答え - みる会図書館


検索対象: 集英社ギャラリー「世界の文学」20 -中国・アジア・アフリカ
265件見つかりました。

1. 集英社ギャラリー「世界の文学」20 -中国・アジア・アフリカ

は子を孕んでいる女を相手にいちゃっいていたが、やがすっかり平らげたのだった。編み下げの娘は舌がもつれるく てから髪を編み下げにした娘を取り上げるとその耳許にロらいへべれけになり、ヘらへらとじゃれついてきた。 き ) き ) や が酒代を払っているのを見て、も身体を起こして立ち を寄せ、そっと何事か囁いた。そして二人は、しきりにの 上がった。するとが、自分の身体でぐいとを座敷へ押し 様子を覗き込んでは、顔を見合わせて笑った。 しばらくすると編み下げの娘はの傍へやって来て、耳許戻し、背後から女たちが背広の襟をつかんで引き戻した。 「そ , っしょ , つ、・旧まっていくそ」 に口を寄せて囁いた は座敷の中央にごろりと横になった。 今夜はあんたと : : : ねえ、 「あのお客さんがあたいに、 「おまえの郷里はどこだ ? 」 でーしょ ? ・ 編み下げの娘が傍へ来て坐り込むのを見てが訊ねた。 「勝手にしろ」 ) の x x だわ」 は腹でも立てているような口調で、ぶつきらばうに答え 「 x x 道 ( 體聟宿 ソウル 「京城へはいっ来たんだ ? 」 「去年よ」 「まあ怖 ! ちっともうれしくないみたい ! 」 は身体を起こそうとした。 といって編み下げの娘はをいっぺんつねってから、ふた またもや吐き気がぶり返してきたので、身体を起こして鎮 たびのほうへ逃げだした。 そして、の傍へ行ってまたしても何かを囁き合うと、すめようとするを、編み下げの娘はカ任せに押さえつけた。 「年は幾つだ ? 」 ぐにのところへ取って返して耳打ちした。 「十八」 こと ? 」 「泊まって行ってね、 「両親は ? 」 生「ああ、そうするよ」 まね 「両親がいたら、ここでこんな真似をしているかしら ? 」 「きっとよ」 イ 「どうして ? ここでしていることは、そんなに亜 5 いことか メ「ああ」 「本当ね ? 」 「ふん、だ : : : あたいだって人間よ」 レ「本当だとも」 「おやおや、おれは、てつきりおまえを天女だと思いこんで 酒を土瓶に四杯も取ったのに、三人の客たちが飲んだのは ほんの二、三杯すつでしかなかった。その残りは、女たちでいたんだが、そういわれてみたら人間様じゃよ、

2. 集英社ギャラリー「世界の文学」20 -中国・アジア・アフリカ

33 明文 魂は死なずに天国へだと ? ふん、聞こえはよいのう。 か、わしのいうことをよく聞け。人の死というものは、魂が 死滅するんじゃ。肉体はそのまま残っとって : : : 肉体が死滅 するんじゃない。魂が死におるんじゃ。その魂が天国へ行く まキ↓よ だあ ? 世迷いごとじゃ、馬鹿ばかしい ちょうしよう チョンチュサ 父は嘲笑するようにこうあしらっていましたが、突然、 田、王事ス主陣は他人に対する尊称で、 ~ さんの意。父親の身 ) は、まことに 怒鳴りつけました。 敬虔なキリスト教徒でした。 一〇六ページ下 「たわけが ! 両班の家でイエスだあ ? 坊主のように頭な ) であり、資産家であっ 支配階級の身分の両珉 ( 段の訳注参照 - も、つし た頑迷な父親のもとで、十七、八歳まで孔子と孟子の教えをんそ刈りおって。わしの前でもう一度そのようなことをぬか 学んでおりましたが、たまたまある日 、礼拝堂というところしおったら、その素っ首を刎ねてくれるそ」 田主事は、父と母の霊魂の救済をイエスに祈りつつ、自室 に行って説教なるものを聞き、ふと、それまで自分が生きて いくうえで理想となるものを知らず、将来というものにも目 に戻るしかありませんでした。 あふ を向けなかったことに驚きを覚え、その日からたいそう敬虔平和で穏やかなうちにも厳格さが溢れていたこの一家に はらん なキリスト教徒になったのです。 キリスト教が飛び込んできて以来、さまざまな波瀾が生じま 彼は、イエスを信じるようになってまず手初めに、妻をキした。 〈地上に平和をもたらすために、わたしがきたと思うな。平 リスト教に導きました。と同時に、単なる〈女房〉でしかな はんりよ かった彼の伴侶は、〈あなた〉であり、〈家内〉、〈きみ〉であ和ではなく、つるぎを投げ込むためにきたのである〉 る妻に等級が格上げされたのでした。 と述べたイエスの一一一口葉は、そっくりそのままこの一家にお いて実現したのでした。七逆罪の一つに数えられる恐ろしい 彼は頭を丸めました。そして父と母にも、キリスト教を伝 えようと試みたのです。 罪悪を、田主事は毎日のごとく犯しました。 迷信というものを罪悪とまで見なしていた父は、田主事が 「天国へは、おまえがお行きよ」 ぐっ・つ 母の答えはこれでした。 キリスト教に入信してからというもの、息子を愚弄するため ムーダン 「天国だと ? 年がら年中花が咲いとるだと ? そう言えば、 と ) を屋敷に招じ入れ、家中を に連日、巫女とパンス ( する肓人 騒がしくするのでした。 植物園では冬でも花が咲きよるわ、天国まで行かすとも : 4 ′いけ . れ

