気ますいが、やがてそれが楽しみになる。冬、暗くなったと とも気分出しちゃって ! 大きいほうの奴も小さいほうの奴 と ) っ 祐たん、通りのはすれの屠殺場のそばへくつつきに飛んで行く。 も、おんなじくらい ああいった種類の病人はつねにひどく急いでいる、ご家庭向 彼女は高尚な感情なんてものは信じなかった。なんでも下 きの健全な勃起が二度と起らないのを恐れて。ヴィトリュー 等に、正しく判断した。プールヌーヴに行くには、バスに乗 セ ヴ婆さんは私のところに来る途中、そうしたことをみんな見らねばならなかった。「まだたつぶり五分はだいじようぶだ ゅううつ 定めていた : はじめて《淋病》にかかった若者は憂鬱にぜ ! 」と、ギュスタンは私に言った。彼は全然急いでいなか なり、ものすごく悩む。婆さんはやって来て出口で待ちかま った。われわれはちょうど、〈橋〉のたもとの勾配の前にあ えた : 連中の心をゆすぶった : : ほろりとするような心るバス停の安全地帯に腰を下ろした。 ど一 遣いを見せて : 「すごく痛むかい、え、坊や ? ・ 私の両親はこの河岸の十八番地で、一八九二年の冬、商売 んなだかよく知ってるよ : : : 何人も面倒をみてやったからで大損したのだった、もうずいぶん昔の話だが。 ね : とってもよく効く煎じ薬があるんだよ : 家にお それは《婦人帽、花、羽根飾り》の店だった。たった一つ しで、こさえてあげるから : : : 」あと二、三回クリーム・コのウインドーに、 見本の帽子が三つあるだけだったと、よく 一ちそう ーヒーを御馳走になれば 、ト僧は彼女に精気を吸い取られる 聞かされたものだ。その年はセーヌ河が凍った。私は五月に ことになる。ある晩のこと壁のそばですごい騒ぎがあった、生れた。私は春なんだ。運命だかなんだか知らないが、年を 驢馬みたいにすごい一物を持った〈北アフリカ人〉が、警備とり、自分が生きている周りで、家々や、番地や、市街電車 小屋のすぐ近くで、菓子屋の小僧を慰みものにしてオカマしや、女の髪型が変ってゆくのを見ているのはもううんざりだ。 ようとした。覗き趣味の警官の野郎は、始めからみんな聞い ドレスが短くなろうと、帽子に折り目がっこうと知ったこと ていた、ささやき、うめき声、それから絶叫 : 小僧は身か、輪のついた船だろうが、航空時代だろうがおんなじだ , をひきつらせ、それを四人がかりで押えていた : それでそんなものに一々共感していたって始まらない。私はもう変 も小僧は、ごろっきどもから救ってもらおうと、おやじの小 りたくない。文句を言いたいものはいろいろあるだろう、で 屋の中に飛び込んだ。で、相手は戸を閉めた。「あいつ、やも、私はそれらのものと合体している、私は駄目な男だ、だ っちゃったんですよ , ほんとですってば ! 」と、ヴィトリ が私はセーヌ河が腐っているのとおなじくらい自分が好きだ。 かギ】がた ューヴは断言した。こう注釈を加えて。 十二番地の角の鉤形に曲った街灯を取り替える奴がいたら、 よろいど 「私は鎧戸越しにそのおまわりを見てたんですがね ! 二人すいぶん心が痛むだろう。人間は束の間のものだ、たしかに ばあ せん つか
セリーヌ 830 どい侮辱をうけたあとで , なにもかも我慢して来たあ 「私なんだ , 私なんだ、家をとことんまで守ったのは , とで ? ・ ああ、まったくだ , これじゃまったくあんま もし私が守らなかったら、家なんかとうの昔に売られちまりだ , : 」そう思うと、そのことの重大さに、彼女はま ってただろう ! あいつは自分を抑えられないんだから , たかっとなった , 「なんですって ? なんですって ? そ こうしてあいつは自 あの疫病神みたいな男は、ちょうど私が病気になってんなことは神様だって許しやしない いるときを利用しやがったんだ , 私がもうなんにも知らな分の顔をめちゃくちゃにして : : : 逃げ出して , 自分を みじん いのを ! なにもかも売っ払っちまった : 飲んじま粉微塵にしちゃって ! それを今となって、私が有罪だって 即刻たたき売っちまった ! そいつがほんとかの ? ああ ! まあ ! そんなめちゃくちゃな ! あき ど , つか聞いて。