脳科学者 - みる会図書館


検索対象: 脳の中の小さな神々
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1. 脳の中の小さな神々

) Snow, Charles Percy 一九〇五 5 一九八〇年。イギリスの物理学者にして作家。著書『二つの文化と 科学革命』 ( 2 ) BarIow, H. B. 一九二一年 5 。ケンプリッジ大学の神経生理学者。認識のニューロン原理を提案。 ( 3 ) RamonYCajal, Santiago 一八五二—一九三四年。スペインの組織学者。染色技術を用いた神経細胞 の構造の確立によって、一九〇六年にノーベル医学生理学賞を受賞。 ( 4 ) GoIgi,Camillo 一八四四 5 一九二六年。イタリアの細胞学者。シナプス間隙を発見。一九〇六年にラ モニ・カハールとともにノーベル医学生理学賞を受賞。 ( 5 ) HubeI,DavidHunter 一九二六年—。カナダ生まれのアメリカの神経生理学者。脳の視覚経路や超カ ラム構造などを研究し、一九八一年にウィーゼルらとともにノーベル医学生理学賞を受賞。 ( 6 ) WieseI, Torsten NiIs 一九二四年 5 。スウェーデンの神経生理学者。ほ乳類の視覚機構を研究し、ノ ーベル医学生理学賞を受賞。 ( 7 ) 物理学、工学、化学、生物学、医科学など広い分野にわたる自然科学の独立行政法人の総合研究所。 ( 8 ) 部分と全体が自己相似形になっているような図形。数学者プノワ・マンデルプロが導入した幾何学の 概念。 ( 9 ) Pribram, KarI H. 一九一九年—。アメリカの神経生理学者。ホログラムは小さな断片からも全体像 を映し出すことができるレーザー光線を使った立体画像技術だが、プリプラムは、脳や宇宙がホログラ フィックな構造をしていると主張した。 ( 川 ) 機能的磁気共鳴画像。この技術によって脳のどの部分が活動しているかが視覚化でき、脳科学は飛躍 本文注記 261

2. 脳の中の小さな神々

本文注記 的に進歩した。 ( Ⅱ ) 神経生理学者ジャコモ・リツオラッティらの研究グループ。 ( リ自分や他人の心の理解。ヒトは、他人が自分と違う心を持っていることを三、四歳頃から徐々に理解 するが、自閉症患者においてはそれが損なわれていると推定される。 ( ) MandeIbrot, Benoit 一九二四年—。ポーランド生まれの数学者。一九六七年に「イギリスの海岸線 の長さはどれぐらいか」という論文で、自然界に存在する自己相似形をフラクタルと名づけた。 4 ) ドイツ人医師ガルや解剖学者シュプルッハイムによって宣伝された頭蓋の骨相によって人の性質や運 命、善悪、賢愚を判定できるとする学問。一九世紀前半の欧米で流行。 ( ) 統合失調症などの外科的治療としてかって行われた脳の前頭葉白質の一部を切除する手術。 6 ) フッサールによって構想された哲学を出発点とする哲学の潮流。意識に明証的に直接現れる現象を直 感し、その構造を記述する。 ) Philosophy of Mind の訳語。心とは何であるか、心と身体の関係は「心身問題」と呼ばれ、デカル トの心身二元論以来、哲学上の伝統的問題となっている。心脳問題としても論じられる。 ) Jackson, Frank オーストラリア国立大学の哲学教授。「メアリ 1 が知らなかったことーという論文を 哲学雑誌に発表した。 9 ) Crick, Francis 一九一六—二〇〇四年。イギリスの分子生物学者。の二重螺旋構造を発見し た。彼はワトソンやウイルキンスとともに一九六二年にノーベル医学生理学賞を受賞。 ( ) Koch, Christof 一九五六年—。神経科学者。カリフォルニア工科大学教授。著書に『意識の探索ーー 神経生物学的アプロ 1 チ』。 1 ) Eccles, John Carew 一九〇三—一九九七年。一九六三年にノ 1 ベル医学生理学賞受賞。ポパーとの 共著『自我と脳』がある。 262

3. 脳の中の小さな神々

むずかしいけれども、やりはじめた人たちがいるということですね。 茂木そうですね。ただ、科学と工学の歴史というのは意外に無関係ではなくて、工学者が「エイ 究ャッ」と乱暴にやってしまうと、そのあと科学が追っかけていって大発見につながったりすること のもある。いまのところ連携を取っていないというところが問題といえば問題なのかもしれない。す ザ ごく野蛮な「エイヤツ、というプルド 1 ザーみたいな研究と、すごく洗練された趣味のいい研究を どうつなぐかは重要な問題なのかもしれないですね。 と 工学的にやってしまうのが、プルド 1 ザー ( 笑 ) 。 者 究 陸茂木そうですね。多くの脳科学者はそう思っていると思います。 大 黒 工学系の研究者との違いを踏まえると、茂木さんのような脳科学者がどういう研究をしよう としているのかはっきりしますね。この本でも、すでにわかっている表層の脳の反応ではなくて、 暗黒大陸のあたりを探っていこうというわけですね。 脳のもっと深部というか、とらえにくい