3. 集英社ギャラリー「世界の文学」20 -中国・アジア・アフリカ

「まだ用があるの」 母親は驚きと怒りの声をあげた。 その声はかすれていた。 「いや、ばくが帰ってくれと頼んだんです」 「泣かないでください。あれが帰って来ないようにすればい 彼がおそるおそる言った。 しんでしよう」 「あなたはまだあの女が思い切れないんですか。知らないん 彼はべッドの前に立って、やさしく一言った。 ですよあなたは、あの女を」 彼女はハンカチで涙を拭いながら、顔を輝かせた。 ッドの前へ行って腰をおろ 彼女は一歩二歩歩くと、突然べ し、両手に顔を埋めた。泣いているように見えたが、すぐま「本当なの。それは」 「ええ、本当です」 たその手を離して立ち上がり、 彼は一一一口下に答えたが、彼女はなお不安そうに念を押した。 「わたしはどんな苦万をしようと何とも思わないけど、あの 「それじゃ、わたしの言うことを聞いてくれるんですね」 女だけはご免ですよわたしは死んだって、みんなが死ぬこ とになろうと、あの女の顔だけは二度と見たくありません「聞きますよ。安心していいですよ」 彼は自分の母親のやつれ切った顔を見つめ、衝動的に答え と、ひとりごとのように歯ぎしりしながら言った。それはていた。自分を忘れ、病を忘れ、自分の過去と末来までも忘 まるで彼女の肉に噛みついているようであった。そして、それていた。 「あなたがわたしの言うことさえ聞いてくれれば、わたしが れだけ言うと、見向きもせすに自分の部屋にはいってしまっ 二度とあの女に会わすに済むのなら、わたしはどんな苦労を , 及 , 女はほっとし どんな貧乏もいといませんよ」イ 彼の耳の奥でさまざまな音が一斉に鳴り出した。夢でも見してもいし ばうぜん たように言って立ち上がった。「それに、あの女が帰って来 ているかのように、茫然と彼女を見送った。頭のなかの音が ランチョウ 次第に静まって来た時、彼ははっとして立ち上がり、母親のるものですか。あの女はきっと主任とかいう男と蘭州へ行 皮女はいささか得意気に言った。自分が勝ったと ききす・よ」ノイ 部屋にはいって行った。 夜 母親はべッドに倒れこみ、顔をそむけてすすり泣いていた。思ったのである。怒りも消え、悩みも消えた。さわやかな顔 で部屋を出て洗面器の前に戻ると、すっかり肌荒れして骨太 寒「母さん」 たましわ になった手を氷のような水に突っこんだ。 彼に呼びかけられ、え、と起きなおった。涙の珠が皺のよ めじり 彼は苦笑を浮かべながら彼女の後ろに立ち、彼女が洗濯を った目尻から滴り落ちた。

