下 - みる会図書館


検索対象: 日本語練習帳
175件見つかりました。

1. 日本語練習帳

ハとガには一つの相違点があります。 先にお話ししたよ、つに 、ハはそこでいったん切って、ハの上を孤立させ、下に別の要素を抱 えこむが、それを隔てて文末と結びます。 ところが、ガは直上の名詞と下にくる名詞とをくつつけて、ひとかたまりの観念にします。 これがハとガの根本的に違う点です。つまり 、ハは分離させておいて下と結ぶ。ガは、すぐ 上とすぐ下をくつつける。「くつつける」とは、ひとまとめの「こと」「もの , とすることです。 つまり、ガは接着剤として働きます。 練習@ 彼ばこんな貧弱なものしか食べさせられていなかったことを書いていない。 彼がこんな貧弱なものしか食べさせられていなかったことは書いていない。 〃センテンスのハは、そこでいったん切れた後、下のどの言葉と結びますか。 ″センテンスのガは、下のどの言葉までをくつつけてひとまとめにしていますか。

2. 日本語練習帳

II 文法なんか嫌い 〃に応じる「答え」は下の方のどの部分か指摘して下さい 山田君はビデオにうすもれて暮らしている。彼は、ビデオテープの山の中に自分〃 の記念碑を建てている。それを繰り返している間は試験に受からないだろう。 、は、話題を前から頭の中にあることとしてそこに置き、それについての新しい情報が下に くるぞという約束をします。下に必す答え ( 新情報 ) があります。それは、多くは文の最後の一 句です。つまり、 ( 1 ) 山田君はドウシティルカトイウト : : : 暮らしている。 ・ : 建てている。 ( 2 ) 彼は何ヲシティルカトイウト : : 受からないだろう。 ( 3 ) それを繰り返している間はドウナルカトイウト : ( 1 ) と ( 2 ) とはヨーロッパ語流の「主語ー述語」の型としても考えられます。しかし ( 3 ) は ヨーロッパ語の文法では「主語ー述語」とは考えないでしよう。これは主語のような「動作の 主」を示すものではありません。日本語では、 ( 1 ) も ( 2 ) も ( 3 ) もハの用法としては実は同し 型なのであって、ハは動作の主だけをいわす、そのハによって話の場を設定し、下でそれにつ

3. 日本語練習帳

″練習⑩ ″五二ページで出題したセンテンスです。手入れをして、も「と鮮明にして下さい 尸 7 安政条約によ「てフランスやイギリスは日本に軍隊を駐留させる権利を得てい″ たし、日本の裁判所は外人に対し裁判する権利がないものとされていたし、また〃 日本の国内産業の死活を制する輸入関税率も日本自身で決定することばできない〃 ことになっていた。 鮮明なセンテンスとは、「 << は」の関係が明瞭なセンテンスです。ではこの例文の中で、 不鮮明なところはどこか。 : ないものとされていたし、 「 : : : 軍隊を駐留させる権利を得ていたし、 とある。「し」は、そこで判断が完結せす、下に行ってから完結することを示しますから、 「し」の下に何が起こるか、・読み手はこれまでのところを頭の中に保留してさらに下へと見て

4. 日本語練習帳

III 二つの心得 これは仮りに作った文ですが、不可能な文ではないでしよう。こうした文が成立するところ を見ると、ガがどんな働きをしているかが分かる。つまり、ガがくると、それまでの叙述はす べて留保の条件と化してしまい、判断の本体はガの下にくることを示します。下にくる本体と、 ガの上に示された留保条件との関係は、逆接が多いけれども必すしも逆接に限らない カ ・・カ ・・カ と続いていくと、判断の本体はガの下だぞ、まだ下だぞというこ とになり、最後に至って決着する。「 : : : が、ーというところでは文は終結しないというしるし になっています。志賀直哉の文章を引きましよう。 なかなか 彼はそれまでに雑誌社と約束の仕事を片づけて置くつもりだったが、却々出来す、父達 が来て既に締切日も過ぎ、毎日のように催促されたが、まだ出来なかった。短いもので、 あて 調子よく行けば一ト晩で書ける事もあるので、それを的に一日延はしに延ばしていたが、 それがうまく行かなかった。 ( 志賀直哉『晩秋』 ) 初めのセンテンスの中には二つのガがあります。二番目のセンテンスにもガがある。 もう一つ例を、少し古いものですが、二葉亭四迷の翻訳の文章から引いてみます。

5. 日本語練習帳

「疑いを存す , と使うように「じっと心の中にもっている」という使い方もあります。それで 「存する」と使うと、「胸の中ですーっと思っている」という使い方でした。「思う」「知る , の 謙譲形として「存じます、を使うのは、「存」のそういう原義を生かした言葉づかいです。 「田中と申します、の「申す」は、もとは神様に実状を訴えて願う意味ですから、自分を 低く扱い、低い位置から誠意をもって相手にいう意です。「申し入れ , 「申し立て」「申し込み , 「申し添え」なども、本来は「人民がお役人にお願いする , という気持をもった表現でした。 つまり下から上へいう言葉です。ですから、このごろのように「先生が申されました」と「申 す、を使うのは誤用です。「申す」の原義が忘れられてきて、「申す , を単に「ていねいにい う」と取って、「先生が申された、という形が出てきたのです。 このように謙譲形は自分の行為を、秘かなもの、下にあるもの、下から上へのこと、いつも 心の中でそっと保っているものだと表現するわけで、尊大はその逆です。次も、謙譲のために 別の単語を使う例です。 練習⑩ 190

