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検索対象: 集英社ギャラリー「世界の文学」16 -アメリカ1
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1. 集英社ギャラリー「世界の文学」16 -アメリカ1

丸太小屋ん前の広場にや、四、五人男たちが馬にまたがっ なると、さっそく、おれはでつけえ声でバックの名前呼んで、 て、悪態ついたり、わめいたりしながら、馬走らせてた。船おれの居場所教えてやったが、最初は、どうしておれん声が ねら 着き場の並びの薪の山の後ろに隠れてる二人の若者狙い撃ちその木んなかから聞こえてくるんか、わからねえようだった。 しようってしてたんだーーー・でも、どうしても撃ち倒せねえ。 ひどくびつくりした様子だった。バックは、おれにしつかり 彼らの一人が薪の山の川の側から顔出すと、そのたび、狙い見張ってて、あいつらの姿また見えたらすぐ教えてくれって たくら 撃ちされた。その二人の若者は、薪の山の後ろに背中合わせ言った。あいつら、なにかよからんこと企んでやがるーーす ぐもどってくるにちげえねえって一言うんだ。おれは、できる にしやがんでた。そうすると、両方見張ってられるからなん ことなら、その木から降りてきたかったが、 おれにや降りる そのうち、男たちが、馬走らせたり、わめき散らしたりすだけの肝っ玉ねえんだ。バックが、でつけえ声張りあげ、ま るのやめて、店ん方へ、馬に乗ったまま行こうとした。すか たわめきだした。そして、いとこのジョー ( それがもう一人 さず、若者の一人が立ちあがって、薪の山んうえからじっとの青年の名前だったんだ ) といっしょに、 いまにみとれ、今 狙い定め、乗ってた馬の鞍から男たちの一人撃ち落した。男日の仕返しはちゃんとしてやるから、覚えとけよって言った。 たちはみんな馬から跳び下りると、撃たれた男ひっ掴んで、 バックの話じゃ、その日、彼のとうさんと、二人のにいさん が殺され、また敵のほうも二、三人死んだらしいんだな。シ 店まで運んでこうとした。その瞬間ねらって、二人の少年が ばっと駆けだした。二人がおれの隠れてる木の方に半分ほど ードソンの連中が、待ち伏せしてたんだ。バックに言わ 険 川来たとき、男たちがそれに気づいた。男たちは二人の姿見るせると、彼のとうさんと、にいさんたちは、親類の者が駆け ン なにしろシ と、馬に跳び乗り、あとを追った。いい ところまで追いつい つけるまで待ってりやよかったらしいんだな フ たけど、だめだった。若者たちのスタート が早かったんだ。 ードソン家の連中ども、ものすごく手ごわく、三人じゃ とてもかなわねえってことわかってたからだ。おれは、それ 二人はおれの登ってる木の前にある薪の山にたどりついて、 」にであのハ ーニーとミス・ソフィアはどうなったか聞いてみた。 その後ろにすべりこんだ。それで、また二人のほうが有羽 ンなった。若者の一人は、見ると、なんとバックだった。もうすると、あの二人はどうやら川を渡って、無事だっていうん で、おれは嬉しく思ったが、バックは、ハ ーニー狙って撃っ 一人は、十九歳くれえで、やせた若者だった。 男たちは、しばらく、そのあたりめっちゃくちゃ走りまわたあの日、あいっ殺せなかったこと、ひどくくやしがってた おれはあんなにくやしがるっての、はじめて聞いたな。 ってたが、そのうちそこを離れてった。彼らの姿が見えなく まき つか

2. 集英社ギャラリー「世界の文学」16 -アメリカ1

