けたり、道具にするためスプーンとか、そういったもの、おこのちびっ子悪党め。いますぐ、この場で、おまえたちとっ ばさんのエプロンのポケットに入れてとどけたり ちめてやらなきや、おばさんおさまらないわ。考えてもごら 「まあ、なんてことするんでしよう ! 」 ん、このおばさんはだね、毎晩毎晩、ここでこうしてーー・・ーお ねずみ 「それから、ジムの相手するようにつて、鼠とか、蛇とか、 まえ、このいたすらっ子め、傷がよくなったら、悪い性根叩 そういったやつ小屋に詰めこんだりすることもしなきゃならき直してくれるから、そう、おまえたち二人ともだ ! 」 なかったんですよ。ところが、そのあと、おばさん帽子にバ ところが、トムのやっすごく得意そうに、また嬉しそうに ター隠してたトムをですね、あんまり長いあいだ家んなか引 してやがるんだ。。 とうしても自分抑えることできねえらしく、 きとめたんで、も少しで計画ぜんたいがおじゃんになるとこ舌がもうひとりで動いちまうんだなーーおばさんもまたおば でしたよ。なにしろ、ばくたちがですね、小屋から出ねえうさんでよ、しよっちゅうロさしはさんで、火吐くみてえに喋 ちに男たちが駆けつけてきたからです。ばくたち飛びださな ったね。だもんで、二人が一度にやりあったときはだな、も きゃならなくなって、みんなはばくたち逃げだす足音聞いて、う猫が会議開いたみてえだったな。おばさんが言ったね。 わら ばくたち狙って撃ってきて、ばくなんかその一発くらっちま 「そうなの、じゃ、楽しめるいまのうちに、せいぜい楽しん ったんです。ばくたちはですね、道のわきに隠れて、みんなでおくんだね。というのはだね、よくおばえておきなさい、 やり過したんです。犬どもも追っかけてきたけど、ばくたちまた、あいつに余計な手出しするの、おばさんが見つけたら 険 にゃなんの興味も示さねえで、いちばん騒々しい音んする方 へ走っていっちまったね。それで、ばくたちカヌーに乗って、 「手出しするって、だれにですか ? 」トムのやっ笑うのやめ ン 筏ん方へ漕いでって、無事にみんな逃げおおせたんです。ジて、びつくりした顔で聞いた。 フ ムも、これで自由の身になったんです。しかもですよ、それ「だれにだって ? なに言ってるのよ、もちろん、あの逃亡 はばくたちがぜんぶ自分たちだけでやったんです。すごいっ 又隷にきまってるじゃないだれだと思ったんだい、おまえ て思いませんか、おばさん ! 」 ク 「なんですって、おばさんこんな話聞いたっての生まれては トムはだね、すごくまじめな顔しておれんほう見た。そし じめてだわ ! そうすると、おまえたちだったのね、こんなて、言うんだ。 に大騒動引き起こし、みんなの頭すっかり狂わせちまったり、 「トム、おめえおれにあいつのこたあだいじようぶだって一言 あたしたちみんなにもう死ぬはど怖い思いさせたりしたのは、わなかったかい ? 逃げたんじゃなかったんかい ? 」
そこで、おれたちそのまま坐って見守ってたが、そのうち、頭おかしくなったのかしら ! 」 トムがちょっとからだ動かしたと思「つと、ごく自然に眼開い 「いや、ぜんぜんおかしくなってませんよ。ばくはですね、 て、まわりに眼やりながら、こう一言った。 自分でなに喋ってるんか、せんぶわかってます。ばくたち うち ン どうなってるん イ「あれつ、なんだ、家に帰ってるのかな , ば / 、とトムだけ・ど一 はんとにあの黒んば自由にしてや 工 筏はどこへ行ったんだ ? 」 ったんです。自分たちで計画たてて、やったんです。しかも、 「そりやだいじようぶだよ」 かっこよくやれたんです」トムはこんなふうに喋りだした。 