ても、われわれが宇宙の特別の場所にいるという考えは、どうも成り立つものとは思えな そこて、等方て一様とすれば、宇宙に特別の場所はなくなって、コペルニクス革命が 全宇宙に対して完成することになる。その意味て、一様性は一つの信念てあるともいえる。 宇宙のようなただ 一つの存在を研究対象とするときは、このような哲学的な思考が科学の 前面に登場するのは一つの必然てあろう。そして、これらの二つの主張は今日、「宇宙原理」 と呼ばれているのてある。 一次元モデルでみるハップルの法則 宇宙の膨張が一様てあれば、必然的にハップルの法則が満たされる。このことを、一つ のたとえ話て示してみよう。 ここに長いゴム製の物差しがある。その両端に力を加えて、一定の割合て静かに引き伸 ばしていく場合を考えよう。一分間たって長さが二倍になった瞬間、各目盛の移動する速 さ ( ただし目盛「 0 」を基準として ) はど - フなるだろ - フか 目盛ごとに考えてみると、目盛「 1 」は一分間に一目盛動き、目盛「 2 」は同じ時間内 に二目盛動き、目盛「 4 」は同じく四目盛動いたわけだから、各目盛の速度は基準点から の距離に比例している ( 図 4 参照 ) 。もし基準点を他の点に移し、たとえば「 3 」を新しい基 膨張宇宙の原理
て大きくなる。どの部分も回転の「角速度」 ( 毎秒あたりの回転角度 ) が同じだからてある。も し角速度が場所によって違ったら、回転するうちにレコードはぐにやぐにやになってしま ダークマタ 宇宙の見えない物質 さて、われわれが間題とする銀河の回転曲線は、太陽系の惑星運動とレコード回転のど 太陽系の場合のように中むに系全体 ちらのタイプてもない。 といえる。なぜなら、もし系の中心に質量 のほとんどの質量が集中しているのてはない、 が集中しているならば、銀河の端になるほど回転速度がおそくなるはずだからてある。 これらのことから、銀河系てはかなり端の方まて質量が分布していると考えなければな らない。計算によると、銀河系のような回転曲線になるためには、少なく見積もっても、 見えている物質の十倍は質量がなくてはならないことがててくるのてある。この「見えな い物質」のことを「ダークマター」と呼んている。光などが発していない所にも存在が考 えられる物質だから当然、暗い物質てなければならない。銀河系内にダークマターが存在 する必然生は、このようにして発見されたのてある。 見えない物質の問題は、実は銀河の内部だけの問題てはない。ほとんどの銀河が集団と
日の天体論からすれば、この塊はさらにプラックホールの形成へと進んていくはずてある。 しかし宇宙が無限てあれば、どの物質も四方八方に同じように重力て引かれるわけだから、 全体が一つの塊になることはない。 星の死↓密度天体 ては、開いた宇宙の場合について、未来を考えてみよう。 閉じた宇宙の場合は、あるところまて膨張した後、収縮に転じるわけて、それまてたど ってきた膨張の過程を、映画のフィルムを逆回しするように逆向きに再現していくことに なるてあろう。その場合のビッグバンに対応する瞬間は、「ビッグクランチ ( 大崩壊 ) 」とい われる。 しかし、開いた宇宙の場合には、膨張は永遠に続き、銀河同士は次第に離れ離れになっ ていくが、銀河そのものの運命は中の星と一蓮托生てある。 うちゅうじん 星は、水素ガスや宇宙塵が重力によって寄せ集められ、ある大きさになった時点に ( 中心 温度が一千万度を超えた頃 ) 中心て水素の核融合反応が始まったときが、誕生てある。水素ガ スや宇宙塵はそのままのかたちて宇宙に禦っているほうが、まとまって星を形成するより その場合は、宇宙各所に局所的な塊が無数に生じるこ 182
ー効果だとすれば、その場合には赤方偏移は起こらないことになる。これがドップラー効 果と宇宙膨張効果による赤方偏移の違いてある。 宇宙の年齢 ハップルの発見によって宇宙が膨張していることがわかったが、当然ながら、時間の向 きを逆にすれば、つまり過去へさかのばれば、宇宙はある点に向けて収縮していくことに なる。宇宙の物質はすべて一点に凝縮され、その点は無限大の密度をもっことになる。そ のよ , フな状態は、どう頭に描けばよいのだろ - フか ハップルの法則はわれわれに、宇宙には始まりがあることを告げている。宇宙は永遠の 存在てはなく、ある時から存在し始めたのてある。しかし本当をいうと、この言い方は正 しくない。 いかにも時間が無限の過去から存在していたかのように聞こえるからだ。時間 はなかなか難しい概念てあるが、とにかく宇宙は「すべて」てあるから、時間もまた宇宙 の始まったその瞬間に創られたと考えるべきなのてある。 したがって、宇宙はどこて 空間についても同様てある。宇宙以前に空間は存在しない。 しいていえば、あらゆる場所て始まったと答える 始まったかという問は意味をなさない。 以外にはよいのご。 膨張宇宙の原理
