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検索対象: 集英社ギャラリー「世界の文学」01 -古典文学集
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1. 集英社ギャラリー「世界の文学」01 -古典文学集

1333 文学作品キイノート . り〃 2 召 OS ホメロス くつがえ いざ歌え、女神よ、ペーレウスの子聞いたアポロンはギリシア勢の陣営の側勢を覆した。アキレウスが戦場に姿を アキレウスの怒りを : に降り立っと、陣営に向け鋭い矢を放つ。見せぬと知ると、トロイア車は勢いづき、 め 九日の間、矢は陣中を襲い、目し。 艮こま見えトロイア王プリアモスの息子へクトール ムーサ ( 詩芸の女神 ) への祈りからぬ矢玉に当っては兵が次から次にと倒れを先頭にギリシア車の陣営近くにまで攻 撃を繰り返す。 『イリアス』は始まる。トロイア攻めがていった。 すで ・はんかい 始まってから既に十年が経った。トロイ原因は占いの人力ルカースによって明 アキレウスの助力なしには形勢の挽回 ア城は末だに陥ちてはいない。 しかし勇らかにされる。為にアガメムノーンはクは不可能となる。そこでネストールの忠 猛なアキレウスの活躍はめざましく、近 リュセースの娘を手離さねばならぬ仕儀告に従い、アガメムノーンも潔く己れ ぐれん 在の集落は次々と紅蓮の炎に包まれてい に追いこまれる。しかし、そのかわりにの非を悔い、アキレウスとの和解を承諾 とアキレウスの分け前であったトロイアする。アキレウスの怒りを解くためにと、 ギリシア方は戦利品だと称し、トロイの娘をアガメムノーンは要求する。とい 彼から召し上げた娘の他に六人の娘を新 りやくだっ しゅんめもろもろ アの娘たちを掠奪していたが、そんな うのもアキレウスの提案からカルカースたに加え、黄金、駿馬、諸々の約束を揃 娘たちの中にアポロンの司祭クリュセー がことの次第を語ったからである。そのえて和睦の使者を送り出す。使者にたっ スの娘がいた。今は総大将のアガメムノことへの腹いせが無理な要求を生んだのたのは、アキレウスを育てたポイニクス、 ーンに仕えている娘である。ある日のこである。アキレウスはアガメムノーンのそれにアイアースとオデュッセウス。し とりそろ かしアキレウスは蹶起を頼む彼らの言葉 と、クリュセースは高価な品々を取揃え理不尽に剣を抜く。女神アテナが仲裁に るとアガメムノーンの陣屋を訪れる。娘入り、ようやく剣はおさめられるが、腹にも耳を借さす、かえって明朝、船を仕 の身柄の返還を頼むためである。しかしの煮えくりは一向におさまらす、ネスト立てて帰国すると宣言する始末。仲間の よろ′一 ールの一言葉も聞かぬままに、二度と戦場懇願もアキレウスを翻意させることはな アガメムノーンは父親の訴えを悦ばす、 には出向かぬことを宣し、己れの陣屋へかった。 侮辱のことばで彼を追い払う。 そ , っこ、つしている , っちに、・ キリシア軍 この仕打ちに嘆き怒ったクリュセースと帰っていく。 ちょうばっ は、ギリシア勢に懲罰の下らんことを 一少女の争奪に端を発した武人と武人の劣勢は抜き差しならない状態へと落ち とアポロンに祈る。クリュセースの声をの面目のぶつかり合いがギリシア車の優ていく。 他の武将に混じってアガメムノ 『イリアス』 s つつ ) 0 いイ一ぎよ

2. 集英社ギャラリー「世界の文学」01 -古典文学集