ク 一「それから、ジムのやつは ? おばさんそういったトムぜんぜん止めようとしねえで、ただ マ 「これもだいじようぶ」って、おれ一一一口うにや言ったけど、そそこんとこに坐って、トムん顔じっと見つめてるだけなんだ。 れはど景気よく一一一一口うわけにやいかねえだったよな。ところが、そして、トムが喋るままにしてるんだ。それで、おれなんか、 トムのやっぜんぜんそれに気がっかねえで、こう言った。 そんなときロはさんでもしようがねえだろうって思った。 「そりや、よかった ! すばらしいそ ! さあ、これでおれ「いや、ほんとに、おばさん、ものすごく手間がかかっちま たちうまくいったし、。こ、じようぶだ。で、おばさんに言っ ったんですーー何週も何週もですーーおばさんたちがみんな たんかい ? 」 眠ってるあいだ、毎晩、何時間も何時間も、かかったんです。 ろう おれがだね、一一一口ったよって言おうとしてたら、おばさんさそしてですね、ばくたち盗まなきゃならなかったんです、蝋 っそく一一一一口葉さしはさんでこう聞いた。 燭とか、シーツとか、シャッとか、おばさんのドレスとか、 「言ったって、なんのことなの、シッド ? スプーン、ブリキの皿、食卓のナイフ、べッドの火入れ鍋、 まるといし 「いや、ぜんたいをどんなふうにやったかってことです」 丸砥石、小麦粉、いや、もう数かぎりねえほどいろんなもの のこぎり 「ぜんたいって、なんのぜんたいなの ? 」 ですよ。おばさん鋸とか、ペンとか、銘文とか、あれやこ 「いや、だって、そのぜんたいですよ。ぜんたいっていや、れや作るってえのがどんなにたいへんなことか、わからねえ ひとっしかねえでしよう。ばくたちーーーっまりばくとトムでしよう。また、そいつがどんなに楽しいかってこともわか が、どうやって逃亡奴隷自由にしてやったかっていう、 らねえでしよう。それから、しなきゃならねえことっていや、 かんおけ そのぜんたいですよ」 棺桶とか、そういったもんの絵描いたり、匿名の手紙書いた 「まあ、なんてことでしよう ! 逃亡奴隷を自ーーこの子っ り、避雷針上がったり下がったり、小屋んなかまで穴掘って いったいなんのこと言ってるの ! あら、まあ、また ったり、縄梯子こさえて、そいつをパイんなかで焼いてとど
「それで彼の方でもあの女のことを好きだと思うかね ? 」 「それでほんとうに連れて行ったのか ? 」 だが、彼の生徒はうつむくと訴えるような溜め息をもらし 「知りませんーー上がって来てしまったから」 こ。「 ( まくには分かりませんー - ーーばくにはお手上げですー スペンサー・コイルは自分の生徒と長いこと目を見交して ズ ム でもあいつは確かに何かを見るか聞くかしたんですよ」 、た。「彼らはもう広間にはいないだろう。オウエンの部屋 イ 工若者はそうつけ加えたのだった。 はどこだ ? 」 「その馬鹿馬鹿しい場所でかね ? どうしてそれが分か 「全然知りません」 る ? 」 コイル氏は当惑した。彳 皮も同様に無知であり、それかとい たた 「つまり何か見るか聞くかしたような顔付きをしているんでってドアからドアを叩いて回るわけにもゆかなかった。 若い す。そういう場合分かるものでしよう。そのような態度なんレッチミアにはひと思いに寝てしまうように命じておいて通 路へ出て来た。オウエンの部屋もこの家の多くの部屋同様古 「それじゃ何故あの男ははっきり口に出して言わないん い昔からの名前が外に記されていたことを思い出すと、オウ エンが以前自分を案内してくれたその部屋へ行く道が自分に 若いレッチミアはちょっと考えてから答えを見いだした。 見つかるかどうか考えてみた。。 たが。