サーファーでもないのにサーファーの格好をしている人を、シティ・サーファーと呼んで軽蔑 するらしい ムこはとても興味があった。 軽蔑されたシティ・サーファーはどういう反応をするか、禾ー 「すればいいんだろ、すれば」と口をとがらせて波乗りに行くかもしれない。 「どーも、失礼しました」と、交通違反を見つけられた運転者のように謙虚そうな態度で、サー ファーの格好をやめるかもしれない。 そんなことを想像していたが、現実のシティ・サーファーは、まったくちがう行動に出たよう だ。「俺たち、シティ・サーファーだもんね」と、居直ってしまったらしいのである。居直ると フ いうのは正確でないかもしれない。彼等は、追いつめられて自棄になっているわけではないから サ 居残ったというコトバのほ、つか近いと田 5 う。 どうして私が、そんなことを知っているか サ サーファー

女性週刊誌を読んでいて、「好みのタイプは、やつばり明るい人ね。シティ・サーファーっぱ い男のコなんかもいいわ」とか、「つきあってるコは学生ばっかりなんだけど、ちょっと遊ぶん だったらシティ・サーファーなんかがいいわ」などとコメントしている女性が多いことに気づい たのである。 男性向きの雑誌で軽蔑されていたはすのシティ・サーファーは、女性誌においては軽蔑される どころか、好みのタイプとしてもてはやされているようなのだ。 そう思って街を歩くと、サーファーに見える男や女がゴマンといる。そのひとりひとりが、実 に明るく胸を張っているよ、つだ。 シティ・サーファーたちは「サーフィン的なものを好きなボク」として堂々としている。その 堂々の前では、「本物と偽物」などという区分けは、まったく意味を持ちえないのだ。 考えてみれば、むかしから、小学生はプロ野球選手と同じデザ・インの帽子をかぶっていたし、 ポロ競技に縁もゆかりもない会社員 < が、きちんとポロシャツを着てたりした。 シティ・サーファーが、現役サーファーにコンプレックスを持つだろうなどと考えた私のはう が間違っていたのかもしれない。 最近では「ジプンはウョク ( 右翼のことね ) やってるんです」などと言って女のコに近づき、 「信じるもののある人って、ドコか違うわね」などとウケている方々もいるらしい はんとに、人間って、知恵のある動物なのわー ①

212 このようにして一週間はどで会場が確保され、予算が配分され、酒とつまみの手配が完了し、 プログラムが作成される。 しかしそれであしか祭りがすぐに開かれるというわけではない。集会が開かれて、祭りの準備 が整ったことが認められると、そこで「あしか決議という儀式が行われる。これはあしかたち が自分たちはあしかであって、あしか以外のなにものでもない、という事実を確認する儀式であ る。 これは文章で読むと簡単そうだけど、実際問題としてはなかなかむすかしい ます「あしかと は何か」、「あしか的とは何か」という定義の確立が必要だからである。しかしまあ、あしかとい うのは本質的には事なかれ主義の動物だからそのへんは適当にやってしまう。みんなが一匹すっ 順番に壇上に立って、自分はいかにしてあしかとして生きているか、そしてどのようにあしかで あることを認識したかを延々と述べ、またすっとこれからもあしかでありつづけるであろうこと に対する抱負を語り、それを他のあしかたちが拍手で承認するのである。 これは和気あいあいと行われる。壇上でとちったあしかがみんなに冷やかされることくらいは あるけれど、拍手がないということはますない とびいりのイルカが「私はメタファーとしての あしかです」なんて言って会場を混乱させることもない。あくまで、あしかはあしかなのであ る。

イ インタヴュー ん」 五月十一一日。原宿・ラフォーレ内、資生堂パーラー。若い女性インタヴュアーは三十分の遅刻。 「えー、それでは本日は村上さんが毎日どのようなものをお召上がりになっておられるかという ことをうかかいたいと、こう思っております。それではます朝から」 「ます朝は : 「あーら、ごめんなさい。テープのヴォリューム上げるの忘れちゃった。はいどうぞ、すみませ 「ます朝は野菜を : ・・ : 」 「あ、そうだ。朝は何時にお起きになるんですか ? 「五時に起きます。それで・ : 「五時 ? 朝の五時 ? 」 「だって今、朝の話してるんでしょ ? 」 intervtew

