デイミートリアス - みる会図書館


検索対象: 集英社ギャラリー「世界の文学」02 -イギリス1
34件見つかりました。

1. 集英社ギャラリー「世界の文学」02 -イギリス1

シェイクスビア 248 では自分の分別が重荷でしようが、狐にとっては鵞鳥は重というもの、いや、道理というものだろう。 荷ではありませんからね。 ライサンダーお月さん、つぎをどうぞ。 シーシュースいやいや、あの男の分別では自分の勇気に耐月いえね、あっしの言いてえのは、要するに、このランタ えられまいさ、鵞島にとって狐が耐えられないようにな。 ンが月で、あっしが月の中の男で、この藪が月の男のかっ まあ、 その点はあの男の分別にまかせるとして、月 いでる藪で、この犬が月の男の連れてる犬だって、要する の一一一一口 , っことを日旧こ , つじゃないか。 にそれだけのこってす。 月このランタンは角をもった月、つまり三日月をあらわしデイミートリアスだけど、それならこれはみんなランタン の中になければ嘘だよ、だって月の中のものばっかりなん デイミートリアス角なら頭に生やしてくればいいのにな。 だから。まあ、黙って、謹聴謹聴。シスビーの登場だ シーシュースどう見ても三日月という柄ではないな、角は シスビーふたたび登場。 あの丸顔の満月の中に隠れたりというわけか。 月このランタンは角をもった月、つまり三日月をあらわし、 シスビーここがナナシの墓ね。いとしいあの人はどこかし ら。 かく言う私はかの月に住む男のつもりでございます。 シーシュースこれはひどい、今までのなかでも最高のめちライオン「うなる〕ウォーツ , 「シスビー逃げる〕 やくちゃだ。あの男はランタンの中に入らなきや嘘だろう、 デイミートリアスおみごと、ライオン、 しい吼えつぶり ! そうでなければ月に住む男にはならない シーシュースおみごと、シスビー 、、誂一ナつぶり ! ろうそく デイミートリアス中に入ったら蝋燭でやけどをしますから、 ヒッポリタおみごとよ、お月さま、 、、召りつぶりよ , 入りますまい いや、ご本人も燭に劣らすじりじり燃え ほんとに、忽ればれするような光りぐあい ているようですよ、よほどお腹立ちかな。 「ライオンはシスビーのマントを ヒッポリタこの月にはもううんざり、早く消えてくれれば くわえてふりまわしてから退場〕 シーシュースおみごとおみごと、ライオン、 しいくわえっ シーシュースあの男の分別の光の薄れぐあいから察すると、 ぶりだ , この月、どうやら欠けていくところらしい。それにしても、 ライサンダーかくしてライオンは消え失せぬ ここはもう少し待って消えるのを見とどけてやるのが礼儀デイミートリアス代りて現われたるはピラマスなり。

2. 集英社ギャラリー「世界の文学」02 -イギリス1

シェイクスヒ。ア 198 その私がどうして権利を主張してはいけないのでしよう デイミートリアスの面前ではっきり申しあげますが、 この男は実は以前、ネダーの娘ヘレナに言い寄って、 その心をなびかせてしまったのです。あわれなヘレナは 恋のとりこになり、今もなおこの不実な裏切り男を あが 偶像のように崇めては、恋い焦れているのです。 シーシュース今の話、実は私も耳にしたことがある。 デイミートリアスとその件で話をするつもりでいたのだが、 なにぶん、このところ、自分のことにかまけていて、 つい忘れてした。。 、「テイミートリアス、ついて来るがいし それからイージーアス、おまえもいっしょに参れ。 二人に内々で申し聞かせたいことがある。 ーミア、おまえはよく胸に手を当てて考え、 わがままを言わずに父親の、いに従うことだ。 さもなくば、アテネの法律によってー・ー私のカでも この法律を曲げることはできないのだからな 死刑か、生涯独身の誓いか、どちらかだそ。 では、一打こ , つか、ヒッポリタ。ど , っしたとい , つのだ、その 顔は ? デイミートリアス、イージーアス、ついてくるのだそ。 私たちの婚礼の準備で頼みたいこともあるし、 おまえたち自身のことでもちょっと話しておきたい。 ィージーアス畏まりました、喜んでお供いたします。 「ライサンダーとハ ーミアを残して一同退場〕 ライサンダーどうした、ハ ーミア ? まっさおな顔をして。 ほお その頬に咲いていた薔薇は、どうして急に色あせてしまっ たんだい ? ーミア雨の降らないせいでしよう、きっと。 この目から今にも降り出しそうな大雨を、 一不・ . し 、つしようけんめい抑えているんですもの。 ライサンダーまったくなんということだ , ものの本によ れば、 うわき ) また耳にしたいろいろな噂や物語によっても、 まことの恋の道が滑らかだったためしはないという。 身分や家柄がそぐわないとか ーミアひどい、身分が邪魔して恋もできないなんて , ライサンダーあるいは年齢がはなれすぎているとか ーミア憎らしい、生まれた時の違いで愛の契りを交わせ ないなんて ! ライサンダーあるいは親類が選んだ相手を押しつけられた ーミア厭らしい、他人の目で恋人をきめるなんて , ライサンダーたとえ好きあった同士が結ばれた場合でも、 こんどは戦争とか、死とか、病気といった邪魔が入る。 そのため、愛の命は音のようにはかなく、 影のようにすばやく、夢のように短し やみよひらめ 言ってみれば、闇夜に閃いた稲妻が、一瞬のうちに