ハラモアの屋敷の廊下は 、くそ・つ 「きっとあまりに気持ちが悪すぎるからでしよう」 錯綜していた。それに召使たちの何人かはまだ起きているだ ス。ヘンサー・コイルは破顔一笑した。「それじゃあ君は自ろうし、家の中をうろっき回っているような感じを与えたく 分が中に入らなくてよかったと思ってるんじゃないのか ? 」 なかった。彼は自分自身に割り当てられたいっかくへ戻って 「ええ、とっても ! 」 来た。そうしてコイル夫人は間もなく彼の眠れない興奮がま 「さあもう寝ろ、このあほう」スペンサー・コイルはまた落 だしずまっていないことを知ったのだった。夫人もまたこん ち着かない様子で相手をからかいつつ笑って言った。「しゝ な恐ろしい所では「そくそくする感じ」が益々強まるばかり し寝る前に、自分たちふたりをだまそうとしてるんだと言っ だと言い出したので、夫婦は宵のロを話をして過し、そこで たあの娘の非難に対して、あの男の方はどういう態度を取っふたりが寝入るまでの時間のいくらかはどうしてもレッチミ たかそれを教えてくれ」 アと交した会話レ こついての夫の物語り、およびそれについて 「「それじゃあ君が自分でばくをあそこへ連れて行って、鍵のふたりの意見の交換で埋められることになった。二時近く をかけてくれ ! 』って言ってました」 になってコイル夫人は、皆から迫害されている自分たちの若
自分じゃよっぱどえらくなったつもりなんだろ、え、どうなみせる、そういったふうに子供育てたりしたら、どうなるか んだ ? 」 ってえこと教えてやる。おめえもだ、またあの学校の近くう 「そうかもしれねえし、そうでねえかもしれねえ」って、おろついたりしてるとこおれこんど見つけたら、ただじやすま ン イ ねえそ。おめえのかあちゃんだって、死ぬまで、読むことで れは答えた。 工 ウ 「なまいき言うんじゃねえぜ」って、彼が言った、「留守しきなきや、書くこともでけんかっただそ。家のもんは一人だ って、そんなことでけんかった。おれもでけねえ。だのにだ、 てるあいだによ、てめえ、やけに気取ったロのきき方するじ ク 一ゃねえか。てめえのそのくそいまいましい鼻つばし折ってやおめえはこんなふうにだ、でつけえ面しやがって、よ。おれ ろうか、ぐうの音もでねえようにな。それにだ、てめえ、学はだな、黙って引きさがる人間じゃねえぞーー・聞いてるな ? おめえの本読むとこ聞かせろ」 校なんかへ行ってるってえじゃねえか。できるんだろ、読んおい だり、書いたりするんが。てめえのおやじにや、それができ おれは、本取りあげると、ワシントン将軍と戦争の話読み はじめたが、 一分の半分も読まねえうちに、とうちゃん手で ねえちゅうので、てめえ、自分のほうがおやじよりえれえっ たた てでも思ってるんだろう ? そういうところ、このおれが叩その本ばしんっとなぐりつけたんで、部屋ん向こうまでふつ き直してやる。だれなんだ、そういったくだらねえ、たいそ飛んでった。 どこのどい うなことやっても、 しいって教えやがったのは 「そうなんか。やつばり読めるんだな。読めるってえ、おめ うそ えが言ったときや、嘘だろうって思ってたがな。おい、こっ つなんだ ? 」 ち見ろ、気取ったまねはよせよ。おれがまんしねえそ。おい 「後家さんだよ。そう言ったのは」 「よこ、・ ~ 豕 ? なまいき野郎、おれは見張ってるからな。で、あの学校の近 で、その後家とやらにだ、なんの関係も ねえことにだ、ちょっかい出しても、 ししって言ったのはどこ くでこんどおめえひっ捕めえたら、いやってほどぶんなぐる からな。それから、おめえ、知らねえうちに信、い深くなって のどいつなんだ ? るんじゃねえだろな。こんな息子ってどこにもいやしねえ 「だれに言われたからっていうんじゃねえです」 「ふーん、そうか、だったら、ちょっかいだしやがったらどぞ」 それから、とうちゃん牛と男の子描いてある青と黄色の絵 うなるか教えてやるぜ。それから、こら、てめえもその学校 ってやら行くのやめろ、聞いてるな ? てめえの親にたいし取りあげると、聞いてきた。 てだ、威張ったり、えらくもねえのにだ、えらそうな顔して「なんでえ、これは ? 」
