放射 - みる会図書館


検索対象: 宇宙論がわかる
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1. 宇宙論がわかる

身ム月もある種の元素の原子核の をさしてもいう。放射に似た一言葉に放射能があるが、放寸皀、 不安定さがもとて放出される粒子てあるから、放射てある。放射は大きく、波動的なもの と粒子的なものに分けられ、前者には電磁波、音波、重力波などが属し、後者には宇宙線 やニュートリノ ( 後出Ⅲページ参照 ) 放射、放射能などが含まれる。しかし、ふつう放射と聞 いてまず頭に浮かぶのは電磁放射て、ここてもそれが間題になる。 物体はすべて ( 絶対零度てないかぎり ) 、その温度に応じた放射を出している。たとえば金属 を熱すると、まだ温度が低いうちは放射の主体は赤外線て、暖かみは感じるが目には見え 十ノー、 温度が上がると赤い光が出始め、やがて赤から白っぱい色の光へと変わってい この場合の放射は電磁波て、電磁波を特徴づけるのは「波長」てある。波長の長い方から 順に、電波、マイクロ波、赤外線、光、紫外線、線、ガンマ線などと呼ばれるが、それ らは電磁波の特定の波長域ごとにつけられた名称てある。 石、冫ー、冫オたと ( たカこれは厳密なものてはなく、波長が短くなると、 波動的というよりは粒子的になる。ガンマ線もその一つて、これはたいへんこわい放射線 てあることは誰ても知っている。そのことからもわかるように、放射のエネルギーは波長 。光の色と に反比例する。光についていえば、波長は赤から紫に向かって短くなってい いうのは、電磁波の波長の違いなのてある。 初期宇宙の様子 101

2. 宇宙論がわかる

いたのだ。当時の通信衛星は構造もお粗末て高度も低く、当たった電波は何てもかんても 反射して送り返してくるため、その中からノイズを除去して意味のある電波を取り出すこ とが急務てあった。この研究中に彼らは、宇宙のあらゆる方向からやってくる、どうして も除去てきないかすかなノイズがあるのに気づいたのてある。そしてこのノイズこそが、 実はビッグバンによる熱放射の揺るぎなき観測的証拠てあったというわけてある。二人は その功績て、一九七八年度のノーベル賞を受賞した。 これが、今日「宇宙背景放射」と呼ばれているものてある。ちなみに、ビッグバンの父 ルメートルは、このとき七十二歳てあった。 , ー 彼よ人生のほとんど最後の段階になって、自 分が「父」と呼ばれる現象の発見の報を知ったわけてある。 放射と黒体放射 この宇宙背景放射は、現在われわれにあらゆる方向から降り注いており、しかも、その 強度は方向によらず一定てあることが確かめられている。この放射はまた、観測によって 絶対温度て躊の「黒体放射」らしいこともわかっている。 ここて、「放射」とか「黒体放射」という一言葉について説明をしておく 放射とは、物質から電磁波や粒子が放出されることてあるが、同時に、放出されたもの 100

3. 宇宙論がわかる

ーっの曲線は一つの温度に 対応し , a → b → c につれ 温度は高くなる。 放射強度。↑ー ー - ー波長 一般に、固体や高温高圧ガスが放出する電 磁波は、波長のほとんど全域にわたっており、 そのスペクトル分布の特性は、放射物質の種 類と温度だけて決まる ( スペクトル分布というの は、波長と放射強度の関係を表す曲線てある ) 。その 布ため、このような放射を「熱放射」という。 物質の温度が高くなると、この曲線のピーク ク ( つまり放射強度が最大のところ ) の波長が短波長 ス 側に移っていく ( 図 8 参照 ) 。このピークの波長 の 放が可視域にあるときは、われわれは ( その波長 8 の ) 色として感じるが、可視域に入っていない 図 ときはもちろん見えない。 物質は放射を出すだけてなく、吸収もする。 そして、放出と吸収の割合が等しいとき、物 体はまわりと「熱平衡状態」にあるという。 したがって、物体が熱平衡状態にあるときは、 102

4. 宇宙論がわかる

放射をよく吸収する物質ほど、逆に放射をよく放出することにもなる。つまり、吸収能が すぐれたものほど放出能もすぐれているというわけぞある。そこて、あらゆる波長の電磁 波をパーフェクトに吸収する理想的な物質を考えて、これを「黒体」と呼ぶことにすると、 黒体は理想的な放射の源ということがてきる。 黒体放射とはこのような理想的な物質が出す放射のことて、この放射を理論的に説明し オしカ黒色に ようとする努力から「量子論」が誕生した。現実には完璧な黒体は存在しょ : 。、 近いものほど黒体に近いことは確かてある。たとえば、教室の黒板とその上の白い壁とて は、黒板の方が黒体に近、 しだから、同じ温度ては、白い壁よりも黒板の方が放射を強く 出している。一見、白い壁の方が明るいのは、単に反射光が多いだ けの話てある。 ビッグバン宇宙の三つの証拠 未知の放射があるとき、そのスペクトル分析をして既知のものと比較することにより、 放射源の温度を知ることがてきる。ペンジアスとウイルソンが発見した背景放射の場合も、 スペクトルが の黒体放射のスペクトルてあったというのは、このようにしてわかった。 ただし黒体放射と断定するには、放射を波長の全域について調べて、理想的な黒体の出す この点に関しては、今後も 放射のスペクトルと一致することを確認しなければならない。 10 ろ初期宇宙の様子

