で私から受けとった。武器を手にするや否や、まるで新しい りかかったからである。弱っていたが勇敢無比なスペイン人 活力でも注入されたかのように、彼は鬼神のごとく猛然と相 は応戦してこの土人としばらく戦っていたが、やがて相手の 手の食人種の群れに飛びかかってゆき、一瞬のうちに二人ま頭に二箇所も大きな痛手を負わせた。しかし、この蛮人はさ でたたき切ってしまった。それというのも、すべては彼らにすがに頑丈で元気がよく、格闘の末、体の衰えたスペイン人 とってまったくの不意打ちであったからだった。彼らはただを投げたおし、その手から剣をもぎとろうとした。下になっ もうわれわれの鉄砲の音に慌てふためくばかりで、恐ろしさ たスペイン人はとっさの機転で剣を捨て、腰の拳銃を引きぬ すく に竦みあがって腰を抜かし、逃げようにも力が抜けてしまっ いて相手の男のからだに弾丸をぶちこみ、即座に殺してしま たま て、弾丸に当った彼らのからだ同様、まったく処置なしとい った。助けに私が駆けつけた時にはもう片がついていた。 う有様だった。フライディが、舟に乗っているのを撃った五 独断専行を許されていたフライディは、手にもった手斧を 人の場合もそうだった。三人はその受けた傷がもとで斃れた 武器として、逃げまよう敵を追跡していた。前にしたネ が、あとの二人は恐怖のために斃れたのだった。 の射撃で傷ついて倒れた三人をます彼はこの手斧で片づけ、 私は自分の拳銃と剣をスペイン人にやってしまったので、 つぎつぎに追いついた相手も同じく片づけた。スペイン人も いつでも射撃できるようにと、まだ発砲していないほうの銃私から鳥撃ち銃一挺を受けとり、蛮人二人を追っかけて、そ を抱えたままでいた。私はフライディを呼んで、われわれがの二人とも傷つけたが、何しろ走れないので逃がしてしまっ 最初に発砲した、さっきの木のところに走ってゆき、発砲ずた。二人は森のなかへ逃げこんだ。こんどはフライディが追 みのままそこに放りだされている銃を持ってくるように命じ跡し、一人を殺したが、他の一人はさすがの彼もかなわない 彼は矢のように飛んでいって持ってきた。あらためて彼くらい足が速く、手負いのまま海中に飛びこんで丸木舟に残 に自分の持っていたマスケット銃をわたし、そこに坐ってほ っていた二人の男のところへ必死になって泳いでいった。そ ク かの銃ぜんぶに弾丸をつめにかかった。必要な時に取りにこ こでこの丸木舟のなかの三人と、生死不明のもう一人の負傷 ン 、と二人にはいっておいた。こうやって弾丸をこめている者とが、二十一人のなかでわれわれの手を逃れたぜんぶであ ン あいだに、 一方ではスペイン人と一人の蛮人のあいだに 一大った。残りの内訳は次のとおりである。 ロ 格闘が始まった。妨害できたからよかったものの、そうでな 三人木のところからの最初の射撃で死んだもの。 かったらスペイン人も危うく殺されるところであった。とい 二人次の射撃で死んだもの。 うのは蛮人特有の例の大きな木刀を振りかざして、蛮人が斬 二人丸木舟のなかでフライディに殺されたもの。 たお
973 ロビンソン・クルーソー カトラス れるのが落ちであったろうと思うのだ。 りのいう短剣を振りあげて捕虜の一人を打とうとした。いっ たお 上陸してきたのをみると、連中は、少なくともその大部分その哀れな男が斃れるかと思うと、私は生きた心地もなく、 は、イギリス人であることがわかった。一人二人はオランダ全身の血が凍るような気がした。 スペイン人と、彼といっしょに出かけた蛮人がここにいて 人らしかったが、その点は明らかではなかった。ぜんぶで十一 くれたらと、今さらのように思った。いや、隠れたまま彼ら 人、そのうち三人は武装していなかった。いやそれどころか、 どうも縛られているようすだった。最初に四、五人の男が岸が射程内にはいるところまでゆける道はないものか、と思っ た。もし近づけたら、火器をもっていないらしい彼らからあ に飛びあがってくると、さっそくボートから三人の男を囚人 として引きずりだした。