「ふーん、それで、そのあとは なにやってた、やつらてりや、これ以上の役者必要としねえなーーーそれなのに、お は ? どんなそぶりだった ? 」 れたち、そいつを二束三文で手離すって馬鹿なこと、やっち 「なんにもしてません。見たかぎりじゃ、これといった変なまったんだ。しかも、まだ、その三文すらいただいてねえ。 そぶりも見せませんでした。抜き足差し足で出てっただけでおい、その三文ーーーっまりだ、あの手形いまどこにある ? 」 す。それで、ばくあ、すぐにこう思ったんです、やつら、陛「銀行じゃねえか、取りたてるためにな。ほかに置いとくは 下がもう起きてらっしやるって思って、陛下ん部屋の片づけすねえだろう ? 」 「旱ごっか、 じゃ、ありがてえ、そいつあだいじようぶってわ かなにかしようって入ってったところ、陛下がまだ起きてら っしやらねえんで、まだ陛下起こしちまってねえんだったら、けだな」 おれはちょっとびくびくしながら聞いてみた。 起こさねえうちにずらかったほうが無難だって逃げだしてき 「なにかますいことあったんですか ? 」 たんだろうって、ね」 「こりや、また、とんでもねえことになっちまったそ」って、 王さまが、さっとおれん方むいて、どなった。 むなくそ 「おめえの知ったことじゃねえ ! 余計な口出ししねえで、 王き、寺 ( が一一 = ロい、 二人ともえらく胸糞の悪そうな顔し、また、 いかにも間の抜けた顔した。二人ともその場につっ立って、自分のことやっとれーーー自分のことなくてもだ。この町にい やがて公爵んほうが、突るあいだは、そのこと忘れねえでいろよ、な。聞こえてる しばらく頭掻きながら考えてたが、 な ? 」それから、公爵に向かって、「ここんとこはぐっとが 険然、ちょっとしやがれた声で、ほくそ笑みしながら、こう一一 = ロ まんして、黙ってるはかねえだろう。他一一 = ロ無用っていこう」 ン って一一一一口った。 「いや、実に見事なもんだ、あの黒んばども、自分の手札ほ フ んとに上手に使いやがって。この土地出ていくのがいかにも梯子降りかけながら、公爵のやつは、また、含み笑いして 悲しいような顔しやがって ! おれは、ほんとに悲しんでる言った。 うめえもん んだと思っちまった。おたくも、そう思ったし、みんなそう「早く売って、利益が上がらねえんだからなー ク だよ、商売が はんとにだよ」 ツだと思ってた。黒んばにや、役者の才能ねえなんて、もう、 王さまが、振り向いて、公爵にどなった。 おれに言っても信用しねえそ。いや、やつらの芝居にかかっ ちゃ、だれだって騙されるだろう。おれの考えじゃ黒んば舞「わしはじゃ、やつら早く売っ払うのがじゃ、いちばんいし って思ってやったわけじゃ。たとえ、結果的にじゃ、利益が 台に出しや、一財産かせげるぜ。おれ、資本になる劇場もっ