3. 集英社ギャラリー「世界の文学」02 -イギリス1

シェイクスビア 226 ライサンダー愛が行けと命じたら、とどまることはできる ものか。 ーミア私を置き去りにしろと命じるなんて、どんな愛な ライサンダーライサンダーをとどまらせなかった愛、 それは美しいへレナ ! あの満天に輝く星々よりも さんぜん なお燦然と夜に映える美しいあの人だ , どうしてばくを追いかけるんだ ? わからないのか、 きみが嫌いだから置き去りにしたのだったことが ? ーミア、いにもないこと言ってるのね、そうよね ? ヘレナまあ、このひとも一枚かんでいる ! そうなの、三人ぐるみのお芝居なのね、 私ひとりを笑いものにしてなぶるための。 意地わるなハー ミア ! 血も涙もない人 , あなた、この人たちと組んで陰謀をたくらんだんでしよう、 私をいじめて楽しもうという卑しい計画を。 私たち二人だけの内緒話、二人だけの姉妹の誓い、 別れの時が足早に近づくのを恨みながら 二人だけで過した時間、あの思い出をみんな 忘れてしまったの ? 学校時代の友情も、少女時代の無邪 」刄さも ? ねえ、 ーミア、私たち、手芸上手の神様みたいに ししゅう 二人で一つの花模様を刺繍したでしよう、 一つのお手本を見て、一つの座ぶとんに坐り、 同じ歌を、同じ調子でうたったじゃないの、 まるで二人の手も、体も、声も、心も、 一つになったみたいに。私たち、ほら、 双子のさくらんばのようだった、リ 男々に見えていても、 じつは一つのものが二つに分れているだけ、 美しい実が二つ、一つの茎になっている。 つまり体こそ二つだけれども、心は一つ、 紋章にあるでしよう、夫の紋と妻の紋を並べて、 二つの上に一つの家紋をのせる、あれと同じだった。 それなのに、その昔からの友情を引き裂いて、 男たちといっしょにあわれな友達をからかうのね。 それでも友達 ? それでも純でやさしい乙女 ? たとえ侮辱を受けたのはこの私一人でも、 あなたは私だけじゃなくすべての女から非難されるわ。 ーミアまあ驚いた、なんてことを一 = ロうの ? 私があなたをからかっているなんて、逆でしよう。 ヘレナあなたがライサンダーをけしかけたんでしよう、 私を追いかけて目や顔をほめたたえるように。 それにあなたのもう一人の恋人デイミートリアス、 あしげ ついさっきまで私を足蹴にしていたあの人に、 私のことを女神だの、森の精だの、天使だの、 宝石だのと呼ばせたのもあなたでしよう ? 嫌いな女に向って、どうしてそんなこと一言えるの ? あなたを心から愛しているライサンダーが

