233 夏の夜の夢 ことわギ」 それ諺にいうとおり、 すべての男に女あり、 おまえも覚めればそのとおり。 ジャックにはンル、 太郎には花子、 割れ鍋にとじ蓋、万々歳のおめでたさ。 「退場〕 第一場前場と同じ場所。 ライサンダー、デイミートリアス、ヘレナ、 ーミアの四人、 眠っている。 テイターニアとポットム登場。豆の花、蜘蛛の巣、蛾の羽根、 ようせい 芥子の種、その他の妖精が従う。オペロン、だれにも見えぬ形 で背後に登場 すわ テイターニアさ、この花の床にお坐りになって。 ほお そうしたらあなたのかわいらしい頬をなでて、 じゃ・ ) うばら そのすべすべと柔らかいおぐしに麝香薔薇をさし、 そのふつくら大きいお耳にキスをしてあげるわ。 ボットム豆の花君はいるかね ? 豆の花は、、 ボットムちょっとこの頭を掻いてくれんか、豆の花君。 蜘蛛の巣君はいるかね ? 蜘蛛の巣はい ボットムやあ、ムッシュー蜘蛛の巣君、あんたはその武器 第四幕
シェイクスビア 592 マクダフはいって見ろ、目もつぶれる醜悪無残なありさま 頼む、うそだと言ってくれ。これは事実ではない、 ロでは言えん。見て、自分でたしかめろ マクベスとレノクス登場。 「マクベスとレノクス退場〕 起きろ ! 起きろ , 半鐘を鳴らせ。 音殺だ、反逆マクベスせめて一時間まえにわしが死んでおれば、ことも ハンコー ドナル・ヘイン , マルカム、起きろ , ない仕合せな生涯だった。今のこの瞬間から、人間世界に 死んだような深い眠りをふりすてて、死そのものと対面し 真実はもうありえない。何もかもまがいもの。名誉と美徳 ろ ! 起きてこい、起きて最後の審判のこの惨状を見とど は死に絶えた。いのちの酒は汲みつくされ、虚空のもとに けろ ! マルカム , ハンコー 墓場からでも立ちあ とどまるのは言う甲斐もない滓ばかり。 がり、亡霊のごとく歩いてこの地獄絵に加わるんだ , マルカムとドナルべイン登場。 〔鐘が鳴る〕 ドナルべインだれかがどうかしたのか ? マクベス夫人登場。 マクベスあなた自身だ。夢にもそれと知らぬまに。みなも マクベス夫人何事です ? おそろしい鐘を鳴らして、眠っ とを、泉を、水源を断たれた。あなたの血の源流を断ち切 ている家中の者を呼びあつめて。なぜですか、なぜ ? られたのだ。 マクダフああ、奥方、あなたに言うべきことではない。 マクダフお父上が殺されました。 れを女性の耳にいれたら、即座にいのちがけしとんでしまマルカムおお ! だれに ? レノクス護衛ふたりが、どうやら犯人のようです。手にも 顔にも血がべっとり。短剣二本も、血さえ拭わず、忱のう ハンコー登場。 えにありました。ふたりともただ呆然と目をみはるばかり。 おお、バンコー われらの王が殺された ひとのいのちを託すべき器ではなかった。 マクベスああ ! それにしても怒りのあまり、彼らを殺し マクベス夫人まあ ! 何としたことでしよう。わたしたち たのは不覚だっこ。 の城のなかで ? マクダフなぜそんなことをした ? バンコーひどすぎる、どんな場所であろうと。マクダフよ、マクベスだれがいったい、一瞬のうちに、取り乱して沈着、 かす ばうぜん と。
627 あらし 船長と水夫長登場 船長水夫長 ! 水夫長ま、、、ロ、 。し長なんでしよう ? 船長よろしい、水夫たちにいえ、てきばきやれ、さもない 「退場」 と乗りあげてしまうとな。さ、急いで。 水夫たち登場 水夫長ようし、みんな ! きびきびやるんだそ、お前ら , ちゅうしょ - つはん ぐすぐすするな ! 中檣帆をたぐれ。船長の笛に気をつ けろ。「風にむかって」息ぎれするまで吹きやがれ、海はひ アロンゾー、セバスティアン、アントーニオー、ファーディナ ンド、ゴンザーロー、その他が登場 第一幕 第一場海上の船中。雷が鳴り稲妻が はしる大あらし。 アロンゾー水夫長、しつかり頼むぞ。船長はどこにいる ? 水夫たちを督励しろ。 水夫長どうか、下にいてくださいよ アントーニオー船長はどこだ、水夫長 ? 水夫長船長がいわなかったですかい ? ここにいられちゃ、 仕事のじゃまだ。船室にひっこんでいてくれ。これじゃま るであらしを手伝っているようなもんだ。 ゴンザーロー まあ、きみ、おだやかに。 