その三人のうちの一人は哀願したりの三人を助けだせるかもしれなかった。しかし、ある別な考 さた 嘆いたり絶望したりしているふうで、はとんど正気の沙汰とえが急に私の頭に浮かんだ。 横着な水夫たちは、その三人にじつにひどい仕打ちを加え も思えないほど激しい身ぶりを示しているのが見られた。あ との二人はときどき手をあげるのが見受けられ、さすが不安ていたが、やがて島のようすが見たくなったのか、ばらばら は隠せないようすではあったが、最初の男ほどではなかった。に分れてどこかへ駆けていくのが見られた。さっきの三人も めんく この光景にはさすが私も面喰らって、どう考えてよいのかゆこうと思えばどこにでも自由にゆけるらしいのだが、三人 いかにも絶望 わからなかった。フライディは知っているかぎりの英語を使とも地面にもの悲しそうにうすくまったまま、 イギリスしきったようすだった。 って私にいいかけた。「旦那さま、ご覧ください、 そのようすを見ていると、私が初めてこの島に漂着して、 人も蛮人と同じに捕虜を食べる」私はいった。「なんだっ ばうぜん て ? フライディ。お前はあの連中が捕虜を食べるとはんとあたりを呆然と見わたしていた時のことを思いださざるをえ なかった。あの時は万事休す、と私もすっかり自暴自棄にな うに思っているのか」「はい きっと食べます」「フライディ、 っていたものだった。狂わんばかりにあたりを見わたしたも そうじゃないんだ、連中はあの男たちをかわいそうに殺すか のだった。。 とのくらい心配し、猛獣に食われるのを怖れてひ もしれないが、食べるなんてことはぜったいにないんだ」 こうしているあいだも、 いったい事の成行きがどうなってと晩じゅう樹の上に寝たことだったろうか いるのかまったく見当がっかなかった。ただ、三人の捕虜が嵐と潮流の関係で本船が奇しくも海岸近くまで押し流され、 今にも殺されはしないかと、息づまるような有様に身を慄わその結果食糧も得られ、ずっと今まで命を永らえてくること せて立っていた。いやじじつ、一度は悪い奴の一人が、船乗ができたものだったが、あの晩はそんなことはとうてい考え ふる おそ
944 りたくさんあった。あいつら一人、二人、三人と私をつかま向う側にしばしばやってきては人肉を食っていた連中の一人 える。私いなかったあっちのところでは、私の人たちあいつだったということだった。ただ、こんどは食べられるために らを負かす。私の人たち、一人、二人、何千人っかまえる」連れてこられたというだけの話だったのだ。こののちしばら 旦那さま。「それじゃなぜお前の味方は敵の手からお前をくして、私は勇を鼓して彼を島のあちら側、前に私が述べた フ デ取り戻さなかったのだ」 場所へ彼を連れていった。彼はすぐさまその場所を思いだし フライディ。「あいつら一人、二人、三人と私を追っかけ、 て、かって仲間がここで男二十人、女二人、子供一人を食べ 丸木舟で行かせる。私の人たちその時丸木舟一つももたな た際に一行中にいたということを告げた。英語で「二十」と いえないので、それだけの数の石を一列に並べてみせ、指さ 旦那さま。「なるほど。ところで、フライディ、お前の国して数えてみてくれというのだった。 の人たちが捕えた連中はどうするのだ。やはり敵の連中と同 私がこんなことを書いたのも、じつは次のようなことを述 じようにどこかへつれていって食べるのか」 べるためなのだ。今あげたような話を彼と交したあとで、島 フライディ。「はい、私の国の人たちも人間たくさん食べから対岸までどのくらいあるのか、丸木舟がしばしば難破す る。みんな食べてしまう」 ることはないのか、と彼にきいてみた。危険もなければ、丸 旦那さま。「どこへつれてゆくのか」 木舟が失われたこともない、と彼ま、つこ。、 , 。しオ少し冲へ出ると、 フライディ。「あの人たち考えるところ、ほかのところへある潮流と風向きがあり、朝夕は、反対の方向だが一定して つれてゆく」 いるとのことであった。 