安全保障 - みる会図書館


検索対象: 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]
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1. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

小沢さん、 一口 権力たけに執着し、日本でなく自分のために生きる政治家が招く国家の悲劇。 1993 年 5 月、『日本改造計画』にして国際協調の責任と役割を回避しつまり立法府である国会と行政府のト ( 講談社 ) を上梓した小沢一郎氏は一ようとするのは間違いだ、安全保障面ップを一人の人間が務める議院内閣制 躍、「理念の人ーとしての評価を確立で日本にふさわしい貢献をするべきだの仕組みの下では、首相は「ほとんど した。 と主張したのだった。これは、日本が万能に近い権力を握」れるのであり、 ベストセラーとなった同書で、氏は年の湾岸戦争でおカネによる貢献しその政治権力は議会と行政府が分立す 自国の安全は自国で守る自立の精神のか出来ずに国際社会の顰蹙を買っている大統領制よりもはるかに強力で、本 重要性を強調し、日本は「普通の国にた当時、新鮮な提言として、注目を集来強い指導力を確立出来るのだから、 その権力で日本を改革せよと訴えた。 なれ」と説いた。国家とは本来、利己めた。 また、氏は、日本を「小さな脳しか政治改革、選挙制度、「普通の国ー 的な存在であり、利己的な諸国が競う 中、自国の生き残りと繁栄の前提とな持たない恐竜」にたとえ、その気になの安全保障と国際貢献、そしてジャ。ハ るのが国家の安全である、その国家のりさえすれば強力な政治力を発揮出来ニーズドリームまで、自在に論を開陳 安全を確保するには、国際環境の平和る体制を持ちながら、全く発揮出来てした改革者としての姿勢は、同時期に と安定が欠かせない、にも拘らず、安いないのは何故かとの問いを、突きっ氏が自民党と決別したことによって尚 全保障となると、憲法や法制度を口実けた。与党と内閣が一体になる日本、強調され、小沢待望論を巻き起こした。 あなたはそれでコ」、、 よいのですか 櫻井よしこ ジャーナリスト

2. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

核どころか、自国を自力で守る軍事在地にとどまったまま、その国の政府りに無責任である。 力も十分ではない日本が、経済的支援や国防軍の指揮、管理から離れて、国 中国の脅威には触れず によって、米ソ両国に核軍縮を受け人連によって一元的に管理され、財政的、 れさせることができるというのは、空技術的支援を受ける」「こうして国連 小沢氏の安全保障論は中国とインド 想でしかない。 が全加盟国に核の傘を提供し、同時にの軍拡にも及ぶ。冷戦の終結にも拘ら 小沢氏は、湾岸戦争に直面して日本各国が極秘に核兵器を開発するのをチず、両国が逆に国防予算を増やしてい が「小切手外交」しか出来なかったこェックする。これが究極の核拡散防止ることに留意し、「当面の国際情勢は 逆に、一層きな臭くなりつつある」と とに恥を感じたと述べた。まともな国体制であろう」 家は外交や安全保障において、小切手控え目に言って、ここまでくれば噴氏は書いている。 による貢献を前面に打ち出すものでは飯ものである。 小沢氏のこの書の出版の 1 年前の だが、氏は『改造計画』で明らかに年、中国は領海法を制定して、日本固 ないという教訓が、氏に、「日本よ、 普通の国になれ」と言わしめたはずだ。した考えを、 3 年後の年に発表した有の領土である尖閣諸島を中国領だと しかし、氏はそんなことを早くも忘れ『語る』でも繰り返している。一時の宣言した。だが、小沢氏は、その点に 去っている。選挙を含めた内政のみな気紛れではなく、信じているから、繰はまったく触れていない。中国の軍拡 らず、外交・安保に関してもその手法り返すのであろう。 に申し訳程度に触れただけである。し の つまり、氏は、国際社会の安全保障かも、日本がどのように対処すべきか を挙げるとは、カネの力による処理が 骨身に浸透しているのではないのかとにおける現実を理解していないのだ。 も明確にしない。「きな臭さを増してで 疑うものだ。 その夢想家のような論は、鳩山由紀夫いるこの情勢を逆転させーることが大 な 氏は大幅核軍縮の第一一段階について首相の金銭感覚がまともな人間にとつ事だと説くばかりである。 あ も書いている。第二段階では核兵器をて到底理解できないように、これまた、 明らかに、小沢氏の安全保障論も外 ん 国連の管理下に置くそうだ。 理解を超えるものだ。 交論も、核や中国に関しては空論なの 「日本が側面から支援、協力すること その不勉強と思い込みの激しさは与だ。そのことを再確認させたのが、昨 によって」、「各国の核装備部隊が、現党中枢に位置する政治家としては、余年暮れに氏が実行した中国詣での長城

3. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

ためには、財務官僚とも手に食い込む重さがない。だから結局、小沢さんのところに を組むということなんじゃ頼みに行く。そうすれば、暫定税率もそっくり残るし、児 究 ないでしようか。 童手当に接ぎ木して子ども手当もできる。まさに小沢シフ研 郎 櫻井では、必ずしも小沢 トを完成させた役人の強さですね、これは。 沢 さんがたがをはめられてい 歴史の判断を待っ るということではなく、む しろ小沢さんのほうが財務櫻井小沢さんは選挙に際し、「国民の生活が第一。」とい 官僚を自己目的のために活うスローガンを掲げましたが、その生活を守るにも何をす 用しているととらえたほう るにも、国家の安定、国家の安全保障がどうしても必要で がいい ? す。この点について小沢さんは、日本とアメリカと中国は 渡辺お互い利用し、利用正三角形だと言ってますね。これはアメリカと中国を同等 されあっていると考えてい視するものです。中国は共産党一党支配の国で、日本によ いんじゃないでしようか。 からぬ気持ちを持っている。一方のアメリカは少なくとも 官邸主導は、霞が関にと民主主義の国で、日本とは長い、戦後の日米安保上のつき っては絶対に困る。だって、首相官邸が全部トップダウン 合いがある。この二つを等距離で見ているということ自体 で、人事も決める、政策も決める、子算も決めるとなったに、私は大変な違和感を覚えます。こういう小沢さんの、 ら、人・政策・金が全部官邸に集中するじゃないですか。 日本の安全保障を担保する政策について、どうして彼はそ そうすると、各省の縄張りや利権構造が壊されることになういうふうに思うに至ったのか。そもそも彼は日米関係こ る。だから官邸の主は、かって小沢さんが言ったようにそが一番大事と、『日本改造計画』を出版した頃は言って いた。 「御輿は軽くて。ハーがいい」。 しかし、官邸の主は御輿ではあるが、本当の政治主導、渡辺これも小沢流の、どちらが表なのか裏なのかよくわ 官邸主導をやろうと思ったらその御輿には肩にグサリと食からないという問題だと思うんです。つまり、中国との戦 い込む重さが必要なんですよ。ところが、鳩山さんには肩略的互恵関係を構築するという作戦が根底にあるのではな

4. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

しよう。そうなると、身近じゃないわけで、身近じゃないも 小沢だから、我々は、一番最初には挙げてないけれども、 のに対しては、あんまり気にしないわけだからさ。一般の人憲法改正について論議しなきゃいかんということは、一つの 究 項目としてちゃんと出してますよ。 は、まあ、勝手にやっててよというしかない。 研 たけしでも、政治家やマスコミはともかく、一般人から言 憲法九条どうするべきか えば、憲法改正というのはイコール九条の話だと思う。今、 たけし次は、ずばり憲法の問題だけど、やつばり、出来て日本が何かやろうとすると、政治から経済から沖縄から、必 から五十年たって、いろんなほころびが出ている。おいらは、ずアメリカが出てくる。それで、全部むこうの言いなり。何 ここらで思い切って改正すべきという意見だけどね。 で自分の国のことを自分で決められないのかと素人がちょっ 小沢僕もそう思いますよ。国の基本の法律だからね、時代と考えると、これは九条と安保のせいじゃないかなとなる。 ここをどうにかしないと、やつばり外国と五分五分で渡りあ に取り残されたところから改正していくべきでしよう。 たけしそうですか。でも、小沢さんは普段、憲法改正をきえないんじゃないですか。 ちんと打ち出してない感じだけど。 小沢だから、小渕さんとの話し合いで、一一番目は安全保障 小沢そんなことないんですが、憲法論については間違ってについてやりました。国政のある意味で最大の役割は、危機 伝えられがちです。というのは、憲法の話をするとすぐ左翼管理でしよう。その極限は戦争なわけです。この安全保障に が九条ばかり取り上げる。でも、直さなければならないのは、ついて、これまでの政府や政治家は全く何も語らない、語れ 九条だけではなくて、他にもたくさんあるんです。僕はそうない、そんなばかな国は日本だけですよ。 いう大きい話をしているのに、九条だけに矮小化して取り上たけし日本がやることやってれば、テポドンが上空を通る げられ、攻撃されてしまうことが多い。 わけないって ( 笑 ) 。あのときには一般の人だって、国の上 たけし攻撃されますか、やつばり。 の方がみんなおろおろしたっていうのが十分わかったじゃな 小沢だから党の他の議員の方は、みんな、それだけはちょ い。専守防衛すら絵に描いた餅だって。あれじゃあ、自衛隊 っとやめてくれっていう話になるね。 が何のためにいるのかよくわからない。 小沢結局、自衛隊というのは、これまでずっと政争の具に たけしそれは言わない約束でしようって、話だね ( 笑 ) 。 だれもが勘づいているけど言っちゃいけないって。 なって、法律でがんじがらめにされちゃった。だから、仮に

5. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

のように民主主義無視の政治が横行中が実践した民主集中制そのものである。は形ばかりのものだと断じざるを得な なのだ。民主党で進む政治の横暴はこ指導部を民主的な選挙で選んだあとは、い。 れだけではない。外国人参政権法案も、党執行部が政策を決め、議員らは単に 噴飯ものの安全保障政策 夫婦別姓法案も同様である。 賛成票を投じるだけというのが民主集 これらの法案は党内の意見が厳しく中制である。 小沢氏主導の民主党政権は、いま、 分断されており、有権者の支持も得ら民主主義は基本的に、煩雑で時間の日本の存否に深く関わる外交、安全保 れないとの判断で、選挙の際、マニフかかるプロセスを基盤としてのみ成り障政策の分野で、危機を招きつつある。 エストから除外された。しかし、いま立つものだ。そこでは、言葉を尽くし氏が『日本改造計画』で強調したよう や、それらが小沢氏や千葉景子法相のて説明することが求められる。異なるに、豊かで安定した国民生活の基盤は、 肝煎りで政府提案として提出されよう意見に耳を傾け、同時に全体の利益を国家の安全保障の担保にある。 としている。 見失わない結論に至らなければならな外交・安全保障の重要性を強調し、 小沢氏が政治主導で進める姿勢を見い。一層の丁寧な説明が求められる。「日本よ、普通の国になれ」と提唱し せても、依然として党内の反対は根強だが、反体制精神を標榜しながら、体 た小沢氏は、氏が世の中の注目を集め 、議論も詰められていない。にも拘制のど真ん中に身を投じたその自己矛たこの最大のテーマにおいて、激しい す らず氏は昨年月凵日、党本部でこう盾を、一度もうまく説明したことがな変節を遂げてきた。 で の 述べた。「自分たちの政府が提案したいように、氏は、説明から逃げるのだ。湾岸戦争に関して、国連は複数回の ことには賛成するのが普通ではない民主党にとっても民主主義にとっても決議を可決し、クウェートを侵略したで 必要な、ありとあらゆる議論から、 イラクへの攻撃を了としていた。日本 氏が好んでロにしてきた議会制民主沢氏は逃げるのである。そして強引に、も国際社会と連携して自衛隊を出すこ好 あ 主義という一一一一口葉に、氏自身がどのよう政治主導というスローガンを持ち込むとが期待された。だが、実際には、日 ん な形の民主主義を思い描いてきたかが、のだ。氏における政治主導と本来の民本は具体的行動を起こせなかった。当 窺える発言である。 主主義は、無縁のものだと言ってよい時、小沢氏は海部政権の自民党幹事長 氏の主張は、冷戦時代のソ連共産党だろう。氏にとって、議会制民主主義として、多国籍軍に自衛隊を派遣しょ

6. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

, 日本よ . - ~ 小沢ルールから抜け出せ 衆議院議員 也百合子 あった。 民主党幹事長・小沢一郎氏 : その後、親小沢派のはずの自由党で 政権交代が起こったとはいえ、本質九四年には大野党・新進党が結成さも、自自公連立のあり方や小沢氏とそ 的には退屈きわまりない日本の政界で、れたものの、小沢一郎氏の存在を嫌い、の取り巻きによる党運営を巡る議論が これほど存在感のある政治家はそうは日本新党から新党さきがけに人党した絶えず、結局、私を含めた衆参議員が いない。 のが、現在の民主党で閣僚を務める前保守党へと分派していく。その際の政 五五年体制が崩壊し、自民党が下野原誠司氏、枝野幸男氏である。新進党党交付金の扱いを巡る疑惑が、今回の したのが九三年。意志さえあれば、いでは、代表選を巡り、親小沢か、非小 小沢氏と検察とのバトルや、不可解な つでも自民党総裁になりえた小沢氏が、沢かで分裂が続き、挙句の果てに、党藤井財務大臣の突然の辞任へと尾を引 自民党を離党し、新生党を結党したのの代表であった小沢氏自身が、「安全いていくわけだ。 が最大の要因だった。八党会派による保障政策が一致しなければ、政党とは二〇〇三年には弱小政党となった自 非自民・細川政権が政権の座にあったいえないーとして解党する。解党を決由党が民主党と〈屏したが、三年後に のはわずか九カ月弱。さらに短命の羽める全議員総会で、現外相の岡田克也は小沢氏が民主党代表の座につき、乗 田政権を引き摺り下ろしたのは、あろ氏と小沢代表が激しくののしり合う光っ取り作戦は成功した。わざわざ非小 うことか社会党の力を借りた自民党で景は今も目に焼き付いている。 沢のために「さきがけ」人りした前原、 私が見た 「小沢一郎」研究 1 10

7. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

行使に当たり、憲法違反である、といた。 沢氏に電話した。私の話を聞いた小沢 う理屈だった。 「国連はいざという時に頼りにならな氏は、「そういう時は君、理事に反対 小沢氏は、その後、自民党の「国際い」と述べる論者がいる。しかし、国討論をしてもらうのが筋だ」と言った。 社会における日本の役割に関する特別連の場における広範な合意形成がなけ私は、政治的に物事を運んでいく際の、 調査会」 ( いわゆる小沢調査会 ) の会れば、米国といえども安全保障に失敗小沢氏の桁外れの慎重さに、大いに感 長になって、国連の下での武力行使はする、というのが湾岸戦争とイラク戦心した。そして、「人によっては小沢 「集団安全保障」であり、それに参加争を比較した時の教訓ではないか。小 氏に褒めてもらえなくて失望したり、 することは国権の発動ではなく、憲法沢氏の国連中心主義は、リべラルであかえって恨んだりするかもしれない 違反ではない ( むしろ憲法前文の趣旨ると同時に、慎重なリアリズムでもあな」と思ったものである。 るのだ。 に適う ) との提一一一口をまとめた。 小沢一郎の政局観 この基本原則に従って、小沢氏は〇ちなみに、民主党で、それまで反対 三年、イラク戦争での米国主導有志連していたテロ特措法の延長に賛成しょ民主党代表選出馬についても、小沢 合への参加には反対した。対米協調をうという動きがあった。前原誠司代表氏は極めて慎重だった。菅直人氏の代 主張する論者からは批判された。しかの時だ。私は自由党時代にイラク特措表辞任後、一旦出馬を決めたのに、岡 し、小沢氏が言いたかったのは、日本法関連で反対討論をしており、その時田克也氏に代表の座を譲った。小泉郵 は国連決議があれば武力行使にも参加も民主党を反対でまとめるべく、いろ政選挙で民主党が大敗し、岡田代表が するという原則を定めて、湾岸戦争並いろと奔走した。 辞任した時は、前原・菅両氏の出馬に みの広範な国際的体制構築を米国に求結果として、前原執行部も反対を決対して、自身は出馬を見送った。いず以 ア め、それに日本も協力すべき、というめた。担当委員会理事の議員から私に、れの時も、私は仲間と共に、小沢氏に な ことだったのだ。湾岸戦争が広範な国「反対で行くから達増さん、衆議院本出馬するよう迫ったのだが、小沢氏は ラ 際社会の合意に基づいて始められたの会議で反対討論をしてくれないか」と首を縦に振らなかった。こうした小沢ハ に対し、イラク戦争はそうでなかっ電話があった。私は小沢氏に報告すれ氏の姿勢を、「小沢氏は裏で動くのが た。イラク戦争は泥沼化してしまつば喜ぶのではないかと思い、直ちに小好きでトップになるのは嫌なのだ」と

8. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

だが、特に注意を喚起したいのが外交た。 のだから、外務省や宮内庁など事務方 である。小沢氏の外交手腕を活用しな 小沢氏は、中国との間で「長城計が話を詰めて、会見をセットしておけ いのは、国家的損失である。 画」、米国との間で「ジョン万次郎のばよかっただけのことではないか。仮研 小沢氏は、竹下内閣の官房副長官時会」という、交流プログラムを長年続に小沢氏が何らかの役割を果たしたと 代に、厳しい日米貿易交渉を成功させけている。草の根民間国際交流というしたら、それは、事務方の不始末の尻 ている。国内で周到に根回しをして、 点でリべラルであるが、日本にとって拭いをさせられたということなのでは 譲れない最低線を固め、譲歩できる材重要な二つの大国と独自の。ハイプを作ないだろうか。 料を用意して、交渉に臨んだ。一度はるという点ではリアリスト的な企画でなお、小沢氏は皇室を深く敬愛して すわ決裂かという局面を迎えながら、ある。小沢氏は私に「米中それぞれといる。国会開会の日には外で陛下をお 最終的には合意に至り、米国側からうまくやれれば日本外交は安心だろ迎えすることを常としているし、皇族 「タフで公正な交渉者」との評価を得う」と語ったことがある。発想は常識の方が行事で岩手人りされる時は、そ ( 0 的だが、やることが他の政治家と違の行事に出るようにしている。 自民党幹事長時代には、北朝鮮に乗 安全保障の基本原則 り込んで、拿捕された第十八富士山丸永住外国人の地方参政権の問題につ の船長と乗組員の救出に成功した。北 いても、要は、過去の経緯を踏まえて、「自衛隊の海外派遣は国連決議に従 朝鮮側の言い分を全面的に認める合意常識的な線で解決を図ろうということう」という安全保障の基本原印を 文案を拒み、筋を通しての救出だっ だと思う。 沢氏は一貫して主張している。始まり こ 0 ちなみに、習近平中国副主席の天皇は一九九一年の湾岸戦争である。国連 中国に対しては、度々、民主主義を陛下との会見であるが、副主席時代の決議があるのだから、日本も多国籍軍 発展させないと国が混乱するであろう胡錦濤国家主席が訪日時に天皇陛下とに参加すべきだ、と小沢自民党幹事長 等苦一一一口を呈している。周辺事態法が成会見しているので、会見がない方がは主張した。これに対し、政府も、自 立する時には、「台湾は当然『周辺』「政治的意図」を疑われるだろう。習民党議員の多くも、反対した。国連決 に含まれうる」旨、堂々と述べてい氏の訪日はかなり前から決まっていた議に基づく海外派兵は集団的自衛権の

9. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

ないけど、今度は日本が協力すべきで 〇揺らぐ対米スタンス す。日本が世界の国々と、そしてアメ幻 究 研 〇今、日米の間にヒビが人ったならば、ぼっちでいくのか知らんけど、それでリカと仲良くしていくということが、 ヨーロッパとの関係は、アメリカの架政治の役割が保てるならそれでいいよ。日本の生存のための前提条件である以 橋でつながっているようなものでしてでも、アメリカと協調していくことが上、可能な限り、要求に応えるべきだ ・極端な言い方をしますが : : : それベストの道だと、八、九割の人は考えと思うね。それを「従米」というなら、 ももちろんダメになる。じゃ、果たしていると思うよ。翁年 7 月 5 日号、『週刊朝じゃあ日本が平和に豊かに生きていく には、他にどんな方法があるというん てアジアの諸国が、日本の側に立って日』 ) 協力してくれるような状況だろうか。〇アメリカとの共同歩調こそ、日本がですか。 ( 囲年、る』 ) それもーーー仮に日米関係がおかしくな世界平和に貢献するための最も合理的〇アメリカにどんどん資本投下させる あり得ない。まさにかつ効率的な方策なのである。日本はことは、むしろ最大の安全保障なんで ればですが、 国際的に孤立してしまう。そういうこ国防の基本方針の第一項に国連中心主す。そこがわかっていないんですよ。 とにさせてはいけない。なってはいけ義をうたってはいるものの、実質的に私は、かなり前にも、大蔵省の官僚に ない。それは第一には日本にとってだは日米安保体制のもとに独立と平和をアメリカに銀行を買わせたらいいじゃ し、大きくは世界全体にとって不幸な守ってきた。自由、基本的人権の尊重ないか、といったことがあるんです。 結果を招くだけである。 ( 囲年、『日米関係といった価値観も日米は共有している。そしたら「そういうわけにはいきませ を読む』 ) この点から考えても、平和維持のためん」といっていましたね。つまり制度 〇対米追随とかいう議論は、まったくの貢献はアメリカと緊密に協調して行的には自由だといいながら守っている んですよ。 ( 年 3 月日号、『週刊ポスト』 ) 根本を理解してない人の話なんだ。日うべきである。翁年、『日本靜画』 ) 本が国際社会のなかで、いまの暮らし〇敗戦後、アメリカは日本を全面的に〇アメリカがもう頼りにならなければ、 を守り、さらに発展させていくために庇護してくれた。 ( 中略 ) そのアメリカ中国と組めばいいじゃないか、などと どうしたらいいのか。アメリカと喧嘩が弱くなってきて、いろいろ注文をつ暴論を吐く人がいますが、それは情緒 して、どこと組むのか。あるいは一人けている。その全部が正しいわけじゃ論であって、何ら論理的な話じゃない

10. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

しては、もともと冷ややかな見方が多交わし、鳩山氏とも同様の文書協定を小沢氏には特に思想・信条などなく、 政局とそれに付随する権力とカネにし かった。小沢氏側近の平野貞夫元参院結んで党内を押さえにかかる。 究 議員から「意識的夢遊者」と指摘され横路氏と署名した文書の「現状認か興味がないのだと分かるはずだ。改研 憲論でも護憲論でも、その時々で利用一 るほど夢見がちな鳩山由紀夫首相です識」にはこう書かれている。 一、いまのままでは自衛隊は米国に価値がある方に転ぶだけなのだ。 ら、かってこのように批判していた。 ともあれ、今となっては誰一人、 「国連至上主義という誤った考えを持ついて世界の果てまでも行ってしまう っているのは日本ぐらいです。米国な危険性が高い。政府自民党による無原沢氏に直接モノ申すことができなくな どは冷静に国連を見ていますー ( 平成則な自衛隊の派遣に歯止めをかけなけった民主党では、小沢氏が「白いーと 言ったら黒いカラスも白くなる。当初 八年七月、新党さきがけ代表幹事時代ればいけない。 二、世界秩序を維持できる機能を有は疑問視する議員も少なくなかった の日経新聞インタビュ↓ 「日米中正三角形論」に関しても、最 「国連といえば正義と考えるような国する機関は国連しかない。 ( 後略 ) また、文書の「基本原則」は次のよ近では党執行部の共通認識となった。 連万能主義は極めて危険。小沢氏はこ 「私どもは中国に一方的にシフトして の点に関して意外に現実的ではない」うに記されている。 一、自衛隊は憲法九条に基づき専守いるわけではない。日米枢軸は不動だ。 ( 平成一一年九月、月刊「文藝春秋」 防衛に徹し、国権の発動による武力行米国との関係は一つも揺らぐことはな 一〇月号に寄せた論文 ) ところが、平成一五年九月に民主党使はしないことを日本の永遠の国是とい。中国は隣にいる大国だ。言葉が適 当かどうかわからないが ( 米中両国と と自由党が合併し、小沢氏が民主党人する。 ( 後略 ) りすると、こうした小沢氏自身やその東京裁判史観を受け継いだ社会党史の距離は ) 『二等辺三角形』だと思っ 観と小沢氏の持論とが、見事に融合している。両方ともまったく同じ重みで 主張に対する批判は影を潜める。 お付き合いする」 そして、小沢氏は当時、民主党内のているのがうかがえる。 旧社会党系議員のポスだった横路孝弘いまだに小沢氏のことを「保守政治山岡賢次国対委員長は昨年一一月、 衆院議長と「日本の安全保障、国際協家」だと勘違いしている人は珍しくな国会内で開かれた同党の衆院当選一回 力の基本原則」という合意文書を取りい。だが、こうした政治姿勢を見れば議員を集めた会合でこう語っていた。