こらんなき」いよ : 私が嘘をついているのかれてものが言えないわ , ああ ! なんてけがらわし ン」 , っカ ! なんにも , 絶対に ! あいつは私にとっと ああ ! まったくの話、最後の最後まで、あの腐った いちゃくれなかったー なんにも ! そんなことできやしな不潔な道化者野郎は、私の人生を泥まみれにしたんだわ ! 自分でもどうにもならなかったんだ ! 私はそういう運命なんだ , こ , つやってあとに残 私を虐待しなくちゃならなかったんだ ! みんな自分のされて ! みんなおまえの責任だ ! おまえの責任だ , めすろば 淫売女たちのために ! みんな自分の悪徳のために : : : 馬 ! 勝手にがんばるがいいわ、老いばれの牝驢馬め ! なんにも 競馬 ! 馬鹿騒ぎ , 酔っ払うために , そ残りやしないだろう ! 歯一本だって ! 借金しか ! 借金 の他まだなんだってあるわ , 気前がよいだって , 以外 ! そんなものあいつは糞食らえってんだからね ! あ 、よ 見す知らすの人にくれてやるんだからね ! いつは ! 自分がじゃんじゃん浪費しさえすれば , でもかまわす , やっちゃいさえすればいいんだ , そ にもかも ! あいつは私に失くさせちゃったんだ , 手のあいだからどんどんこばれていく , そのたのことはこのフェルディナンがよく知ってるわ ! この子は、 め私がくたばろうと、そんなことはどうだっていし そうした状況を見て来たんだから , 不がいかに奮闘し、 そうなることをいつも望んでたんだ ! そんなことが三十年くたくたになって最後の瞬間まで脳味噌をしばって来たのを 間も続い て来たんだ ! 三十年間、私はなにもかも耐え見たんだから , モントルトウーを離れないために , て来た ! : 三十年たらあっという間じゃないわ , こんな豚が住むみたいな片田舎に来ないために , のに、この私を告発しようってんだから , と , っしよ、つ さんざんひもといっしょに土に埋められないために !
打がどんなものであるかをわたしに唐らせたとしても : ていた冷厳さを見ることを学んだのだった。アルマンの顔は、 - ) うかっ アントワープはわたしの眼に、その悲しい性格と、その港町不実であり、陰険であり、邪悪で、狡猾で、凶暴だった。も せんみん ポエジー すがためいりよう の賤民的な詩情を失っていた。わたしにはものの相が明瞭ちろん、その人間を知ったいま、これらのものをそこに見い に見え、そして何でも平気で受入れられる気持になっていた。 だすことはわたしにとって容易であるにちがいないが、しか わたしは何か重大な犯罪を遂行することもできただろう。こし彼に初めて会ったときにわたしが受けた印象は、ただ一つ の時期は六カ月ほどっづいた。そしてその間わたしは純潔のの顔面に奇蹟的に集まったこれらの性質のみが与えうるよう めい - も ) っ ままだった。 なものだったことをわたしは断言できる。偽善、邪悪、迷妄、 ′一う - も、つ アルマンはその頃はまだ旅行中だったのだ。わたしはこの残忍、獰猛、これらの一一 = ロ葉はただ一つの言葉に集約されるこ 男が、これ以外にもいくつか異なった名前で呼ばれるのを聞 とが可能なはずなのだ。アルマンの顔にはこれらのものが列 いたことがあるが、この本ではこの名前だけを用いることに 挙されていたというよりは、それらはそこに、わたしの一一 = ロう する。わたし自身について言っても、現在のジャン・ガリヤ意味は、空間の中にではなく、時間の経過中に、わたしの心 ンという名は、十五番目か十六番目の名前なのである。その理に応じて、読まれるのだった。あるいはアルマンの内部で アルマンがフランスから帰ってきた。