4. 集英社ギャラリー「世界の文学」20 -中国・アジア・アフリカ

クツツェー 1028 しょに仕事をしなくてはならない役人で、われわれに全面的至極な法手続きなどなしにしてしまうだろう。 協力をしなかったのはあなたひとりだ。率直に言わせてもら 「おわかりだろうが、危機がつづ く間は」と大佐が言う、 ゆだ うと、わたしはこんな板切れにはなんの興味ももっていな 「司法は文民の手を離れて当局の手に委ねられている。」そこ い」と、彼は机上に乱雑に置かれた木簡に手を振って言っで大きく一呼吸いれてつづける。「民政官、あなたはこの町 た。「これは間違いなく賭博用の木札だね。辺境の他の部族でたいそう人気のある人物ゆえわれわれがあえてあなたを裁 ばくち 、、ゝ木札で博奕を打っていることは知っている。 判にかけたりしないと信じておられるようだが、あなたがご まじめ 「あなたには真面目によく考えて欲しいんだ、この地であな自分の義務を怠り、友人を遠ざけ、下層民とっきあうことで たにどんな将来があるのかを。いまの地位にとどまることは どれほど損をしているか、おわかりではないようだ。わたし 許されない。あなたは完全に面目を失ってしまった。たとえが話をした者で、これまでにあなたの振舞いに侮辱を感じな 最終的に処刑されないですんだとしても かった者はいないのだが。」 「私はあなたに処刑されるのを待っているんだ ! 」と私は叫「私のプライヴェートな生活は彼らとはなんの関係もありは ぶ。「いっそうするつもりですか ? いつあなたは私を裁判せん ! 」 にかけるつもりですか ? いっ私は弁明の機会を得ることに 「そうは言っても、申し上げるが、あなたの任務を解くとい なるんですか ? 」私は激怒している。群衆の面前ではあれほ うわれわれの決定はいたるところで歓迎されたことですよ。 ど言葉にならなかったのにいまはそれがまったく苦にならな数日前に帰還したとき、わたしは一つの単純な疑問にあなた もしかりにいまこの連中と大衆の前で対峙することにな から明央な答えをもらうことだけを決めており、そのあと ーレ、よ、つふ ったとしても、私はこいつらを恥じいらせる一一一一口葉を見つけるは、あなたの娼婦のもとへなりと、自由人として戻ってもら ことだろう。要するに健康とカの問題だ。熱い一一 = ロ葉が胸中でって結構というつもりだった。」 膨らんでくるのを私は感じる。こいつらは囚人が自分たちに 不意に、こんな侮辱はただではすまさんそ、という思いが 対抗できるだけの健康と力を保持しているかぎり、裁判にか 脳裏をかすめ、おそらく別の理由で、こいつら二人はひょっ けはしないだろう。こいつらは私がばかみたいにひとりぶっとしたら私がかっと怒るのを歓迎するのでは、という考えが ぶつつぶやく、もぬけのからみたいな人間になるまで私を暗浮かんだ。怒り心頭に発し、全身でカみ、私は沈黙を守りと ろう い牢に監禁しておいて、いざそういうふうになると私を非公おす。 開の法廷に引きずり出し、五分後には自分たちにとって退屈 「しかしながら、あなたは新しい野心に燃えているようだ」