1335 文学作品キイノート ホメロス ほんろう 『オデュッセイア』は、「帰郷物語」 ( ト先にと延ばされてしまう。神に翻弄されュプソーの慰めも効果はない。海神ポセ げキ一りん ロイアから故郷イタケーに辿り着くまでながらも、己れの才覚を頼りに帰国を遂イドーンの逆鱗に触れての足止めであっ ふくしゅう の冒険譚 ) 、「復讐物語」 ( 妻ペーネロペげようとするオデュッセウスの姿を、詩 ちょうどその頃、天界ではゼウスを囲 ーに求婚を迫る男たちへの復讐話 ) 、「テ人ホメロスが見事に活写していく。 ーレマコス物語」 ( 成人した息子、テー トロイアが陥落して、はや十年が過ぎんでの御前会議が開かれていた。女神の 力い・、う レマコスの父親探しと、父との邂逅のた。オデュッセウスは絶海の孤島オーギアテナがオデュッセウスの帰国許可を説 話 ) という三つの核 ( 古くはそれそれ別 ュギア、女神力リュプソーの住む洞穴に く。ゼウスが女神の主張を聞きいれた。 個の小叙事詩であったようである ) に有いる。七年が無駄に過された。望郷の思 ヘルメースがカリュプソーのもとへ遣わ 機的結合を計り、一篇の長大な叙事詩に いは日増しに強まる。美しいオーギュギされる。ゼウスの意志が伝えられた。帰 日がな一国せすにいてくれたらと願わすにはいら 仕上げたものである。 " トロイアの木馬〃ア島の景観も目には入らない。 の計略を立てた智将として名高いオデュ 日、浜辺に出ては遠く海の果てに目をやれぬカリュプソーもゼウスの命令には逆 ッセウスは、トロイアからの帰国の途中、っている。見えるはすもない故郷イタケらえない。カリュプソーの指揮に従って ーを見つめているかのように : ポセイドーンの怒りに触れ、帰国は先に カリイカダを組むと、オデュッセウスは帰国 かける。「父上のことを思い出してくれ、スでパトロクロスのことを思い出してか、を上げた。 アキレウスの殿よ。生きてトロイアから老王とともに涙する。涙の後でアキレウ十日の間、トロイアの人々は火葬壇を 帰国するのを待っ父のことを。この私はスは、老父プリアモスの手を取ると、ヘ築く薪を城内に運び続けた。そして十日 祖国を護って戦ってくれていた息子を、 クトールの遺体を返すと告げる。悲涙の目の朝、高く積まれた薪の上に横たわる あなたに討たれて失くしてしまった : 果てに両者の和解が成ったのである。 ヘクトールの屍に火が掛けられた。親し ふびん この身を不憫と思うなら、どうか息子の暁の頃、ヘクトールの遺体がトロイアかった者たちの手が、白い骨を拾い集め 亡骸を返してはくれまいか : : 」そう言の城内に運び込まれた。それを見た女たる。悲しみを胸にしたトロイアの人々の しの って、亡きへクトールを偲んで泣きくずちの慟哭。后のアンドロマケーが、母親手で、ヘクトールの葬儀が進められてい れるプリアモス。アキレウスはアキレウへカペーが、そしてヘレネーが嘆きの声 『オデュッセイア』 0 、 1 4 たど ゾ」う・一く まき

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699 神曲天国篇 れている。同所の註 ( ) ( 町 ) 参照。 ( 幻 ) ギリシア人のトロイア略奪 に際し、戦死したトロイア 方の英雄リ。へウス。『ア工 ネイス』二の三三九及び三 九四で、ヴェルギリウスが 他のトロイア人と並べて名 前だけ挙げているにすぎな いリペウスを、天国で嘉賞 されるほど重要な人物とし たのはダンテが初めて。 ダンテがこのリペウスを ゆえん 評価する所以は、かれがロ ーマ人の遠祖、トロイア人 であることのほかに、『ア エネイス』二の四二六 七で、ヴェルギリウスが たお 「リペウスもまた斃る、ト ロイア方にあって正義無取、 廉直を慕いやまざりし者」 と叙したのに深い感動を覚 え、隠れたるを見そなわす 神慮の、言わば名も無きリ 。へウスに及ぶ玄義をあらわ すに、最も適した事例と思 ったからであろうか なお新約以前の異教の人 もっ 物で、正義廉直のゆえを以 おみちょうあずか て神の恩寵に与っている のは、神曲全篇を通じ、こ のリペウスと、煉・一に登 場するウティカのカトーと ただ二人だけ。 ( ) 天・一九の五二ー六三行参 照。 ( % ) 神。その影像は鷲。なおこ の連との比較において、 天・一八の一〇九ー一一行 参照。 ( ) 異教徒のトラヤヌスとリペ ウスが天国で受福している こと ( ) マタイによる福音書一一の 二に、イエスの言葉とし て、「洗者ヨハネの日より この方、天国は烈しく攻め 立てられ、烈しく攻むる者 これを奪う」とあり。また ルカによる福音書一六の一 六には、同じくイエスの言 葉として、「律法と預言者 はヨハネまでそ。それ以後、 の 神の国の福音は宣べ伝えら れ、なべての者カずくにて これに入る」とあり。 荘重なラテン語「レグヌ ス・ケロールム」でこの三 韻詩句は始まり、鷲は愛と 望とを武器としての天国攻 略の玄義を説く。 トラヤヌス。 リ。へウス。 ( 引 ) 天国。 しよくギ一い ( ) 贖罪のためにいっか到来 するであろうキリスト。 ( ) 到来して贖罪のために受難 おわ し了ったキリスト。 ( ) 改悛によって。 トラヤヌスのために祈る聖 グレゴリウスの″祈り、必 す受納さるべし〃との烈々 たる望み。 ( ) 天国での受福の喜び。 ( ) 底から迸り出る泉の。 ( ) 対神の三徳 ( 信・望・愛 ) 。 煉・二九の一二一 参照。 ( ) 洗者ヨハネがキリストに洗 礼を施したこと。 (* ) 地・四の三四ー三六行で、 ヴェルギリウスがダンテに、 「君の信する教の門」とい うその洗礼 ( れ ) 神。 ここでは、天使や諸聖徒も 含めて、一切の被造物。 トラヤヌスとリペウスの。

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の呼びかけの力は、かくも強かった。 「この世を血潮で染めたわれどちを、くらやみの空かきわけおとずれたもう、あわれめぐ み深く心やさしき生きたる人よ。 宇宙の王、もしわがどちの友ならば、道ふみはすしたわれらの苦患をあわれみたもう、お ん身よ安らかなれと祈ろうものを。 おん身たちが聞き、また語ろうと願われることどもを、いざわれら、聞きもし語りもいた し、ましよ、つ、去卞いに風静もれるいオ六ここで。 私のうぶすなの町は、多くの従者をあつめたポーの大河が、くだり安らぐ海のほとりに位 置する。 たちま やさしい心を忽ちに焼きつくす恋のほむらは、今はわが身から取り去られた美しい容姿ゅ えに、このひとの心を捕えた。そのさま、思いかえすも苦しい 恋しいひとを、ただひたすら恋いすにおれぬ恋のほむらは、そのひとをいとおしむ烈しい 喜びに私をくるみ、その思いは、見らるるように、今も私を離れぬ。 ( 幻 ) 恋のほむらは、われらふたりを一つの死に導いた。カイーナは待つ、われらふたりのいの ち消した者を。」これらの言葉が、ふたりからわれらに投げられた。 苦患に脳む二つの魂が、かたみに語るのを聞き了えたとき、い つまでも低く頭を垂れたま まの私を見て、詩聖あやしみ、私に一一一一口う。「何を思う、君は ? 」 私は答えたが、ます初めに。「あわれ、どんなにか甘美な思い、 どんなにか烈しい慕情を 重ねて、ふたりはこうもいたましい苦患に落ちし ! 」 それから私は、再びかれらに顔を向け、こう語りかけた。「フランチェスカよ、あなたの 地 苦出 5 は、悲しさと隣れみゆえに、私の涙をひき出す。 曲 神だがます語りたまえ。甘美なためいきの折ふし、何により、どんなきっかけで、定かでな い胸の思いを恋とは知れる ? 」 おも 聞いて、フランチェスカは私に。「みじめな境遇に在って、しあわせの時を想いおこすよ あ ュカイオス〕の妻であった が、アイネイアスがトロイ アを逃れてカルタゴへ来る におよび、これと相愛の門 柄となる。メルクリウスの 忠告でアイネイアスがカル タゴを去ると、デイドは自 殺した。