くなるだ。でも、みんなソラマンてえのはこれまででいっと こっちかけすりまわってだ、この札、おめえさんどっちんも う賢い人だっていうだけど、おら信用しねえだな。なぜかつんか確かめてから、そいつもとんまんまで正しい持ち主に返 ていや、だって、賢い人がだ、そんなわいわいぎゃあぎゃあしたて思うだか ? ちっとでも常識もった人だったば、やる ようにだな ? そうじゃねえだよ いいか、その札だな、 騷いどるどまんなかで年じゅう暮らしてえて思うだかよ。 ゃーーーぜってえ、思わねえだ。賢い人だったら、ポイラーエ二つにひっ裂いて、半分おめえさんに、あとの半分もう一人 場建てたにしてもだ、休みてえとき、そのポイラーエ場閉めの女にやるてんだ。そいったんが、ソラマンあの子供でやろ うてしたことだ。そんで、おらおめえさんに聞きてえだが、 られるよ , つにしとくはずだよ」 「でもね、ともかく、ソロモンってえのは世界でいちばん賢その半分にちぎった札役にたつけえ ? ・ーーそいつだば、なん にも買えねえだ。だったら、半分した子供、なんか役にたっ い人だったんだ。てえのは、後家さん自身がそう言ったから だか ? そんな子供百万人くれるたって、おら断わるだ」 さ、自分のロでね」 「でも、しようがねえな、ジム、おめえの言うことすっかり 「後家さんなんて言おうと、おらにや関係ねえだよ。ソラマ ンは、賢い人じゃねえだな。あの人あおらの知ってるうちで的がはずれてるんだぜーーしようがねえな、おめえの一 = ロうこ と、千マイルも的はずれなんだ」 いちばんひでえことやっただよ。ソラマンが二つにちょんぎ 「だれが ? おらがだって ? ばか言わんどいて下せえ。的 ろうてした子供の話だば、おめえさんだって知っとるだ なんてこと一言わねえで下せえ。おらにや、筋ん通ってること 「そりや、知ってるさ。後家さんその話は最初から最後まで見りや、それくらいわかりますだよ。ああいうやり方にや、 の ン まるつきり筋が通ってねえだす。喧嘩てえのは、半分の子供 してくれたからな」 フ 「だったら、ま、 しいいだよ ! あの考えてえのは、世界でいちじゃねえ、まるごと一人の子供で起こってるんだすぜ。だか 一ばんくだらねえもんだねえだか ? そいつ、ちょっと考えてら、半分の子供でまるごと一人の子供で起こった喧嘩のけり ペ みるだな。切り株があるだろ、あそこにー・ーあれが女の一人っけられるだなんて思う人間、雨が降っても、家に入るって ク 。ハック、そのソラマンの話はおらに え分別もってねえだよ だ。こっちにおめえさんがいるーーこれがもう一人の女だ。 しねえで下せえ。ソラマンのこたあ、おら背中側まで知って こいつが子供だ おら、ソラマンだ。そして、この一ドル札、 な。おめえさんたち二人が、この子供自分のもんだて言うだ。るだからな」 「でも、言っとくけどね、おめえってやつばり的はすれなん そんで、ソラマンのおら、なにしたかてだな。あたりあっち

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あの苦労人の た以上ばくにはもうこの問題は終ったような気がするんです。「君の一一 = ロうのはあの人のお母さんのこと ? この家を出たいなあーーもう二度と帰って来ないことになつお母さんのこと ? 」 てもかまわない」 しいえ、むしろ戦死したあの人のお父さんですね。それか 「おいおい、武士たるもの、最後まで戦い抜かなければいか らあの人のおじいさんと、そのまたお父さんと、それに伯父 たちや大伯父たちーーー皆戦死しているんです」 んよ ! 」そう一言ってコイル氏は笑った。 や コイル氏は今や顔を妙な具合に引きしめつつ、その一一一一口葉を 若者はこの軽口に気勢をそがれたような様子だったが、 がてふたりが一緒に引き返してもと来た道をぶらぶら歩きだ 聞き取った。 「それだけ沢山の人たちが命を犠牲にすれば十分じゃな、 した時、自分でもすぐかすかな笑いを浮かべて答えたのだっ か ? 何であの人はその上まだ君まで犠牲にしようと一一一一口うの 「悪い血統を受けているんですよーーー全員が ! 」 ふたりは古びた玄関口に向かってしばらくのあいだ黙って 「彼女はばくを憎んでるんです ! 