待機 - みる会図書館


検索対象: 「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 : 自立と依存の性風俗
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1. 「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 : 自立と依存の性風俗

す独特の居場所感 いずれの待機部屋にも共通するのは、独特の「居場所感」だ。デリへルの待機部屋とい うと、客からの指名を待っている女性たちが無言でスマホをいじっているような殺伐とし た雰囲気をイメージする人もいるかもしれないが、必ずしもそうではない。 リ」と女性がガ ある店の待機部屋では、部屋の真ん中で「やった、生理が来た ツッポーズをとりながら叫んでいた。その様子を見て、他の女性やスタッフは腹を抱えて 笑っている。 : とも思うが、この店のように、女性が自らのプ 色々な意味で笑い話ではないのでは : ライベートをさらけ出して笑いにできるほど、キャスト間・スタッフ間の信頼関係が構築 できているところもある。そうした店の待機部屋は、殺伐とした空気とは全く無縁である。 待機部屋での過ごし方は、女性によって様々だ。毛布にくるまってスマホをいじってい る人もいれば、鏡を見てメイクを直しながら、大股開きでカップラーメンをすすりつつテ レビを観ている人もいる。いずれも緊張感ゼロ、生活感がむき出しの状態で、「夜の蝶」 や「女豹」といった色気は全くない。

2. 「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 : 自立と依存の性風俗

一つの店舗で複数の待機部屋を持ち、キャストの年齢や経験、性格によって振り分けて いるところもある。待機部屋内でキャスト同士の不要なトラブルやいざこざが起きないよ うにするためだ。 、ハーが完 待機部屋の雰囲気も、店や場所によって千差万別だ。 Wi-Fi やウォーターサー 備され、ビジネスマン向けのコワーキングスペースのような雰囲気のフロアの部屋もあれ ば、精神保健福祉士の相談員から「精神科の待合室みたいですね」と評される部屋、大阪 のあいりん地区で活動してきたソーシャルワーカーから「釜ヶ崎と同じ匂いがする」と一言 われるような部屋もある。 ある店の待機部屋では、部屋の壁一面に接客フローの張り紙や、性病検査キットの案内 マンガ、ココセコム (c co 付き警報ボタン ) の携行案内、本番強要へ対策など、様々な 告知が掲示してあった。机には「女の子のための身バレ防止マニ、アル」と題して、スマ ホのプライベートプラウズの設定方法、サイトの閲覧履歴の消去方法が明記してある。 、、ヾッグ、百円ショ 荷物置き場には、キャラクター人りの巾着袋からプランド物のハント ップで売っているようなビニールの手提げまで、様々な種類のカラフルなバッグが乱雑に 並んでおり、働いている女性の多様性を垣間見ることができる。 リ 6

3. 「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 : 自立と依存の性風俗

マイクロビキニを着て、客から「逆リフレ」Ⅱマッサージをしてもらうこともある。最 中に乳首や性器に触りたがる客も当然出てくるが、そこはうまく態度や言葉であしらう。 丿フレは「客をうまく教育できる」女性が稼げる世界だと言える。 今のお店は待機部屋がないが、ゆみかさんは「居場所感」のある集団待機のほうがいい と考えている。普段はマクドナルドやルノアール、サンマルクカフ = で待機していること が多い。「」では、女性が事務所に出勤した際に、その日の服装を撮影してッ ィッターの店の公式アカウントで拡散しているので、外待機中にお客に会わないか、バレ ・なかい」、つかも不・宀女だ A 」い、つ。 待機中はいつお店からの連絡が人るのか分からないので、絶えずスマホをチ = ックして いないといけない。すぐにスマホの充電が切れるため、一日に三回は充電しなければなら ず、そのため外待機の場所は、電源と Wi-Fi のあるカフェがベストだそうだ。 前の店では「ランカー」Ⅱ指名ランキング一、二位を常時キープしていた。ただ、人気 が出ると他の女性から嫌がらせをされるようにな「た。掲示板で特定の女性を叩いている のは、実は同じ店の女性が多いという。 その店は、在籍している他の女性の盗撮動画 ( それも本番行為の最中 ) がネット上に流 048