に、お好きなやり方で投資して下さってけっこうです。お金 その医者は、娘さんの方むき直って、こう一一一一口うんだ。 まの受け取り証はいりません」 「わしは、あんたがたのおとうさんの友達であったが、い それから、メリー ・ジェインはこちら側から王さまを片腕 では、あんたがたの友達なんだよ。それで、一人の友人とし て、そして、あんたがたを危害や災難から守り、保護してあで抱き、反対側からはスーザンとみつくちの娘が同じように げようと思う正直な友人として、警告するのだけれど、この王さまを抱いた。みんなは拍手送り、床踏み鳴らしたが、ま リるで嵐が襲ってきたみてえだったね。その間じゅう、王さま やくざ者には背を向けなさい。そして、この男、そう、ギ こうぜん シャ語だの、ヘブライ語だのと、唐人の寝ごとロ走っているんほうは昂然と頭もたげて、得意そうににつこり笑ってるん だ。それ見て、医者が言った。 この無知な浮浪者との縁を切ってしまいなさい いかにも見えすいたいかさま師だ , ーーどこかで中味のない名「よろしいとも。わしはこの一件からいっさい手を引く。し かし、ひとつだけみんなに警告しておこう、今日のことを思 前や、事実をたくさん聞きこんで、ここへのりこんできただ い出すたびに、あなたがた、気持ちが悪くなるようなときが けなんだ。それなのに、あんたがたは、それをなによりの証 かならずやってくるからな」ーーーそして、そのまま出ていっ 拠だと思いこんでいるんだ。しかも、あんたがたはだね、こ 、いはすのおろかな友ちまった。 こに集まったもう少し分別があっても 「承知しました、先生」って、王さまは、ちょっとからかう 人たちの手を借りて、自分を自分で騙しているんだ。メリ ような口調で言った、「そうなったら、先生に診てもらうよ 険 ジェイン・ウイルクス、わしがあんたの味方であるばか う、お迎えやりますから」ーーーそれ聞いて、みんなは大笑い りか、無欲な味方であることはわかっているな。それだった ン した。そして、これはまた、とびつきり気のきいた答えだっ イら、よく聞きなき、い この卑劣な悪党ほうりだしなさい フ そうするよう、このわしが、頼んでいるんだよ。そうするだて一一一一口った。 ろうな」 ジェインは背筋しゃんと伸ばしたが、いや、なんと ク ツもきりつとした感じだったね ! そして、こう一一一一口うんだ。 ところで、みんなが帰ってしまうと、王さまのやっメリ 「あたしの答えは、ここにあります」そして、金貨の入った ・ジェインに客間があいてないだろうかってたすねた。す 袋持ちあげると、そいつを王さまの両手に渡して、言った。 ・ジェインは、ひとつあいていますので、それ 「この六千ドルお受け取りになって、あたしと妹たちのためると、メリー
のろ 船乗りにとっては呪いやののしりの言葉は日常用語のうちだった。「おい、今度は何を考えとるんだ ? きみの叫び声 で、彼らは凪の夢心地のなかでも嵐の最中でも罰あたりな文を聞いたが、あれは歌の声とは違っていたようだな」 トップスルャーダム コーポザント 「違うでしような、むろん。檣頭霊火よ、われら一同に恵み 句を吐き散らす。中檣桁端からもう少しで逆巻く海に転落し . レ イ 。いまだってそ そうになっても、呪詛の言葉を投げつける。しかし、わたしを垂れたまえ、って言ったんです、わたしま。 つら コーポザント ーレ が経験したどんな航海でも、神の燃ゆる指が船の上におかれう祈りたいですよ。しかし檣頭霊火ってのは、陰気くさい面 メ こま同純Ⅲが たとき、神の「メネ、メネ、テケル、ウバルシン ( 数えたり、 にばかり恵みを垂れるもんですかね ? ーーー笑い顔し。 シュラウド わか バックさん 数えたり、杆れり、分たれたり ) 」がすべての横静索やその他のねえのかな ? まあ見ていなさいよ、スター 索類のなかに織りこまれたときは、ごくありふれた呪いの言 いや、こう暗くちや見えねえか。じゃあ、聞くだけ聞いとい てもらいましよう。