5. 集英社ギャラリー「世界の文学」20 -中国・アジア・アフリカ

んにもね。それなのに、、、 とうしてあんたは本当のことを話し李老人の言っていることは、すべてがすべて真実というわ てくれないんだね」 けではなく、少なくもいくつかの事実を隠していることは、 「先生、わたくしは本当の話をしないわけではございません。私にもわかった。私はこれで引っ込みはしなかった。 昼前にお話ししたことに嘘はございません」 「奥さんや上の息子さんは、どうして知らん顔をしているの 彼は声を震わせ、私の目を避けて、下を向いてしまった。 かね」 、まにも泣き出しそうだった。 李老人はいっそう深くうなだれた。きっと答えはないだろ 「しかし、あの人はどうしてあんなことになってしまったの うと思いながら、黙って彼の前に坐って、通りに目をやって かね。なにもあんなに自分をいじめることはないだろうに」 いた。包みをさげ、子供を抱いた通行人が何人か門の前を通 りすぎた。男が、「早く早く。敵機がくるそ」と大声で言う 私は彼し こ考える余裕をあたえずに畳みかけた。 た 「それは : 彼はひとっ溜め息をついた。「先生にはおわのが聞こえたが、まだ「退避警報」が出ているわけではなか つつ ) 0 かりにならないかもしれませんが、人はいったん道を踏みは ほお すしたら、一生浮かび上がれないものなのでございます。後李老人が顔をあげた。涙が頬をつたって流れていた。白い ひげ つば 戻りしようとしても、おいそれとはできないのでございます。鬚についた唾の玉が光っていた。 だんな 「それはわたくしにもよくわかりませんです。上の坊ちゃま わたくしの旦那さまもそうでございました。あの方の場合は こういうことなのでございます。財産を遣い果たしてご家族はもともと旦那さまと反りが合いませんでした。上の坊ちゃ のみなさまに申し訳ないと思われたのでございますが、そのまは、お屋敷を売り払った年に学校を卒業してこちらにお帰 前出、二三六。〈ージ上澱で ) に、なり ~ ました。 後、ますます後悔されて、お子さまのお金を使うのは申し訳りになり、銀行にお勤め ( ま めかけ ないとばかりに家を出られ、名を変えて、家族の方がたの前 旦那さまは外に妾を囲われてもう何年かになっていましたが、 ぼっ から身を隠されたのに、下の坊ちゃまに見つけ出されてしま奥さまはそれをどうにもできずにおられたのです。上の坊ち ったのでございます。坊ちゃまはいつもお金を届けたり、食やまはお帰りになると、ことあるごとに奥さまの肩を持って 園べ物を届けたり、花を届けたりしていらっしゃいました。坊旦那さまと口論なさっていました。それから何があったのか、 自 5 ちゃまがこちらのお庭から折っていかれた花がそうです。旦旦那さまが家をお出になられたのでございます。上の坊ちゃ つばき 那さまはお屋敷の椿をことのほか好んでいらっしやったのでまは上の坊ちゃまで、別に捜そうともされませんでした。下 ) こイ、い十 ( すこ の坊ちゃまだけが心配なさって、あちこち捜し回ったすえに、

6. 集英社ギャラリー「世界の文学」20 -中国・アジア・アフリカ

たことが確認されてから集まって来た人々に混って、そこにを食おうって時なんだぜ。ドアが丈夫だから良いものの : おられ、成行きを見守っておられたのだ。もっと後になって屁理屈をいってる暇はねえんだ。打つべき手を打とうぜ。」 からのことだが、「まさかトラに校長室を明け渡そうとは夢 「打つべき手とは何ですか。一体何が起るというんですか。」 あぜん この日 いに一同は唖然となった。「講堂に閉じこめられた にも思いませんでしたよ」と校長先生がつくづく述懐された ままの子供たちのことを考えなければならん」と一人の先生。 とき、「いたすら坊主どもを躾ける名案かもしれませんな」 ひょうきん 「ドアを開けて家に帰せばすむことです」と師は、相談され とまぜっ返す、剽軽者がいたそうな。 たわけでもないのに答えた。 「さあ問題のけものは閉じこめた。もう大丈夫だから、次に 「おまえさんが出しやばることじゃないんだ。一体おまえさ 打つ手を : : : 」と一人の先生が口を切った。 この時、人々の間を縫って進み出た我が師が「けだものとんは誰だ。」 かけものというようなことばを使ってはなりませぬそ」と戒「あなたがたは二度までも同じことをお尋ねになる。わしの め「思い上った人間が勝手に造り出した醜悪なことばです。答えは同じだ。自分が誰であるか、わしにはわからぬ。」 「校内から退去してくれたまえ」と、校長不在中の代行を務 人類はほかの万物を″けだもの〃だと思いこんでおる。下品 める男がいう。「ここはおまえさんとは関係のないところだ。 なことばです」と説かれた 「ことば遣いをどうのこうのいってる場合かよ」と誰かが文関係者以外は立入り禁止なんです : : : 」 「トラは招待されて来たのかね。」 句をつけた。 「場合ですとも」との我が師の反論に一同は憤慨の表情を浮「善後策を真剣に検討せねばならん。どうか邪魔をせんで向 うに行って貰いたい」と校長代行が命令した。 たとえ代行 「校長先生の命令とあらば、校内では万能だ 「無茶苦茶なことをいいやがる。おまえは一体誰だ」と誰か といえども」といって我が師は静かに立去ったが、回廊の端 にが尋ねた たたず デ「あなたのお尋ねは実に深遠なる問題です。自分が誰であるのところに佇んでいた ルか、わしにはとんとわからぬ。今の今まで生涯をかけてその「帰れ」とみんなが叫ぶ。 マ 「帰りません。だが相談の邪魔はしないと約束します : : : 」 答えを捜し求めて来たのです。ところで、あなたはご自分が それから師は回廊の片隅に引き下り、みんながトラにどう対 どなたなのか、ほんとにわかっておられるのですか」 見こトラがここにいて、いまにも俺たち処するのかお手並み拝見と出た。師のいるところで発一一一一口する 「おまえ正気かい王し おれ