4. 集英社ギャラリー「世界の文学」02 -イギリス1

たわむ 私は朝の女神と戯れたこともしよっちゅうだし、 また森番よろしく暗い森を歩いているうちに、 やがて東の空が真紅に燃えはじめ、 美しい恵みの光を大海原に注いで、 暗い緑の水面を一気に金色に変えるのもよく見たものだ。 だが、それはともかく、急いでくれ。猶予はならぬ 朝日が昇らぬうちに、この仕事を片づけねば。「退場〕 あっちゃこっち、こっちゃあっち、 田 5 いのままに引を、き、わすス 泣く子も黙るバック様、 鬼さんこちら、鬼さんこちら。 ライサンダーふたたび登場 一人きたそ。 ライサンダーあいつ、 いつも先に立って、かかって来いと ライサンダーふたたび登場。 ライサンダーどこにいる、デイミートリアス ? さあ返事だが声のしたところへ行くと、やつはいない をしろ。 悪党め、おれよりよっ . ばど足が早いらしい 懸命に追うのに、やつの方がもっと早い バックここだ、悪党め、剣を抜いて待ってるんだ。おまえ とうとうこんな暗いでこばこ道に迷いこんでしまった。 こそどこだ ? ここでひと休みしよう。ああ、早く朝になればいし 夢ライサンダー いまそこへ行くぞ。 少しでも空が白みそめれば、きっと見つけてやるそ、 夜バックついてこい もっと広いところへ。 夏 デイミートリアスめ、そしてこの限みをはらしてやる。 「ライサンダー声を追って退場〕 「眠る」 デイミートリアスふたたび登場。 デイミートリアスライサンダー、返事をしろ ! 腰抜け、臆病者 ! 逃げ足の早いやつだ。 どこだ ! 藪の中にでも隠れて、ふるえてるのか ? ひきよう バック卑法者め、星を相手に空威張り、 藪に向って戦いの名乗りというわけか ? どうした、来ないのか ? 青びようたん、青二才、 むち そのケツを鞭でひつばたいてやるか。おまえなんか、 剣を抜くのももったいない、ひょうろくだまめ ! デイミートリアスよし、そこだな ? ここじゃ勝・負をつけにく、 バックおれの声についてこい 「デイミートリアス声を追って退場〕

5. 集英社ギャラリー「世界の文学」02 -イギリス1

じやけん ヘレナ なりこそ小さいけど、気性が激しいんだから。 ーミア、お願い、そんなに邪屋にしないで。 ーミアまた小さいですって ! 低いだの小さいだのって 私、いつもあなたが好きだったわ、 よノ、も あなたの秘密はいつだって守り、裏切らなかった。 この人が私を侮辱するのをどうしてほっておくの ? ただ一つ、デイミートリアスを愛するあまり、 さあ、放して、その女のところに行かせて。 あなたがこの森に逃げることを話してしまったほかは。 ライサンダー消え失せろ、このちび、寸づまり、 あの人はあなたを追い、私もあの人を慕って追った。 一寸法師、どんぐり、豆粒 , でもあの人は帰れと言って、私をおどしたの、 デイミートリアスおい、出しやばりすぎだそ、 なぐるそとか、蹴るそとか、いえ、殺すそとさえ。 ゝ、こまうんさりしてるんだ。 ヘレナはおまえのおせつ力しし。 でも、もういいの、私をそっと帰らせてくれるなら、 この人のことはかまうな、名前も口にするな。 このまま自分の愚かしさを噛みしめながらアテネに帰りま 、。ほんのちょっとでも 忠義面などするんじゃなし す、 この人に愛のそぶりを見せようものなら、ただではおかな これ以上追ったりしません。だから帰らせて。 おば 私がどんなに恋に溺れた馬鹿な女か、わかったでしよう。 ーミア帰ったらいいでしよ、さっさと。だれが引きとめライサンダーよし、この女をこうして突き放して、 ヘレナの手を得るのが さあ、行くからついてこい てるって一 = ロうの ? おまえかおれか、剣で決着をつけようじゃないカ ヘレナ私の愚かな心がよ。それをここに置いていくわ。 「ライサンダーとデイミートリアス退場〕 ーミアここって、ライサンダーに ? この騒ぎはみんなあなたのせ ーミアあなたって人は ! ヘレナいえ、デイミートリアスに。 ライサンダー 、い配はいらない、ヘレナ、この女に手出しは 夢 まあ、逃げなくてもいいでしよう。 させない の ヘレナあなたなんかもう信じるもんですか のデイミートリアスあたりまえだ。たとえおまえがこの女に 夏 そばにいて喧嘩するのはもうまっぴら。 手を貸してもな。 喧嘩にかけてはあなたの手の方が早くても、 ヘレナこの人、怒ると、すごく手が早いの。 逃げることにかけては私の足の方が早いわよ。「退場〕 学校に行ってたときから雌狐みたいに手におえなかった。 めぎつね

