第一場ヴェローナ。修道士ロレンス の僧房。 修道士ロレンスとパリス、登場。 ロレンス木曜日ですと ? それはまた急な話ですな。 しゅうと ハリス舅のキャピュレット殿がそうしたいと言っておら れるものですから。 それに、せつかくお急ぎのようですから、遅くしたいとも 思いません。 ロレンスまだジューリエットの本心は聞いていないと一一一一口わ 工 れたが、 こういったやり方は全く異例のこと。どうも気に入りませ ュ ジ んな。 ひと オ ハリスティバルトの死を悲しんでひどくあの女が泣いてい ロ たので、 まだ恋の語らいをする暇もなかったのです、 ヴィーナス 恋の女神は涙つばい家にはそっぱを向くと、 第四幕 しいますから。 そんなわけで、あの人の父君が、こんなに悲嘆にかきくれ てしまっては、 娘の身が危いと判断され、親の分別とでもいいましようか、 あふ れに溢れるジューリエットの涙をせきとめようと、 私たち二人の結婚の式を急いで挙げようとされたわけです。 溢れる涙も、独りでいるとますますつのるばかりでしよう だれかといっしょになればそれもとどめられようと、お考 えのようです。 こんなに急ぐ理由も、それでお分かりいただけたかと思い ます。 ロレンス「独白〕困ったことには、遅らせなければならぬ 理由がこっちにはあるのだ。 ジューリエットが僧房にやってきます。 ほら、 ) こ見なき、い ノュ丿ェット登場 ハリス自分の妻に会えてこんな嬉しいことはありません。 ジューリエット私があなたの妻になれたときにはそうお呼 びくだき、い士し。 ハリス「なれたときには」でなく、この木曜日にはなられ るはすではありませんか ジューリエットとおっしやるのは、そうならざるをえない、 とい、つことで。こぎ、いましょ , つか ロレンスいや、それは実に名一一 = ロ。
ノ、だ六、るよ , つ、 どういう不幸が私と仲良しになりたいと、 ロミオ様に会って頼んでみますから。どこにおいでか、あ 言っているのでしようか、私のまだ知らぬどういう不幸 ア たしは知っております。 。ヒ スお嬢様 ! ようござんすか、今晩ここにロミオ様がお見え ロレンスお前様は不幸といわば腐れ縁を結んだというわけ ク イ になりますからね。 工 シ さ、あたしはこれから行ってきます、ロレンス神父様の僧 ところで、領主殿の宣告を知らせてあげよう。 房に潜んでおられますので。 ロミオ宣告が死刑より軽いとは考えられませんが そして、ロレンス ジューリエットぜひあの人に会ってちょうだい , しいや、それより寛大な判決が下されたのだ。 この指輪をあの騎士に、恋しい人に つまり、お前様の身柄を殺すかわりに追放せよ、との仰せ であった。 そして、最後のお別れにぜひ来てくださるよう伝えておく ど、つカ れ。 「両者、退場〕 ロミオなに ? 追放と ! なんという残酷な , 「死刑」と一一一一口って / 、だき、い りつぜん 流刑の身には慄然とするような恐ろしさがっきまとってい 第三場同じ所。修道士ロレンスの僧房。 ます、 死よりももっと恐ろしいのです。どうか、「追放」などと 修道士ロレンス登場。 は言わないでください ロレンスロミオ、こちらに出て来なさるがよい。そう人目 ロレンスお前様はヴェローナから追放の身となったのだ。 を怖れなくてもよい、今は。 世界は広いのだ、歯を食いしばって辛抱しなさるがよい 苦難がお前様の人物に惚れこんでしまい、不幸と無理矢理ロミオヴェローナの城壁から外に私の世界はありません。 れんごく に結婚させてしまったとい , っことかもしれぬ。 あるものは煉獄です、拷問です、いや地獄そのものです。 まち この市から追放されることは、世界から追放されることで ロミオ登場。 す。 ロミオ何か知らせでも、神父様 ? 領主殿の宣告はどうだ 世界から追われ流浪の旅に出ることは死出の旅です。です ったのでしようか から「・追放」とは、