7. 集英社ギャラリー「世界の文学」20 -中国・アジア・アフリカ

すべ : と来れば、難しいのダンはなす術もなく見送りながら「休憩には早すぎる。まだ 片やトラより物わかりの悪いおかた : は当り前さ。でもマダンだって今までに金も時間も随分注ぎ仕事らしい仕事なんて、これつばっちもやっちゃいない癖 こんでるんだ。だから今日のところは、できるだけ監督さんに」と愚痴を並べた。 「あちらさんばかりが悪いわけでもないせ。まあ、そういう に協力することにして、善後策はかれに一任してはくれまい 、舌しは兎も角として、労働者を相手にする場合は融通 力」 ・小、刀—> 一三ロ をきかせにゃならんです。なにしろ三百人の団員と、ありと 「そんなことをいわれても、ただ位置を決めるのと、リハ サルを何回も繰返すばかりで際限なしじゃないか。あの役者あらゆる動物を向うに回さにゃならんのだから、そういうこ となら良くわかる・ : ・ : 」 が半死半生になるのも無理はない。実際けさ始めたのは スタッフが向うで英気を養っているあいだ、マダンとキャ プテンは話し合いを始めていた。「監督さん、手を貸してあ 「七時前から」と一番高い台にいる男が後を受け、「四時間 もトリみたいにこんな高いところに止っているけれど、何もげたいんだ。わかってくれるね。ラジャの尻尾についての下 らん話しは無かったことにしてくれたまえ。尻尾より顔のほ 進んじゃいませんよ」と結んだ。 うが大事ですわ。」 「こっちこそ監督のくせに思ったことを何一つできないんだ 「でも台本どおりにやらなきゃならんポイントは : よ。妙なタイミングで″トラだ〃なんてキューを出す馬鹿が スクリプト スクリプチュア 「あなたの話しを聞いてると台本じゃなくて聖典みたいだ いたりして。」 「監督さんに前もって″トラが来るから良く見張ってろ。っぜ。その話しは後に譲るとして、尻尾を股倉に挟むまえにラ ていいつけられたから、そのとおりしたまでだよ。それで馬ジャが何をするのかはっきり教えてくれたまえ。」 虎 「まず後足で立上り大男の肩に両手を置く。次に大男がラジ 鹿呼ばわりされるんじゃ敵わねえや。」 来 ヤを殴り倒す : : : 」 「だまれ。ロ答えするな。ロ答えは好かん。」 「まさに奇想天外」とキャプテンは寸評を投げつけてから デキャプテンは相変らず善玉の役を続けて「コーヒー・。フレ : 」といいかけたところ 「野生動物との付き合いも長いが : ルイク」を宣言した。 マ この一声で険悪な雲行きは一掃され、晴々とした和やかなで、ふと口を噤み「万が一そんな演技が実現可能だとしても、 きき なんてことを ムードが行きわたった。スタッフは嬉々として持ち場を離れ、気の毒な男の肩の肉は毟り取られるだろう 喫茶室に殺到したが先頭を走っていたのはジャグだった。マ考えてもみないのかねーーそれとても、もっと悪い事態にな カ・は っ