6. 集英社ギャラリー「世界の文学」02 -イギリス1

213 夏の夜の夢 ーミアお見事よ、ライサンダー いまのとても名文句だ ったわ。 ライサンダーが紳士の誓いを破るなんて、 私、そんなふしだらなこと言わないわ。 でも、紳士としての愛ならば、お願い、もう少し あっちへいらして。親しき仲にも礼儀あり、よ。 結婚前の立派な紳士と淑女にふさわしいと 人目にもちゃんと見えるほどの距離をあけて、 そう、そのくらい離れて。では、お休みなさい あなたの愛が一生変りませんように。 ライサンダーアーメン。その美しい祈りにばくも唱和する ばくが愛を失うときはこの命も失いますように。 ここで寝よう。安らかな眠りがきみに訪れるように。 「二人眠る〕 パック登場。 森じゅう駆けすりまわったのに、 アテネの者など見あたらない。 恋の魔力のこの花の汁、 ためす相手が見つからない。 なんて静かな夜だろう、 待てよ、こいつはアテネの服、 王様の言ってたくだんの奴、 娘をふった男だな。 娘はこっちにただひとり、 湿った地べたにおねんねか。 情知らすの薄情男、 あわれ娘はそばにも寄れぬ。 礼儀知らすの人でなし、 その目にこいつを塗ってやる。 目をさましたら、恋わずらい 二度と眠れはしないだろう。 勝手にお目々をさましやがれ、 おれは王様にご注進だ。 デイミートリアスとヘレナ、走りながら登場。 ヘレナ待って、デイミートリアス、殺されてもいいわ、お 願い デイミートリアスあっちへ行ってくれ、命令だ、つけてく るなったら。 ヘレナこんな暗いところへ置いてきばりにするつもり ? ひどいわ。 デイミートリアスこれ以上っいてくるとそれこそひどい目 「退場〕 に会うそ。おれは一人で行く。 ヘレナこのばかばかしい追いかけっこのおかげで、もう、 へとへと。 やっ 〔退場〕

7. 集英社ギャラリー「世界の文学」02 -イギリス1

209 夏の夜の夢 さあ行ってその花を摘んでこい 鯨が一マイルと泳がぬうちに帰ってくるのだぞ。 パック四十分で地球をひとめぐりできる私です。 オペロンその花の汁を手に入れたら、 テイターニアの眠っているところを狙って、 そっと目に注いでやろう。そうすれば、 めざめて最初に目に入ったものが何であれ、 くまおおかみ たとえばライオン貢 、、良、牛であろうと、 あるいはいたずら好きの山猿の類であろうと、 あれはそっこん惚れこんであとを追いかけまわす。 このまじないを解くには別の花を使えばいいのだが、 あれがあの小姓をおれに譲りわたすまでは、 この恋のまじない、解くわけにはいかぬそ。 おや、だれか来るな。どうせおれの姿は人間には見えない ここで話を立ち聞きしてやろう。 デイミートリアス、そのあとを追ってヘレナ登場。 デイミートリアスきみなんか好きじゃないんだ。ついてこ ないでくれったら。 ミアはどこに、る ? ライサンダーと美しいハ 片方はおれが殺してやる、もう片方にはおれが殺されてい るんだ。 この森に逃げこんだって、きみは言ったじゃないカ 「退場〕 、いかけてはきたものの、木ばっかりで気が気じゃない ミアはどこなのだ ? ミア、いとし、、 ええい、あっちへ行ってくれ、もうついてくるな。 ひ じやけん ヘレナ邪慳な磁石、あなたが私を惹きつけるのよ。 でもあなたが惹きつけるのはただの鉄じゃない はがね 鋼鉄のように忠実な私の心なのよ。あなたの磁力さえ なくなれば、私の追いかける力もなくなるわ。 いっきみ デイミートリアスおれがいっきみを誘惑した ? を こん、なにはっキ、り 美しいと一一 = ロった ? とんでもない 言ってるじゃないか、愛してない、愛せないって。 ヘレナそう一言われるとなおさら好きになるの。 私はあなたの犬よ、デイミートリアス、ぶたれれば ぶたれるほど甘えたくなるあなたのスパニエルなの。 だからどうぞスパニエルみたいに蹴とばして、ぶって。 、、、ほったらかしにき、れても 無視されてもし ただあなたのあとを追うことだけは許して。 取り柄のない私の、それだけがたった一つのお願い あなたの犬にしてほしいなんて、なんと卑しいことを。 力な でも、あなたが願いを叶えてさえくだされば、 その卑しさも私には高貴な喜びに変るんです。 デイミートリアスあんまりおれの贈しみをかきたてないほ きみを見てるだけで気分が悪くなってくるんだから。