」ふたりがまた歩きだした 歩いた。それからスペンサー・コイルがまだ家から十分離れ時、オウエンはそう断言した。 「ははあ、立派な若者を若い奇麗な娘が憎むかな ! 」大きな ていて話を聞かれる恐れのないのを確かめた上で立ち止まる 声でス。ヘンサー・コイルは言ったのだ。 と、突然尋ねた。 コイルはそんなことは信用しなかったが、彼の妻の方は先 「ミス・ジュリアンは何と一言っているのかね ? 」 いしトっ の 「ミス・ジュリアンですか ? 」オウエンはそれと分かるほど に述べたような状況のもとでタ食のために衣裳を整えている レ顔を赤くした。 際、彼がこの時の会話の内容を話すと、これは頭から信用し ン「あの人のことだから自分の意見を隠したりしなかっただろたらしかった。コイル夫人は、一同が家の広間で過した半時 間のあいだに、名誉を失墜した若者に対してのミス・ジュリ ウ , っと田つんだが」 ン「そりゃあ内輪の家族の意見と同じですよ。だってあの人はアンの態度が実にひどいものだったことを既に見てとってい ウ勿論内輪の家族の一員ですから。それから別にあの人自身のたのである。だからミス・ジュリアンがもう早速厚かましく も若いレッチミアにいちゃっきはじめているのに気づかなか もあるし」 た人がいたなら、その人の目は節穴同然だというのが夫人 「あの人自身の意見かね ? 」 の意見だった。あんな子を一緒に連れて来なければよかった。 「あの人自身の内輪の家族ですよ」

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ビターズ てえのは、おれにやだれかにやってもらうようなこと、なん 三人擺 0 て苦味酒に口をつける。それから、ボブとトムが、 にもなかったからだが、バックの黒んばのほうは、年がら年 自分たちのタン。フラーの底に残ってるウイスキーかアップル 。フランデーと砂糖んうえに、スプーンで水一杯かけたやっ、じゅう、きりきり舞いさせられてたね。 いまじゃ、この家族はこれだけになってたけど、以前はも おれとバックに渡してくれるんで、おれたちも老夫婦のため っといたんだーー息子が三人ほかにいたからだが、 に乾杯するってことになった。 三人とも ポプがいちばん年上で、トムがそのつぎだった。ポ。フは背殺されちまったっていうんだ。それにエムリンも死んでただ が高く、肩幅の広い、茶色に日焼けした顔しており、また、ろう。 長いまっ黒な髪とまっ黒な眼したハンサムな青年だった。老 この老紳士ってえのは、たくさんの農園と、百人以上も黒 紳士と同じように、頭から足の先まで、まっ白な麻の服着て、んば所有してる人だった。そして、時どき、大勢の人たちが、 ふち 周囲十マイルか十五マイルのとこから馬に乗ってやってくる 縁の広い。ハナマ帽かぶってた。 丿の近くや川 それから、ミス・シャーロットがいたが、彼女は二十五歳と、五日か六日、この家に滞在して、昼間は、リ に出て景気よく遊んだり、森んなかでダンスやピクニックや で、背が高いし、プライドも高いし、もったいぶったとこも ったりするし、夜は夜で、家んなかで舞踏会開いたりするん あったが、気が立ってねえときや、親切っていや、これほど ひと だ。この人たちはほとんどの者が、この家族の親戚だったら 親切な女もなかったって思うね。でも、気が立ってるときや、 しい。男たちはみんな鉄砲持ってきてたね。言っとくが、こ 険父親と同じで、そんな彼女にじっとにらみつけられてみろ、 しい家柄の人たちなんだ。 おれなんかその場ですくんじまったね。この娘さんは、美人の人たちって、みんなものすごく、 の ン ところで、この近くにや、 いまひとっ名門の家柄ーー五つ フ があって、その一族は、ほとん か六つの家族なんだけど 美人っていや、妹のほうも美人だったが、こっちはミス・ どぜんぶ、シェ。ハ ードソンって名前もってた。この一族も、 一ソフィアっていって、種類の違う美人なんだ。