5. 宇宙論がわかる

確認のための観測が続けられるてあろう。 いったい宇宙背景放射は、もしそれが黒体放射だとすれば、宇宙初期の状態についてど んな情報をもたらしてくれるのだろうか。宇宙初期については次項以下てくわしく述べる が、この放射は、宇宙が始まって約三十万年たった頃、宇宙が熱平衡状態てあったことを 物語っている。そして、そのとき宇宙に満ちていた光の「化石」が、宇宙背景放射なのて ある。 一九八九年の暮れ、アメリカ航空宇宙局 ( ) は「宇宙背景放射探査機」 ( 略称 ) という人工衛星を打ち上げた。 先に述べた放射スペクトルの確認も含め、文字どおりビ ッグバン宇宙論を検証するための人工衛星てある。この探査機の守備範囲は広い範囲の波 長域 ( 千分の一ミリメートルから一センチメートルぐらい ) にわたっていて、背景放射のスペクト ノが幻の黒体放射のカープに合致するかどうかの検証が、よりきめ細かにてきるように なっている。また放射強度の等方性 ( 方向によらす一定かどうか ) のチェックも、この衛星の目 的の一つてある。 宇宙からの放射を地表て観測すると、どうしても大気による攪乱を完全に防ぐことがて きない。 というのは、ある波長の範囲の電磁波が大気によって吸収されると、大気が暖め られ、その大気が放射を出すことになって、肝腎かなめの徴弱な宇宙からの背景放射を、 かくらん 104

6. 宇宙論がわかる

宇宙の初期においては、エネルギーのほとんどは放射が占めていた。 つまり、宇宙初期 は「放射優勢の時代」てあった。このことは、次のような考察から理解てきる。 まず、物質の密度は体積に反比例するから、物質エネルギー密度も体積に反比例するは すてある。宇宙の体積は大まかにいって、スケール因子 ( ) の三乗だと思えばよいから ( ス ケール因子については前に述べたが、宇宙半径と考えてよい ) 、結局、物質エネルギー密度はに反 比例すると考えられる。 一方、放射エネルギーの方も、放射の存在そのものは体積が大きくなれば「薄まる」し、 小さくなれば「濃く」なるから、放射の密度は体積に反比例する。この点は物質エネルギ ーの場合と変わりがない しかし、放射エネルギーの場合はもう一つ、放射エネルギーそ のものの変化がある。 放射のエネルギーは波長の大きさに反比例する。波長が長いほどエネルギーは低い。 ころが宇宙空間の膨張は波長を引き伸ばすから、膨張によって放射のエネルギーは減少す ることになる。膨張による波長の伸びは、前にも述べたよう一 に、スケール因子に比例す るから、結局、放射エネルギーはに反比例するわけてある。物質エネルギーの場合は、 宇宙の体積が変化しても質量そのものが変化することはないから、には関系しょ ~ イレ十ノー、↓不 局、放射のエネルギー密度は、存在そのものがに反比例することと、エネルギーそのも 、 0 士ロ 1 2 8

7. 宇宙論がわかる

背景放射の場合て考えてみると、この放射がビッグバン後三十万年たった時点に出たも のとすれば、ある点から出た放射は、その点を中心に半径三十万光年の範囲からしか影響 を受けていないわけてある。そのような範囲は、天空上、角度にして二ないし三度以内し か離れていない。 この角度以上離れた領域からくる背景放射は、互いの地平外から出たも のてある。ましてや空の反対方向からやってくる放射の出場所は、放射が出た当時、地平 の何百倍も離れていた計算になる。それなのにどうして、これらの放射がみな申し合わせ たように同一の温度なのだろうか。これが謎なのてある。 一般に系全体が均一の温度になるのは、充分時間がたって、熱の移動が行われた後てあ る。ところが、これらの領域のほとんどが互いの地平の外にあったのだから、熱の移動が 行われたはずがない。たとえ話ていうと、完全に接触を断たれた多くの人がそれぞれ文章 を書いて持ち寄ったところ、一つの大河小説の脈絡のとれた各章になっていたようなもの て、こんなことがあったとすれば、驚くべき現象てある。偶然としては、確率が無限小の てきごとだからだ。背景放射の等方性も同じことてある。 第二の間題は、宇宙の物質密度に関する事柄だ。宇宙の物質密度は臨界密度との比、 c ( ォメガ ) て表され、 0 の値によって、宇宙が閉じているか、平坦か、開いているかの三つの 場合に分けられることは前に述べ こ。たとえば、 C が 1 より大きいと、膨張が止まって宇 リ 8