4. 脳の中の小さな神々

目の子孫という名門の出だそうで、統計的なアプロ 1 チで脳科学とか認知科学をやる方法の世界的 な創始者です。全然飾らない人で、いつもポケットに小銭をじゃらじゃらさせていました。私もマ ネをしていたらポケットに穴が開きました ( 笑 ) 。 運動野も同様に、脳出血で運動野がやられて手が動かせなくなったり、中枢性の運動障害の研究 者 究をとおして証拠が積みあげられていったのだと思います。ここを刺激するとこう手が動くといった の ことは電気生理をやることによってわかります。入出力のいちばん最初と最後のところはわかりや だから、サイエンティフィックにはぜんぜん驚くべきことではないんです。脳科学者がいまおも しろいと思っていることはそういうこととはちょっと違う。歌田さんが言われたような実験をやっ と しいよ。というタイプの人たちがやっているん ている研究者は、「脳のことはあまり知らなくてもゝ 者 究じゃないかと思いますね。科学的な興味と、実用をめざす工学的な興味は、かならずしも一致しな の いわけです。工学と科学というのはどっちが悪いとかいいとかじゃなくて、違うんです。 陸 大 研究者がそもそも別なんですね。 茂木別ですね。

5. 脳の中の小さな神々

あさんにも親切にしておくと子育てに協力してくれるかもしれないから、長い目で見れば自分の子 孫が残る可能性が高くなる」というようなタイプの説明をするのが科学なんですよ。科学主義とい うのは前提になる概念セットを定義したうえで、概念を組み合わせて説明する。ポストモダニズム はそうじゃなくて、概念の成り立ち自体を根底から問うというか、違う概念の組み合わせもあるで ・カ せしようと一一一一口う。科学者にそれが理解できないのはあたりまえなんです。だってそういう訓練は受け ていないんだから。機能主義の人としゃべっていて、彼らにいちばん欠落しているように感じるの ん はそこなんですよ。 胞 細 余談ですけど、大学の理科系の研究室に行くと、ばくたちの世代まで典型的な光景だったのは、 「少年マガジン」とかおいてあって、グラビアの水着の女の子の写真が貼ってある。そこには「ひ の よっとしたらおばあさんのほうが魅力的かもしれない って変なことを考える人はいないんです よ。その単純明快な世界観 ! ( 笑 ) そうやって割り切ったから科学文明って発達してきたんですけ な ど、意識というものを問題にしたときに必要とされる能力は、またちょっと別のような気がするん え , 刀 ですね。そこはなかなかモードチェンジができないところなのかな。 し 隣 ーーーー文科系の学生の部屋もあんまり変わらなかったと思いますけど、まあ、文学や哲学の本が何 冊かはあったかもしれませんね。それはともかく、モードチェンジしないと解けないところにきて しるということですか。

6. 脳の中の小さな神々

. な さて、ここらでいよいよクオリアの話に行きましようか。クオリアは「質感」というぐあい わ ま に訳されていますね。たしかにわれわれが見たり感じたりするときに質感があるということは感じ られるわけですけど、クオリアの認識が大事だということはどのように言われはじめたんですか。 っ ま ( 炻 ) て茂木クオリアという言葉を使わないにしても、現象学の哲学者たちなどはそうしたことを問題に ンしていましたし、「心の哲学」と言われるような哲学の分野があって、「私たちの主観的な体験が物 質的な脳に宿るのはどういうことなのか」などと長いこと議論している人たちがいました。けれど 人も、クオリアという一言葉が脳科学の表舞台に出てきたのは最近のことです。 まず一九八二年にオーストラリアの哲学者フランク・ジャクソンが、〃メアリーという天才科学 者〃をめぐる思考実験を論文にしました。メアリーは白黒の部屋に生まれ育ち、ずっと白と黒の色 しか見ていない。だけど、外から情報をもらって、脳がどういうメカニズムで色を見ているのかに ついて完璧な知識を得た、という設定です。赤い色を見るとき脳のなかでどういうことが起こって クオリアへの道のり

7. 脳の中の小さな神々

すか。 . な ぼ茂木アリゾナ大学で九四年から二年に一回「意識の科学へ向けて」という会議を開いているんで ・カ Y すね。そこにペンローズやクリックなど世界中の研究者が集まって意識の科学についての会議をや っ るようになったんですが、その中心人物がディヴィッド・チャ 1 マーズという人です。彼はもとも ま とオーストラリア人ですが、オックスフォードに行って数学を勉強してから哲学者になった。彼が で ン 一九九六年に書いた『意識する心』のなかで、「クオリアが意識の問題の本質で、それこそが唯一 はのむずかしい問題だ」って言った。これも一つのタ 1 ニングボイントだったと思います。 人 それまで意識とかなんとか言ったって、何がほんとうに本質的でむずかしい問題なのかというこ とをみんなわからないで言っていた。意識といっても、注意をどこに向けたらいいかとか、記憶の メカニズムはどうなんだとか、機能主義的に説明できるようなこともごちゃ混ぜになって議論され たんですね。ニュートン以来の機械論的な物理的世界観に対して主観的な体験の質の問題があると いうことをちゃんと理解したうえで言っているわけではなかった。 は違うんだよーと、なかなか理解してもらえなかった。いまはそういうことは理解されてきている と思うんですけど。 『タオ自然学』は評判になりましたからね。ペンローズのあとはどういう動きがあったんで