これは後で知ったこと これらの性質のどれかを顔面に現わさせる原因が起るのに応 だが、彼はそこへ麻薬の密輸入の仕事で行っていたのだ。わじて : それは野卑粗暴な、人でなしとも言うべき男だっ たしがある顔について、ひと言でそれを言い表わしうるには、 彼こま一つとして尋常な美しさは見当らなかった。しか その顔がただ数秒のあいだだけわたしの前に現われるのでな し、彼の顔における、これらいま挙げたものの存在ーーーそれ ければならない もしそれ以上長引くと、たとえば忠誠とか、 らはその反対物によって乱されることがほとんどなかったか 明朗とか、率直とか、その顔がわたしに示唆していたものに、 ら、実に純粋だった か彼に、暗い、それでいて光り煌め しわ ちょっとした唇の皺、あるいは眼付、微笑などが加わっただ く外観を与えてした。彳 、 ' 皮の体力は驚異的だった。彼はその頃 けで、その顔の解釈を面倒にしてしまうのである。長く見て四十五歳ぐらいだった。これほど長いあいだ自分の強烈な活 日 いるにつれて、顔はますます複雑になってゆく。さまざまな力とっき合っていたので、彼はそれをやすやすと持ち扱って 棒 もっ 泥表徴が縺れ合って、顔は読み取ることができなくなってしま いた。そして彼にはそれを最大限に活用する巧妙さがあった くび ずがいこっ う。スティリターノの顔には、わたしは、ただ一つだけ、眼ので、頭蓋骨の形と頸のつけ根に現われていたこの活力、こ かっこ だったかロだったかの片隅にあった皮肉さの表徴が変質させの筋肉の力は、上述の厭うべき諸性質をさらに確乎たる、圧 1 三ロ 0 きせき きら
〈シルク・ディヴェール〉の近くで、一家全員が家具師で、性質があるのだと言った。父には万事見通しだったのだ。 アルザス人だった。うちの店の小物の家具全部、豆形テー。フ ヴュルゼム一家の感じのいい点は、限みを持たないことだ レ十八・十九世紀に流行した、 った。ひどくののしった後でも、ちょっぴり金をもらえば、 ) 、コンソーレ壁に取り 9 ける ) などを、 ヌ丿いんげん豆形の板の小卓 一彼のところで《時代もの》に見せかけて直すのだ。二十年来、また歌い出した。彼らにとっちゃ悲劇的なんてことはない、 セ皮は祖母や別の人間のためにもつばらそればかりやってきた。 先の見通しもない、 こうした労働者の連中は ! われわれみ 寄木細工というものは長持ちしないものだ、だから絶えず文 たいに良心的じゃない。母はいつもこうしたちょっとした事 句の種になる。ヴュルゼムは芸術家でもある、すばらしい職件を捉えて、私におぞましいと思わせる実物教育の材料にし 皮らの家の 人だった。。 ウュルゼム一家は、妻、叔母、義兄、二人の従姉妹、 こ。ムは彼らをとてもいい人間だと思ってきた。彳 四人の子供全員がかんな屑の中に住んでいた。彼もまたけっ かんな屑の中で眠り込んだ。また〈大通り〉まで駆け出して、 アル・オー・ヴァン * して期日に間に合わなかった。彼の悪習は釣だった。注文を《葡萄酒市場》行きの乗合馬車に飛び乗るため、私を揺り起 どんどんこなすかわりに、しばしば一週間をサンⅡマルタン さなきゃならなかった。乗合馬車の内部はすばらしかった、 運河ですごした。母は真っ赤になって怒った。。ゝ、 カ彼は無礼 クリスタル・ガラスの大きな目玉が、座席の列全体の顔を照 な返答をした。それから言い訳をした。家族全員がわっと泣らしていたからである。まるで魔法だ。 きだした、ということは向うは泣くのが九人、こちらは二人馬はマルチール街を疾駆して、人々はわれわれを通すため きりた。ノイ 皮らは《どうしようもない浪費家》だった。さんざ左右によける。店に着くと、それでももうすいぶん遅れてい ん家賃の支払をとどこおらせたあげく、逃げ出して、コーラた。 ンクール街の安全地帯に逃げ込まねばならなかった。 祖母は隅っこでぶつぶつ言い、父のオーギュストは庇つき 彼らの小屋は泥溜りの穴の底みたいなところにあって、板帽子をぐいとまぶかに下げる。まるで船橋の上のライオンの をつたって行くのだった。