金融再生委員会 - みる会図書館


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1. 小説ザ・外資

ル、それ以上かもしれない。 2 「とアップルツリーはやつばりグルなんだな。大学でラガーだったとかいう東京支店の をチーフにウチに何人かアドバイザーで来てるが、かれらはニューヨーク本部の言いなりに なっているという感じだね」 「特別公的管理下にある東長銀に当事者能力はないだろう。それこそ金融再生委員会の言いなり になるしかないよ。金融再生委員会は、アドバイザ】の QCQ の言いなりだから、東長銀はアップ ルツリーに身売りされる運命にあるわけだ」 「そうなると西健の執行役員もあり得るかもなあ。アップルツリー経由なら、誰も文句は一一一口えな いよ。同期でありながら、執行役員と課長っていうわけか。えらく差をつけられるけど、それも しい ' か」 小野は真顔で言ったが、西田は一笑に付した。 「莫迦莫迦しい。そんなことはあり得んよ。ニューヨークならあっても、ここは東京だからなあ。 そんな劇画みたいな話に俺が乗るはずはないけど、古巣に対するノスタルジーがないとは言わな い。あいつらがなにを企んでるか、引き出すくらいのことは許されるんじゃないのか。ランリネ イは本気で俺をスカウトしたいと考えてるらしいから、少し気をもたせて、情報を取ってきてや るよ」 「それが、俺へのロイヤリティっていうことか。西健にスパイみたいな真似をさせるのは気が引 けるなあ」

2. 小説ザ・外資

うえに、資本増強するために整理回収機構が , ハ億株、一一千四百億円を投じて優先株式を保有した 0 から、金融再生委員会なり、金融監督庁の監視下にあるはずだろう。政府当局は当然チェックし引 いつだったか小野が一言 てるよなあ。チェック能力がなかったのか、機能しなかったのか : ってたグル、馴れ合いも考えられるかねえ」 アップルツリーなどに五十七億円ふんだくられたこともむ 「あれは瑕疵担保条項の話だったが、 ろん当局は把握してたと思う。俺は金融再生委員会とも金融監督庁とも接触してないが、当局に 無断でこんな大それたことができるとは思えない。なんせ国有化銀行時代の話なんだからねえ」 「おまえがアドバイス・フィ、サービス・フィの件を把握したのはいつなんだ」 「恥ずかしながらごく最近のことだ」 小野は右頬をさすりながら話をつづけた。 いまや赤鬼と山崎の顔色を窺うありさまで、山崎 「驚くべきことに新東長銀の上層部は、 に至っては、赤鬼の意見をハイハイ、お説ごもっともと聞いてるだけだ。新東長銀で残れ た取締役と執行役員は、赤鬼のなすがまま、言、つがままに動く操り人形みたいなものだろうな」 「 Q の元パ ートナーのランリネイは、とうとう赤鬼にされちゃったのか」 「西健が付けたニックネームを俺たちが踏襲したまでだよ」 西田がべージュ色のセーターの袖をたくしあげた。 「五十七億円は経営健全化計画で開一小を義務づけられてるから、遠からず表面化するし、問題に なるかもなあ」

3. 小説ザ・外資

オ の 悪 最 小野が紙コップのコーヒーを飲みながら、顔をしかめた。 最 「公的資金っていえば、問題は銀行が債権放棄した貸出し先に対して、政府がなにも手を打たな 八かったことだね」 「、つん」 せたのは、再生委員会っていうことになるのかもなあ 「が再生委員会のアドバイザーになったことで勝負はついてしまった。小野は嫌いらしいけ ど、産銀がアドバイザーになってれば、ずいぶん違う姿になったと思うが」 「産銀にアドバイザーになれる資格なんかないよ。産銀に限らず、公的資金を注入されてる銀行 は、なにも一一一一口えない。じゃあ、光陵はど、つか。光陵グループの光陵商事がーーアップルツリー に果実を取られる に取り込まれちゃってるんだから、これもダメ。結局、ーアップルツリー ことが宿命づけられてるんだろうね」 一九九九年三月、金融システムを安定化させる目的で「金融機能早期健全化法」に基づいて都 市銀行など十五行に、総額七兆四千五百九十一一億円の資金注入が行われた。 公的資金の注入は、金融再生委員会の承認を得て、金融機関の発行する優先株、劣後債、劣後 ローンを預金保険機構が整理回収機構を通じて購入する形が取られた。 0 375