中にはあなた様のお気に入りで、私の主人が入っておりま す。 ロレンス主人と言われると ? ア 。ヒ ルササー ロミオ様で、こイ、います ス ク ロレンス中に入ってから時間はどれくらいたっている ? イ ルササー たつぶり半時間 シ ロレンスわたしといっしょに墓の中に入ろう。 バルササー しいえ、それ ができませんので。 主人は私がここから立ち去ったものとばかり思っておりま す。 せんさく 俺のやることを詮索しようとしてここに残っていたら、 お前を殺してやる、という恐ろしい剣幕でございました。 ロレンスそれじゃ、ここに残っているがよい。わたし一人 で行く。 心配なことだ。何か悪いことが、不吉なことが起こりそう な気がしてならぬ。 ヾルササーさっきこの櫟の木の下で横になって眠っていま したとき、 主人がほかの人と剣を抜いて渡り合い しまいには、主人がその人を殺した夢を見たような気がし ます。 ロレンスロミオ ! ロミオ , 〔納骨堂のほうに行く〕 おお、この血は , この墓所の石の入口を したた 点々と滴っているこの血はどうしたのだ ? この平安の場所に不気味な色を放ち、 ちのり 血糊にまみれて横たわる主なき二本の剣、これはどうした のだ ? 「ロレンス、納骨堂の内へ入る〕 しや、ほかにもだ おお、ロミオ ! その蒼白い顔は , れかいる、 ハリス殿まで ? いたずら しかも、血に染まって ? ああ、何という時の悪戯だ、 こういう痛ましい事件を一時にしでかすとは , あ、ジューリエットが動いた 丿ェット、眼をさます〕 ジューリエットおお、神父様、やはりおいででございまし おっと で、私の良人はどこに ? 私がどこに運ばれることになっ ていたのか覚えております。 ここはその場所でございましよう。でも、私のロミオはど 〔奥のほうで騒ぎたてる人声がする」 ロレンスあ、人の声がする。 さ、急いでここから出て くだき、い しようれい そ・つくっ ここは、死と瘴癘といかがわしい眠りの巣窟。 人間の逆らうことのできない或る大きな力が、 われわれの企てを台なしにしてしまった。さ、急いで、こ こから出て下さい ご主人はお前様の胸に抱かれてそこに死んでおられる。 ハリス殿も。さあ、急いで。あなたのことは何とか あおじろ
シェイクスヒ。ア 78 ロレンスお前様の今の立場について、少々話し合いたいの ぎんげ あなたは聖職者のくせに、懺悔を聞く司祭のくせに、罪の ゆるしつかさど 赦免を司る教職者のくせに、 ロミオ自分でじかに感じていないことを衄ることはおでき いや、私の血盟の友のくせに、。 と「つして「・耜一放」とい , つ一一 = ロ にはなります・まい 葉をつかって、 もし神父様が、私のように若く、ジューリエットのような この私を無残にも切りさいなむようなことが平気でできる 女を恋人にもち、 のですか , 結婚して一時間しかたっていない、ティバルトは殺した、 ロレンス愚にもっかぬことばかり一一一一口わないで、わたしの言 いや、私のように心から女に惣れこみ、私のように追放の , っことも歩一しは聞くがよし 刑を受けている、 ロミオまた追放のことを言おうとなさるおつもりですか もし神父様がこんなだったら、話もおできになろう、髪の よろい ロレンスいや、その一一 = ロ葉から身を守る鎧をお前様にあげた 毛をむしることもおできになろう、 いのだ。 そして、ちょうどこんなふうに、やがて自分のために掘ら たとえ追放の身であっても、心を安らかに保てるように、 れる墓の穴の長さを、 逆境における甘い乳ともいわれる悟りを説いてきかせたい 体の身長ではかりでもするかのように、地面に倒れて泣き のだ。 〔内側にて一尸を叩く音〕 伏すこともおできになろう。 ロミオまた「追放」とおっしやるのですか ? 吾りなどは ロレンスだれか戸を叩い ている。さ、ロミオ、立ち上がっ 真平です ! て、身を隠すのだ。 まち ロ、、、オ 吾りがジューリエットを生み出し、市を移し、 え、できません。この悲しみの余り吐く息が、 領主殿の宣告を取り消すことができぬ限り、 霧となって私を人の眼から隠してくれれば別ですが そんなものは役に立ちません、何の力も持ちはしません。 ロレンスあ、まだ叩いている , だれですかな ? もう何も聞きたくない ! さ、ロミオ、立ちなさい ロレンス狂人には耳がないようだな。 捕えられると困るーー・・ちょっとお待ちを ! といったら。 ロミオ賢い人間に目がない以上、狂人に耳があるはずはあ 立ちなさい、 りません。 わたしの書斎へ走って行くのだ、 き、、ロミオ 〔〔しきりに戸を叩く音」 ただいま すぐ、只今、