8. 集英社ギャラリー「世界の文学」02 -イギリス1

227 夏の夜の夢 どうしてあなたを袖にして、私を口説くの ? もしあなたが承諾し、けしかけているのでなければ。 私はあなたのように男にちやほやもされない 、しあわせでもないわ、 言い寄られもしない 愛するだけで愛されないみじめな女よ。 けいべっ でもそれなら軽蔑よりも同情してくれていいはすじゃなく って ? ーミア何のこと言ってるの、さつばりわからないわ。 ヘレナ しいわ、いつまでもそうやって白ばっくれていなさ 私が背を向けたとたんに、そのまじめな顔が舌を出し、 目くばせして、たんと面白がるのでしようよ。 上手におやりになれば、このお芝居、きっと演劇史に残る あなたに思いやりや礼儀の心があったら、 私をこんな笑いものにはしなかったでしように。 でも、いいわ、さようなら、こうなったのも半分は私のせい 私が死ぬかいなくなればけりがつくことですもの。 ライサンダー行かないでくれ、ヘレナ、ばくの言い分も聞 いてくれ。 ばくの恋人、 ばくの命、ばくの魂、美しいへレナ , ヘレナまあ、お上手 ! ーミアライサンダー この人をからかわないで ! デイミートリアス ーミアの頼みが通じなければ、ばくが そで 腕ずくで黙らせるぞ。 ライサンダー ーミアが頼もうときみが暴力をふるおうと、 だめさ。 涙声の頼みも脅し文句もばくには通じないのだ。 ヘレナ、ばくはきみを愛する、命にかけて。 きみのためなら惜しくないこの命にかけて誓う、 ばくのきみへの愛を否定するやつは打ちこらしてやる デイミートリアスへレナ、ばくの愛のほうがやつのよりは るかに深いんだ たた ライサンダーそ , ついうロを叩くなら、よしこい、あっちで 正明してもらお , つ。 デイミートリアス 、とも、 ~ 打こ , つ。 ーミアライサンダー いったいどうなるの ? ライサンダー手を放せ、黒んば女 , ーミアいやいや、行かないで。 デイミートリアスふりはらう冾好だけさ。 ついてくるふりはするが、くるものか、腰抜けめ ! ライサンダーあっちへ行け、猫 ! くつつくな、栗のい さもないとふっとばすそ、蛇みたいに。 ーミアなんて乱暴な。どうしたというの、いとしい人 ? ライサンダーい としい人だと ? 失せるがいい、黒んばの だったん 韃靼女め , 見たくもない , 消えろ、大嫌いな薬 ! 胸糞悪い むなくそ