われわれは遠くからわめきながら、 ように歩き回る。母は腰掛の上にぐったり腰を下ろす。彼女 家の角灯めがけて進んだ。。 ウュルゼムのところで私がしたく 。ゝいけないんだ、言い訳なんかする必要はない。われわれが こんろ のりつば てたまらないのま、、 。しつも焜炉の上で揺れている、糊の壺を今日一日途中でやったことは、すべてみんなの気に入らない、 ひ 空中にひっくり返してやることだった。ある日のこと、つい 祖母にも父さんにも。とうとうみんなは店を閉める : に私は決、いした。父はそのことを知って、すぐに母さんに、 どく丁寧に《さようなら》を一一 = ロう。私たち三人は家に寝に帰 この子はいっか母親を締め殺すだろう、この子にはそういうる。家まではまたうんざりな道のりだ。家は《ポン・マルシ どろだま くず ひ一し
空はまた自分のすみかに登り、ほかのみんなのよ は前よりももっとやくざになって帰ってやるそ ! もっと奴 てもと らをうんざりさせてやるんだ , おれはもう何カ月も口 うに雲を手許に留めておいた。もうひっきりなしにばこ工こ : ああ ! そうだとも ! 誰ともしゃべ 垂れ、風景全体の上にへどを流すぐちゃぐちゃした霧はなかをきかなかった , 自分 復活祭が五月にやって来て、子供たちはもう待ちるまい ここの人間とも ! 向うの人間とも , セ遠しくて我慢できなかった : ・ : ・家族に再会しに行こうとしが痩せつばちのときは気力を集中しなくちゃならない・ ていた。私もまた立ち去るときだった : 私の滞在は終り口をあんぐり開けてれば、相手が中に押し入ってくる。おれ ところが自分は に近づいていたごくゆっくり用意していた : すると特の意見によれば当然そうしたもんだ , 別の手紙、金にちょっとした一 = ロ葉が添えてある叔父の手紙を大男じゃないときてる ! だから強くならなくちゃ ! おれ ゴルロー 受け取った : 叔父はこのまま残り、あと三カ月辛抱するはまだ何年だって黙っていられるそ ! 完全に エドワ ジュや、ちびのアンドレや、ベルロプや、それからまたディ ように言っていた : : : そのほうがすっと、 ール叔父はいい人だ ! 思いもかけないすばらしいことだっ ヴォンヌと彼女のピアノのことを考えるだけで充分だった , 畜 彼は自発的にそうしたのだった : 親切心から彼女の八分音符 ! 「月光」の弾きつぶりのことを : ・ : 叔父は私の父をよく知っていた : もし私が英生 ! 時がたってもなんにも変っちゃいなかった ! 語をなんにも覚えす、また間抜けみたいに帰って来たら、確つは前よりだんだん強く、すっときつくさえなって思い出の せつかん ああ , そいつが無数の折檻、平 実に悲劇がおつばじまるのを恐れていた : そいつはかな中に戻って来た : らす、ものすごいことになるだろう : 手打ち、ものすごい靴の一撃とともに私の頭にこびりついて いた。畜生 ! それにまたあらゆる不潔なことがおまけにつ 要するに私はひどく反抗的で、恩知らすで、すげなかった もうちょっと一生懸命やることだってできたろう いている、相棒の子供たち、オカマの相手、自堕落な女ども おれになにをしろというんだ , : そうしたってべつに皮をはがれるわけじゃなかった : とその色仕掛 ! 叔父を喜ばせるために : けれども、もうちょっとで負け について ? くだらないことを考えろってのか ? エヴァ ・アンド・エヴァ あのけがらわしい爺いみたいに そうになったとき、私はまたしても苦いものがロいつばいに アーメン ! アーメン ! 仕方がない , 襲ってくるのを感じた : : : あらゆるけがらわしいものがこみ いやらしいべとべとしたものが : あげて来た : 私は自分でしかめつ面を繰り返して、自分一人でいろいろな まっぴらだ , おれ奴を真似てみた ! アントワーヌの野郎が便所で糞をしてい なにも覚えてなんかやるもんか ,