竧みてえによ、 一族に劣らねえ、上品で、血筋のいい金 おとなしく、やさしかったからだ。彳 皮女はまだわすか二十歳グレンジャフォード ク 、、つ ) つつ ) 0 ードソン家 持ちの、プライドの高い家柄だった。このシェパ この家の人にや、一人一人、つきっきりで面倒みてくれるとグレンジャフォード家の両方は、おれが泊ってたグレンジ 黒んばがいた バックまでそうなんだ。おれも黒んば一人ヤフォード家から二マイルばかり川上に行ったとこの、同じ 船着き場使ってたんで、時どき、こっちの家の人たちと大勢 つけてもらったが、こいつはすごく楽しただろうって思うな。 しんせき

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でやったりする。それから、あいつらがもたれかかって泣くぎっしり人が詰めかけてて、三人の娘たちも戸口に立ってた。 メリ ジェインはたしかに赤毛だったけど、そんなこたあ のも黙ってがまんし、王さまにや、兄さんの臨終の様子など ぜんぶ話してやる。王さまはまた王さまで、公爵に手まねでぜんぜん問題にならねえだったね。恐ろしいくれえのすごい ン イそいっそっくりそのまま話してやる。こうして、二人ともま美人で、顔と眼が、後光さしたみてえに、明るく輝いてるん うれ ウるで十二使徒でも亡くしたみてえに、あのなめし皮屋の死んだ。おじさんたちが駆けつけてきてくれたってんで、もう嬉 だこと大げさに嘆いてみせるんだ。そうだな、こんなひでえしくて嬉しくてどうしようもねえらしいんだ。王さまのやっ ク ジェインがその腕んなかに飛びこん が両腕広げる。メリー 一場面にぶつかったってえのは、おれが黒んばでねえかぎり、 思い出せねえよな。それ見たら、おれ人間であるってことがでく。そして、みつくちの娘んほうが公爵んほうに飛びつい てって、みんなで喜びあってるんだ。ほとんどの人たちが、 恥しくなっちまったね。 いや、少なくとも女の人たちは、叔父と姪がこうしてようや くめぐり会え、このように喜びあってるの見て、嬉し泣きし てたよな。 ひじ そのあと、王さまがだね、こっそり公爵肘でつつついて このニュースは、たったの二分間で、町ぜんたいに伝わっ おれはだね、そういったとこは見のがさねえ・ーーそれか たようで、見てるうちに、四方八方から町の人たちが大急ぎ かんおけ で駆けつけてきた。なかには走りながら、上着着ようってしら、部屋んなか見まわしてみて、片隅に棺桶が二つの椅子ん うえに載せてあるの見つけた。それから王さまと公爵おたげ てる者までいた。たちまち、おれたち集まった人たちのどま んなかにいるってことになったが、駆けよってくる足音ってえ肩に手やって、もう一方ん手で眼を押えながら、ゆっくり き ) が いや、もうまるで軍隊の行進みてえだったね。窓も、前庭も、重々しくそっちん方へ歩いてった。みんなは後ろへ退り、二 ! 」って、言う声で、話 人びとでいっぺえになってた。ひっきりなしに、だれかがフ人に通る道あけてやった。「しーっ し声と物音がびたっとやむ。その場にいた人たちぜんぶが帽 エンスごしに、「やつばりあの人だったの ? 」って、聞く。 子をとって、頭を垂れる。あんまり静かなんで、針の落ちる すると、あいつらといっしょに小走りで通ってくだれかが、 音だって聞こえたろうな。そしてだね、あの二人棺桶んとこ それに返事して、言う。 まで来ると、身をかがめ、棺桶んなかのそきこんだ。そして、 「もちろん、そうさ」 うち 一目見ただけで、わっと泣きだした。ところが、それがあん おれたちが、その家に着くころにや、家の前の通りはもう