8. 宇宙論がわかる

のがに反比例することを合わせて、に反比例するのてある。 宇宙初期にさかのばると、当然は 0 に近づくが、ととては早く 0 に近づくのは の方てある。したがって、が 0 に近づ くにつれて、に反比例する放射エネルギーが加 速度的に大きくなり、物質エネルギーを押さえて初期宇宙を支配したのてある。 これに対し、現時点ては宇宙のエネルギーは物質に集中している。つまり、現在は「物 質優勢の時代」といえるのてある。 現在の宇宙を満たしている放射は、絶対温度てのマイクロ波の背景放射て、かって の高温時代の放射の名残てある。現在のこの放射を構成する光子の平均エネルギー ( はポルツマン定数、は絶対温度 ) を求めてみると、約圏 x 川 ( 約一万分の二電子ポルト ) にな るが、物質の代表てある陽子の静止質量をエネルギーに換算すると、約 ( 十億電子ポ ト ) てあって、数の違い ( 光子数【陽子数Ⅱ 1 ) を考慮してもなお、現在は物質の方がエ ネルギー的に放射を上回るのてある ( ポルツマン定数【Ⅱ 宇宙初期のような放射優勢の時代には、宇宙は高エネルギーの光子て満ちあふれ、さま ざまな粒子の生成消滅が繰り返されていた。 光子の衝突から粒子がつくりだされるために は、一定の条件が満たされることが必要だが、その一つはエネルギーの条件て、光子のエ 129 初期宇宙の様子

9. 宇宙論がわかる

前置きはこのくらいにして、宇宙初期について理論的な思索を進めよう。 ます、宇宙のもろもろのエネルギーは、物質エネルギーと放射エネルギーとに大別てき る。物質エネルギーというのは、相対論のところて示した換算式 Q=EZ) により、質量 をエネルギーに換算したもののことてある。この質量とエネルギーの等価生は、アインシ ュタインが導いた言て最も重要なものてあった。 次に放射エネルギーというのは、ここては光子のエネルギーのことて、絶対温度が e の とき、光子の平均エネルギーはて表される ( は「ボルツマン定数」と呼ばれる、物理学てた いへん重要な定数の一つ ) 。したがって、放射エネルギーは絶対温度に比例するといえる。 これらのエネルギーの空間密度と宇宙温度とは、前に述べた「スケール因子 (x) 」を用 いて表せることが、アインシュタインやフリードマンの理論から出てくる。スケール因子 の時間依存性も理論によって与えられ、宇宙初期 ( およそ宇宙時間て十万年くらい経過するまて ) てはド ( の平方根 ) 、それ以後はいの立方根 ) のように変化することがわかっている。そ こて、物質と放射のエネルギー密度や宇宙温度などが時間とともにどう変わるかが、理論 に計算てきることになる。現在の宇宙温度やエネルギー密度は、観測によって求められ ているのて、これをもとに、 任意の時点におけるこれらの量の値を知ることがてきるわけ てある。 初期宇宙の様子 127

10. 宇宙論がわかる

重力の非平衡が生んだ宇宙進化 ここて、宇宙やわれわれ自身の生命のことを考えてみよう。 宇宙は三十万年たった頃、熱平衡状態にあったことは、今日の一様な背景放射からうか がえる。その後宇宙が膨張し、冷えてい につれて、銀河や星などの物質の塊がてきてい った。そうなると、もはや熱的な平衡状態てはなくなった。星のような高温部と、星間空 間のような低温部の差が生じたからだ。そして、そのうちの少なくとも一つの惑星ては、 複雑な構造の分子が形成され、生命が誕生し、さらに高度な情報を処理する知性まてが現 このような宇宙の進化は、一見、秩序から無秩序へ向かうという熱力学の第二法則の主 張と相反するように見える。しかし、宇宙のような物質の巨大な系ては、エネルギーの分 ごというだけてはすまない、 布が一様だ もう一つのファクターがあるのだ。それが重力てあ る。重力によって系の物質が互いに引き合い、やがて物質の大きな塊を形成する。そうす ることて、前に述べた重力のポテンシャルエネルギーを解放するのてある。解放されたエ ネルギーは熱となり、光となって周囲に広がってい 光や熱が空間に広がった状態は、 光や熱が放出される前の状態にくらべて無秩序てある。つまり、宇宙全体てはエントロピ 180