がて全域に及ぶわけてある。 氷の場合て考えると、氷は結品てあるから、その対称性には軸があるが、凍結が全域に 及んだとき、一般にはあちこちてこの対称軸が異なる領域同士がぶつかることになる。っ まり、対称軸の向きが不連続に変化する境界が、しオ 、こるところに出現すると考えられる。 一つの領域内ては対称軸がそろっているが、そういう多くの領域が接触するところては、 不連続な境界が生じるわけてある。不連続な境界は点のこともあれば、線のこともあり、 また面のこともある。このような境界は、全体が一つの完全な結品になることを妨げてい るわけだから、いわば結品の欠陥てある。 秒の時点て起こる凍結の場合も、同じようにして凍結の欠陥が宇宙に生じた可 能性がある。欠陥が面の場合を「ドメイン・ウォール」 (domain wall) 、線の場合を「コス ミック・ストリング」 (cosmic string 「宇宙ひも」 ) 、点の場合を「モノボール」 ( 磁気単極子 ) と ばくだい いう。これらの欠陥部には、東結が生じるとき莫大なエネルギーをもった真空が閉じこめ こ目当す られたと考えられており、そのため、たとえば「宇宙ひも」は、そのエネルギー ( 本、 る莫大な質量をもっことが予想されている。 このようなストリングが宇宙に実在することを直接確かめることはてきないが、存在を 示すような間接的証拠はある。それは、超銀河団 ( 銀河団の集合体 ) が鎖状に配列しているら 149 初期宇宙の様子
特殊相対性原理と慣性系 前章て、ハップルの法則が表している宇宙の膨張を普通の意味て銀河が空間をよぎって 移動していくととらえてはならないことや、宇宙の始まりのビッグバンが空間のどこて、 オヒッグバンは空 またいっ起こったのかという疑間はそもそも成り立たないことを述べご。。 も時間も創りだしたのてある。その前は無てある。無からどうして宇宙が誕生したかに ついては、第四章て述べる。 空間と時間は宇宙論において最も基本的な概念てあるが、現在最も信頼のおける時間空 間の理論が、アインシュタインの相対性理論てある。相対性理論はやさしい理論てはない が、それは数学的に方程式を解いたりする場合てあって、概念を把握するという意味ては 決して難渋をきわめるものてはないということを、まずいっておきたい。 相対生理論は一言ていえば、互いに運動状態が違う観測者同士が同じ事象をどのように とらえるかに関する理論てあり、特殊相対理論と一般相対性理論の二つに分かれる。観 測者同士の運動状態の違いが等速直線運動てある場合 ( 観測者を < 、とすると、 < がに対し、 あるいはが < に対して、等速て真っすぐ運動している場合 ) を扱うのが特殊相対性理論て、観測者同 士が速さも運動方向もまったく自由に運動し合っている場合を扱うのが一般相対生理論て ある。
の集合体だ ごということてある。つまり、電気量を細分化していくと、もうそれ以上分割て きない最少の電気量にぶつかる。いわば電気の「原子」てある。電子や陽子の電荷という のは、実はこの基本単位の電気量なのてある。 ・フェルミオンとポゾン あらゆる素粒子は、いろいろな種類の量がとる値の組によって識別される。人間ていえ ば、性、国籍、言語、皮膚の色、髪の色、身長、体重、胸囲などの「量」を考えれば、こ れらの量がとる「値」て、各人間をかなりの程度識別することがてきる。まだ足りなけれ ば、新しい量を考えだせばよい。素粒子の場合も同様て、 そして人間の場合との違いは、素粒子の場合は、それらの量がとる値が一般にとびとびの 値になることてある。人間の場合には、まさか身長の値がとびとびの数しか許されないと い - フよ , フた 6 こし J はた 6 い。 しかし素粒子の理論てある量子力学ては、多くの物理量がとびと びの不連続値しかとれなくなるのだ。このことを量子力学ては、その量が「量子化」され ているし」い - フ。 そのような量子化された量のなかて最も重要なものが、「スピン」と呼ばれる量てある。 これは素粒子の自転を表す量と思えばよいが、正確にいえば「自転角運動量」てある。 うなれば、フィギュアスケーターが自分の体を軸にくるくる回転する状態を記述する量て いくつかの物理量が用いられる。 119 初期宇宙の様子