8. 集英社ギャラリー「世界の文学」20 -中国・アジア・アフリカ

いとして「左側の教室に入って窓から見物してもいいぜ。あそれからまた飲んで : : : 瓶はとうとう空になってしまった。 の辺は下調べがすんでるから大丈夫だ。それに窓から良く見目立たぬところに控えておられた我が師が進み出られ「誰 える : : : 兎も角ドアに錠をかけるのを絶対忘れるなよ」と譲と話しておられるのか」とお尋ねになった。 歩し、シェカールを呼んで「おい、にいちゃん。皆さんをあ「てめえとだよ」とアルフォンス。「てめえがここにいやが おとな の教室までご案内して、 " 片づいたそ , というおじさんの声るのは、わかってたんだ。温和しく消えちまうようなたまじ ゃねえってことはわかってた。いるのが見えたんだー・。・ー全く が聞こえるまでは、相棒と一緒に教室の中にいるんだそ。二 発射っことになるかもしれねえ。一発目と二発目の間が正念しつこいダニ野郎め。そんなわけで俺は考えた。考えた : 場だ。思いも寄らねえことになるかもわからねえ。百パーセええと、何を考えたんだっけ。わからねえや。忘れちまった いや、そうじゃねえそ。あのけだものが出て来て、 ント確信をもって予言できるやつなんてありやしねえ。」 いよいよ作戦が開始されるてめえを腹に呑みこんでしまえば、それこそ、ざまあみやが これだけ能書きを並べたあと、 : ってなことを考えてたんだ。そんな目付でこっちを まえに、アルフォンスは回廊にのばる段石に腰をおろしてれだ : 「おっそろしく気疲れのする仕事をさせられたぜ。ポロポロ見るんじゃねえやい。酔ってなんかいねえそ。水つばいラム だ : : : 十度にも足りねえ。あの嘘つきめ、こっぴどい目に遭 になっちまった神経を元通りにするのが、先決問題だ」と つぶや 呟きながらズボンの尻のポケットから小瓶を引っぱり出すわせてくれる : : : あのろくでなしめ : : : 」 と、幾対かの目の前で一気にぐい呑みして舌鼓を打ち、満足「緊張をほぐしておられるのだね。」 「先生、その通りでさあ」と元気な答え。 げに首を振ってから鉄砲を手にとり、目を皿のようにして点 検し、台尻を肩に当てると見えないトラに狙いを定める、簡そこで師は「トラはどうしたんですかね」と尋ねた。 虎 ーサルをした。次に構えていた銃をおろすと自分の「何がどうしたって。」 ・米わき し飲んだ。かれ「トラですよ。あそこにいるトラのことです。」 脇に置き、また瓶を出して再び一気にぐいぐ、 「あ、わかった。トラね。あの人無事だといいがねえ。」 デの「手が震えやがる。震えを止めなきや駄目だ」という声が 「射っ気は無いのかね。」 ル聞こえた。それから再び銃を手にとり台尻を肩に当てて、も マ 「ぜーんぜん」と、アルフォンスは大仰に答えた。「手が震 ーサルをした。「まだ震えてやがる : : : ひでえ水 う一度リ えてたんじゃ駄目だ。もう一杯飲めば良いんだが。ところが つばいラム酒だ。全然効きやしねえ。あの野郎、こっぴどい サン・ノヴ・ア・ビッチ 目に遭わしてやるそ。」もう一度腰をおろし、もう一度飲む。瓶は空ときてら。あの糞ったれめ。上のほうを空けときや ねら

9. 集英社ギャラリー「世界の文学」20 -中国・アジア・アフリカ

703 子夜 府がまたもっと公債を発行する・・ーーこれこそ公債と戦争の悪もので、にこにこしながら答えた。雲卿はもう胸が痛んで涙 循環なんだ。馮さん、これでおわかりでしよう。ほかの商売がこばれそうだったが、庵の来訪後胸につかえていた難問 だと、戦争がはじまればあがったりだが、公債だけは例外ではともかく決着がついた。こうなったら、雲卿としても公債 に命をかけ、すべてをかけるほかなかった。彼は顔をあげて、 す。千年戦争がつづけば、公債相場は千年商売繁盛でしよう ふるえる声でいった。 「破産したんだ。もうけ話どころじゃないさ。でもーーー壮飛、 「壮飛、いなかはもはや二度と平和にならんのだろうか」 雲卿は、長いこと口にふくんでいた痰を吐き、せきこんであんたの奥の手とやらは ? まだ聞いとらんが」 たずねた。 壮飛はたばこの煙をぶかぶかと吐きだすばかりで、返事を ふるだめき くるめた古狸はもう逃げる気づかいはな 「えつ、あんたーー馮さん。まだそんなしあわせな夢を見てしなかった。いい と見ぬいていた。たつぶり三分もたってから、壮飛はい るんですか。あと一、二年もすれば、あんたの土地証文なん きなりたすねた。 か、ただでももらい手はいなくなりますよ」 「雲卿、あんたの土地はまだ抵当にいれられるはずですね。 冷やかな返事だった。雲卿はじりじりしながら壮飛の精気 たがつづく はやいとこ、手放しなさい」 にあふれた顔を見つめて、次のことばを待った。。 今度は雲卿が目をむいて、返事をしなかった。かすかにう 言はなく、しかも相手の表情がゆらぎもしないと見るや、雲 卿はガーンと耳が鳴り、頭もくらくらしてきた。数日来見通なすいただけだった。 「誤解しないでくださいよ。好意ですすめてるんですからね しのたたなかった問題に、答えが出たわけだーーーあまりに残 どうやるか。かいつまんでいうと、あんたとわたしが共 酷な答えが。しばらくしてようやく気持を落ちつけ、歯をく 同出資するんです。買いか売りかは、わたしにまかせてもら 、しばっていった。 う。損したときはふたり半々で負担する。もうけたら、あん 「それじゃ、政府はわたしら地主に対してあまりにひどいじ やよ、 たはべつに三割の割増をわたしにはらうこと。ただもうひと ナ′」し、刀」 「そうでもないでしよう。政府だって大量に公債を発行して、つ、前もってはっきりさせておきましよう。証拠金を出すと いっぺんきは、あんたが六割で、わたしが四割ーーわたしのほうを有 金もうけの道をひらいてくれたんだから。しかも、 リアンせんそう 利にさせてもらう。わたしの手もとに、三万両の銭荘手形が に十万、二十万とかせぐのも夢ではない道をね」 いま現金にするのは損だし、うまくいきそうも 本音なのか下心があるのか、壮飛はあいかわらす冷静そのあるけれど、