水夫長海がおだやかになったらね。このほえ狂っている連 中が王さまの名なんか気にしてくれますかい ? さあ、船 じゃましないでくれ 室へ。つべこぺいわずに , ゴンザーロー もっともだ、だがどなたをお乗せしているか を忘れるな。 水夫長自分よりかわいいものなんかありませんや。あんた は顧問官だが、 あんたの命令でこの波風がおさまり、 すぐ静かになるんだったら、わしらはもうロープなんかい じりませんよ。権威にものをいわせてみなされ。それがで きないというなら、長生きしたことに感謝し、船室へ行っ て、いざというときの覚吾をきめておくんですな。どけと 〔退場」 いってるんだ。 できし ゴンサーローあの男をみているとまことに心づよい。溺死 する気配はまるでありませんからな。完全な絞首台行きの おばしめ 人相だ。運命の神よ、やつをしばり首にとの思召しをお変 えになりませぬように。やつの断末魔の綱をわしらの碇
41 ロミオとジューリエット 口上役登場。 口上役今までの情熱はもはや瀕死の床に横たわり、 新しい愛情がその跡を継ごうと躍起になっております。 ロミオが死ぬほど恋い焦がれていたあの麗人も、 あ 優しいジューリエットに比べれば、もはやその美は色褪せ たも同然。 ロミオは今や恋し恋される身となりました。 それというのも、二人とも相手の面影にひとしく魅せられ たからで。こギ、いましょ , つ。 しかし、ロミオは仇と狙わねばならぬ女に切ない恋を訴え る仕儀となり、 えさ かぎ 相手の女もまた怖ろしい鉤から甘い恋の餌を盗む羽目に陥 りオした。 恋した者にはっきもののあの甘い誓いを囁きたいばっかり ひと ロミオは愛する女に近づこうとしても、仇とあれば、それ もままならす、 てだて ジューリエットとて、恋する心は同じでも、その手段もな 第二幕 ひと おそ あだねら ひんし ひと 一一や ロミオ登場。 ロミオ俺の心がここにあるのに、どうしてここを離れて余 ~ に ( 打けよ , っ ? おい、ロミオ、逃げちゃいかんぞ。お前の心の中心に会い にゆくのだ , 「ロミオ、壁をよじのばって庭内に飛び降りる〕 べンヴォーリオとマーキューシオ登場。 べンヴォーリオロミオ ! ロミオ ! ロミオはどこにいる んだ ! あいつは利ロだよ。 マーキューシオ いま′、ろ 今頃はもう家に帰って寝ているにきまっている。 べンヴォーリオいや、こっちのほうに走ってきてこの庭園 の壁を飛びこえたはずだ。 亠よオ 6 こ、 おうせ 新しくえた恋しい人との逢瀬を楽しむこともできません。 しかし愛の情熱の力をかり、時の与える機会をとらえ、 二人は苦境をのりこえて、逢瀬の喜びにひたることができ オました。 「口上役退場〕 第一場ヴェローナ。キャピュレット 家の庭園の壁に沿った小道。
三人の魔女登場。 魔女一三度啼いたは虎斑の猫。 魔女ニ三度と一度は針ねすみ。 とんび 魔女三強欲鳶は「早う、早う ! 」 魔女一ぐるぐる回ろう、釜のまわり、 腐った臓物投げこもう。 がま蛙が冷たい石の下で 夜昼なしに三十一日 流しつづけた寝汗の毒、 こいっからまず釜ゆでじゃ。 ス べ三人倍の倍まで苦しめ、もがけ、 マ 火は燃え、釜は煮えたぎれ。 魔女ニ切り身にされた沼地の蛇、 釜で煮えたて、焼け焦げろ。 第四幕 ほらあな 第一場暗い洞穴。中央に煮えたぎつ おおがま た大釜。雷鳴。 がえる いもりの目玉、蛙の指、 こうもりの毛、犬のべロ、 まむしの舌、さそりの針、 とかげの足、ふくろうの羽、 天災地変の呪いをこめた 地獄の雑炊、煮えたぎれ。 三人倍の倍まで苦しめ、もがけ、 火は燃え、釜は煮えたぎれ。 おおかみきば 魔女三竜のうろこ、狼の牙、 魔女のミイラ、 ざめ 人食い鮫の胃ぶくろ、 闇夜に掘った毒にんじん、 神をののしるユダヤの肝、 やぎ 山羊の胆汁、新月の 墓場でもいだいちいの枝。 異教徒の鼻、蛮族の唇、 売女がどぶに生みおとし 締めて殺した赤子の指、 どろりどろりと煮つまったら 虎のはらわた一つまみ、 これで釜の中味はそろった。 三人倍の倍まで苦しめ、もがけ、 火は燃え、釜は煮えたぎれ。 ひひ 魔女ニさかりのついた狒々の血で