るかぎり、ありえないことてある。しかし頭を切り替えて、アインシュタインの時間の相 対性を受け入れれば、不思議なことてはなくなるのてある。 相対論による三つの運動学的効果 二つの原理から導かれる、常識とはくい違った結果はこれだけてはない。「空間的に離れ た場所て起こった事件の同時性」や「物の長さ」もまた、絶対的な意味を失うことになる 同時性の間題をやはり例て考えるため、反対方向に向かってすれ違う電車て時間を比較 する場合を想定する。、という二つの電車には、それぞれ運転士と車掌が乗務してい る。電車の前吉 ( し 文」にこ、る運転士と最後部にいる車掌の時計は、それぞれの電車内て合って いる ( もちろん両方の電車同士ても合っているだろう ) 。一一人の時計を合わせるには、一一人のちょ うど中央から光を出し、その光を受け取った瞬間に時計をセットすればよい。 さて、二つの電車がちょうどそろって並んだ瞬間、両電車の中央にあたる車外の位置か ら車両の前後に向けて光を出すとする ( 図 7 参照 ) 。それをの立場て眺めてみると、に対 しても光は前後に光速度て伝わるから ( 光速度普遍の原理 ) 、光はの車掌にます到着し、 そのあとて運転士に到着するように見えるはずてある ( 最後部にいる車掌は、光に向かって進行 相対性理論の描く時空間
の銀河について後退速度と距離の関係からを求めると、遠い方の銀河に関するの値は、 近い方の銀河に関するの値よりも過去における値てあるから、この二つのを比較する ことによって、減速の程度を知ることがてきるわけてある ( ただし、これはあくまて原理上のこ とて、実際的にはむずかしいが ) 宇宙は開いているか、閉じているか このように、宇宙は減速しながら膨張を続けているのて、膨張の行方としては三つの場 合が考えられる。永遠にどこまても膨張を続けるか、膨張がある時点て止まってそのあと 収縮に転ずるか、その中間として、あるところて静かに膨張が止まってそれ以後は完全に 第二の場合、閉じているとい 静止するかてある。第一の場合、宇宙は開いているといし う。中間の第三の場合は、宇宙は平坦だという。 これらのうちのどれが実際に起こるかは、膨張の減速の程度から推定てきそうだ。しか し、前項の終わりても述べたように、の値を現在と過去との比較によって求めるのは、 事実上不可能てある。そこて決め手となるのが、宇宙の物質の総量てある。宇宙の物質の 量は、星や銀河や星雲のように、いろいろなかたちて存在する天体の質量を、宇宙空間全 体てならした平均密度て考える。 膨張宇宙の原理
ら、エネルギーが低いほど安定だからだ。エネルギーを少しても減らそうとするのは、自 然界の一般的傾向てある。 引力の場合、近くにあるよりも遠くに離れている方が、相対的にポテンシャルエネルギ ーは高い。なせかというと、 物体を引力に抗して引き離すためには、外からエネルギーを 、こ無限の 注いてやらなくてはならないからだ。ところて、極端な場合として、物体が互し ( 距離まて引き離された場合を考えると、この状態ては物体間に引力が働かないから ( 引力は 距離の二乗に反比例するから、距離が無限大ならカはゼロとなる ) 、ポテンシャルエネルギーはゼロて ある。ということは、より近い地点てのポテンシャルエネルギーは相対的に低いわけだか ら、無限遠てない位置にあるときの物体のポテンシャルエネルギーはマイナスということ そこて、もし物質や光のプラスのエネルギーと、マイナスのポテンシャルエネルギーと が釣り合えば、宇宙の全エネルキーはセロになりうるわけてある。そうだとすれば、先ほ どのエネルギーの不確定性関係 ( △ ) x ( △ ) > より、△Ⅱ 0 ならば△日 8 ( 無限 大 ) となるから、全宇宙の物質が量子的ゆらぎによって無から存在し始めることが可能だっ たことになる。全宇宙のエネルギーがゼロなのだから、時間を気にしないて存続てきるわ けてある。これがトライオンの考えたことてある。 171 量子力学と宇宙のゆらぎ