10. 集英社ギャラリー「世界の文学」20 -中国・アジア・アフリカ

そそのか た答えを得るのみだった。否、本当のことを一一 = ロうなら、それのテロが唆された。人々のロは封じられ、声は押し殺され、 はどうやら、彼及び彼と共に逮捕された彼の仲間や、それ以密偵が放たれた。 どとう 外の者の消自 5 についての真相を回避するためになされた答え我々の医学部は立ち上がり、集会や演説の怒濤が巻き起こ ス 一だったのだ。 ると、秘密警察や流言や脅迫や神経戦の波が打ち返してきた。 我々は四散し、ある者は刑務所に送られ、ある者は姿を消し、 イ 我々の歴史においてまだ遠くないあの時のことを、あなた 農村や遠い町へ逃げた。自分の中に閉じ込もってしまう者も 方がまだ覚えているかどうか私は知らない。 しかし私の世代いた。自分の胸に深い穴を掘り、自らの革命と信条とを埋め、 は決してそれを忘れはしないということを、私は確信してい 上から土をかけた。彼の唯一の関心事は、より多く土をかけ る。我々のあの混迷の世代は、四七年、四八年、相次ぐ戒厳ることだけとなり、自分が信じていることの逆を主張し始め 令、忌まわしく、戦慄すべきテロに明け暮れたあの時代を忘た。 れはしない そんな時である。拷問の話が流布し始めたのは。黒い警官 うわき ) と獄に繋がれている者たちに対する彼の行状の噂が、飛ぶよ あの時代は我々の世代が遭遇した、最初の重大な試練だっ うに広まった。そしてそれは、我々の世代が蒙っているすべ くもん た。戦争から解放されたと思ったら、我々の国土で勝手放題ての苦悶を象徴するものとなった。それは我々の世代の戦慄 まね な真似をするイギリス占領軍の姿が目に飛び込んできた。すべき恐怖の源ともなった。その黒い警官のファイルが何年 だま 我々は立ち上がった。すると彼らは我々を騙そうとして、スも何年も過ぎた今、シャウキーの机の上に置かれているのだ。 工ズとファーイド ( ス ス車の拠点とな「〕町リ ) から形だけの撤退をしそして我々は夢想だにしなかったやり方で、やがてその男に てみせた。我々は再び完全な撤退を求めて、武装闘争を辞さ遭遇するべく運命づけられていたのだった。 す、立ち上がった。すると、今度は彼らは我々を弾圧してき こ。パシャ ( シドキー ・パシャ ) を首にすげた国家を彼らは 持ってきた。そしてアッパ ス橋 ( 学生のデモが弾圧され、 ひもと らは我々に大弾圧を加えた。 " 弾圧はさらにエスカレートし、 ここで歴史を紐解こうというのではない。ただ歴史を一瞥 死人も出た。 " 「弾圧を徹底させるべく、彼らは別の。ハシャをすした今は、すぐにシャウキーに話を戻そう。 シャウキーが我々から消息を断って以来、何カ月も経った げた国家を持ってきた。刑務所は満杯になり、あらゆる種類 いちべっ