いたからでもあった。すなわち、おなじひとつの同期化されって刷毛でかいたみたいにはりついていたが、 さっきの声、 た運動で、両方の前腕が、肘のところで肘掛け椅子の腕木としやがれていて気持のわるくなるような、一種の猿の鳴き声 連結されているみたいに、左右いっしょに下がって、新聞をみたいな声がふたたび、まるでげつぶでもだすみたいに出て ン モ下へおろし、それと同時にまぶたがめくれあがるのも、太鼓きて、「知るもんかね。ここには外国人がいやというほど大 をたたくチン。ハンジーのまぶたとまったくおなじで、つまり勢いるからね。アメリカ人も。ドイツ人も。イタリア人も。 ほかのどこの部分も ( 小さな両足が黄色いびかびか光る靴をあらゆる国のがいるからね。なかには、ここへくるまで、お はいて平行に歩道の上に並べられ、すっと上のほう、ほとんそらく一度だってべッドやシーツにお目にかかったことのな ど乳の下でベルトをしめたズボンが、まるで固いコルセットさそうなやつだっている。そいつらがやってきて、わしに宿 みたいに巨大な腹を包み、シャツはゴムで袖をめくりあげ、 泊券を見せるんだが、そんなやっときたら : : 」、そこで中 おくびよう ネクタイは茄子色の錦織りの絹のネクタイで、糊のきいたカ断し、なにか陰険で臆病な気配がかすめ過ぎて、炭みたい ラーの上に猿の垂れ頬がはみだし ) 、というわけでほかのどに黒いその小さな目の輝きを曇らせ、そのあいだも学生の顔 まゆげ の部分も動かす、ただ密生した眉毛だけが例外で、まぶたとを見つめ、様子をうかがい、探りを入れながら、声が非常な っしょにもちあがって、深くくばんだ、きびしい小さな黒早ロでまた、「わしの役目はそういう連中に部屋を提供する いらだ 目をあばきだし、 いまはその目が、一種の苛立ち、冷ややか 、、、「それだけさ。それだ ことだけでね、それだけさ」としし おり な、無一言の激怒みたいなものをこめて、目に見えない檻の目けじゃないかね ? 」とくりかえし、それから前触れもなしに、 に見えない鉄柵ごしに彼の顔を見つめ、チンパンジーじみた だしぬけに、およそなにも沈黙を予告するものなどなかった 突きでた唇、薄っぺらな唇が、巨大な顎の上でほんのかすかのに、ちょうど彼がしゃべりだすことを予告するものもなに もなかったのとおなじように、けだものの唐突さ、急に吠え 「アメリカ人 ? 」としし ) 、それからそのしやがれた、咽喉にるのをやめる犬の唐突さでふつつり黙りこみ、学生がしゃべ ひっかかる ( まさしく猿の声みたいな ) 声もやみ、いまはた っているあいだも、黒ガラスか炭みたいな残忍な小さな目が、 いや 。こ、ほとんどないといっていいくらいの鼻の両側の、もしゃ 相変わらす彼の顔に突きささって、冷ややかな、癒しがたい、 もしやに密生した眉にかくれた、怒りに燃えた、炭みたいに浮きうきした贈悪で燃えあがっていたが、またもや例の声 黒い、ちつばけで野蛮な目だけが光り、その上の平べったい ( 吠え声、げつぶ ) が学生の言葉を遮り、学生がだまりこみ ずがい 頭蓋にはひと房の黒い毛が油つばいぎらぎら光る絵の具を使もしないうちから、ふたたびしゃべりはじめ、その声もやは
るんだからね。おまえのお陰でずいぶん厄介なことがあった、 り私は考えてたよー ゴルロージュもはっきり見抜いた % 知ってるね、フェルディナン ! おまえにそう言っても、そってね : でもフェルディナン、私たちの場合はそうじゃ う正直に言ってもかまわないだろうよ , ないね : 私はおまえに おなじじゃないね。