111 ロミオとジューリエット と、も、 家の中に閉じこめられ、戸外に出ることを禁じられてしま いました。 そんなわけで、マンテュアへ急いで行くこともできなくな ったというわけです。 ロレンスでは、だれがわたしの手紙をロミオに持っていっ ジョン送り届けることもできなかったのです : : : 手紙も実 はここにあるというわけで : それにまた、あなたに送り返そうにも使いの者が見つから なかったのです、 おそ 何しろみんなひどく悪疫に感染するのを布れていたもんで。 いたずら ロレンス何という運命の悪戯だ ! 神に誓ってもいしカ その手紙はどうでもよい手紙ではなく、重大な用件が書き しるされていたもの、 もしいい加減なことをすると、ひどく危険な事が起こるか もしれぬのだ。 ジョン神父、大急ぎでここを立ち去り、すまないが、 かなてこ 鉄梃を探し出し、わたしの僧房まですぐに持ってきてはく れまいか ジョン承知しました、すぐ持ってきます。 〔修道士ジョン退場〕 ロレンスわたしはすぐに一人で納骨堂に行かねばならぬ。 あと三時間たっとジューリエットが眼を覚ますはず。 いきさっ ロミオが今までの経緯を少しも知らされてはいなかったと、 うら ひと もしあの女が知れば、さぞわたしを怨むことだろう。 とにかくもう一度マンテュアへ手紙を出すことにし、 ロミオが帰ってくるまであの女をわたしの僧房にかくまっ ておノ、ことにしょ , つ。 むくろ かわいそうなのは、生きた骸となって死人の墓場に閉じこ 「修道士ロレンス退場〕 められているあのお方だ ! 第三場同じ所。墓地。その一角に キャピュレット家代々の納骨堂。 パリスと、花と炬火を持った小姓、登場。 ハリスおい、その炬火をくれ、そして、お前はずっと向こ うに離れていてくれ。 いや、やはり炬火は消してくれ、だれにも見られたくない からな。 あそこの櫟の下で横になって、このうつろな土地の面に、 お前の耳をしつかりとくつつけておいてくれ。 この墓地は、さんざん墓穴を掘ったため、地盤がゆるみ、 もろ 脆くなっており、 だれかがその上を歩いてくれば、すぐにお前の耳に響くは ずだ。 だれかこっちにやってくる足音が聞こえたなら、 たいまっ ひと
かたき 自分に傷を負わせた仇を私は少しも憎んではおりません。 その手足を床の上で横たえるや否や、黄金の眠りが訪れる なぜならそのことは、神父様、 はず。 この私のお願いが同時に仇のためでもあるからに他ならな だから、こんなに朝早くから起きたのは、きっとお前様が たた もんもん いからです。 何か悶々の清に叩き起こされたせいだとしか思えぬ。 やっ もっと端的にお前様 ロレンスはっきり一言ってもらいたい、 それとも、こう言おうか、ロミオの奴、昨晩は床につかな の考えを述べてもらいたい、 かったのだ、と、 謎めいた告白に対しては謎めいた赦ししか与えることはで どうだな、そのものずばり的中したはずだが。 きん。 ロミオそのとおりです。徹夜したのです。ですからいっそ ロミオでははっきり申します。私が心から恋している相手 う休息がとれたのです。 は、心に決めた相手は、あの財産家のキャピュレットの ロレンス何とい , っ罪深いことを ! ロザラインと一夜を丑ハ 美しい娘なのです。 にしなすったのか ? え、ちがいます、 私の心がそう決まったのと同じく、あの娘も私を恋人と心 ロミオロザラインといっしょに ? に決めたのです。 神父様。 心と、いはこのように結ばれましたが、残るのはただ神父様 あの女の名前も、またその名前につきまとう苦しみも、私 はもう忘れました。 つかさど 聖なる結婚の式を司り二人を一つにしてくださることだ ロレンスそれは殊勝なこと。だとすると、お前様は昨晩ど けです。 にいなすったな ? いつ、どこで、どんなふうに、二人が逢い、愛を囁き、誓 ェロミオ問いつめられないうちに、何もかも申し上げます。 かたき いムロったかとい , っことは、 一わが家とは仇敵の関係にある家の宴会に私が出ておりまし ュ と , っして・も、 歩きながらお話しいたします。ただ、。 たところ、 オ 今日中に二人を結婚させてやるというご承諾を得たいので 突然ある女が私に深い傷を負わせました。 ロ す。 私もその女に同じように傷を負わせました。二人の傷は、 これはまた何という 神父様の助力と聖なる癒しの手がさしのべられるのを待っロレンスああ、聖フランチェスコ , 変わりよう , ております。 ひと ひと なぞ ゆる あ 一、や