ひ 旦那さま。「ここへも来るのか」 これは潮が退いたり満ちたりする方向のことにすぎないと フライ一丁 . イ。「はい ここへ来る。ほかのところへ 思った。しかし、これがじつはあの偉大なオリノコ河の流れ 来る」 の満干によって生することを知ったのは後日のことであった。 旦那さま。「お前も仲間といっしょにここへ来たことがあわれわれの島はじつにこの河の河口というか湾内にあったの るのか」 だ。そして、西および北西に見える陸地は、オリノコ河河口 カリブ海の東に連なる小アンティル諸 フライディ。「はい、私来たことある」 ( といって彼は島のの北部にあるあのトリニダード島 ( 島の最南端にあり、コロンプスが発見 北西の側を指さした。これが彼らの来る側と思われた。 ) た ) だったのである。私はその地方のこと、住民、海、海岸 この話からわかったことは、私の従僕フライデイも、島ののこと、またどんな種族がいるかなどということなど、無数
たがいわれたように、奴らのなかに正直な者が三人か四人い食物や灯火さえ与えられるという、その厚遇ぶりに厚く感謝 ろう るという、そしてその連中は助けてやらねばならないというの意を表わしたということだった。フライディは親切にも蝦 ことです。もしポートの連中がぜんぶ、乗組員ちゅうの悪党燭 ( といっても自家製のものだが ) をやって慰めてやったの だとしたら、神がわざわざ奴らを選びだしてあなたの手に引である。それに捕虜たちは、入口のところでフライディが見 きわたそうとしているといってもいいわけでしよう。上陸し張りに立っているとばかり考えていたそうである。 ほかの捕虜たちはもっと自由な扱いを受けた。そのうちの てくる奴は一人残らずわれわれの自由になるのですそ。そい 二人は、船長が手放しで信用することはできないというので、 つらの出方ひとつで生死のほどはきまるというもんです」 ほかの二人は私の部下に こんなことをいっている時の私の声はいかにも大きく、顔両手を縛ったままにしておいたが、 りんりん 付も元気いつばいだったらしく、船長も急に勇気凜々たるよした。船長のとりなしもあったが、またわれわれと生死をと もにするという必死の誓いを彼らが立てたからでもあった。 うすを示した。われわれは活漫に仕事にかかった。ポト 船から離れるのを見た時から、もうすでに捕虜を別なところそんなわけでこの二人と、船長たち三人の立派な人たちとを においておくことを考えていたし、じじつまた、完全に安全合せると、総勢ここに七人となり、今や刻々に岸に迫りつつ ある十人の敵を迎えうつには充分であった。しかも船長のい なところに隔離もしていたのであった。 うように、その十人のうちには三人ないし四人の正直者がい ほかの者ほど安心できないと船長が感じた二人の捕虜は、 フライディと、私が救った三人のうちの一人とをつけて私のるとなれば、話はいっそう有利であった。 ほらあな 先のポートのある地点へ着くや否や、彼らは自分たちのポ い / 、ら騒、こ 洞穴に送った。そこでなら距離も申し分ないし、 ートを浜に乗りあげて、すぐに陸に飛びおり、ついでポート うがほかの者にきこえたり発見される心配もなかった。よし 」んば逃げだしたところで森のなかから外へ出る道など見つかを陸地に引きあげた。これは有難い、と私は思った。もしか ク るわけはぜったいになかった。フライディたちはこれら二人したら浜辺から少し離れた海上にポートを碇泊させ、数人の ン の捕虜を縛ったままここに閉じこめたわけであるが、同時に監視をおくのではなかろうか、と心配していたからである。 ン 食物も与え、静かにしておれば一、二日ちゅうには自由にしそうなれば、ポートをこっちのものにすることは望めないこ ・ヒ ロ てやると約束もしてきた。その代り、脱走をくわだてたら最とだった。 上陸してまず最初に彼らがしたことは、とにかく前のポー 後、容赦なく死刑にする旨もいってきたのだった。捕虜たち リこ述べたように、 トのところへ走っていったことだった。前し は甘んじて監禁を受けることを忠実に誓ったばかりでなく、 かつばっ そく