/ く一スポーノレ 181 その、重点的にスポットライトを当てて見ていた選手が、ミスターなどと呼ばれるものでな かったら、例えば「準ミスター , であるとか「プルペン・エース」または「壁際の魔術師「バ ントの鬼」なんてものであったら、私のじんせいは、まったく違ったものになっていたのだろう と思、つ。 安打とは、 4 打席に 1 っ程度見ることのできるごちそうなり。そういった考えになっていたろ うし、人間は地味に一所懸命コッコッと努力を続けていれば、いっか報われたり報われなかった りするから、まー しいじゃないの飲もうぜ今夜は、といった思想を持ちえていたかもしれない。 ーし力ないか、その後の自 野球観戦の方法が、私の性格をつくってしまったと言い切るわけによ、、 分が好きになったもの、好きになる過程などを考えてみると、どうも、共通するものがありそう なのだ。 というようないけ図々し それは、言ってしまえば、いつでもごちそうの並ぶ食卓に座りたい、 いテーマに貫かれている。 何故かといえば、それが、フツーだと思ってしまったからである。打率で一一一口えば、 3 割何分何 厘というのが、私の知っているフツーの数字なのだ。同じように、アレをする時には、ぜひアー であってほしいし、いざソレに及ばんとする時にコーでないとしたらつまらない と。歪んだ理 想主義のよーなものを身につけてしまったのである。 最初の男によって女は決まる、などと真理めいたことをおっしやる助平の方もいらっしやる

152 まっ暗な坂道を、プレーキをキーキーいわせながら降りてくる自転車があった。 警官が、そいつをこいでいた。 その自転車と交差するように、セカンド・ギャでゆっくり走ってくる車があった。 屋根には点灯してなかったけれど、赤いランプがついていた。 突然、車の窓が開けられ、警官が首を突き出した。 「待て、待ちなさい」 自転車の警官に言っているようだった。 自転車の警官のはうは、ひょいと、瞬間的にパトカーのはうに振り向くと、思い切りペダルを 踏んで逃げるように走って行った。 パトカーは、拡声器を使って叫んだ。 「エンジン付きの四つ車をなめるんしゃねえぜ」 自転車の逃亡者は、ロに手を当て、メガホンがわりにして、ありったけの声で言った。 ハイウェイ highway

228 でも女の子の方はそんなことには委細かまわす、台所にあがりこんで鍋に湯をわかし、ビー カーに目分量で原液を注ぎ、ガラス棒でカタカタとかきまぜ、ワム ! の唄を唄っていた。 ウェェク・ミイ・アアプ ・ゴオゴオ : ビイフォア・ユー

シーズン 力をカラダで知 0 たりして。えーい追い撃ちとばかりに基博さん ( あ、突然名前つけちや「てご めんわ ) 「だから、夏こそ ! 由美子さん、僕としてみませんか ? はっきり言って無理よ。 無理ー ①

か、帰路の船上でトリスタンはイゾルデと恋に落ちてしまいます。冒頭に出てくるチェロとオー ポエによる美しいテーマがこの二人の愛のモチーフであります」 一一時間後、我々は互いに満足して別れた。 「明日は『タンホイザー』を聴こう」と主人は言った。 部屋に辿りついた時、我々の中の虚無はもうすっか かな坂を転がり落ちるようにカタカタと動き始めていた。 り消え去っていた。そして想像力がなだら

いてみたのです。彼は「べンツです」と言いました。 彼よ、むかしのオ 私と彼は、大好きなシェークスピアについて、いつまでも語り合いました。 , ー リビア・ ノセーのほうが好きだと言っていました。 ) ートは、憂しいなと田 5 と言って、私のからだを求めました。エー 彼は「無理にとは言わない いました。 果になった彼は、服を着ている時よりもすっとエリートらしく見えました。 いれすみ 彼自身が隠そう隠そうとしている背中には、大きく「エ リート」という文字か刺青してありま した。 ①