4. 「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 : 自立と依存の性風俗

応が良いと客の態度も良くなり、結果的にキャストが安心して働けるようになるという。 その店の待機部屋を初めて訪問した女性の新人ソーシャルワーカーは、「デリへルの事 務所って、人身売買の組織みたいなプラックなところだと思っていましたが、全然違って いて驚きました : : : 」とつぶやいた。 風テラスには、性風俗の仕事をやめた女性からの相談も来る。その中には「風俗の仕事 で得られるのはお金だけではなかった。店をやめてから居場所がなくなったように感じて、 精神的に辛いんです」と打ち明ける女性もいる。 デリへルをやめて生活保護を受給し、無料低額宿泊所からア。ハートに転宅した後、「や 由 つばりお店で働きたいです」と訴える女性もいる。 そう、待機部屋は彼女たちにとっての「居場所」なのだ。これは、待機部屋「しか」居 居 の 場所がない、 というネガティブな意味ではない。待機部屋「だからこそ」居場所になる、 へ というポジテイプな意味も含まれている。 性風俗を「性的搾取の温床」と思いたい人たちにとっては不都合な真実かもしれないが、 章 少なくない数の女性たちにとって、デリへルの待機部屋が自宅でも職場でもない居心地の第 良いサードプレイスⅡ「第三の居場所」になっていることは、否定できない事実である。

5. 「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 : 自立と依存の性風俗

4 「楽屋 , に集う彼女たち 初回の開催は、六月十八日 ( 日 ) 十四時から十九時の間、池袋駅東ロの貸会議室に て行うことにした。休憩スペースの名称は、モデルやアイドルに憧れている女性が多いこ とから、「リフレの楽屋」と命名した。どれだけの人数が来るのか予想がっかなかったた め、ひとまず四人部屋を用意した。 「外待機に疲れた女子、全員集合 ! 」というコビー、及び会場案内を記載した告知用のチ ラシを作成し、桑田さんのご協力を得て、当日出勤する女性にチラシの画像を * Z で 配信してもらった。 ドリンクを並。へて、いざ 部屋のテー。フルにスマホの充電器、ハイチュウなどのお菓子、 営業開始。安井さんと一緒に、椅子に座って女性たちの来訪を待った。 あっという間に一時間が経過したが、まだ誰も来ない。残り時間は四時間。果たして、 本当に来てくれるのだろうか。一時間半が過ぎたところで、桑田さんから»-a — Z が届い 、 ) 0 052

6. 「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 : 自立と依存の性風俗

いとか審判しない。女の子が自分で選んできめることだから。 相談や情報提供が成功したかはセックスワークをやめるとかじゃない。生きてくう えで生活をよくしたり、福祉サービスを受けたり、受けているダメージを少なくする ことに向き合ってい 待機部屋で繰り広げられている事はとっても当たり前で、すごく当たり前のこと。 す女の子たち 本当に自分が必要とした時に誰かに支えてもらったり、ちゃんとそばで誰かが見て いてくれるという経験をしていない、誰かへ助けを求める術を「教えて」もらってい ないから助けを求めるタイミングもわからない、そんな「女の子」が私の前に現れる。 「女の子」たちにとって自分を支えてくれる人や、見ていてくれる人の存在はとて も大きい。待機部屋で私の前に現れる「女の子」たちを「見ていてくれる、支えてく れる人」は店のスタッフであったり、風テラスの相談員であったりする。 否定されない関係、そこに居る事がそのまんま受け入れられる関係は大切な意味を もつ。今日もまた、待機部屋に足を運ぶ。 172

7. 「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 : 自立と依存の性風俗

まう。その意味でも、同業者の集うデリへルマンションのような物件は好都合である。 ただし、デリへルの事務所に部屋を貸してくれる大家さんは少数派であるため、マンシ ョンの部屋ごと買い取ったり、自社ビルを建てて事務所を構えているところもある。 地方都市の場合、住宅地の真ん中や人通りの多い国道沿いに事務所を構えている店もあ る。看板を出しておらず、ホームページに住所も記載していないため、誰も気づかない。 事務所の前では、ランドセルを背負った小学生が普通に歩いている。私自身、風テラス の実施過程で多くの事務所を訪間させて頂いたが、「まさかこんなところにデリへルの事 務所が」と驚かされることも非常に多かった。 由 理 こうした「見えない」事務所の存在こそが、「見られたくない」彼女たちを守るための シェルターになっているのだ。 、 . し 居 の す待機部屋百景 へ 事務所にある待機部屋の形態は、店によって大きく異なる。広大なフロア内にネットカ 章 フェのような個室。フースが並び、出人りの際に女性同士が顔を合わせないように配慮され第 ているところもあれば、ワンルームマンションの一室で集団待機、というところもある。