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おれたち一カ月ほどは時どき強盗ごっこなどやってたが、 だから、おれたち自分の剣と鉄砲、びかびかに磨いて、いっ そのあとで、そういったこと止めちまった。いや、仲間がぜでも出撃できるようしとかなきゃいけねえっていうんだ。ト んぶ止めちまったんだ。おれたちだれにたいしても強盗しょ オムのやつって、ただのかぶらの車に襲いかかるときだって、 けりや、一人だって殺してなかったからだ。ただ、そんなふ剣と鉄砲磨いとかねえと気がすまねえんだよな。といったっ りしてただけなんだ。森からとび出してってよ、豚追いだとて、そいつあ、実際は薄っぺらな木切れと箒の柄にすぎねえ か、市場まで手押し車で青物運んでく女の人たちだとかに襲もんだから、くたくたになるまでいくら磨いたって、びかび しかかるだけで、なんにも奪ったりしねえんだよな。トム・ かになる代物じゃねえよな。おれはだね、スペイン人とエイ ソーヤーだけは、豚んこと「金塊」だとか、かぶらやそうい ラ。フ人そんなに大勢いるんだったら、やつつけられるなんて はうしえき ったものを「宝石」だとか呼んでたけどね。そんなことしぜんぜん思わねえだったけど、らくだと象は見たかったんで、 てから、おれたち洞穴にもどると、今日の戦果はどうだったつぎの日の土曜日、その伏兵ってやつに出かけることにした。 とか、何人殺して、何人しるしつけたとか、そんな話わあわそうして、合図が出ると、森からとび出し、止を一目散に駆 あやるんだけど、おれにや、そんなことしてなんの得になるけおりてったけど、スペイン人もいなけりや、エイラブ人も、 んか、わからなかったんだ。一度、トムのやっ、仲間の一人らくだも、象も、いやしねえ。日曜学校の生徒がビクニック * スローガン に火のついたときの声ってえ棒っ切れもたせて町んなか走らに来てるだけなのさ。しかも下級生ばっかりだ。おれたちゃ くばち 険せたことあったね ( そいつあ、おれたちギャング団の集まるつらのピクニックぶちこわしてね、生徒たち窪地まで追っぱ ドーナッと、ジャ らってったけど、ぶんどったものといや、 合図なんだ ) 。それで、おれたち集まったが、トムが言うに の ン や、あしたスペインの商人と金持ちのエイラブ人てえのがホムがちょっとあるだけだった。もっとも、べン・ロジャーズ さんび フ ーパーま員夫 ロー洞窟で野営するっていう秘密の情報、彼のスパイから手のやつは布製の人形一つ拾ったし、ジョー に入れたってんだ。象二百頭と、らくだ六百頭と、積荷用の歌の本とキリスト教の本見つけてたけどな。そうしてるうち 先生が駆けつけてきたもんで、おれたちみんなほうりだ ・ ( 騾縣千頭以上連れてきてるんだが、そいつがそれそれ「ダイ ク モンド」ってえやっ積んでるっていうのさ。しかもだな、護して逃げなきゃならなくなった。おれは「ダイモンド」って 衛といや四百人の兵隊しかついてねえんで、おれたち、彼のやつが見あたらなかったんで、トムにそう言ったら、トムの 託一一一一口葉じゃ、伏兵ちゅうもん置いて、それからやつら殺して、やっ、そいつああそこに山ほどあったって一一 = ロうんだ。それか 持ってるものぜんぶかっき、ら , っことにしょ , つってい、つのさ。 ら、エイラ・フ人もいたし、象からなにからぜんぶいたって言 どうくっ ほ・つ等」

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それから、も一人笑わねえ人がいたが、この人は荒つばいよ せんし、ロもきけませんー。ー・しかも、身振りで話すにも、 うすした頑丈な大男で、やってくると、あの老紳士の話をぜ までは、片手しか使えないので、身振りのほうもはかばかし くできない状態であります。わたくしたちは、、 しま申した通んぶ聞き、こんだあ王さまの話に耳傾けてた。そして、王さ り、ピーター・ウイルクスの弟で、一日か二日たって、荷物まが喋り終るとだね、この頑丈そうな男が威勢よく話した。 しいけえ。もしもだぜ、おめえがハーヴェイ・ウィ がとどきましたら、そのことは証明できると思います。