『アエネイス」四 の五五二の遺響。 ( 9 ) エジプトの女王クレオパト ラ。ュリウス・カエサルと マルクス・アントニウスを 手玉に取ったが、最後は毒 蛇を用いて自殺。 ) スパルタの王メネラオスの 妃、ヘレネ。絶世の美女 で、トロイアの王子バリス に誘拐され、長期にわたる トロイア戦争のもとをつく トロイア戦争でのギリ、ンア 方の英雄アキレウス。中世 の伝説では、恋人ポリュク セーナに会わせるとのパ スのロ車に乗り、踵を射ら れて死ぬ。 トロイア王プリアモスとへ カペーの子。ギリシア神話 であらゆる人間のうち最も 美しい男性とされる。トロ ィア戦争をひきおこし、つ いにアキレウスを殺した。

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1334 ホメロス やりきず う」と母親 ( 女神テティス ) は予言する。を打った。 ーンも槍疵を負い戦場から離れる。こと いまわ ここに至って、アキレウスとともにトロしかし母の予一一一一口もアキレウスの復讐の意「埋葬を」と、ヘクトールの今際の頼み なきがら 志を萎えさせはしない。母親に新しい甲も聞かず、アキレウスは彼の亡骸を戦車 ィア攻めに加わっていた親友バトロクロ に専り付けると、引きすりながらトロイ スが立ち上がった。パトロクロスはアキ冑をせがむアキレウス。母親テティスも かっちゅう レウスから武具、甲冑を借り受けると、やがてはそれが息子の死装束となるのをア城の回りを走った。城壁の上から、そ あえかじ 承知で敢て鍛冶の神ヘーパイストスに見の有様を見て嘆き悲しむヘクトールの父 彼の代わりにと勇んで戦場へと走った。 と母、そして后のアンドロマケー。しか 「決して深追いはするな」というアキレ事な楯と甲冑を造らせた。 ウスの警告も忘れ、勝ちに乗じてバトロ新しい武具を身に着けるとアキレウスし嘆きの声もアキレウスの耳には入らな ハトロクロスを失った悲しみが狂気 クロスが城壁の下までも、敵のまっただ は、ヘクトールの姿を求めて戦場に再び よ 中を突き進む。そしてヘクトールとの一戦車を乗り入れる。鬼神と見紛う形相で、と化して憑りついているかのように、ア 騎打ち。あえなくもヘクトールの手に掛アキレウスが敵を殺す。わすかの慈悲もキレウスは、その死体を引きすり続けた。 ハトロクロスの葬儀が行われた。大き ると、その甲冑は身から剥がされた。 見せず、命乞いにと泣き叫ぶ者さえ、平 無事な帰還を祈っていたアキレウスの然と殺す。神々の不興をも買いかねぬアな火葬壇が築かれ、彼の遺体が焼かれる。 ての葬礼競技の開催。だがア もとに、無残なパトロクロスの遺体が届キレウスの憤怒。トロイア勢に恐怖が取それに続い 戦友たちがようやくのこと敵から奪り付く。うしろも見すに、一目散にと城キレウスの嘆きは止まらない。眠りも食 い返してきた遺体であった。変り果てた内へ逃げこむ兵士たち。しかし唯一人、事も忘れて、ヘクトールの亡骸を戦車に とど 姿のパトロクロスを見るアキレウスを、ヘクトールだけは城外に踏み留まり、ア結んではパトロクロスの塚の回りを巡っ きようじ かなわ 無思慮にも友を戦場へと送り出してしまキレウスを迎えた。武人の矜持が適ぬ敵ていた。 頼みのヘクトールを失くしたトロイア ったことへの悔恨が襲う。友を失った悲との対峙を強要したのである。 しみ、そして友を殺した者への怒りが襲ゼウスが黄金の秤で両人の運命を計量勢に勝利の希望は消えた。城内に悲嘆の いき」っ った。ヘクトールの死が決定された。 声が満ちている。トロイアの王、プリア う。もはやアガメムノーンとの経緯も、 しかばね 憤怒の形相すさまじくアキレウスが近モスはせめて息子の屍をもらい受けよ まして。ハリスが連れ去ったヘレネーのこ おび づく。怯えにつかれて走り出すヘクトー うと、夜陰にまぎれて、アキレウスの陣 となど彼の頭にはない。新たな怒り、ヘ ふくしゅうしん ル。容赦なく後を追いながらアキレウス屋へと出かけていった。 クトールへの復讐心が戦場へ向かおう プリアモスの突然の登場に声も出ない とする彼の脚をひたすらに速める。「へが槍を投げる。トロイア城を三度巡った クトールを討てば、次はお前を死が襲ところで、アキレウスの槍がヘクトールアキレウス。やがてプリアモスが一一 = ロ葉を たて き寺一き

