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検索対象: 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]
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1. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

ような父性的なリーダー像に馴染んで興味深いのは、小沢さんにとってのいます。 いるため、それこそが「リーダーのあ″信念〃とは何なのかが具体的には語 ト尺一郎的カリスマとは るべき姿である」とインブットされてられない点です。 いるのではないでしようか。 『信念を持て』というある意味抽象的周囲の人が魅せられ、また同時に畏 な命題のもと、『二十四時間有権者とれる存在は『教祖的 ( カリスマ ) 』と一言 アイデンティティを与える存在 付き合え』という具体的な課題を示さってもいいと思いますが、小沢さんが 以上を前提として、では小沢さんは、れる。小沢さんの与えた課題をこなしこれまでの日本的なカリスマ的リーダ これまで一般的に理解されているリー 続けることが、小沢さんのいう『信念 ーとは違うのは、付き従う人達を、場 ダー像とはどう違うのでしようか。 のある政治家』になるということにな合によっては簡単に切るということで 小沢さんは、強力なメッセージ性とり、それが政治家として一人前になるす。 カリスマ性を持っリーダーであることこと、つまり主体を確立することにな一般的な日本におけるリーダー像は、 は間違いありません。ものすごく選挙ります。ところが一方で、そうやって冒頭にも述べた通り、不完全な人を導 に強い、ということも、そのカリスマ性自立せよ、主体化せよと言われ、そのき続けていくという、情を持ち合わせ に説得力を与えています。「この人に言葉通りに努力し邁進すればするほど、ています。強烈に人々を鼓舞し、自己 ついていけば、間違いがない」と思わ当人はその言葉を発したリーダーに対実現せよと発信する一方で、自らのイみ せるだけの実力を持っているからです。してひたすら忠誠を誓い続ける、といデオロギーに包み込んで、不完全な人 象 小沢さんは数冊の著書を通して、若うことにもなるわけです。自立せよ、 間もしつかりと抱え込んでくれる。追衄 い政治家に『信念を持て』と説く。そ主体化せよと言われれば言われるほど、随する人の甘えを受け人れてくれる人、 のためには『一一十四時間政治家であれ。ある意味、依存し、従属することになということもできます。これが日本的性 な とことん有権者と付き合え』といいまってしまう。こういった関係性は、社な父性です。 か す。 会や家族関係の中でも時折認められ、 しかし、小沢さんにはそれがほとん確 実に明快で強烈で、ぶれないメッセまた無意識のレベルにおいては往々にどないようにみえます。自分について ージです。 して認められる典型的なケースだと思こられない人、考えが合わない人とは

2. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

小沢さんに対する評価として多いの割も果たしてきました。会社などで考 小沢一郎とはどのような人物か。な ぜ、あれほどまでに周囲の人を魅了しは「情がない人間だ」、「過剰に合理主えるとわかりやすいですが、社長は、 ながら、同時に疲弊させていくのか。精義的だ」などでしようか。なぜこのよ業績アップという目的達成のために部 神科医としての視点から分析せよ、とうに判断されるのか、そこに私はまず下を鼓舞し、部下は社長に追従して働 一方で、失敗をしたり、あまり有 いうのが編集部からのリクエストです。注目しました。 なぜ、現在の日本に生きている人々能でない社員に対しても、社長は面倒 提供された何冊かの基本資料と、い くつかの記者会見の映像から見えてきは彼をそのように見るのか。それは、を見る。また有能に育ち、自分の考え 一般的に理解されている日本のリーダを持ち始めた部下には、活躍の場を与 たことを書いてみたいと思います。 まず、「小沢さんとはこんな人物でー像と、小沢さんの言動が少しずれてえたり、暖簾分けをして独立させるな どの懐の広さをみせる。ある意味、相 ある」という見解は、もちろん人によいるからではないでしようか。 これまでの一般的な日本のリーダー互依存的ともいえます。この相互依存 って変わるでしよう。「政治的リーダ ーとはこうあるべきーという、歴史的、像は、自らが発信するイデオロギーに機能をうまく働かせることができる能 経験的に培われたある種の「先人観ーに追従する人達に対して、「面倒を見るーカが、日本的なリーダ 1 像には必要な よって、人は人物を判断するからです。「尻拭いをする」といった父性的な役要素でした。そして、私たちは、その 不確かな父性 小沢一郎現象を読み解く 名越康文 精神科医 「小沢一郎」研究 102

3. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

うとした。氏にとって、明らかに、こ和創出戦略へと大転換しなければならソ連が消滅してイデオロギー闘争が終 の体験は非常に大きな音味を持つ。 ないと提言したのだ。 わると、長い冬眠から覚めたかのよう 究 自衛隊を戦いの第一線に派遣するこ 年当時の氏の主張は、国連中心主に、国連の活動がにわかに活発化して研 とは出来ないとしても、米軍の背後で義でありながら、日米関係を最大限重きたのである」「国連は創立以来、初→ とりで尺 野戦病院の医療活動に従事させること視するという現実的なものだった。めて国際政治における安全保障の砦 は出来るはずだと、氏は考えた。野戦「アメリカとの共同歩調こそ、日本がとしての基本的な条件を備えることが 病院は戦闘地域での活動である。 世界平和に貢献するための最も合理的可能になってきた」 ( 『改造計画』 ) と 氏が考えたもうひとつの貢献は、大かつ効率的な方策ー「日本は国防の基いう具合である。 型輸送機 013 0 で物資や難民の輸送本方針の第一項に国罌・・心主義をうた国連事務総長も、思わず背中がムズ を引き受けることだった。同任務遂行ってはいるが、実質的には日米安保体痒くなるほどの、礼賛と人れ込みよう に備えて、小沢氏はエジプトの空軍基制の下で、独立と平和を守ってきた。 だ。氏の深層心理をよりよく知るため 地の使用許可も取ったという。 したがって平和維持のための貢献も、にも、もう少し見てみよう。 だが、政治家も官僚も賛成せず、結アメリカと緊密に協調して行うべき」氏は国連にこそ、日本は歩調を合わ 局、計画は実行されなかった。当時のだという立ち位置は、穏当なものであせるべきで、日本が世界になすべき貢 状況を氏は『政権奪取論』で詳しく語ろう。 献は、「核軍縮の大幅促進」だと、主 っているが、結局日本の貢献は、戦争だが、同じ著書の中で、氏は理解を張する。第一段階で核兵器の大幅削減 後に派遣された掃海艇と、 1 兆 700 超える過剰で非現実的な国連への信頼を進めさせるそうだが、その方策は、 0 億円にのぼる現金だった。 を披瀝している。 とどの詰り、金銭的支援にあるという。 米国との交渉で「ものすごく恥ずか「冷戦時代の国連は、米ソによる覇権核兵器の廃棄には膨大な費用がかかる しーい思いをさせられ、国際社会で全争いの場だった。このため、双方の拒ため、米ソも容易に応じないが、「日 く信頼されないと実感した小沢氏は、否権によって何ひとっ有効な平和維持本が側面から援助することによって大 湾岸戦争の反省から、日本は受動的な政策をとれなかった」、しかし、「ポス幅な核軍縮の推進は可能」というので 専守防衛戦略から脱却し、能動的な平ト冷戦の時代に人るや状況が一変した。ある。

4. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

手堅く戦いながら、大局を創造的にデ沢一郎だ。 碁の達人 ザインしていく醍醐味は、大きな魅力 「創造的自由主義」の理念 小沢一郎氏は、碁の達人だ。プロ棋だ。知れば知るほど、碁は政治に似て 士と対等に渡り合う。国会議員では、 いると感じる。 米国流の国際政治学では、リべラル 最強クラスである。 小沢氏の政治スタイルは、碁の達人は左派、リアリストは右派であり、対 私は最近、碁の人門書を読み始めた。のスタイルなのだと思う。極めて慎重立する関係にある。しかし、冷戦後の 「小沢一郎を理解するには、碁がヒンで、論理的。基本的に、リアリスト世界政治の潮流は、左右の相互乗り人 トになるのではないか」と考えるから ( 現実主義者 ) だ。同時に、やるべきれだ。トニ ー・プレア前英国首相の だ。碁は、ルールはとても簡単だ。しことを手堅くやった上で得られる自由「第三の道」が代表例である。 かし、対局がまともにできるようになをこよなく愛し、個人の主体性を創造 小沢氏が党首だった自由党は、綱領 るのは、かなり難しい。碁では、一手的に発揮することに生きがいを感じるで「創造的自由主義」を掲げていた。 一手をよほど慎重に打たなければ、まという、リべラル ( 自由主義者 ) であそれは、個人の自由を保障するには、 るで勝負にならない。一方、局地戦をる。リべラルなリアリスト、それが小個人の自立を支えるための「セーフテ 私が見た 小沢一郎 く其のニ〉 リべラルなリアリスト 達増拓也 岩手県知事 「小沢一郎」研究 168

5. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

ないけど、今度は日本が協力すべきで 〇揺らぐ対米スタンス す。日本が世界の国々と、そしてアメ幻 究 研 〇今、日米の間にヒビが人ったならば、ぼっちでいくのか知らんけど、それでリカと仲良くしていくということが、 ヨーロッパとの関係は、アメリカの架政治の役割が保てるならそれでいいよ。日本の生存のための前提条件である以 橋でつながっているようなものでしてでも、アメリカと協調していくことが上、可能な限り、要求に応えるべきだ ・極端な言い方をしますが : : : それベストの道だと、八、九割の人は考えと思うね。それを「従米」というなら、 ももちろんダメになる。じゃ、果たしていると思うよ。翁年 7 月 5 日号、『週刊朝じゃあ日本が平和に豊かに生きていく には、他にどんな方法があるというん てアジアの諸国が、日本の側に立って日』 ) 協力してくれるような状況だろうか。〇アメリカとの共同歩調こそ、日本がですか。 ( 囲年、る』 ) それもーーー仮に日米関係がおかしくな世界平和に貢献するための最も合理的〇アメリカにどんどん資本投下させる あり得ない。まさにかつ効率的な方策なのである。日本はことは、むしろ最大の安全保障なんで ればですが、 国際的に孤立してしまう。そういうこ国防の基本方針の第一項に国連中心主す。そこがわかっていないんですよ。 とにさせてはいけない。なってはいけ義をうたってはいるものの、実質的に私は、かなり前にも、大蔵省の官僚に ない。それは第一には日本にとってだは日米安保体制のもとに独立と平和をアメリカに銀行を買わせたらいいじゃ し、大きくは世界全体にとって不幸な守ってきた。自由、基本的人権の尊重ないか、といったことがあるんです。 結果を招くだけである。 ( 囲年、『日米関係といった価値観も日米は共有している。そしたら「そういうわけにはいきませ を読む』 ) この点から考えても、平和維持のためん」といっていましたね。つまり制度 〇対米追随とかいう議論は、まったくの貢献はアメリカと緊密に協調して行的には自由だといいながら守っている んですよ。 ( 年 3 月日号、『週刊ポスト』 ) 根本を理解してない人の話なんだ。日うべきである。翁年、『日本靜画』 ) 本が国際社会のなかで、いまの暮らし〇敗戦後、アメリカは日本を全面的に〇アメリカがもう頼りにならなければ、 を守り、さらに発展させていくために庇護してくれた。 ( 中略 ) そのアメリカ中国と組めばいいじゃないか、などと どうしたらいいのか。アメリカと喧嘩が弱くなってきて、いろいろ注文をつ暴論を吐く人がいますが、それは情緒 して、どこと組むのか。あるいは一人けている。その全部が正しいわけじゃ論であって、何ら論理的な話じゃない

6. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

〈正統派に属さず独自の活動をする人〉以上の三つの特徴に共通するのは独裁ものすごいプロレタリアートだった。 者的な政治手法だ。一人で発想し、強だから、おやじは東京には政治資金作 の要素も多分に持ち合わせている。 とにかく、政界の内外を問わず、昨権的に処理する小沢流儀は、およそ民りのための後援会を持っていなかった。 僕もなかった」 ( 『年代の証言小沢 今は小沢一郎論の洪水だ。その理由は、主主義になじまない。 小沢が最高実力者と称され、日本の政これら利権政治家、破壊的改革者、一郎政権奪取論』朝日新聞出版、 治の行方を左右する第一のカギを握っ戦略家、独裁者の四つの属性はバラバ年刊 ) と語ったことがあった。小沢父子の ているということに加えて、多面性をラでなく、当然有機的につながってい 持った難解な人物だからだろう。難解る、と私は思う。つなぎ目の糸は何だ原点に反体制的なものがあるとみなけ ろうか。ひょっとすると、人間嫌いのればならない。 だから興味が増す。 ニヒリズムではないか。そして、政治〈小沢一郎の四〇年〉を振り返るに当 とりあえず、四面性が読み取れる。 まずこの一年は政治資金疑惑で検察庁家・小沢が最終的に目指しているものたって、もう一つ指摘しておきたいの の捜査対象になり、かってなく利権政は何か。ひょっとして、すでに論客のは、言葉の問題だ。政治家の発言はし 治家としての一面があぶりだされた。伊吹文明元自民党幹事長が言及していばしば論理的にみえて非論理、正義の 次に、一九九三年の自民党離党以降、るように、〈普通の国〉の衣を被った主張に聞こえて非正義である。最近の跡 新生、新進、自由の三党を結党・解党国家社会主義に近い強い日本ではない政界でそれを強く印象づけたのが小沢の し、細川、羽田、小渕三政権の崩壊にか。この場合、強いというのは、上意と小泉純一郎元首相だった。国民は幻 直接かかわったことで明白なように、下達の統制がとれた、という意味であ惑されるが、信奉者も少なくない。あ物 えて二人の違いを言えば、小沢は陰、年 組織や秩序を容赦なく壊す破壊的改革る。一つのヒントとして、小沢は、 界 者の側面である。 「僕のおやじ ( 小沢佐重喜 ) はものす小泉は陽である。 政 さらに、小沢は、宮沢、麻生両政権ごく貧乏な家の出なもんですから、最 ニ田中・竹下・金丸のだれとも似ていない→ から政権を奪取し、細川、鳩山両政権初から体制に反感を持っていましたね。 を誕生させる時にみせた強引で周到な財界や官僚という既存の体制とは付き最初に筆者である私の立ち位置を説 戦略家の才覚がきわ立っている。一方、合っていなかった。そういう意味では、明しなければ、小沢分析のアプローチ

7. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

だが、特に注意を喚起したいのが外交た。 のだから、外務省や宮内庁など事務方 である。小沢氏の外交手腕を活用しな 小沢氏は、中国との間で「長城計が話を詰めて、会見をセットしておけ いのは、国家的損失である。 画」、米国との間で「ジョン万次郎のばよかっただけのことではないか。仮研 小沢氏は、竹下内閣の官房副長官時会」という、交流プログラムを長年続に小沢氏が何らかの役割を果たしたと 代に、厳しい日米貿易交渉を成功させけている。草の根民間国際交流というしたら、それは、事務方の不始末の尻 ている。国内で周到に根回しをして、 点でリべラルであるが、日本にとって拭いをさせられたということなのでは 譲れない最低線を固め、譲歩できる材重要な二つの大国と独自の。ハイプを作ないだろうか。 料を用意して、交渉に臨んだ。一度はるという点ではリアリスト的な企画でなお、小沢氏は皇室を深く敬愛して すわ決裂かという局面を迎えながら、ある。小沢氏は私に「米中それぞれといる。国会開会の日には外で陛下をお 最終的には合意に至り、米国側からうまくやれれば日本外交は安心だろ迎えすることを常としているし、皇族 「タフで公正な交渉者」との評価を得う」と語ったことがある。発想は常識の方が行事で岩手人りされる時は、そ ( 0 的だが、やることが他の政治家と違の行事に出るようにしている。 自民党幹事長時代には、北朝鮮に乗 安全保障の基本原則 り込んで、拿捕された第十八富士山丸永住外国人の地方参政権の問題につ の船長と乗組員の救出に成功した。北 いても、要は、過去の経緯を踏まえて、「自衛隊の海外派遣は国連決議に従 朝鮮側の言い分を全面的に認める合意常識的な線で解決を図ろうということう」という安全保障の基本原印を 文案を拒み、筋を通しての救出だっ だと思う。 沢氏は一貫して主張している。始まり こ 0 ちなみに、習近平中国副主席の天皇は一九九一年の湾岸戦争である。国連 中国に対しては、度々、民主主義を陛下との会見であるが、副主席時代の決議があるのだから、日本も多国籍軍 発展させないと国が混乱するであろう胡錦濤国家主席が訪日時に天皇陛下とに参加すべきだ、と小沢自民党幹事長 等苦一一一口を呈している。周辺事態法が成会見しているので、会見がない方がは主張した。これに対し、政府も、自 立する時には、「台湾は当然『周辺』「政治的意図」を疑われるだろう。習民党議員の多くも、反対した。国連決 に含まれうる」旨、堂々と述べてい氏の訪日はかなり前から決まっていた議に基づく海外派兵は集団的自衛権の

8. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

っレトリックになっている。私のように戦 なりの理屈づけ、建前があったと思うんで 略的リアリズムを良しとする立場からする す。 究 と、違和感がありました。 小沢さんが側近を通じていろいろ言って研 櫻井お父様も、どちらかというと戦略的 くることがよくありました。その言葉を解一 リアリズムの方ですね。 析すると実にしつかりとした理念、目標、 渡辺そうです。ただ、レトリックの世界 ノ、政策があって、なるほどと思う。一方で、 は法律的理想主義的アプローチであっても、 どうも権力闘争のためにやっているのでは きちんと原理原則をわきまえていればいいというレベルだないかと思えたりすることがあるんですね。透けて見える ったと思いますけど。 というのはそういう意味です。 櫻井お父様は、情は 2 割でとどまっていなければいけな櫻井小沢さんが今まで書いたものを時系列で読んでみる い、あとは合理性だとおっしやった。今の小沢政治を見てと、今、喜美さんがおっしやったことは非常によくわかり いて、お父様の一一一一口う 8 対 2 のバランスは保たれていると思ます。『日本改造計画』の頃から言っているのは、政治は われますか。それとも違和感を感じますか ? 数である、政治をするには数を取らなきゃいけない、その 渡辺私は、政策の実現と権力闘争はコインの裏と表だと ためにはこうすべきだといった方法論まできちんと書いて 思うんです。だって、政策を実現しようと思ったら、権力ある。小沢さんがしていることはまさにそれなんです。 を取らないと実現できないじゃないですか。だから、常に ただ、その結果どういう政治をするのかという肝心のと これは表裏一体の話です。ただ、戦略的リアリズムの立場ころについて、変節しているんですね。だから、権力闘争 からは、コインの裏側から表側は見えないし、表側からものために後から理屈をつけているのではないかというのは、 裏側は見えないんですよ。でも小沢さんのやり方を見ると 私も胃の腑に落ちるような感じがしました。 裏側が透けて見えてしまうなという印象です。 渡辺権力闘争と政策の実現のどちらがメインなのかよく 櫻井もう少し具体的に話してください。 わからない。権力闘争が自己目的化してしまっているとい 渡辺つまり、小沢さんは様々な政局の仕掛けをしたり、 う解釈も成り立ち得る。だって、透けて見えてはいけない 政党を作っては壊してきましたが、小沢さんには常にそれ話なんですよ、これは。あくまでも表は表でなければいけ

9. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

小沢を読み解く 3 つのキーワード 小沢の天皇にまつわる発言は危険すぎる。国民は最大限の関心を払っていく必要がある。 にふれ、「宮内庁の役人がつくったもたのだが、私は小沢発言の中でもっと 発言の異様さ のが絶対だという馬鹿な話があるか」も重要で、問題なのは、天皇の意思を 民主党政権の側から象徴天皇のありと激高し、そして次のように語ったと一方的に忖度したところにあると思っ 方についていささか独断的な発言が続報じられた。 ていたので、その点を素通りする取材 いている。昨年十月には、岡田外相が「陛下ご自身に聞いてみたら、『手違記者との会話はかみあわなかったとい 国会開院式での天皇の「おことば」はいで ( 手続きが ) 遅れたかもしれないう記憶がある。 常に紋切り型である必要はなく、むしが、会いましよう』と必ずおっしやる岡田発言にしても、小沢発言にして ろ陛下御自身の思いを盛られたほうがと思う」 ( 傍点は保阪 ) も、きわめて危険なのは歴史的な教訓、 よろしいのではとの発一一一口を行った。そ この記者会見の発言には、このほかないし歴史的な知恵をまったく学んで して昨年十一一月十四日には、小沢一郎に国事行為と公的行為の区分や天皇へいないという点にある。宮内庁長官の 民主党幹事長が、訪日中の中国の習近の「内閣の助言と承認」をめぐっての「一カ月ルール」の説明中にも、天皇 平国家副主席と天皇の会見について宮私見も含まれていたために、各紙ともの健康を心配するとの名目で自分たち 内庁の長官が「一カ月ルール」の手続大きく小沢発言を取り上げた。私自身の権限を侵されまいとのいささか利己 きにのっとっていないと批判したことにも二、三のメディアから取材があっ的な解釈が垣間見えるのだが、しかし 天皇 ノンフィクション作家 保阪正康 3 「小沢一郎」研究 40

10. 新潮45別冊 櫻井よしこ編集長 小沢一郎研究 2010年 04月号 [雑誌]

と同時に、中国の目を自民党より民主し、後に袂を分かった経済人類学者の ト尺の手法とレー一一ン主義 党に引きつけ、対中。ハイプを一元化す栗本慎一郎氏は、平成一一年発行の著 書『自民党の研究』で、「小沢一郎と それでは、小沢氏は中国に関してはるのが目的だったのではないか。 小沢氏の考え方と政治手法は、いついう現象」についてこう記している。 どう見ているのか。胡主席や温家宝首 相と会談する際には、日本ではほとんたん民主的に指導部 ( 者 ) を選んだら、《小沢という人物の持っ力が、本来の ど見せない満面の笑みを浮かべている後はその決定に無条件に従わなければ磁場をねじ曲げてしまうことによって 起こる「小沢ハプニングーとでもいう が、内心はよく分からない。今年一一月ならないというものだ。 このやり方が、レ 1 ニン主義を引きべき現象だ。 ( 中略 ) 他人から見て、 一三日の講演では中国の現状について 継ぐ旧ソ連や中国共産党などの「民主いったい何が起こったかまったく分か こう指摘している。 らないことが多かったろう。みんなが 「中国は政治経済が他の国以上に密接集中制」にそっくりであることは、 不可分の関係にあるので、経済的危機「駐日中国大使館関係者が『わが国と小沢のまわりに集まったり、逆に必死 はまさに政治的な体制の危機。体制の民主党は似ていますね』と話していで逃げ回ったりした。こういうことは、 た」 ( 官房長官経験者 ) ことからも明政治的というより、文学的なことなの 危機はまた経済の危機という関係だ。 中国の指導者は頑張っているようだがらかだ。そういう意味で、小沢氏は中ではなかろうか。私だけではない。元 国に親近感を覚えているのかもしれな総理や元官房長官まで含めて、小沢の 非常に厳しい」 小沢氏は年一回、「長城計画」と題いが、それだけで中国に接近してきた巻き起こした渦の中で身をもんだ》 政権交代の結果、日本の政界もメデ して中国指導部との交流事業を実施しわけではないはずだ。 ており、昨年は民主党議員一四三人を結局、小沢氏にとっては自分の地位ィアも、それどころか米国や中国の対 含む計六百人以上もの訪問団を引き連と権力を固め、自身に都合の良い環境日政策までもこの「小沢ハプニング」 れ「朝貢外交」と言われた。 を整備することがすべてであり、日本に巻き込まれてしまった。本来、非現米 だが、これも小沢氏が単純に親中派も中国も米国も、実はどうでもいいの実的で文学的ですらある一人の政治家 の妄執が、日本社会を大きく振り回し、 だからということではないだろう。むではないかと思えてならない。 ( あびるるい ) しろ、内外に自身の権勢を見せ付ける新生党衆院議員時代に小沢氏に期待混乱させている。