特に私についちゃ , 一ひどく寛大だよ : なんてったって私はおまえの母親だかおまえがもっと愛情が深くて、分別があり、勤勉で、とりわけ セ らね ! おまえを裁くってのは私にとっちやむずかしい 親に感謝していやしないってのは : もっとよくものがわ よ : でも知らない人たち、雇主たち、おまえを毎日店に置かっていないのは : もっと私たちの負担を軽減させよう いてた人たちは : あの人たちは私とおなじような弱点は としてないのは : : : 生活の中で : : : この厳しい人生の中で ほら、あのゴルロージュ , 持っちゃいないよ : つい昨 それにはちゃんとわけがあるね、フェルディナン、私は 日のことだけど ! まだあの男の声が耳に残ってるね : 母親だからすぐおまえにそのわけを言ってやれるよ : 出て行くとき は女だからわかるんだよ : それはおまえが本当に思いや もと 「さんにはなんにも言わなか 0 たけど , 彼はここに一時間もいたんだけど : 《奥さん、りがないってことだよ : それがあらゆることの本なんだ 私はお話ししている相手がどんな方かわかりました : : : あな 私はよくおまえが誰に似てそうなのか考えるんだがね。 たのお子さんは、私にとってはじつに簡単です : あなたさあ、なんでおまえがそうなったのか考えてみるね。もちろ は他の大勢のお母さん方とおんなじです : ・ お子さんを甘ん父さんのせいでもなければ、私のせいでもない : 父さ やかして駄目にしてしまったんです ! めちゃくちゃに , んは思いやりがある人だよ : かわいそうに、あの人はむ それだけのことです ! 善いことをしてるつもりで、さんざ しろありすぎるよ , で、私はって言えば、おまえは私 ん骨をお折りになる ! ところがお子さんを不幸にしてるんが自分の母親にどんなに振舞ったかちゃんと見てきただろ ? です ! 》私はゴルロージュが言ったことをそっくりそのまま 私は思いやりを欠いたことなんか一度もないよ : 繰り返してるんだよ : 《ご自分ではまったくそんなつも 私たちはおまえに対して甘かった : あんまり忙しすぎて、 りはないのに、お子さんを遊び人の小僧にならせてるんでものをはっきり見ようとしなかった : ひとりでになんと す ! 怠け者に ! エゴイストに , : 》私は呆然としてた かなるだろうと思ってた : ところがおま , んはと , っと , っ・諏 ね ! 正直なところ ! 《うーっ ! 》とも言わなかったね。実さまでなくしてしまったんだ , なんて恐ろしい憎む 不満な顔もしなかった ! まったく母親としておっしやるとべきことなんだろうー 私たちもいくぶんそのことで罪 おりですとも一一 = ロえないからね , でも、 がある , しし力い、やつば そう認めなくちゃならないね : 私たちは
く ! そうだ ! 救うってなにをだ ? ふん、おまえはロがさだ ? 聞いてるか ? おまえの《ガヴォット荘》のためだ 、つド ) しし 臭いそ ! 切断した切り口 ! 蛆虫か ? 蠅 か ? よこねと ? 糞 ! 糞 ! 糞 , 気高さ ! 光 ! 前代未聞の ・ようへい 膿のでている肉なんか御免だ ! 絶対奔走なんかしな英知 ! ああ ! おお ! 錯乱した傭兵どもよ , 任」ュリっ ) ゞ ) 、 いから ! ちょっとだって ! 聞いてるか ? ・ 0 ホスをー / 略奪する悪魔ども ! おお、マリニャーノ ( 五一和年、フラン ソワ一世がス セげす女 ! おれは生きている限り , 敗北 ! 変節 ! ) ! おお、私の敗走、不幸なるちびのフェルディ イス車を破る 自 悪知恵 ! とんでもない ! 御免だ ! 足の指 ! おれを突ナンよ , 私はここではも , つ自分の目を信じない ! き刺そうとする奴のも舌でなめてやれってのか ? ・ おれ分の声も , 私は仙女のようだ ! 満ち足りて ! 事物 フェルディナン ! 聞いてるか ? の回帰 ! 私はつい昨日までは天頂にいた ! 身動きで よく見ておくんだぞ ! 見たまえ ! 偉大さってものきぬほど恩恵に包まれて ! 人々は私におもねり , 私から ひょうせつ を理解するよう努めたまえ、フェルディナン ! めったに見剽窃し , 禾・にしつこくつきまとし 周りで神聖に祝 っていた , られることじゃないから ! 」 いやいや。世界の隅々まで祈っていた ! 君は ドシ 「まあ、まったく ! あんた飲んでるんだねー あんた見ただろ ? 読んだだろ ! それが今日は ? ・ ああ、このけがらわ もうなにもない , たちは二人とも飲んでるんだね ! 