まあ、もう頬に赤い色気がっきましたね、 ロミオアーメン ! しかし、どんな悲しみがこよ , っとも、 ひと ほんとに仕様のないお嬢様だこと、何を聞いてもすぐ赤く 一目でもあの女と逢い、互いにかわす愛の喜びには ア なるんですものねえ。 その悲しみは到底かなうことはなかろうと思います。 。ヒ ス さ、急いで教会へいらっして。あたしは別なほうへちょっ 神父様、どうか聖なる御一言葉をもって私たち二人の手を結 ク イ と行ってきます、 び合わせてください 工 シお前様の恋しい方が、今晩暗くなり次第鳥の塒に登ってゆ そのあと、愛を食い殺す死がどのような非道なことをしま くのに必要な しても、 大切な縄梯子をもらいにゆくためなんですよ。 私があの女を自分の妻と呼ぶことさえできればもうそれで あたしは縁の下のカ持、お前様の仕合せのためなら喜んで 満足なのです。 苦労をいたしますです。 ロレンス激しい喜びは激しい終りを迎えるもの、 ですけれど、夜ともなれば、はやばやとお前様も重い荷物ちょうど火と火薬が互いに触れ合うや否や爆発するように、 ) なか みつ で苦労なさいましようよ。 勝ち誇ったその最中に死滅してゆくのだ。余りに甘い蜜は、 さ、いらっして。あたしは食事をしてきます。さ、急いで その甘さのゆえにかえって厭わしく、 僧房へ。 満喫すればかえって食欲を破壊するにいたる。 ジューリエットええ、私も幸運を求めて急いで出かけまし だから、恋はほどほどにするものだ、そのような恋こそ長 ばあや よ、つ 乳母・、さよ , つなら。 〔両者、退場〕 続きする。 ましやく 急ぎすぎるのは、遅すぎるのと同様、間尺には合わぬ。 第六場同じ所。修道士ロレンスの僧房。 ジューリエット癶兄場 いよいよお前様の恋人のご入来だ。あんな軽やかな足どり 修道士ロレンスとロミオ、登場。 なら、 ロレンスこの聖なる結婚の式に神の祝福のあらんことを ! ただでさえ堅い石の舗道だ、い くら踏まれても磨りへるこ くだ とはなかろう。 しかして、後日にいたり、悲しみを降してわれらを責めた まわギ、らんことをー 恋人というものは、楽しげに夏の空にゆらめく ほお ねぐら ひと
お前様があんなに恋していたロザラインをもう棄ててしま ったといわれるのか ? ア 若い人たちの恋というものは、どうやら、 。ヒ ス 真実、心の中ではなくて眼の中に宿るものと見える。 ク おびただ イ マリアの御子イエス・キリストよ ! 何と夥しい涙が 工 あおじろほおめ シお前様の蒼白い頬を濡らしたことか、それも口ザラインに 恋い焦がれて ! いやが上にも己の恋に味をつけようと、夥しい塩水を、 流し続けた結果がこの有様、なんという空しさ、味気な 大空の太陽も、お前様の溜息をまだぬぐい去ってはいない、 うめ あの呻き声もまだわたしの年老いた耳に聞こえている。 しみ ほら、お前様の頬の上に、古い涙の汚点が、 まだぬぐわれもせす残っている。もしお前様がお前様であ あの悲しみが真実お前様の悲しみであったのなら、 それらはすべて口ザラインのためのものであった。 ことわぎ お前様は別な人間になられたのか ? とすれば、あの諺 を、いに銘記なさるがよい、 男に不動の心なきとき、女の心変わりするは当然至極、と いうあの諺をな。 ロミオロザラインを恋したのをしばしば叱責されたのは神 父様でした。 ロレンス溺れてはならぬとは言ったが、恋するなとは言わ おば しっせき よ、か - っこ。 ロミオ恋を葬ってしまえともお命じになりました。 ロレンス ほかの女 を掘り起こすために、今の女を墓場に葬れ、とは言わな 、刀子 / ロミオ神父様、どうそ叱らないでください こんど私が愛 ー ) た , 女は、 真心には真心をもって、愛には愛をもって報いてくれる女 です。 前の女はそうしてくれませんでした。 ロレンス それというのも、お前 様が恋の機微を知らず、 ただ本の丸暗記同様いいかげんに考えていたのを、その人 が知っていたからだ。 が、まあ、よかろ , つ、わたしといっしょに来なさるがよい それにしても浮気なお人だ。 ある考えを思いついたので、お前様に力を貸そう。 この縁組がうまく成功すると、お前様たち両家相互の憎し みを 心暖まる和解に変えてしまうことができるかもしれぬ。 ロミオさ、参りましよう。私は居ても立ってもおられない のです。 ロレンス賢明にゆっくりと事を運ぶことだな、急いだら仕 「両者退場」 損じる。