に引きずりこんだのはこの若者だったのである。 として連れもどったということ、これも話題になろう。私が それまで当分私はここで身を落着けることになった。ま いった時には、二十人くらいも島に子供がいたのもそのせい す、私はその間、結婚もした。そのために困ったとか面白くであったようである。 この島にはおよそ二十日間滞在して、必要な物資を補給し なかったとかいうこともなかった。子供も三人生まれたが、 男の子が二人、女の子が一人という具合だった。しかし、妻てやった。とくに、、 武器、火薬、弾丸、衣類、道具類を与え も死に、甥もスペインへの航海からうまく成果をあげて帰国たほか、イギリスから連れてきた二人の職人、つまり大工と してみると、甥もすすめることではあるし、私はまたもや海鍛冶工を残してやった。 一介の貿易 このほか、私は島の土地を分割してみんなに分けてやった。 外渡航熱に浮かされてしまった。そしてついに、 商として彼の船に乗りこみ、東インド諸島へ渡ることになっ島全体の所有権だけは自分のものとしてとっておいたのだが、 各自の好きな地所をそれぞれに与えたというわけだ。彼らと た。ちょうど一六九四年のことであった。 この航海で、私はあの島に残してきた私の新植民地を訪ねの取りきめをすっかり片づけ、島を離れないという約束をさ た。後継者であるスペイン人たちにも逢い、その後日談もくせたうえで、私はそこを立ち去っていった。 そこから私は。フラジルに寄航したが、そこで帆船を一艘買 わしく聞いた。残しておいた悪党たちのことも聞いた。初め は彼らは無力なスペイン人をいじめたが、のちには仲良くな いとり、何人かの人をのせて島へ送ってやった。その他必需 けんか っしょに女も七人送った。仕事の役 ったり喧嘩をしたり、 品も送ってやったが、い 、つしょになったり別れ別れになった に立ちそうと思われる女たちだったが、もしお望みとあれば りしたそうである。しまいにはさすがのス。ヘイン人も悪党た ソちにむかって暴力を用いざるをえなくなり、ついに彼らを屈男たちが妻にしてもよいと思ったからであった。例のイギリ ル服せしめたが、そのあとでは、彼らをしごく丁寧に扱ってやス人たちだが、もし島にまじめに定住するつもりならば、充 ク ったという話だった。話しだしたらそれこそ、私自身の物語分な必需品といっしょに女をイギリスから送ってやろうと私 と同じく、さまざまな驚くべき事件に色どられた多彩な物語は約束した。じじつ、この約束はのちになって実行してやっ ン になろう。とくにスペイン人たちが何度となく島に侵入してた。連中はスペイン人に頭をおさえられてからはすっかり善 ロ きたカリブ土人と戦った話など、その最たるものであろう。良で勤勉な人間になり、土地の分け前ももらうようになった。 め、つー ) 回島をどれほど彼らが改良したかということ、また仲間のうち私はまた彼らにブラジルから五頭の牝牛を送ったが、そのう の五人の者が本土襲撃を試み、十一人の男と五人の女を捕虜ちの三頭は仔牛をはらんでいた。その他、羊や豚を数頭すっ
私たちの目は愛の断食、いとしい人の姿をあきらめなけれ ばいけないのね。 「退場〕 ーミア。ヘレナ、さような ライサンダーきっとだとも、 ら。 デイミートリアスがきみの愛にこたえてくれるように祈っ 〔退場〕 ているよ。 ヘレナどうしてこんなにも違うのかしら、人の幸せって , アテネのだれにきいたって、私の美しさが あの人にひけをとらないって言ってくれるわ。 でも、そんなこと何にもならない、デイミートリアスがそ う思ってくれないんですもの。 みんなが知ってることをあの人だけが知ってくれない あんなにハ ーミアの目に産れるなんて、あの人、まちがっ てるわ、 でも、あの人の人柄に憧れる私だって同じこと。 ぶかっこう どんなに卑しくて不恰好なものだって、 恋は美しい気高いものに変えてしまう。 