しか ルクスだったら、いつやってきたんだ、この町に ? 」 し、それまでは、これ以上なにも申さないで、ホテルへ行き、 「葬式の前の日ですよ、あんた」って、王さまが答えた。 待っことにしょ , っと田 5 います・」 「で、何時頃 ? 」 そう一言って、紳士と新しくやってきた唖の弟は行っちまっ 「タ方ーーー日が沈む一時間か、二時間ほど前じゃなかったか た。すると、王さまのやっ、笑いながら、喋りだした。 しや、いかに、も・もっと・もらしいこと 「腕を折ったじゃと 「どうやって来たんだ ? 」 言いやがってー・ーーしかも、えらく便利なやつじゃ、身振りで 「わしはスーザン・バウエル号』に乗って来たのじゃ、シ と , つやり・や しいかわかっとら 喋らなくっちゃならねえのに、。 ンシナテイからな」 んべてん師にとっちゃあ、な。荷物がなくなったじゃと , 「じゃ、聞くぞ、どうして、その日の朝、Ⅱの岬んとこにい なかなかよくできちよるわ ! よくも田いついたもんじゃ たんだ・ーーーカヌーに乗ってだ ? 見えすいとるのにな ! 」 刎そう言って、王さまはまた笑った。そしてだね、三人か四「その日の朝、岬なんかにいやしないですぞ」 うそ ン 「嘘つけ」 人、いや、ひょっとすると五、六人を除いて、ほかの連中も フ みんないっしょに笑ったように思う。笑わなかった者の一人何人かの人がその男に詰めよって、老人で、しかも牧師で じゅうたんじ は、例の医者で、もう一人は、絨毯地でこさえた旧式の旅あるこの方に、そんな口のきき方しないようにつて迫った。 「なにが牧師だってんだ、いいか、こいつあ、べてん師の嘘 行かばん手に持った、鋭い顔だちの紳士だった。この人はだ ク つき野郎なんだ。こいつあ、あの日の朝、岬んとこにいたん ね、蒸気船からたったいま降りてきたばかりで、医者に低、 いいな。よし、それ 声でなにやら話しかけ、王さまん方に時どきちらっと眼をやだからな。おれあ、あそこに住んでる。 りながら、おたげえにうなずきあってたんだーーーそれがルイで、おれあ、あの場所にいたし、こいつもいた。おれあ、こ ヴィルへ行ってたっていう弁護士のリーヴァイ・ベルだった。の眼で見たんだ。こいつ、テイム・コリンズと男の子といっ ごろ

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だぜ」 「でも、またほかの人の話じゃ、牢屋から抜けでて、姿くら -4 ・ 「的なんか関係ねえだ ! おら、知ってるこたあ知ってるだ。 まし、アメリカにやってきたってんだよ」 さび 、、ナえ、本当の的ってえのは、すっと奥んとこーーーずっと 「そいつあ、 しいじゃねえだか ! でも、すいぶん淋しいだ イ深えとこにあるだす。そいつあ、ソラマンの育ちに関係しとねえか なにしろこっちにや、王さまなんてもんおらねえ ウ からな、だねえか、ハッ るだな。いいか、一人か二人しか子供のねえ人考えてみたら、 いや、しねえだな。 その人、子供むだにするて思うだか ? 「そう、いねえよな」 ク 一むだにする余裕ねえだ。そういう人子供の値打知ってるだな。 「だば、勤め先もあるめえ。なにやるつもりだったんだ、そ ところが、五百万も子供が家のまわりうじゃうじゃしてる人の王さま ? 」 考えてみたらば、話違ってくるだな。そういう人だったば、 「そうだな。おれも知らねえや。そのなかにや警察に入るや 子供、猫みてえに、 二つにちょん切って平気な顔してるだ。 つもいりや、フランス語の喋り方教えるやつもいるって思う まだいくらでもいるからだ。ソラマンにや、子供の一人や二な」 人多かろうと少なかろうと、関係ねえだ。ひでえ話だけど 「なんだって、ハック、フランスの連中、おらたちと同じよ うに喋るんだねえだか ? 」 おれ、ジムみてえな黒んば見たことねえって思ったね。あ「いや、違うのさ。