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おぞま 名のもとに、厚しい饗宴へと招いたのである。アトレウスはゲネイアをアルテミスへの犠牲に差し出して女神の怒りを解 テュエステースの子を殺すと、その肉を煮込みにしてテュエくのがよいか、アガメムノーンに決断の時がせまる。後者を ステースに供した。宴のあと、アトレウスは子供の頭をとりよしとしたアガメムノーン。その選択の結果が新たな惨劇の 出し、テュエステースの腹におさまったものの正体を明かす序幕であることなどアガメムノーンには知るよしもない と、彼を国外へ追放した。アトレウスの仕打ちへの復讐を誓十年の後、トロイア城は陥落した。その間に多くの血が流 よろい された。その血潮を勝利の鎧にアガメムノーンが帰国する。 うテュエステースは神の言葉通り、娘ペロピアと交わると、 自分の無念を晴らしてくれる子アイギストスを得た。 その先に悲劇『アガメムノーン』の物語が続くこととなる。 時が経った。今やアトレウスの長子アガメムノーンがミュ ケナイの王として君臨している。次男のメネラオスは兄の妻 クリュタイメーストラー ( スパルタの王テュンダレーオスと き一き 后レーダの子 ) の異父妺 ( ゼウスとレーダの子 ) 、傾城の美 女ヘレネーを妻とし、義父の領地スパルタを治めている。あ る日のこと、トロイアの王子バリスがスパルタを訪れた。生 憎のこと、あるいは幸いなことというべきであろうか、王メ ネラオスは宮殿を留守にしていた。アプロディテの皮肉な約 束を信じていたのだろう、 丿スがヘレネーに近づいた。へ レネーは誘惑に負け、トロイアの地へと馳け落ちした。 こうして、トロイアの地にアガメムノーン兄弟の手で多く の血が流されることとなった。 いただ いざトロイアへと、アガメムノーンを総大将に戴き、ギリ 説シア軍がポイオティアのアウリス港に結集した。ところが鹿 解 狩りを楽しむアガメムノーンの不注意な一言が女神アルテミ スの怒りを買い、トロイアへの船出は不可能となる。このま あきら ま軍を解散してトロイア攻めを諦めるか、それとも娘ィーピ けいせし

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計らい、ファエンツアの城に夜討ちをかけたテパルデルロと一緒に。」 ずきん われらは既にかれらから離れていた、甲の頭が乙のそれの頭巾となるほどびっしりと、一 っ穴に身を寄せあっている二つの氷結体を私が見たときには。 テ む著、ばくら 外そして飢餓迫れば。ハンががつがっと貪り啖われるように、上なる者その歯を、下なる者の 脳髄と項の接合するあたりへ打ちこんでいた。 こめかみかじ いまこの者が相手の頭 テイデオ怒り狂い、メナリッポの顳頷を齧ったときの凄まじさも、 カ > 蓋その他に、歯をあてているのとそっくりだったろう。 「おおなんじ、かくも浅ましい畜生のしぐさによって、そちの貪り啖う相手への憎しみを 示す者よ、語れ理由を」と私は言った。「その代りに、 かれに対するそちの非難に理があるのなら、そちたちの名と、かれの罪状とを知った上で、 現世に立ち帰ったとき、そちに報いる折もあろう、 もの言う私の舌の乾くことなくば。」 