4. 小説ザ・外資

西田もしかめつ面でうなすいた。 「特にゼネコンは金融再生委員会なり金融監督庁なりが厳しい制約を課すべきだったな。経営責 任を取らせるとか、減資するとか。リストラも甘いよなあ」 「ゼネコンのトップクラスは年俸一一千万円も取って、相変わらず高級車を乗り回している。モラ ルハザード以外のなにものでもないよ」 「公的資金を注入された銀行には、厳しい縛りがあるらしいが、債権放棄先のゼネコンなどはな んの咎めもないなんて、おかしいよ。やつばり失政としか言いようかないんじゃないか」 「われわれバンカーはゴルフも飲み会も自粛しているが、ゼネコンの連中はゴルフはするわ、ド ンチャン騒ぎの宴会はするわ。倫理観の欠如は信じられないくらいひどいらしい」 「破綻した東長銀に限らず、銀行はみんな自粛してるのか」 「そう聞いてるけど」 「まあ、当然だな」 西田は投げやりに言ってから、話を蒸し返した。 「金融再生委員会もグルだと勘繰れないこともないって小野は言ったが、どうなのかねえ。一〇 〇 % の瑕疵担保条項をアドバイザーのに呑まされたのは、ただの無知っていうか、なんにも 知らなかったからだろう」 「そうかなあ。瑕疵は法律用語で、なんらかの欠陥っていう意味だが、再生委員会には法律家だ っているだろう。西健からアメリカの例を聞いたが、 アメリカでは国の負担は五〇 % ということ

5. 小説ザ・外資

中のハイエナであることはたしかだよ。日本政府も日本の財界も、あいつらのずるがしこさを知 らないから、あとで地団太踏んで海しがるかもなあ。政府も財界もハイエナとつるんでる可能性 も否定できないが、そこまで疑うと、ゲスの勘繰りと言われるだろうね」 「経団連会長やビール会社の大ボスは、人質に取られたことになるのかしら」 「なるほど。そういう見方もできるよな。一千万円程度の報酬でよくぞリスクを取ったと僕も思 うよ。つまり、新東長銀がハイエナファンドの餌食にされてることを理解してないんだろうな」 「邦銀の人たちは、そのことに誰も気づいてないのかしら」 「気づいている人が皆無とは思わないが、いっかも小野と話したんだけど、公的資金を投入され た立場じゃ、金融再生委員会に対してアップルツリーにたった十億円の営業権で売り飛ばすなん て、ど、つかしてるんじゃないかなどとは一言えないだろ、つな」 「マスコミはどうなの」 「まだ気づいてないと思うよ。金融再生委員会がに支払ったアドバイス・フィは十億円、新 ン 東長銀がランリネイやワドリー たちに払ったアドバイス・フィ、サービス・フィが五十七億円。 フ ナいずれオープンにされると思うが、マスコミがどう反応するか見物だよ。それと債権の二割減価 工 による一〇〇 % の瑕疵担保条項。赤鬼たちのやることはあこぎであり過ぎる。それに与した山崎 や牧田は許せんよ」 九「あなたがマスコミにリー クする手はあったと思うけど 綾子に見据えられて、西田は伏目になった。 、えじき くみ 2

6. 小説ザ・外資

「あした三十分ほど時間をもらえないかな。俺のほうはどうにでもなるので、西健の指定した場 所、時間に出向くよ」 「じゃあ、午後十二時五十分にオフィスに来てもらおうか。受付に話を通しておくよ」 「ありがとう。勝手を言って申し訳ない 「どういたしまして」 西田が、小野と携帯でこんなやりとりをしたのは十月十四日深夜のことだ。 小野は、翌日約束の時間に赤坂にあるウエストン社に西田を訪ねて来た。 二人は、応接室のソフアで向かい合った。 「なにか動きがあったのか」 「一言いにくいか、東京支店のアドバイスを受けることは構わないけど、アップルツリーと接 触することはまかりならんと上のほうに厳重注意されたよ」 西田は首をひねった。小野がなにを一言わんとしているのか、びんとこなかったのだ。 「 Qpa 東京支店から、特段のアドバイスなんてなにもないが、アップルツリーと接触するなは、 金融再生委員会のお達しだってさ。再生委員会の総意なのか、個人べースなのかよく分からない が、西健の情報は黙殺しろっていうことなんだ」 9 372

7. 小説ザ・外資

「俺もそのロだけど。だから偉そうなことは一一一一口えないよ」 「おまえは東長銀の最後を見届けたいだけのことだろう。しがみついてるとは思わないよ」 「 Qga とアップルツリーの書いたシナリオどおりにことが進むのは、どうやら間違いないな。金 融再生委員会も、取り込まれたっていうか、グルだって勘繰って、勘繰れないこともないよね 「小野はヌエ的な存在なんだ」 西田は冗談ともなく言って、紙コップのコーヒーにミルクを落として、小さなプラスチック製 のスプーンでかきまぜた。 「西健のお役に立てなくて申し訳ないが、身売りするのかされるのかしらんけど、帰するところ 俺も税金ドロポーになるのかねえ」 おとし 「そこまで自分を貶める必要はないと思うけど、金融再生委員会に限らず、日本政府が、日本っ ていう国がアメリカに舐められてるってことで、おまえや俺がどうこうできるはずもない。しょ せん、ゴマメの歯ぎしりみたいなものかねえ」 「東長銀のトップは、日銀の 0 だが、 国益を考えて、少しでも高くアップルツリ ーに身売りし よ、つとい、つ気持ちになれないんだろ、つか」 「トップが、日本の銀行との合併を志向したことは確かだけど、買い手がなかった。ほんとうは 破綻させずに済めば、ロスは三分の一以下で済んだのに、とアップルツリーのシナリオに乗 374