8. 脳の中の小さな神々

本文注記 生に関する研究を行った。一九八一年に分離脳の研究でノーベル医学生理学賞を受賞。 ( 料 ) KandeI, Eric R 一九二九年—。アメリカの神経生物学者。学習の神経生物学機構について研究。二〇 〇〇年にノーベル医学生理学賞受賞。 ( 菊 ) Feynman, Richard 一九一八—一九八八年。アメリカの理論物理学者。一九六五年に量子論の繰り込 み理論で朝永振一郎氏らとノーベル物理学賞を受賞。マンハッタン計画メンバ ( 恥 ) Shrödir 】 ger, Ervin 一八八七 5 一九六一年。オーストリアの理論物理学者。波動力学を提唱して、原 子の構造を説明した。一九三三年にノーベル物理学賞を受賞。 ) Heisenberg. werner Kar 二九〇一—一九七六年。ドイツの理論物理学者。行列力学や不確定性原理 など量子力学の確立に寄与した。一九三二年にノ 1 ベル物理学賞を受賞。 靄 ) Mach,Ernst 一八三八 5 一九一六年。オーストリアの哲学者・物理学者。ニュートンが提唱した空間 概念の絶対性を否定し、相対性理論の構築に強い影響を与えた。音速の倍数で表わすマッハという単位 を提唱した。 ( ) Libet, Be 三 amin 一九一六年—。アメリカの神経生理学者。神経伝達システムの研究をした。 、バッハ』でピュリツア 1 賞を受賞。ノーベ ( 団 ) Hofstadter, Douglas Richard 『ゲ 1 デル、エッシャー ル物理学賞の受賞者ロバート・ホフスタッターの息子。 1 ) ヒトやサルと同じ真猿亜目に属する霊長類。複雑な脳、高度な知能、尾がないなどが特徴。チンパン コリラなど。 ジー、オラウータン、テナガザル、、 ( 醒 PenfieId, WiIder 一八九一—一九七六年。カナダの脳外科医。モントリオール神経学研究所を創設。 『脳と心の正体』などの著書。 ( ) 生命現象を情報の流れとして捉え、遺伝子やタンパク質に関する情報をコンピュータによって解析す る生物学分野。生命情報工学。 265

9. 脳の中の小さな神々

科学革命はいかにして起こるか よ。逃げようがないわけですから。 と思って 話が脱線したようだけど、科学者の機能主義も、ア 1 ティストが「もうそれしかない という科学 いる感覚主義みたいなものも、どちらもつらい。「世界は数値化できるものしかない 者も、「おれが作る作品は感覚がすべてだ」みたいに思っているアーティストも逃げ場がない。「ほ んとうはほかのこともあるんだよ」と思っていながら、だけどいまは感覚に没入しているとか、機 能に踏みこんでいるという形で演じているとそれは楽しい クオリアが引き起こす科学革命 アーティストは自己暗示をかけているわけでしようし、科学者の場合もちょっと演じている ようなところもあるんじゃないですか。「質感とかそういうものがあるというのはわかるけれども、 自分はそうじゃなくて、物理的な反応だけで世界を見るんだ」みたいに。 茂木意外とそうでもないんですよ。演じている機能主義者はいいんですよね。それだけだと思っ ている人はほんとうに見ていてつらいですね。大学の先生なんかでも、フランス文学の篠沢教授と 144

10. 脳の中の小さな神々

歌田ええと、これから脳研究の最前線の話を鋭く、しつこく、わかりやすく、楽しげにうかがっ ていきたいと思っているのですが ( 笑 ) 、脳科学はほんとうにすごいことになっていますねえ。ネ ズミやサルといった動物から人間にいたるまで、脳の電気信号をとりだしてロポット・アームを動 者 究 かしたりコンピューターを操作するといった研究が、アメリカやヨ 1 ロッパの大学ではじまってい 研 の るようで、『ネイチャー』などの権威ある科学雑誌にも成果が発表されている。脳の電気信号をと りだすばかりではなくて、逆に脳に電気信号を送ってネズミやゴキプリを操るなんて、すさまじい ド 研究まで日本も含めてやられていますね。 と 茂木たしかに一般の人はそういう研究は驚くと思いますし、ねらい目としてはよかったとも言え 者 究 ます。最終的な運動の出力をつかさどる脳の部署の働きは、動きがはっきりしていて機械としてと 研 の らえられる。その活動を拾ってきてそれを外部の出力装置につなげば、ちゃんと動かすことが可能 陸 黒なんですね。だけど、脳のことを知っていると、「そんなことをやってもな」という感じもあるん です。脳科学をやっている人には、そうしたことはもう織りこみ済みで、株価が上がってから買う ようなところがある。運動野の神経細胞を三〇個取ってきて、その活動をなぞれば腕が動かせる、 そんなのあたりまえじゃないかって思うわけです。