対称性と局所的対称性 : : : 「対称性の破れ」としての 初期宇宙の展開 : : : 対称性の破れによる欠陥ー宇宙ひも 第四章量子力学と宇宙のゆらぎ 量子論ー物質の粒子性と波動性 : : : 不確定性原理 : : : 位置と運動量の不確定
のが正当てはないだろうか。 ゼロ点運動とゼロ点エネルギー こういう事情のため、量子の世界てはマクロの世界には見られない面白い現象がある。 それは、絶対温度がゼロになっても量子的粒子の運動は完全には停止しないということだ。 絶対温度 ( ) というのは、あらゆる熱運動が消失する温度をゼロとしててきた体系てある から、Ⅱ 0 てはすべてが静止するはずてある。てはなぜ完全に静止しないかといえば、 もし粒子が静止したとすれば、その位置と運動量 ( 静止したからゼロ ) を両方とも燗 % の精度 て知ったことになり、不確定性原理に反するからてある。 一」の H - フに、 絶対零度においてもなにがしかの運動が残るのて、エネルギーも完全には ゼロとならない。 この絶対零度ての運動のことを「ゼロ点運動」、またそのエネルギーを「ゼ ロ点エネルキー」という。このゼロ点エネルギーというのは、いろいろなところてきわめ て重要なはたらきをする概念なのてある。 「量子的ゆらぎ」が生むエネルギー ハイゼンベルクの不確定性の関係は、位置と運動量のほかに、エネルギーと時間の間に 16 ろ量子力学と宇宙のゆらぎ
ギーの状態に少し変化が生する結果なのてある。 し J い , っ , 、ふ - フ . 」 われわれは、エネルギーの保存は厳密に成り立つ自然法則中の自然法則 習ってきた。しかし考えてみると、これもエネルギーの測定が任意の精度て行えるという 前提に立ってこそいえる事柄て、もしその測定結果に避けられない不確定さが伴うのてあ れば、エネルギーの値はわれわれの気づかないところて変わりうるのだと考えなければな らない。こだし、変わりうるエネルギー値の幅は時間に反比例する。だから、長い時間て 見ればエネルギーの変化はほとんどゼロてある。しかし、観測する時間が短ければ短いほ ど、エネルギー変化は、 しくらても大きくなるわけて、瞬間的には無限大にもなりうるのて ある。 宇宙は「真空のゆらぎ」か ? われわれは、古典的な厳密なエネルギーの保存則には、量子力学的な「抜け道」がある ことを知った。すなわち、ハイゼンベルクの不確定性原理は量子世界の現象に対して、き わめて短い時間内についてはエネルギーのゆらぎを認めるからてある。たとえば先ほどの 0 計算によれば、 N>< 『秒の間に限れば、陽子と反陽子のペアが仮の存在を許されるわけて ある。電子と反電子ならもっと長い時間存在てきる。この現象は真空中ても起こることて、 167 量子力学と宇宙のゆらぎ
真空に高エネルキ、一であるガンマ線を注ぐと , 電子・陽電子の対発生が起 こる (E=mc2)0 この場合は真空そのもののゆらぎではないので , こで生しる粒子・反粒 子は実在粒子である。 ( 反電子 ) : 陽電子 : 電子 p : 反陽子 p : 陽子 e e GS 168 図 10 真空のゆらぎの概念図 は , 不確定性原理 ( △ Ex △ T > h ) によって , 陽子より長く存在できる。 電子は質量が小さいので , C で創成された電子と反電子のペア ( 仮想粒子 ) 存在して , そこで対消滅する。 たとえば A で陽子と反陽子のべア ( 仮想粒子 ) が創成され , B までの時間 ,
ある ) 。 普通の意味て静止した観測者と、彼に対して一定の速さて直線状に運動している観測者 の立場を、一括して「置性系」と呼ぶ。したがって性系は無数にあるわけて、しかもそ のどれもが同等の立場てある。優位な立場にある慣性系はない。慣性系という言葉て前ペ ージのことをいい直すと、「力学の法則はすべての性系て同様に成り立つ」ということが てきる。 アインシュタインは、この事情は力学の法則にドったことてはなく、あらゆる物理学の リに対していえることだと認識し、これを一つの原理として確立した。 「物理法則はあらゆる性系において同じかたちて成り立つ」 という。この原理はあらゆる物理法」 、印に対する慣性系の平等 これを「特殊相対性原理」 生をうたったものて、物理法則が本当に自然の真実てあるならば、見る立場によって成り 立っ成り立たないの差別があるべきてはないから、しごく当然の原理てある。ちなみに、 ガリレイにも同様の原理 ( ガリレイの相対性原理 ) があるが、彼の場合は力学の法則に限った ことて、アインシュタインはそれをあらゆる物理法則に拡張したのてある。