雷が落ち そた , しい連中は、飲んで私のところにやって来たんだー 無だー けし粒だ、それが私だ , れでまだ私に怒鳴ろうってんだから ! 」 粒だよ、フェルディナン、それだけのことだ , 亡命か、 フェルディナン , 「偉大さだ ! 超脱だ、気違い女 ! 私は出発する ! 知っ 亡命 ? 」彼の声は悲しみに暗くな てるか ? ・ 「そう ! そうだ , おまえはなんにも知りやしな、 私は自分がわかったそー へ ! もっと遠くへ , 君と 挑発、最低の挑発運命が私に扉を開いてくれる ! 亡命 ? よろしい けいべっ なんそ軽蔑して ! 胸がむかむかするようなやつなんぞ ! 二人で , ずっと前から、私はそれを願っていたのだ , あんな途方もないおそましい奴らは、。 とんな一一 = ロ語道断なことそれが実現した , 打撃が私を打った ! 超越的な , を考えだすかわかったもんじゃない ? え ? あの恐ろしい ホサナ ! 決定的な一撃が ! 裏切者どもは姿を現した , かいせん 疥」かきどもが ? ・ 私の本質の尺度は ? それは気高さ 又らは私に借りがある , 何年も ) 一んばい 聞いてるか ? ・ だ、薄馬鹿 , : おまえはにんにくの酸前から、私を追い回してた ! むしばんでた ! 疲労困憊さ はギ、 の臭いがするぞ ? ・ 償いだ , 奴らは姿を示した , わかるか ? 一一一一口え、尻の穴 ? 気高せていた , うみ はえ しり
セリーヌ 552 を : : : 私を待ちかまえてる嘘つばち、たつぶりころがってるんじんにも似てる : なんだってこいつがあんな美女を手 辛い仕事、糞ったれの客ども、いんげん豆、ヌイユ、配達に入れることができたんだろう ? ・ むろん金のせいのは : 親方たち ! 私が食らった拳骨のことを ! 〈小路〉ずはない : だったらなにかのまちがいカ ? ・ それに みだらな冗談を飛ばしてやりたいという気持も急女って奴はいつも急いでるってことを忘れちゃいけない。女 けいれん に完全に圧し殺されてしまった : : 私は思い出で痙攣を起し って奴はなんの上にでも生える : 女はどんな汚いごみだ っていいんだ : 尻の穴の皮がむけてきた , 体中の皮膚が引っぱ 完全に花とおんなじだ : 一番きれい がれた、それほど気違いみたいに腹が立った : 尻が傷だ なやつほど、一番臭いこやしが要るってわけだ ! らけになった。おれを誘惑するのはおよし、べっぴんさん ! 季節は長くは続きやしない ! そうだとも ! それに女って そりややさしくって、すてきだろうさ : だが彼女が十一奴はいつだっていかに嘘つきだか ! 私はすさまじい例をた 万倍も光り輝いてすばらしくたって、おれはこれつばかしも くさん知っていた ! 嘘の果てしがない , そいつが彼女ら べたべた言い寄ったりはしよ、 オしからな ! 間抜けた真似なんの香りなんだ ! それが人生ってものだ , ためいき そした そは ! 溜息ひとつだって ! 彼女がおれに好かれようとい 私はロをきくべきだったろうか ? 仕方がない , かわひも うんでオマンコ全体を切り取って、細い革紐にして身につけ ら彼女は私を巧くまるめこんだだろうか ? まちがいなしだ ようと、切れやすいテープみたいにそいつを首の周りに巻き そうなったら私はますます訳がわからなくなっただろ つけようと、おれの尻に突っ込むため手の指を三本切り取ろう。少なくとも口をつぐんでいることで、私はしつかりした うと、金無垢のオマンコを買ってつけようとかまわない , 性格を築くことができた。 ・・ち おれはしゃべってやらないから , とにかノ不し ' メリウイン氏は授業中私を説得しようとして、特別に骨を くだらない , よっとだって接吻なんそ : まったくどう折り、生徒全員に私に口をきかせる努力をさせた。黒板に大 だっていいことだー というわけだ ! 