カミチョーネの血縁の者。 一三〇二年、フィレンツェ の黒派とルッカ市民がピス トイアを攻めた時、かれは フィレンツェの白派のため にアルノの谷の一城を守っ ていたが、買収されてそれ を黒派の手に渡した。裏切 りの罪は肉親殺しのそれよ りもはるかに重いゆえ、カ ルリーノが死ねばコチート の第二円に入れられ、自分 の罪の軽さが証明されるだ うなじ ろうと、カミチョーネは預 もちろん 言しているのである。勿論 ( ) プトレマイオスの天文学に よれば、全宇宙の底、すな わち地獄の底に、一切の重 力が集まる。 ( 幻 ) トスカーナの一村。シエナ の東数キロ、アルビア河畔 の丘上に位置する。ここで、 一二六〇年九月四日、シェ ナ及びフィレンツェのギ・ヘ リーニ党と、フィレンツェ 「潔白」からは程遠い すさ のグエルフィ党の間で苛烈 な戦闘があり、グエルフィ 党は完敗した。地・一〇の 註 ( ) 参照。 ( ) 祖国や仲間を裏切った者が お 堕ちて罰せられる地獄第九 圏第二円。ギリシア神話の ちな アンテノールに因む命名。 アンテノールはトロイア王 プリアモスの賢明な顧問役 であり、「イリアス』では パリスとメネラオスの一騎 打ちで事件の解決をはかろ うとする平和主義者なのだ が、中世ではトロイアを敵 方のギリシア勢に売り渡し た裏切り者とされている。 ( % ) ポッカ・デリ・アバティ。 リーニ党 一二五八年、ギペ がフィレンツェから・追放さ れたのちも同党員として踏 みとどまり、モンタベルテ イの戦いではグエルフィ党 員としてフィレンツェの味 方を装い、しかも、フィレ ンツェ側の旗色悪しと見る や、フィレンツェ軍の旗手 ヤコボ・デ・ / ヾツツイの片 手を切り落し、味方を大混 乱に陥れ、グエルフィ党完 敗の素因を作った。 ( ) ブオーゾ・ダ・ドウェラ。 ハラヴィチーノ侯爵と丑ハに クレモナのギペリーニ党指 導者の一人。一二六五年、 アンジュー家のシャルル 世が、マンフレディと会戦 してナポリ王国を占領する 目的でイタリアへ進軍した とき、かれはマンフレディ から大金を受け取り、その 軍勢を必すロン・ハルディア で食いとめると誓約してお きながら、シャルル一世に 買収され、無抵抗のうちに

8. 集英社ギャラリー「世界の文学」01 -古典文学集

は一三〇〇年の時点で存命。 ( ) かれはいま水腫のため身が 重一ノ、、一ミリ動 / 、こと。もオ まならぬ。 ( ) 註 ( ) および ( 四 ) 参照。 ( ) 旧約創世記三九の六ー二〇 に出てくるヨセフ。うそっ き女は、ヨセフを誘惑しょ しゅんきょ うとして峻拒され、逆恨 みにヨセフを誘惑者だと言 い立てた侍従長ポティファ ルの妻。 トロイア戦争のとき、わざ とトロイア側の捕虜となり、 巧言令色、プリアモスを信 用させ、有名な木馬をトロ ィア城内にひき入れた人物。 「トロイアのギリシア人」 とは、曰アエネイス』二の 一四八ー四九に、プリアモ スのシノンへの一一 = ロ葉として、 をーっ・ : っ 「そなたが誰であれ、向後 はそなたの捨てたギリシア 人を忘れ、われらの味方と なるべし」とあるのを踏ま えている。 獄 地 ( 四 ) 木馬に関して。 ( ) ギリシア神話のナルキッソ 神 ス。テスビアイの美少年。 びばう 泉の水に映った自分の美貌 に見とれ、恋し、望みのと げられぬままやつれはて、 すいしゅ 遂に同名の花 ( 水仙 ) とな った。種々の伝えがあるが、 ダンテはオヴィデイウス 「変身譜』三の三五一ー五 一〇に依っている。ナルキ ッソスの鏡とは水のこと。