わたしはね、さっきのあの火は吉兆だと 葉でさえめったに聞いたことがない この蒼白い火が上方で燃えていたあいだ、乗組員たちは魅思うんです。なぜかっていうと、あの三本のマストはこれか せんそう ら鯨脳油でいつばいになろうっていう船艙に根をおろしてる 入られたようになってほとんど口をきかなかった。彼らは前 り′れ、 : っ 甲板に寄り集まって立ち、蒼白い燐光のなかで、はるか彼方わけだ。その鯨脳汕は、い ずれ樹液みたいにマストに吸いあ あや の星座のように眼をきらめかせていた。その妖しい光に浮彫げられることになる。そうです、この船の三本のマストは鯨 ろうそく 脳油の蝦燭になるーーこれすなわち、われわれが見た吉兆で りにされた黒人ダグーの巨体が、実際の体格の三倍ぐらいの 大きさに浮かびあがって黒雲のようにみえ、そこから雷鳴がす」 ちょうどそのとき、スタッ。フの顔が少しすっ明るみのなか 発するのではないかと思われるほどだった。開いたままのタ バックは」刄がついた シュテゴの口からは鮫を思わす白い歯が覗き、そこにも檣頭へ浮かび出てきはじめたことにスター ザント 「見ろ ! 見ろ ! 」マストの上 霊火が燃え移ったかのように異様に光っていた。そしてクイ彼は上を見あげて叫んだ ークエグの入れ墨もまた、この怪異な光に照らされて、悪魔にふたたびあの先細りの炎が現われていたのだ。その蒼白さ は、前に倍して神秘的にみえた。 の青い炎のようにその体の上で燃えていた。 コーポザント やがて上方の蒼白い光が薄れていく につれてこの活人画も「檣頭霊火よ、われら一同に恵みを垂れたまえ」スタップが ばやけていき、ピークオド号もその甲板上の人間たちもすべふたたび叫んだ。 メーンマスト と・はめ・ 主檣の基部、例のスペイン金貨と炎の真下に拝火教徒が て、ふたたび闇の帳に包まれた。少し間をおいてスター クが前方へ行きかけたとき、誰かに突きあたった。スタッ。フひざまずいていた。それはエイハ。フの面前だったが、うなだ ′、は なぎ
か。そりや、ありもしねえ、あの青い矢印ってえやっ図々し のやめなかったんです。そして、この筏んとこまで来ると、 ジムに、急ぐんだ、でないとおれ捕まって、そのあと縛り首く持ちだしたってえのは、別だけどな。あれはほんとよかっ になっちまうからって言ったんです。それからまた、陛下と たよーーーまったくすばらしかった。おれたち助かったってえ ばくはすごく気の のもそのおかげだからな。あれがなかったら、やつらあのイ 公爵は、もう生きておられねえって言い 毒に思ったんです。ジムもそんな様子でした。それだけにでギリス人どもの荷物がとどくまでおれたちをだ、留置場にぶ すね、お二人が近づいてくるのがみえたときや、とても嬉しちこんでーーーそのあとは こりや間違えねえわな、監獄っ かったです。ほんとかどうか、ジムに聞いてもいいですよ」 てことになってたろう。ところが、あの策略にひっかかって ジムも、それはその通りだって言ってくれた。ところが、 よ、みんなして墓場へ出かけ、そこへ金貨が出てきて、さら にいっそうありがてえことになったのさ、な。もしもだぜ、 王さまのやっジムには余計な口きくなってどなり、「ふーむ、 そうか、いかにもありそうな話だ ! 」って、言った。それかあの馬鹿どもすっかり気とられて、おれたちつかんでた手離 らまた、おれんことゆすぶって、こんなやっ溺れさせてやるして、一目見ようって駆けださなかったら、おれたち、今夜 しかも、いつまでも長 って一一 = ロうんだ。ところが、それ聞いて、公爵がこう一言ってく は首巻き首にまいて寝てたろうな れた。 