8. 小説ザ・外資

一方、ニューヨークのメトロポリタン・コレクション・センター ( o o Ⅱ日本の拘置所に相 当 ) に証券詐欺罪などで収監されたパターソンは、かって z 新聞などで紹介された花形アナリス トの面影はなかった。ただの詐欺師に過ぎなかったのだから、それも当然だ。 九九年九月に、もう一つの事件が世間の耳目を集めた。 ューリッヒに本部を置くスイス・ファースト銀行グループの東京支店に金融監督庁の金融検 査が入ったのだ。外資系金融グループを対象にした金融検査は初めてだ。 この結果、デリバテイプ ( 金融派生商品 ) を駆使して、有価証券や不良債権の損失先送り商品 をスイス・ファースト銀行グループが決算対策に苦しむ日本企業に販売していたことが明るみに 出た。 ) しわゆる〃飛ばしれである。 同グループ側は営業妨害だと金融監督庁に抗議し、スイス外相も在スイス日本大使館を通じて 「適切な対応を期待する」と異例の要請を行うなど圧力をかけてきた。 しかも同グループ側は銀行法で禁じられている検査忌避を露骨に行った。 いんべい 罪 関係資料を倉庫に隠蔽し、社内見取り図から同倉庫の記載を削除したり、シュレッダーにかけ 資て裁断したほか、チュ ーリッヒの本部へ送付したと虚偽の報告を同庁に行うなど組織的に偽装工 外 作をしていたのだから、悪質きわまりない。 七金融再生委員会と金融監督庁はスイス・ファースト銀行グループに対し銀行免許取消しなどの 行政処分を強行した。 377

9. 小説ザ・外資

「それは無理だよ。きみにもからかわれたが、スパイにはスパイの立場がある。ランリネイとサ イクスに刺客を放たれても文句は言えない立場だろう。ランリネイの言いなりになって、アップ認 ルツリーに入社するなり、新東長銀に戻って、ひと暴れする手も、ちらっと考えたけど、こっち のほうがもっとリスキーだったろ、つな」 「そうかもねえ」 「新東長銀が、邦銀改革の先駆者になるなんて考えられない。国費を吸い上げる装置としか、ラ ンリネイもサイクスもワドリーも考えていない。金融再生委員会がをアドバイザーに起用し た時点でもう勝負はついてしまったんだ」 遠くを見る目で綾子が言った。 「パターソンが懐かしいわ。一度だけ、帝国ホテルでランチをご馳走になったことがあるの」 ターソンも食わせ者だけど、こそドロみたいなもので、とアップルツリーは 「初耳だな。パ 大強盗団に等しいよ。合法的にやってるから、大強盗団というのもなんだか変だけど、アメリカ の国家的犯罪と言って一一一一口えないこともないと思うけどね」 「 Q のヴァイスプレジデントだった西健も、大強盗団の一員だったのね 「おっしやるとおりだよ。反論できない。などバルジプラケットは、日本の富をまだまだ貪 り続けるだろ、つなあ」

10. 小説ザ・外資

抜いていた。黙っていても、 Q で O O になれたと思うが、わたしはスティープよりも若い もっともっと現場の第一線でビジネスをしたいから、を辞めたんだ。ただしと連携して いるし、いまでもの一翼を担っているつもりだ」 じようぜっ ランリネイがこんなに饒舌とは知らなかった。もっとも、西田がランリネイと膝を交えて話 をしたことは一度もなかった。 「実はスティープもトウキョウに来ている : にたっと笑った。 ランリ、不イは意味ありげに、 「わたしが仕掛けたディールにスティープも一役買っているっていうわけだ」 「日本政府と日本の金融業界を相手にビッグ・プロジェクトを成功させようっていうわけだが、 きみのことだから、聞き及んでいると思うが」 「なんのことでしようか」 「 Q が O のアドバイザーに指名されたことは承知しているか」 の 悪 O とは、フィナンシャル・リ コンストラクション・コミッション、すなわち金融再生委員 最 強会のことだ。 最 「存じています」 章 が特別公的管理下 ( 国有化 ) の東邦長期信用銀行の譲渡先を決めるに際して、をア っ 0 第 ドバイザーに指名したのはごく最近のことだ。