恋というものは、目じゃなくて心でものを見る。 だからこそ翼を生やした恋の神キューピッドはいつも盲に 夢 描かれているんだわ。 の 夜恋の、いにしたって、分別などありはしな、 夏 翼があって目がないってことは、せつかちで向う見すとい 、つこと とんでもない相手を選んでしまうのはよくある話、 あこが だからこそキューピッドは子供だって一言われるんだわ。 いたずらっ子が面白半分に嘘をつく、 あれと同じで恋の神も片つばしから嘘をつく。 デイミートリアスだって、 ーミアの目を見るまでは、 私に向って「きみこそわが命」なんて誓いの言葉を雨あら れ、 なのに、。 と , つでーしょ , つ、 ーミアの熱に当ったとたん、 あの人はとろけ果て、誓いのあられも霧と消え失せてしま ーミアの駈落ちのことを知らせよう。 そうだ、あの人にハ そうすれば、きっとあの人は明日の夜、 追って森に行く。こんなことを教えてあげて あの人に感謝されるなんて、つらいことだけど、 でもあの人の行き帰りの姿を見られる。 そうやって恋の苦しみをいっそうつらく甘いものにしよう と 〔退場〕 苦労するなんて、私って馬鹿よね。 第二場クインスの家。 クインス、ポットム、フルート、スナウト、スターヴリング登 場。 クインスみんな揃ったか ? おもしろ うそ
や 但し、百人の従者をつけて貰う権利だけは保 留して 費用もかさむし、第一危なくて仕方がないじゃありません おいたはすだ。それなのに、お前の所にゆくのには二十五 人で 同じ一軒の家の中に大勢の人間がいて、命令の出処が二つ ーガン、確かにそ , つ一言った なければいかんと言うのか よ ? ・ どうして仲良くできましよう。困難というより不可能です リーガンなんなら繰り返して申します。二十五人以上は駄 わ。 目ですわ。 ゴネリル妹のところの家来なり、私のところの家来なりか リアよくしたもので、どんな悪い人間でももっと悪い奴が ら 出てくるとましな顔付きに見えてくるから不思議だ。最悪 世話してもらって、どこがいけないんですの ? リーガンそうですよ、どこがいけないんですの ? それに 7 もーし 人間でないのがせめてもの救いだ。「ゴネリルに〕わしはお 家の者達がお世話を怠るようでしたら、叱ることも注意す 所にゆく。お前が認めてくれた五十人は、二十五人の倍だ、 ることも そ つまり、お前の愛清がリーガンの愛情の倍ということにな できますわ。父上が私の所にいらっしやるのなら、 る。 んな気が いったいどうして こナこして欲しいんゴネリルちょっとお待ち下さいまし。 するんですーーーどうか従者は二十五人だ。し しいえ、十人、いや五人、の従者がいります 二十五人の、 ですの。 それ以上の者が来たら、私は泊めるどころか家にも入れま 必要とあれば、家の中にはいつでもその倍の者に父上のお せんからね。 王 世話を リアわしは何もかもお前達にやった ア いただ するよ , つにと一一一口い付けることだってできるじゃありません リーガンいい時に戴きましたわ。 リアお前たちをわしの保護者、わしの後見人にしてすべて リーガンそうですとも。一人だって必要はありませんわよ。 を でどころ
シェイクスビア 226 ライサンダー愛が行けと命じたら、とどまることはできる ものか。 ーミア私を置き去りにしろと命じるなんて、どんな愛な ライサンダーライサンダーをとどまらせなかった愛、 それは美しいへレナ ! あの満天に輝く星々よりも さんぜん なお燦然と夜に映える美しいあの人だ , どうしてばくを追いかけるんだ ? わからないのか、 きみが嫌いだから置き去りにしたのだったことが ? ーミア、いにもないこと言ってるのね、そうよね ? ヘレナまあ、このひとも一枚かんでいる ! そうなの、三人ぐるみのお芝居なのね、 私ひとりを笑いものにしてなぶるための。 意地わるなハー ミア ! 血も涙もない人 , あなた、この人たちと組んで陰謀をたくらんだんでしよう、 私をいじめて楽しもうという卑しい計画を。 