シェイクスヒ。ア 660 ファーディナンド、丸太をかついで登場 ファーディナンド娯楽のなかには骨の折れるものもあるが、 そのつらさを、 遊ぶ楽しさが忘れさせる。賤しい仕事であっても、雄々し く耐えれば、 豊かな成果を指向する。この下等な仕事も、 いとわしく苦しいものになるだろう。もしも、 わたしの仕えるあのお嬢さんが、死んだものをも生き返ら せ、 わたしの苦労を喜びに変えてくれなかったら。ああ、彼女 ↓よ、 かたくなな父親にくらべて十倍もやさしい あの父親は冷酷の一念にこりかたまっている。こういう丸 太を、 何千本も運んで積みあげろとの厳命だ。あのお嬢さんは、 第三幕 第一場プロス。ヘローの庵の前 いや いおり わたしが働いているのを見ると涙を流し、こんな賤しい仕 事を、 わたしのような人間がやったためしはないといってくれる。 忘れていた。 たが、こうした楽しいことを考えていると、疲れまでとれ てし亠ま , っ 仕事の手を休めているときが、頭のいちばんにしいときな のだ。 ミランダとプロス。ヘロー登場。プロスペローは見えないように 離れている。 、、、一フンダュま ~ め、レ ( ; っし、ましょ , っ どうそ、そんなにご精を出さないでくださいまし。あなた が積めといいつけられた そんな丸太なんか、雷が燃やしてしまえばいいのに , お願いです、それを下においてお休みなさいませ。この丸 燃えるときに、あなたをお疲れさせたことを悔いてきっと 泣きますわ。 父はお勉強に夢中です。ですから、今のうちにお休みあそ ばして。 この三時間ほど、い己 酉いりませんわ。 ファーディナンド ああ、お嬢さん、 しなければならぬことをやりとげないと、
第一場ヴェローナ。修道士ロレンス の僧房。 修道士ロレンスとパリス、登場。 ロレンス木曜日ですと ? それはまた急な話ですな。 しゅうと ハリス舅のキャピュレット殿がそうしたいと言っておら れるものですから。 それに、せつかくお急ぎのようですから、遅くしたいとも 思いません。 ロレンスまだジューリエットの本心は聞いていないと一一一一口わ 工 れたが、 こういったやり方は全く異例のこと。どうも気に入りませ ュ ジ んな。 ひと オ ハリスティバルトの死を悲しんでひどくあの女が泣いてい ロ たので、 まだ恋の語らいをする暇もなかったのです、 ヴィーナス 恋の女神は涙つばい家にはそっぱを向くと、 第四幕 しいますから。 そんなわけで、あの人の父君が、こんなに悲嘆にかきくれ てしまっては、 娘の身が危いと判断され、親の分別とでもいいましようか、 あふ れに溢れるジューリエットの涙をせきとめようと、 私たち二人の結婚の式を急いで挙げようとされたわけです。 溢れる涙も、独りでいるとますますつのるばかりでしよう だれかといっしょになればそれもとどめられようと、お考 えのようです。 こんなに急ぐ理由も、それでお分かりいただけたかと思い ます。 ロレンス「独白〕困ったことには、遅らせなければならぬ 理由がこっちにはあるのだ。 ジューリエットが僧房にやってきます。 ほら、 ) こ見なき、い ノュ丿ェット登場 ハリス自分の妻に会えてこんな嬉しいことはありません。 ジューリエット私があなたの妻になれたときにはそうお呼 びくだき、い士し。 ハリス「なれたときには」でなく、この木曜日にはなられ るはすではありませんか ジューリエットとおっしやるのは、そうならざるをえない、 とい、つことで。こぎ、いましょ , つか ロレンスいや、それは実に名一一 = ロ。
シェイクスヒ。ア 558 当の ことを、 たとえ私が嫌がることでもとにかく本当のこ とを 一一 = ロって下さい 貴方は姉を愛していらっしやるんでしょ エドマンド愛しております、目上の御婦人として。 リーガンでも、兄以外の男には禁じられている場所に さも兄みたいな顔をして入られたことはございませんの ? エドマンドつまらんことを考えるのはおやめ下さい。 リーガンでも、心配ですわ。まるで姉のものはなんでも自 鼓手、旗手らと共にエドマンド、リ 分のもの ら登場。 みたいに、。 ひったりと姉とくつついていらっしやるんでし よ、つ・ ? ・ エドマンド〔士官に」オールバニ公の所に行って、我々と共 エドマンド誓ってもいいです、絶対にそんなことはありま せん。 