もちするって保証つきの首巻きをなーーーそんなに長もちしな くたって、おれたちにや充分だったろうに、よ 「小僧離してやりな、この間抜け爺 ! おめえ、こいったあ しやペ 二人はちょっと喋るのやめたーー考えてるんだーーやがて 険違ったことなにかやったってでも一一一一口うのか ? おめえ、逃げ だしたとき、この小僧はどうなったか、聞いてまわったか王さまがだね、とばけた上の空みてえな様子で言った。 ン 「ふーむ ! それなのに、おれたちあの黒んばどもが盗んだ おめえがそうしたってこと、おれにや覚えねえな」 フ ってばっかり思ってたんだ ! 」 それで、王さまのやつおれ捕まえてた手離してだね、あの くそみそ それ聞いて、おれ尻のあたりむすむすしてきた。 町と町の人たちみんなを糞味噌にののしりだした。ところが、 「そうなんだ」って、公爵がなんとなくゆっくりと、考え考 ルハハ対が ( たこ、つ一一 = 日つ。 ク 「おめえさん、ののしるんだったら、自分自身ののしったほ え、皮肉たつぶりに言った。「そう思ってたんだ」 うがすっといいんじゃねえかい ? だってだぜ、ののしり受 三十秒ほど間おいてから、王さまがだね、一一 = ロ葉長くのばす ける資格のいちばんあるのは、おめえなんだから。おめえつみてえな口調で言った。 「少なく、ともーーーーわし、のほうは、そう、思って、た」 て、最初からまともなことひとつだってやってねえじゃねえ うわ
はなかった。自分が人目にはさそそう見えるだろうというこ 間では例のことは歳月を経るに従って神聖化され、いまや彼 とは、彼にも想像できた。肝心なのは、あの話を知っているに関する「ほんとうの真実」という名で呼ばれるようになっ ただ一人の人に対する態度だった。その人に対してはあの話ていた。もともとそれは彼が自分用に使っていた名称であっ 題を避けるような態度はとらずに、むしろ進んでそれに触れたが、彼女もいつのまにか使うようになっていて、しばらく てみせ、あるいはわざわざ触れるようなことはせすに、むし して振り返ってみると、 したいいっから彼女がいわば彼の ろ避けて通るといった具合に、自然に、自在にふるまって、考え方のそばに寄りそって立っことになったのか、そしてや この問題を近よりがたい重々しいものにしないようにつとめ、さしく話を聞いてやるという美しい態度から、彼を信じきる ・一つけい もっと身近な、場合によってはおどけた、滑稽なものにさえというさらに美しい態度にいっから変わっていったのか、は つきりしないのであった。 しておくべきなのだ。彼がミス・ ートラムに楽しげな手紙 を書いて、長いあいだ運命の手にゆだねられていると思って あなたはばくを無害な気違いぐらいにしか思っていらっし いた大事件というのは、あなたがロンドンに家をお買いにな やらないのでしょ , つね、と彼がなじるよ , つに一一一一口 , っことはよく ることだったのかもしれません、なにしろこれはばくにも大あった。これはすいぶん広範囲なひろがりをもった言い方だ いに影響のあることですから、と述べた時に彼の、いにあった ったから、最終的には彼にとって二人の関係を言い表わすも のは、疑いもなくこういうおどけた気分を保っておこうとすっとも気楽な定義になった。彼はたしかに少々変わったとこ る気持だった。あれ以後、その話題をもちだす必要はほとんろがあったが、それでも彼女はそんな彼が好きで、世間を向 どなかったので、これがそれに触れる最初の機会だった。し こうにまわして、事実上彼の親切で賢明な世話係になった。 かし、彼女がその返事に近況報告をしたのにつづいて、あれそれは報酬こそなかったが、結構おもしろい仕事だったし、 だけ特殊な将来を約束されているかに見えたあげくが、こんほかに近い係累もないので、彼のめんどうを見たからといっ なつまらないことでは、わたくしはけっして満足できませんて、評判をおとすこともなかった。