私たち二人だけの内緒話、二人だけの姉妹の誓い、 別れの時が足早に近づくのを恨みながら 二人だけで過した時間、あの思い出をみんな 忘れてしまったの ? 学校時代の友情も、少女時代の無邪 」刄さも ? ねえ、 ーミア、私たち、手芸上手の神様みたいに ししゅう 二人で一つの花模様を刺繍したでしよう、 一つのお手本を見て、一つの座ぶとんに坐り、 同じ歌を、同じ調子でうたったじゃないの、 まるで二人の手も、体も、声も、心も、 一つになったみたいに。私たち、ほら、 双子のさくらんばのようだった、リ 男々に見えていても、 じつは一つのものが二つに分れているだけ、 美しい実が二つ、一つの茎になっている。 つまり体こそ二つだけれども、心は一つ、 紋章にあるでしよう、夫の紋と妻の紋を並べて、 二つの上に一つの家紋をのせる、あれと同じだった。 それなのに、その昔からの友情を引き裂いて、 男たちといっしょにあわれな友達をからかうのね。 それでも友達 ? それでも純でやさしい乙女 ? たとえ侮辱を受けたのはこの私一人でも、 あなたは私だけじゃなくすべての女から非難されるわ。 ーミアまあ驚いた、なんてことを一 = ロうの ? 私があなたをからかっているなんて、逆でしよう。 ヘレナあなたがライサンダーをけしかけたんでしよう、 私を追いかけて目や顔をほめたたえるように。 それにあなたのもう一人の恋人デイミートリアス、 あしげ ついさっきまで私を足蹴にしていたあの人に、 私のことを女神だの、森の精だの、天使だの、 宝石だのと呼ばせたのもあなたでしよう ? 嫌いな女に向って、どうしてそんなこと一言えるの ? あなたを心から愛しているライサンダーが
そう ったので、陸上の旅のはうがはるかに央適なものと思われた。 ろにしてはいけないのだ。乗船するつもりで私は二艘の船 しかしいやがうえにも央適なものにしてやろうというので、 を選んでいた。とくに念には念を入れて選んだものであった が、一艘には荷物をのせ、他の一艘には自身乗船するつもり老船長はリスポン在住の貿易商の子で、私と旅行をともにし たいという一人のイギリス紳士を紹介してくれた。このあと で船長とも了解すみであった。ところが、あとになってわか ったことだが、この二艘とも結局駄目になってしまったのだでわれわれはさらに二人のイギリス商人、二人の若いポルト った。つまり、一艘はアルジェリア人の海賊に捕えられ、他ガル紳士と行をともにすることになった。ポルトガル紳士た ) 近くのスタート岬冲合でちはただバリにゆくだけであった。こんなふうにして、われ の一艘はトーベイ ( デヴンシ川入江 できし 難破して、三人を残すのみであとはぜんぶ溺死したのであつわれの総勢は六人、それに従僕が五人という数であった。二 た。このどちらの船に乗っていたところで、私が悲惨な目に人のイギリス商人も二人のポルトガル紳士も費用節約のため に、それそれ二人で一人の従僕をやとってそれで満足してい あっていたことは間違いなかったろう。どちらのほうがひど た。私は私で、フライディのほかに、もう一人イギリス人の っこかは、簡単にはいえないことであった。 もんもん こんな具合に、私がどうしたものかと心中悶々としていた水夫を従僕として連れてゆくことにしていた。フライディで はなにしろ不馴れなせいもあり、みちみち従僕の役目を果す 時、なにもかもうち明けていた老船長は、海路はさけるよう にといとも熱、いに勧めてくれた。その代りに、陸路まずグロのは無理かとも思われたからである。 こんなふうにして私はリスポンを出発した。一行は馬の乗 る ) へ出てビスケー湾をわたり口シェル イン ( 港、現在のラ・「一一ャ フランス西部の現 ) に上陸すれば、それから先は陸路バリへ、りこなしも立派だし、武装も相当なものだしというわけで、 かっ・一う ソさらにカレー ドウヴァーへゆくのは安全でまたたやすい旅ちょっとした軍隊といった恰好であった。みんなは敬意を表 ーレ だが、これも一案、それともマドリッドまで北上して、そして私を隊長と呼んでくれた。