彼女の旦那を見てる文字で、全文をいくつも書いた : 判読するのがやさしい 方が、もっとよく穴のあくほど見てる方がまだましだった よう : : : それからその下に翻訳を : 子供たちはみんない ム : そうすればくだらないことを考えなくてすむ , っしょに繰り返した、何回も : : : 声をそろえて : : : 拍子をつ はいろいろ比較してみた : 彼の肉には蕪みたいなところけて : で、私はロをあんぐりあけ、なにかが出てくるよ がある : 緑色の不純な血だ : : よじれた毛が耳の中から、 うな振りをした : そいつが飛び出してくるのを待ちな がら : なんにも出てこなかった : そして頬っぺたの下にも飛び出しているところなんそは、に シラ。フル一つも
いやでもおうでも、彼らが一度も飲みたいとも見たいともねそれから彼は、どうしてそんなに無理に食事をすすめたのか がわなかった ( その必要もなかった ) ものを飲ませたり見にという理由がわかった、万一逮捕された場合、せめて胃袋に 行かせたりすることを目的とするネオン広告 ( 黒人の下には、 なにか入っているようにというのだ。そうはいっても彼らの ン しゅろ モきっとどこかの旅行社の広告にちがいない、青い棕櫚の木が うちのだれも、逮捕のことや、そのあとに起こることを話題 あって、一台の飛行機と、円屋根のある記念建造物みたいな にしなかったし、同様にまた彼がこれから決行しようとして ものが、一隻の客船と交互についたり消えたりしていた ) 。 いる行為も話題にせす、いっさいが ( ありうべき逮捕、殴打 彼は咽喉がかわいていた。食事をしていなかった。彼が泊 いやもしかしたらリンチーー。問題の行為 ( 殺人 ) 、ひも めてもらっていた友人の細君が冷肉の料理をつくってくれた じさ、人びとにレストランにはいり、坐って、いろんなもの のだが、 彼はそんなものは欲しくなかった、つまり食べるこを注文し、それをがつがっ食べるようにしむけるひもじさと とができなかったのであり、ロのなかでしばらくのあいだ、おなじように、 いま彼が自分の内部に潜勢力として存在して そしやく ひと切れのねすみ色の肉を咀嚼し、何回もひっくりかえして いるのを感じているひもじさが ) いわば抽象的な性格とでも しると、しまいにそれはほばポール紙ほどの固さと味になっ ーー気持 いったものをもち、彼にとっては真の現実性のない の た、というかむしろ、どうしても呑みこむことができないまのいいものであれ不愉央なものであれーーー容認された概念の まに、一方の頬から他方の頬へと送りかえしているうちに、 状態でしか存在せず、だから自分のひもじさや不安に苦しん どうにも邪魔になってきてそれを意識せざるをえなくなり、 でいないのとまったくおなじに ( ただそれらを感じるだけ、 自分がいま食べようと苦心しているのだということに気がっそれらがそこに、現前していると自覚するだけで、それ以上 しんちゅう き、と同時にあらためて自分のいる場所、その台所、マドンのものではなく ) 、レストランの外側の、真鍮のわくに囲ま ナみたいな目をしてじっと彼を眺めている細君を意識したとれ、豆電球が照らす壁のくばみに収まった、メニューに書い いうわけで、じつはそのときの彼は自分が行なわなければなてある料理の値段を見ても、あるいは店内で、ものすごく高 きやしゃ らないいろいろな動作を十回目だかにやってみている最中だ価な食べものを華奢な手つきで唇へもってゆく、肩をむきだ った、すなわちレストランのドアを押し、あるテープルのほ しにした輪郭のおばろな女たちを見ても、また彼をとりまく うへ向かって行って、ピストルをとりだし、発射して、かけ 夜のけばけばしい世界を見ても、彼がこれから殺そうと準備 わ 足で逃げるという動作、そこで彼は詫びをいって立ちあがり、 している男にたいしても、彼は憤りも怒りも感じてはいなか おけ 口にふくんでいるものをごみ桶のなかへ吐きだしに行った。 った。それというのもあるいは彼が、憤激や怒りのかなたに ほお