6. 日本語練習帳

o 人間が皆聖者にならない限り 風が静かな日 ガは下にある名詞「犬」「話」「限り」「日」までをまとめてくつつける。の「人間が : ならない限り」というと、まだ下に続くと感じる人もあるでしよう。確かに下に続く形です。 : ならない限り」全体でますひとまとまりにな しかし「限り , は本来名詞なので、「人間が : って、それが今度はセンテンスの中で副詞の働きをします。 結局これは、 < が : : : スル〔名詞〕 ( あるいは、 < ガ : : : デアル〔名詞〕 ) という型として理解されます。ガはすぐその上の名詞と、下方の名詞とをくつつける接着剤で す。これがガの基本的性質の一つです。 ニ二ロ ( こういうことは学校文法では、おそらく一度も教えません。ですから、大人でもここを売 かむとむすかしいと感じる人が少なくないでしよう。しかし分かってしまえば、そんなにむすか しいことではありません。少なくとも小学校か中学校の段階でこれを学んでおくと、日本語の 法 文 センテンスの把握がしつかりする。 ) 右の例文では、「名詞」とした部分は、誰が見てもはっきり名詞と分かりますが、ちょっと

7. 日本語練習帳

あま 海人・釣する人 などの下に付く。したがって「我が子」「汝が名 , はあるけれど「我の子」「汝の名」 はありませんでした。そのかわり、ノは広い使用範囲をもっていて、 ひょう 天・山 ・ー・海辺・海原・山川・風・雨・雪・雲・雹・上・中・下・先・春・ やまつみ 夏・秋・冬・山神・神 などの下にはノが使われ、ガは使われなかったのです。 では、ガとノの違いはどこにあったのか。ガは、自分を中心とするわが家の住人に 使っています。わが家は垣根で囲まれていて、その垣根の中の人にはガを使い、その 囲いの外の人はソト扱いで、「大君の命」「神の社」のように大君も、人も、皇祖も、 神も、天も地も雨も風も、春夏秋冬もその点では同じくソト扱いでした。地名はほと んどすべてがソト扱いでノが付きます。ガは少数、地名とか動植物に付くこともあり ますが、それは内部の人に準する扱いを受けるようになったものと見られます。 つまり、原始日本語の社会では、ウチとソト ( 話し手のごく近いところとそれ以外 ) の区別が鮮明で、助詞でもウチ扱いにはガ、ソト扱いにはノと区別していたのです。 このガとノとの区別は年とともに次第にゆるくなり、ガの使用範囲は平安時代、鎌倉 やしろ 156

8. 日本語練習帳

美しくはなかった 訪ねては来なかった これは「美しくなかった、「訪ねて来なかった、のような単純な全面的否定ではなくて、留 保とか部分否定とかになる。 「美しく、「訪ねて」というのは、切れてはいないがそこで一応の判断を下している。ところ 、ハの働きは、すぐ上にあるものを問題 が、その下にハが加わった。すでにお話ししたように として確定したことと設定することです。、や O 、の形は「美しく」「訪ねて」と肯定 の判断を一度は確定的に下しています。それにもかかわらす、それを再びハで間題として設定 しなおした。それは、再問題化であり、直上の判断に留保条件を付けたり、否定したりするこ とにつながります。これを私は「再審」といったこともあります。 「再審」とは裁判用語です。一度決定の下された判決を「再び審議」する、「再び問題にす る」ことです。だから、刑事裁判の場合、死刑の判決に対して最高裁判所が「再審」と決を下 すと、それ以前の決定を再問題化するのだから、結局、逆転無罪となることが多い。 繰り返します。 美しノ、は

9. 日本語練習帳

いての新情報を加えるのです。 ハの下の答え ( 新情報 ) はどれかと求めるのが、日本語の文章を読むコツです。それは基本的 にはその文章の結びの一句です。 ″練習⑩ ー ( 6 ) のハの結びを指摘して下さい 次の文章の中に出てくる ( 1 ) いったい、サクラにしてもコプシにしても、開花している樹にはある種の謎め〃 めいてい′ いた妖しさがあり、ひきこまれるような美しさがある。樹の花には私たちを酩酊〃 させ夢心地にいざなう魔力があって、そのために、私たちはサクラが咲けばその″ 樹の下に筵をしいて酒を酌みかわし、放歌高吟したりすることになるのかもしれ″ ない。毎年のように日光植物園を訪ねながらも、あのリョクガクサクラに魅せら〃 〃れながらも、樹といわれてそうした花木を思いうかぶことがないのは、樹の本当″ の姿かたちとは、それとすこし違「たものだ、ときめこんでいるからであろう。″ ( 6 ) 私の心にある樹はいつももっと雄々しく、りりしく、すっくと大地から立ってい むしろ

10. 日本語練習帳

と飛んでしまっては早すぎるでしよう。外国文学者がそういうのだから、日本語には文法なん てないんだろうと田 5 ってはいけない。 ョロッパ語のセンテンスの考え方に立たすに、もっと日本語に自信をもって、日本語のセ ンテンスの組み立て方はどうなっているのかを考える方がいい 、とガとは ノとガとがどんな働きをするのか、ノ 日本語のセンテンスの構造を理解するには、、 どこが同じでどこが違うのかをよく見極めること。ます、ハから始めます。 ハの働き①ーー問題 ( to 三 c ) を設定して下にその答えが来ると予約する 日本語のハの役目から代表として四つを取り上げましよう。その第一は、ハは「話の場を設 定する、「題目を提示する、ということです。ハは「問題を出して、その下に「答え」がくる ことを予約するのが役目だ」といえます。それを具体的に見ていきましよう。 練習⑩ 1 2 ) ( 3 ) のハは「話の場」、「問題」 ( ( op 一 c ) を設定しています。それ 次の文章の ( ) (