それは私が最年長者のせいも 程 ク こからすっと陸路をとってフランスを横断するのも一案だが、あったが、また従僕を二人も連れ、それにこの旅行の発案者 ン であったせいもあった。 ソと・はいっこ。 ン イング 今まで私は航海日誌で読者を悩まさなかったように、こん ランド 要するに、カレー ( ト む、フラ , ス北部港 ) からドウヴァー ( ロ のケント州にある海 ) へ海をわたる以外は、海路による旅は全然どもいわば陸上日誌で読者を悩ますつもりは毛頭ない。ただ、 こんどの長い困難な旅行ちゅうに起こった若干の冒険は省く 試みるつもりはなかったので、全旅程陸路によることに決心 べつに急ぐわけではなし、費用を惜しむわけでもなかわけにはゆかないと思う。 みさき
ちゅうちょ らないということにでもなれば、私の言い分もたっというも こんなことを考えていると、しだいに計画の実行が躊躇 のであった。しかし、私はまだ彼らの勢力の範囲外にいたし、されてきた。そして、しまいには中止してしまった。結局、 彼らもまた私のことをよく知っていたわけではなかった。し蛮人を攻撃しようと私が決心したことは、手段を誤ったもの たがってまた私に対して殺意をいだいていたわけでもなかつであると考えるようになった。思うに、向うが先に攻撃をし た。してみると私のほうから攻撃するいわれは少しもなかっ かけてこない限り、こちらから余計な手出しをする権利は私 たのだ。もし私のほうから攻撃することが正当だというなら、 にはなかった。むしろ、できることなら、彼らが攻撃しない スペイン人がアメリカで行なった無数の土人を殺戮するとい ようにすることこそ私の務めかもしれなかった。それでも、 うあの野蛮行為も正当だといわなければならなくなろう。土私が見つかって襲われたら、その時はその時で、私は自分の 人たちは偶像を崇拝する未開人で、たとえば人間を偶像に犠義務を果すだけの話であった。 牲として供えるような、血腥い野蛮な儀式もいくらか行なっ 一方またこんなふうにも心のなかで考えてみた。これはど ていたかもしれないが、 スペイン人に対しては、まったくなう考えても自分を救う道というより、自分を取り返しのつか んの罪もおかしてはいなかったのだ。それなのに、これらのない破滅へ導く道ではないであろうか、と。 いぎ、とい , っ・時、 せんめつ 土人たちをスペイン人はその国土から一人のこらず殲滅して岸にあがっている者を一人のこらす殺すだけでなく、後から しまったのである。それは、ヨーロッパ のすべてのキリスト後から上陸してくる者も殺せるだけの見通しがなければ、つ てんまっ 教国民はもちろん、今日では当のスペイン人自身からさえも、まり、もし一人でも逃がして、その男に事の顛末を仲間に告 ネに対しても人に対しても申し訳のない文字どおりの虐殺行げられでもしたら、何百、何千という人数がおしよせて、殺 一為であり、人間のなす業とも思えない血腥い虐殺行為であるされた仲間の仕返しをするのはきまっている。そうなれば、 けんお 一として、極度の嫌悪の情をもって語られている。この行為あ私は絶体絶命、殺されるのは明らかである。今のところこの クるために、ス。ヘイン人といえば、人間の、またキリスト教のとおり無事なのに、何を好んでそんな危ない目にわざわざあ わきま ン愛の何ものたるかを弁えたすべての人々にとってはただちに う必要があろうか ン 恐るべき残虐な人間を意味するにいたったのである。あたか 結局、主義の点からいっても策の点からいっても、この事 ロもスペイン王国が、高潔な心のしるしとされている同情の精柄には深入りすべきではないというのが私の結論であった。 神、哀れな者に対する人間共通の憐れみの念を持たない人門 日あらゆる手段をつくして自分の身を隠して、この島に何かが、 の本場であるかのようにいわれるゆえんがここにあるのだ。 つまり人間がイ 主んでいるという気配を残さないことが、私の あわ