むろん世間は彼を変人と 獣と書いてきた時には、ひょっとすると彼女の方がもっと大規見たが、彼女。こナま皮。ゝ オし。彳力いかなる点で、また、何よりも、な 林模な変事を思い描いているのではないかと彼は思った。いすぜ変わっているかを知っていた。だからこそ目かくしのヴェ れにしても、彼女がつねに彼の生活を見まもり、彼女の知っ ールのひだを上手に整えて、人目をそらすことも彼女にはで にている例のことに照らして判断や評価を下していることを、 きたのだ。二人にとってあれは陽気なこととでも見なすしか 彼は時がたつにつれて徐々に意識するようになった。二人のなかったので、彼女はほかのことと同じように、彼の陽気さ
なってた。トムのやつはその黒んばの顔じっと不思議でなら 「ひとことも、だな ? 」 ねえって様子で眺めてたが、それからこう言った。 「んだ、ひとことも一一 = ロわねえだ」 「おれたち知ってるって、だれがなんだ ? 」 「で、おめえ、前におれたち見たことあるかい ? 」 「だれって、ここにいる逃亡奴隷だがな」 「ねえだよ、坊っちゃま。おばえてるかぎり、ねえだな」 「こいつが知ってるなんてねえだろう。なんでおめえ、そん こうしてから、トムは例の黒んばん方むいたんだが、その なふうに田 5 ったんだ ? 」 黒んばのやつあ気が狂ったみてえな、弱ったみてえな顔して 「なんで思っただってだすか ? たったいま、こいつおめえたね。トムが、ちょっときびしい口調でこう言った。 さまがた知ってるみてえに、大声出しただねえだか ? 」 「ともかく、おめえどうかしてるんじゃねえか ? なんでお トムがいよいよ狐につままれたみてえな顔して、言ったよめえだれかが大声出したなんて思ったりしたんだ ? 」 よ。 「ああ、坊っちゃま、こりやとんでもねえあの魔女どものし 「ふーん、そいつあ、またすごく奇妙な話だぜ。大声出したわざなんだだ。おらいっそのこと死んでてたばて思うだ、ほ って、だれがだい ? で、そいついつ出した ? で、なんてんとそう思うだよ。坊っちゃま、あの魘女どもだ、いつもこ 言ったんだ ? 」そうして、おれん方ふり向くと、まったく落 いったことやるんだで、おらもういつもおっかねえだで、死 ちついた様子で、こう一一 = ロうんだな。「なあ、おめえ、だれかぬ思いするだよ。坊っちゃま、このこただれにも言わねえで 険大声出すの聞いたかい ? 」 下せえ、お願えだす。でねえだと、サイラスのだんなさまに の もちろん、答えはひとっしかねえよな。それで、おれは言また叱られるだから。だんなさまいつも魔女なんていねえだ ン て言いなさるだから。おらいまだんなさまここ にいなさった 「聞かねえよ。だれもなんにも言っちゃいねえじゃねえか」 らばて、思わねえだいられねえだよー、ーそしたら、なんて言 すると、こんだあ、トムのやっジムん方むいてだね、それわれただかな ! こんどのこだあ、ごまかすわけにやいかね ルまでジムにや一度も会ったことねえみてえに、ジムん顔つくえだっただろな、ほんとだだよ。でも、いつもこうなってし ク づく眺めながら、言った。 まうだだよな。がんこな人間いつまでもがんこだだ。自分で 「おめえかい、大声出したってえのは ? 」 調べて自分で確かめるてことしねえだよ。それで、こっちで 明「出さねえだよ、坊っちゃま」って、ジムが言ったね、「お確かめて、そのこと教えてやったでも、こっちの言うこと信 らなんにも言わねえだ、坊っちゃま」 じねえだ」 きつね