シェイクスヒ。ア 110 だから、貧乏に安んじないで法を破るがよい、さ、この金 第二場ヴェローナ。修道士ロレンス 薬種屋考えは違いますが、貧乏にせきたてられて、お望み の僧房。 どおりにいたしュましよ、つ。 ロミオこちらも、お前さんの考えにではなく、貧乏に対し 修道士ジョン登場。 て金を払うつもりだ。 薬種屋何でもお好きな飲物にこの薬を入れ、 ジョンだれかおられませんか ? フランチェスコ修道会の 全部飲みほしてください。そうしますと、 お方は ? だいりきむそう 大カ無双な御仁であっても、 修道士ロレンス登場。 即座に効果が現われて、お命はなくなりましよう。 ロミオさ、金貨だ。こいつは、売買を禁じられている ロレンスたしかその声はジョン神父の声だと思うが : お前さんのけちな薬なんかよりは、人間の魂にとってはも ああ、やはり。マンテュアから今もどられたのか。で、ロ っと危険な毒薬なんだ、 ミオは何と言っていた ? この濁りきった世間でこのためどれだけ多くの人が殺され いや、もし書面に書いてあるのなら、早速それをわたしに たか分からないんだ。 見せていただこう。 はだし だから、毒薬を売っているのはわたしのほうで、お前さんジョンそれが実は、 、つしょに行くはすの裸足の兄弟が、 のほうではない。 つまり、 まち では、ご機嫌よう。食物を買って、もっとふとるがよ わが修道会の神父の一人がこの市で病人を見舞っていると し , っことで、 おい、毒薬、いや、気つけ薬 ! 俺といっしょに、 ほうばう探しまわったあげく、やっと見つけ出しはしたも のの、 ジューリエットの墓場まできてくれ、そこで、お前に用事 があるんだ。 「ロミオと薬種屋、退場」 折あしく町の疫病係の役人にぶつつかり、 この役人がどうしたことか、悪疫に冒されていたある家に われわれ二人がいたと言いはる始末、とどのつまり、二人 いかにあなたが
おお、ジューリエット ! ロご、オ ジューリエット 使いを一よこしオ ( しょ , つか ロ、、、オ 九時に ジューリエットでは間違いなく九時に。でも、十年も二十 年も先のことのような気がします。 おや、どうしてあなたを呼び戻したのか、そのわけを忘れ てしまいました。 ロミオそれでは、思い出されるまで私はここに立って待っ ており・ ( しょ , つ。 ジューリエットそこにそうやって立っておられたら、わけ を思い出すどころか、 ただごいっしょにいたいと思 , っ心が募るばかりでごさいま ー ) よ , っ ロミオわけをいつまでも忘れていてくださるよう、私はこ こに立っていたい、 ここだけを自分の家と思い、他は一切忘れて。 エジューリエットもうすぐ夜が明けます。どうか帰ってくだ さいまし。 あしかせ ュ ジでも、 いたすらずきな女の子が、足枷をはめられた囚人み オ かわい ロ可愛がっている小鳥を、手からちょっと離しては、 4 ・ その飛んでゆくのが可愛いやら、うとましいやらで、 絹の糸をぐいと引いては手もとに手繰りよせる、 明日は何時に あれと同じように私もあなたを遠くへやりたくはございま せん。 ロミオできれば私はその小鳥になりたい。 ジューリエット 私もあなたに小鳥 になってほしいのです。 ですが、そうなれば、私は可愛がりすぎて殺すかもしれま せん。 ロミオ、別れがこんなに甘く悲しいものと お休みなさい、 ↓よ 私は知りませんでした。ほんとに夜明けまでさようならを 〔〔ジューリエット退場〕 言い続けたいくらい ロミオあなたの眼に眠りが、そして胸には平和が宿ります 、よ , つに いや、私自身がその眠りと平和ともなってあなたの眼と胸 とに宿りたいー さて、これからあの神父様の僧房に行って、 助言を乞うとともに今夜の喜びの一部始終を報告しよう。 〔ロミオ退場〕 第三場同じ所。修道士ロレンスの僧房。 修道士ロレンス、籠を提げて登場 ロレンス苦々しげな顔をしていた夜に向かって、灰色の眼 かご