やつらの喋る一一一一口葉は、おれたちにやひと いつ、一度、なにか思いこんだら、なんとしてもその考え改こともわからねえーーー・そうたったひとつの一一一一口葉だってね」 シムみてえによ、ソロモ 「ええ、そんなばかなこと , なんでそんなことになってる めさすことできねえ黒んばなんだ。。 ンのことくそみそに言う黒んばなんて見たことねえ。だもんだ ? 」 で、おれほかの王さまの話やりだして、ソロモンのこと一一 = ロう 「おれ知らねえよ。でも、ともかく、そんなふうになってる のよした。そのかわりに、おれずっと昔、フランスで首ちょんだ。おれある本でやつらの喋る一一 = ロ葉ちょっと覚えたことあ んぎられたルイ十六世んこととか、幼い息子の皇太子のことるんだ。いいか、おめえんとこにだれかやってきて、『ポ リ・ヴー・フランズィー』って、一一 = ロったとするねーーーどう思 なんか話してやったんだ。この皇太子ってえのは、王さまに ろうや なったはずなんだが、 その前に捕えられて牢屋にぶちこまれ、う、おめえは ? 」 「なんとも思わねえだな。ただそいつの頭思いきりぶんなぐ だれだかの話だと、その牢屋で死んじまったらしいんだ。 るだな。そりや、白人でなければだけどな。おらほかん黒ん 「かわいそうなやつだすな」 ねこ

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そうにないのを、いかにも残念なことに思った。二人はそのしまっていてーー・深すぎて ( そうとしか思えぬではないか ) とい , つの・も 後もなお別れかねて、彼女は職務をおこたり こう年月がたっては、芽ぶくはすもなかった。マーチャーに 彼が頭のよいところを示した瞬間から、彼女は案内係としてしてみれば、せめて彼女の役にたっことでも何かしていたら の権利を失ったのだからーーー二人はそろってこの邸のことは よかったのに、と思うばかりであった。たとえば、ナポリ湾 無視して、まだ一つや二つよみがえってくる記憶がありはしで転覆した船から彼女を救けだしたとか、ナポリの通りで彼 こじきス一アイレットー ないかと待った。結局のところ、二人がそれそれ手持ちの記女の化粧バッグが、乞食に小剣を使って馬車から盗まれた いっそ彼の方 憶をトランプの札のようにテー。フルに並べおえるのには、何のを取りかえしてやったとか。さもなければ、 ほどの・時 - 間もかからなかった。はっきりしたことと一 = ロえば、 が熱病にかかって、ひとりばっちでホテルで寝こんでいるの そのトランプが運悪く完全にそろったものではない、 というを、彼女が看病に来てくれて、家族への手紙の代筆をすると ・カし、 4 く か、恢復期に入った彼を馬車で外へ連れだすとかしてくれる ことぐらいだった。過去をいかし 、 ) 執〔、いに呼。、ひ、もどし、仞キ、い れ、励まそうと、当然のことながら、かって実際にあった以のも悪くなかったであろう。そうしていたなら今の情景にあ 上のことが出てくるはすはなかった。その過去において、そるべくして欠けているものが何か見つかったはすである。と れもすいぶん昔に、 二人は偶然出会ったのだーー彼女が二十はいうものの、今の様子にもなぜか捨てがたいものがあった。 歳、彼が二十五の時だった。。 たが、こうして思い出してみても、そこで二人は共通の知人もないわけではないのに、なぜこん なに長いあいだ再会できなかったのであろうか、などと、よ それ以上のことは何も出てきそうにないとは、まったくふし ぎではありませんか、と二人は語りあうかにみえた。機会をしもないことをなおしばらくの間、話しあった。「再会」と いう大げさな一一 = ロ葉が使われたわけではなかったが、ほかの人 逸したという思いをこめたような目を、二人は見かわした。 もしもあの折の、あの遠い異国での出会いがあんなに馬鹿馬たちとの合流を一寸延ばしに延ばしていること自体、二人が この再会を無駄にしたくないと思っている証拠だった。