9. 集英社ギャラリー「世界の文学」02 -イギリス1

〔横になり眠る〕 一度だけ本当のことを言って、私のためにー 起きているあの人に、あなた、堂々と立ち向うことができオペロンなんてことをしでかしたんだ ? あわて者め。 て ? まことの恋人の目に忽れ薬を塗りおったな。 おまえのヘマのおかげで、不実の男の心が変るかわりに、 できないから眠っているところを殺したのでしよう ? まむし ご立派ね ! 蛇や蝮にだって、そのくらいできるわ。 まことの男が心変りして不実になってしまったぞ。 そうよ、蝮の仕事よ。あなたは恐ろしい二枚舌の蝮、 バックまことの男一人につき、誓いを乱発する不実男は百 あなたにくらべればどんな蛇の毒だって顔負けだわ。 万人、 おばめ デイミートリアスその怒りはまったくの誤解だ。 それがつまり運命の女神の思し召しってことなんでしよう。 ばくはライサンダーの血を流したことなんかない オペロンさあ森の中を駆けめぐれ、風より早く、 あの男は死んでなんかいないさ、ばくの知るかぎり。 そしてヘレナというアテネの娘を見つけてこい あおじろ ーミアじゃあお願い、あの人は無事だと言って。 恋の病いにとりつかれた蒼白い顔をして、 ためいき デイミートリアスそう言ってあげたら、どんな褒美がもら 若ゃいだ血潮をすりへらす溜息をついているはすだ。 える ? なにか幻でも見せてここへ誘ってくるのだ。 それまでに、おれがこの男の目にまじないをかけておくか ーミア二度と私の顔を見ないという特権をあげるわ。 ら。 じゃあこれで憎らしいあなたとはお別れするわ、 あの人が生きていようといまいと、もうこれつきりよ バックはい、では ( 打ってきます、ひとつばしり、 〔退場〕 韃靼人の放っ矢よりも早い、このおれさまの飛びつぶり。 〔退場〕 デイミートリアスあんなにご機嫌ななめでは追いかけても 仕方ない オペロン「デイミートリアスの目に花の汁を塗りながら〕 ここでしばらくひと休みするとしよう。 恋の弓矢に射抜かれた の 夜悲しみのために破産した眠りの借金がつのると、 紫色の花の汁、 ひとみ 夏 その借金の分だけいっそう悲しみは重くのしかかってくる。 瞳の底までしみとおれ、 いまここで少しでも眠りを取り戻せれば、 開いた眼に映るのは、 悲しみの借金をちょっとは返せるだろう。 空に輝く金星も だったん

10. 集英社ギャラリー「世界の文学」02 -イギリス1

シェイクスピア 210 弱い者がいくら強い者を追いかけても。 ヘレナ私はあなたを見ていないと気分が悪くなってくるの。 デイミートリアスきみの話を聞いてるひまなんかない。行 デイミートリアスそもそも乙女の慎みに反するんじゃない それでもついてくるんなら、知らないそ、 町を抜け出して、きみを愛してもいない男の手に 森の中でひどい目に会わしてやるからな。 わが身をゆだねるなんて。しかもこんな夜、 しいえ、あなたときたら、寺院でも町でも野原でも、 何が起こるかわかりはしない、それにこんな人気のない場へレナ どこででも私をひどい目に会わせてきたじゃないの , ひどい あなたの仕打ちは女性全体に対する侮辱よ、 どんな邪な心が起きるかわかりはしな、 男とちがって、女は恋のために戦うことはできません。 なのにきみは大事な処女の宝をまかせていいと一一一一口うのか ? 口説くのではなく、口説かれるようにできているんですも ヘレナあなたの人柄がその点は保証してくれるわ。 の。 〔デイミートリアス退場〕 あなたの顔が見えているときは夜じゃな、 私、ついて行くわ。愛する人の手にかかって死ねば、 だから今は夜じゃないの、私には。 うそ 地獄はそのまま天国になる。そうならなければ嘘よ。 それにこの森は人気がないなんて嘘、 〔退場〕 だって、私にはあなたが全世界なんですもの。 オペロンしあわせにな、あわれな娘。おまえたちがこの森 全世界がいま私を見つめてくれているのに、 こ、る日司こ、 どうして私が一人ばっちだなんて言えて ? 男がおまえを口説き、おまえが男から逃げるようにしてや デイミートリアスも , つけっこう、おれは藪に逃げこむそ、 えさ るそ。 きみは野獣の餌にでも何にでもなるがいし ヘレナどんな野獣だって、あなたよりやさしい心をもって パックふたたび登場。 るわ。 帰ってきたな、さすらいの妖精。花はもってきたか ? 逃げるならご勝手に。昔のお話はこれではアベコペね。 ヾッ - ク十、、 このとおり。 アポロが逃げて、ダフネが追いかける。 オペロンどれ、見せてみろ。 小鳩が怪鳥グリフィンのあとを追い とら めじか さてと、川べりに沿って、麝香草が咲き乱れ、 雌鹿が虎をつかまえようと走る。でも無駄よね、 じゃ - 一う