8. 「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 : 自立と依存の性風俗

開き直っている一方で、女性本人は「家族から認めてもらいたい」「親に喜んでほしい」 と一生懸命頑張っていることもあるので、問題の根は深い。 家族は経済的安全を保障してくれるべースである一方、経済的搾取を引き起こす密室に 変わることもある。そうなった場合、血縁は資産ではなく負債に変わる。負債と化した煩 わしい血縁を断ち切る「快刀」を求めて、彼女たちは性風俗に集う。 す自宅よりも待機部屋が落ち着く 「待機部屋は夫がいないので、家よりは落ち着くんですよ。他の女の子たちと話しているる 生 方が息抜きできます」と高橋和枝さん ( 三十五歳 ) は語る。 て 夫は夜になると睡眠薬を酒で喉に流し込み、酔った状態で和枝さんに対して殴る蹴るの 苛烈な暴力を振るう。手の骨ゃあばらを折られて人院したこともあった。 「夫に殴られた」と医者に伝えると警察官がやってきたが、「告訴したらもっとびどい目 風 に遭わされる」と思って訴えなかった。いっ夫から暴力を受けるか分からないというスト 章 第 レスのため精神状態が不安定で、睡眠薬が手放せない。 待機部屋でそのことを他の女性に話したところ、「店長に伝えて、風テラスに相談した

9. 「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 : 自立と依存の性風俗

寮完備の仕事を選ぶ人も少なくない。良くも悪くも、風俗業界が社会的養護の下で育った 若者たちの受け皿になっている現実がある。 永田さくらさん ( 三十三歳 ) は、一カ月前から店の待機部屋で寝泊まりしている。シェ アハウスや無料低額宿泊所に住んでいたこともあったが、集団生活になじめずに退去。 ネットカフェなどを転々としてきたが、お店以外の場所にいると出勤しなくなってしま うので、最近は店長に頼み込んで、朝の九時から夜二十三時まで出勤して、その後待機部 屋に泊まるという生活を続けている。 さくらさんのように、無料低額宿泊所よりも性風俗店の待機部屋の方が「自由に過ごせ れ 生 る」「居心地がいい」と感じる女性たちは確実に存在する。 て 役所から紹介された民間の宿泊所や施設での劣悪な集団生活に耐えかね、再びデリへル こ に戻った女性たちの中には、「風テラス ? どうせ生活保護や施設を勧められるだけでしは よ」と「学習」してしまっている人もいる。 風 愛着障害や発達障害、 ハニック障害などの理由で認知能力や自尊感情が低下していたり、 章 第 集団生活が困難な女性にとっては、一人で落ち着いて過ごせる時間と空間が必要になる。 プライバシーのない家庭生活や施設生活に耐えられない人が、自らのプライバシーを守

10. 「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 : 自立と依存の性風俗

( 圓 ) 地域福祉との差異 話していることは地域福祉の現場でよくあるものなんだよね、ここがデリへル店の 待機部屋だという以外は。 風テラスの事業開始前、初めて鶯谷デッドボールの待機部屋を訪れた時にたまたま 居合わせた在籍女性と話した時に感じたことである。この感覚は風テラスが始まって から、ますます深まっていった。このコラムでは筆者がこれまで携わってきた若者支 援や、生活困窮者支援での経験をもとに、何がどう「同じ」なのか、逆にどんな「違 い」があるのか考えてみたいと思う。 す風テラスはその他の福祉相談と「同じ」 ? 風テラスの相談にいらした方が語る「困っていること」とそのあり様は地域の福祉 鈴木品子 126