戦おうという従来の考えは生きているのか、その後何らか の事情に リーガン姉だって私は承知しませんからね。お願いですか ら、 よって方針を変えられたか、確かめてきてくれ。絶えす自 分を責めて 姉と親しくしないで下さいましな。 考えを変えられる方だから、無理にでも確乎たる決意を聞 エドマンド御心配はいりません。 〔士官退場」 あ、姉上様と御主人の公爵が見えました , リーガン姉の家来のオズワルドが亡くなったようですね。 鼓手や旗手と共にオールバニ、ゴネリル、大勢の兵士等登場 エドマンド どうもそうらしいです あなた リーガンところで、エドマンド殿、私が貴方をお慕いしてコネリル「傍白〕妹に負けてあの人をとられるくらいなら、 ぞんじ おっしゃ いることはもうご存知でしよう。仰言って下さい、たた本戦いに負けた方がよっぱどいいわ。 第五幕 第一場ドーヴァーに近い。フリテン軍 の陣営。 ーガン、多くの士官と兵士 かっ ,
681 あらし わしの強力な術によって 渋面を向けぬことだ。彼らを解放してやりなさい、 エル。 亡霊たちを送り出しもした。しかしこの荒々しい魔術を、 す この場かぎり棄てよう。天上の音楽を わしは術を解き、彼らを正気に返して、 要請してー、ー今すぐそうするつもりだが もとの彼らにもどしてやろう。 ェアリエル あの人たちを連れてまいりま彼らを正気にもどし、この妙なる調べはそのためなのだ、 1 しよ、つ 「退場〕 わが意図を実現したら、この魔法の杖を折って、 ひろ よど 幾尋もの地中に埋め、 プロスペロー丘陵、清流、水淀む湖、森林の妖精たちょ。 測量の鉛もとどかぬ深みに、 砂に足跡をもとどめずに退く潮を 〔おごそかな音楽〕 この書物を沈めてしまおう。 、いかけ、ひき返してくる潮からは 逃げ出すお前たちょ。月のあかりで、 おひつじ ますェアリエルがふたたび登場。ついで、アロンゾーが、狂気 牡羊さえ食まぬ緑の酸つばい輪を きのこ の趣きで、ゴンザーローにつき添われて登場。セバスティアン、 作る小鬼たちょ。真夜中の茸づくりを アントーニオーも、おなじく狂乱の風情で、エードリアン、フ 楽しみとし、おごそかな晩鐘を ランシスコーにつき従われて登場。一同、プロスペローか言し じゅばく 聞いて喜ぶお前たちょ。お前たちの助けによって ておいた輪のなかにはいり、そこに呪縛されて立つ。プロスペ お前たちはかよわい者ではあるけれども ローがそれを見て語りかける。 わしは、真昼の太陽をも暗くさせ、荒れ狂う風を こんべき 乱れた心をもっともよく慰めてくれる荘厳な音楽が、 呼び出して、緑なす海と紺碧の大空とのあいだに、 ずがい とどろ あびきようかん 阿鼻叫喚の死闘を演じさせた。轟きわたる恐ろしい雷鳴今や役にも立たず頭蓋のなかで煮えたぎっているあなたの 脳を、 かしわ 癒してくれますように ! そこに立っているがよい 火をあたえ、ジョーヴの神木たる槲の巨木を、 きみたちは呪縛されているのだから。 ジョーヴご自身の稲妻でひき裂きもした。 いしずえ 、高潔なるお人よ、 神にも似たゴンザーロー 礎固き岬をゆるがして、松と糸杉とを あなたの目を見ていると、わしの目までがっきあって、 根こぎにもした。墓場は、わしの命令で、 もらい泣きの涙がこばれてくる。魔術はすみやかに解けて そこに眠る者たちを起こし、墓穴をあけ、 ようせい たえ っえ
419 オセロー うれ ビアンカまあ、嬉しいわ。事情が事情だから帰って上げる わね。 〔両者退場〕 ィアーゴーとオセロー登場 ィアーゴーそんな風にお考えですか。 オセローそんな風に考えるかって、イアーゴー ? せつぶん ィアーゴー つまり、こっそり接吻するってことですがね。 オセロー実に許すべからざる接吻だそ、そんなのは。 ィアーゴー 一時間かそこら、別に悪いことをする積りはな 恋人と一緒に裸のまま寝床に入るのも、やつばり ? オセロー裸で寝て、別に悪いことをしないというのか、イ アーゴー ? だま そんなことができればそれこそ悪魔を騙そうという偽悪だ。 清純な気持でも裸で一緒に寝てみろ、悪魔がその殊勝な へきえき 気持を誘惑するにきまっているし、第一、神を辟易させる にきまっている。 ィアーコー寝るだけで何もしなければ大した罪じゃないで 第四幕 第一場同じ所。