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455 神曲煉獄篇 子三人あり、相ついでヴェ ローナの領主となった。ダ ンテが同市にいた時身を寄 せたカン・グランデもその 一人。 ( ) ヴェルギリウス。 ( 芻 ) 噛みつかんばかりに罵る。 ( ) 水がわかれた紅海を渡り、 エジプトからのがれてきた イスラエル人 ( 出エジプト 記一四の二一ー三〇参照 ) 。 ( ) モーセの教えにそむいたた め、ヨルダンの川の流れる 地を見すに死んだイスラエ ル人 ( 民数記一四の一ー三 九参照 ) 。 ( ) アンキセスの子アイネイア スと行を共にせす、アケス テスの言うままにシチリア とどま 島に淹り、長途の困苦を避 けたトロイア人。「アエネ イス』五の六〇四ー一七参 照。最後まで労苦を共にし たトロイア人については、 地・一の一〇六 、行、 地・四の一二一 ー二八行参 ののし

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みが、エクバのたましいをねじまげた。 なれども、毛物はおろか、人の肢体を突き刺してはばからぬテーべやトロイアの怒りが、 相手に対しどれほど残虐であろうと、 挈っ。はく 欄の外に放たれたときの豚のように、噛みちぎり、駆けまわるのを私が見た二つの蒼白な 亡霊のそれに比べれば、全く物の数ではない。 くびねきば その一つはカボッキオに跳びかかり、頸根に牙をくらわせたままひきずったので、カボッ キオの腹は堅い地底にこすられてゆく。 とり残されたアレツツォ生れの亡者は、わななきながら私に言う。「あの小鬼はジャン ニ・スキッキ、とち狂ってあのように、相手かまわす装ってまわる。」 してあ 「おお」と私はかれに向力し ゝ、、「残った小鬼が、そこもとに噛みつかねばよいが , の者がここから走り去らぬうち、その正体を教えては下さらぬか、迷惑でなくば。」 こう らち 受けて、かれは私に。「あれこそは恥知らすのミルラの、劫経た亡霊よ。まともの愛の埒 越えて、父親を恋慕しおった。 ちちく あのあまは、他人に姿をやっして父親と乳繰りあう罪を犯した。その手口は、あそこを走 って行く仲間とそっくり。すなわちスキッキは、 家畜のむれの女王を手に入れようと、あっかましくも持主の。フォーゾ・ドナーテ物になり すまし、遺一一 = ロ状を作り、誰からもごてごて言われぬようにしおった。」 あからめもせず私の見つめていた狂暴の二小鬼が姿を消すと、私は不運な生れのほかの亡 霊に視線を移した。 ふたまた そけい びわ 獄私は見た、人の二股となる部分から、鼠蹊が切断されてさえいたら、琵琶そっくりの形の 一亡霊を。 曲 神その亡者は、重い水腫にかかり、体液滞って四肢の不整はなはだしく、顔と腹とが釣り合 わず、 渇きのため上唇を頤に、下唇を上向けにそりかえらせる消耗熱患者そっくり、両唇を開 おり おと ) かい すいしゅ ( 川 ) ( 4 ) ギリシア神話のアタマス。 ポイオティアのオルコメノ スの王で、アイオロスの子。 ヘラの命令でネペレー ( 雲 の意 ) と結婚したが、セメ レーの妹イノをひそかに愛 し、二子レアルコスとメル ケルテスを儲けた。ネペレ ーへの不実と、イノがセメ レーとゼウスの子・ハッコス の乳母であったことにより、 アタマスはヘラの激怒を買 し狂気にさせられ、イノ と二人の子を牝獅子と二匹 の仔獅子だと思いこみ、レ アルコスをとらえ、岩にぶ ちつけて殺す。これを見た イノは、メルケルテスをつ れて海に投身自殺する。こ のあたり、曰変身譜四の 五一二ー三〇に拠っている。 ( 5 ) レアルコス。前註参照。 ( 6 ) プリアモス。オヴィデイウ スの変身譜一三の四〇 三ー四に言う。「この永引 いた戦争にとどめの一撃が 与えられ、トロイアは亡ん だ。プリアモスも共に。」 ( 7 ) ギリシア神話のヘカペー トロイア王プリアモスの第 一の后。トロイア落城のの ち、寡婦となったへカペー きさき ほろ