これ 鹿しいほど貧弱なものでなかったなら、今のこの機会ももう 二人の間には全部 まで会えずにいた理由を二人してあれこれ考えていると、 獣少しましなものになっていたであろうに。 亠こさい かにお互いを知らないかがかえって明白になってしまうのだ 林数えあげてみても、一ダースにしかならぬはどの些細なこと 密 った。一度など、マーチャーが心に痛みすら覚えた瞬間もあ しかなかった。青春時代のたあいなさ、ういういしい単純さ、 無知ゆえの愚かしさぐらいのものだった。ささやかな可能性った。親しいっきあいはまったくなかったのだから、彼女を の芽もないではなかったが、あまりにも地中ふかく埋まって旧友だというふりをするのは無駄だった。それにもかかわら

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とうみつ あたしも言ってたでしょーーーすみません、そちらの糖蜜のおうに切ってあるってことですって一言うでしよ。それで、あた 皿こっちにまわして下さい あたしもたったいまダンラッ しや、それどう思うかって言うんですか ? そりや、ぜった プおかみさんに言ってたでしよ、どうやってあの丸砥石あの いひとりで切れたってことはないでしょ だれかが切った ン イ 小屋んなかまで運んでったんかしらってね。だれにも手伝っんだって思いますわよって言ったわよ。信じる信じないはそ 工 ウてもらわすによ、 しいわねーーー手伝ってもらわすによ ! でちらの勝手ですけど、あたしやそう考えてるの、たいした考 も、そこんとこなのよ。まさか、そんなはずないって、あたえじゃないかもしれないけど、そう、それだけの考えなんだ ク 一しは言ったのよ。手伝ってもらったはすって言ったの。いや、けど、あたしや、そう考えてますって言ったのよ。そりや、 たくさんの人に手伝ってもらったはす、そう、あの黒んばは もっといい考え思いつく人いたら、その考え言ったってかま 十何人の人に手伝ってもらったはすって言ったの。そしてね、わないわよ。あたしの言いたいのはそれだけ。そして、ダン ここの黒んば一人残らす生皮はいででも、手伝ったのはだれラップおかみさんにや言ったんだけどねーー」 なんか、さがしてみせるわって言ったの。そして、そのうち 驚いたのなんのって、フェルプスおかみさん、あれ だけのことぜんぶやってのけるにや、農場一軒分の黒んばど 「十何人だって , 四十人かかったって、あれだけのこと も毎晩四週間あの小屋に集まってきてたに 違いないですぜ。 ぜんぶやれるかどうかわからないな。あの食卓ナイフで作っあのシャッ見てごらんーーありとあらゆるところに、秘密の た鋸とかなんとか、見てみるんだね。そいっ作るのにどんアフリカ文字がべったり書きこんであったからな、しかも人 なに手間かかったことか。その鋸で切ったべッドの足見たか 間の血でだ , ものすごくたくさんのやつら、ずっとかかり 六人の男が一週間かかる仕事だよ、あれは。べッドのう つきりで休ます書いてったに違、 いや、あれ読める人 わら えに載ってたあの藁で作った黒んばの人形見たかい。それか いたら、わしは二ドルくれてやっても、 ししそれから、あん ら、あのーーー」 なもの書いた黒んばたちひっ捕まえたら、いやってはどひっ 「おっしやる通りですよ、ハイタワーさん ! あたしや、フばたいてやらなきや、そうしたら エルプスさんご本人に たったいま、そう言ってたんです。 「あの黒んば手伝ってる人たちがいるんですよ、マープルさ すると、あのかた、どう思います、ホッチキスおかみさんつん ! もうちょっと前からこの家に来てらしたら、そうお思 て聞くでしよ。それで、あたしや、思うって、なにをですか、 いになったって思いますわ。いや、なにしろ、その連中って、 フェルプスさんって聞いたら、あのべッドの足鋸であんなふ手あたりしだい、なにからなにまで盗んでったんですからね なまかわ