振り返る - みる会図書館


検索対象: ルポ保健室 : 子どもの貧困・虐待・性のリアル
23件見つかりました。

1. ルポ保健室 : 子どもの貧困・虐待・性のリアル

保護者については、学校として打つ手なしの状況だった。 自立するしか道はない、が 相葉さん自身は、母親を迎えにいった騒動のことを「あのとき気持ちが吹っ切れたのか な」と振り返る。実際、長谷川先生によると、その頃から相葉さんは、涙を見せることが 目に見えて減ったという 長谷川先生はそんな様子に接するうち、ある結論に達する。 それは、「彼女自身が自立するしか道はない」というものだった。 折しも、 2010 年 4 月から高校授業料無償化が実現されたばかり。高校に受かりさえ すれば進学は許してもらえそうだと、相葉さんは見通しを語っていた。 相葉さんと長谷川先生は、どんな学校なら自立に役立つかを一緒に考えた。その結果、 都立の商業高校を目標とすることにした。 在学中に資格を取得できるので、高校卒業後の自活につなげよう、という狙いだ ノイト代をもらい 「高校生になったらアルバイトできるし、賄い付きの飲食店で働けば、ヾ ながらご飯も食べられて一石二鳥だよ」 0

2. ルポ保健室 : 子どもの貧困・虐待・性のリアル

てくれるとしてもやはりインスタントラーメンになるのだとい、つ カワノ君にとっての家庭の味は、まず第一にインスタントラーメンなのだ。それでは脂 肪肝になるのも無理はない。 「それで、生活の様子を具体的に聞きながら、できそうなことを二人で見つけていきまし た」と森先生は振り返る。 どこでラ 1 メンを買っているの、と聞くと、コンビニという。家の場所を尋ねると、森 ーの隣のコンビニで買 ーの近くだった。彼はいつも、そのスー 先生の知っているスー い物をしていた。 ーにしようか。そこなら惣菜売り場に 「それなら距離は変わらへんから、買い物はスー 色々あって食事のバランスも良くなるし。飲み物もジュースはやめて、お茶かお水がいい でも、どうしてもジュ 1 スが飲みたいなら野菜ジュ 1 スは苦手 ? 」 「う、つん、大丈夫」 「じゃあ野菜ジュースにしよ、つか」 皮でもすぐに取り入れられる簡単な工夫を伝えていった こんなふうに、料理ができない彳 A 」い、つ 49 第 1 章いまどきの保健室の光景

3. ルポ保健室 : 子どもの貧困・虐待・性のリアル

と素直に田 5 えました」と一一一一口、つ。 彼とはその後たまたま同じ高校に進み、同じクラスになったが、かってのいじめのよう なことはなく、むしろ親しく接するようになったとい、つ 生きてりやいいさ 高校に進学した寺田さんは、そこでも保健室に支えられた。 「白澤先生や筧先生から『入学後すぐ保健室に相談に行ったらいいよ』と言われていたん です。保健室の先生と白澤先生が知り合いだということで、すぐ話が通じました」 さっそく養護教諭を通じ、寺田さんが安心して学校生活を送れるよう、職員用トイレの 使用や、体育の着替えを保健室でできるようにするなどの配慮がなされた。 「中学とは真逆で、保健室以外の先生もとても優しかったです。前にも同性愛の生徒さん がいらしたそうで、親身になって対応してくれました」と振り返る。 教師陣の意気込みが伝わったからだろうか。トイレの配慮をからかう男子はいても、中 学のようないじめには発展せす、部活動は全員女子という輪の中に入って楽しむことがで きた。 194

4. ルポ保健室 : 子どもの貧困・虐待・性のリアル

「小川さんは、職場の人に野次られるなど、大変な思いをしてきたそうです。それでも同 じ職場で働きつづけるというのはなかなかできないことだし、そんな中でも結婚しようと 思ってくれる人がいたなんて、すごく素敵だなと思いました」と振り返る。 の子どもは、地域で生活している成人の当事者の姿が見えにくいことから、大 人になるイメ 1 ジを描けす、将来への不安が生じやすい。そういう意味でも、思春期にお 手本を見出すことのできた寺田さんは幸運といえるだろう。 寺田さんは小川さんへの電話で、父親に化粧品を捨てられてしまったことについてこば した。ト日 さんは優しく、「今はお父さんにお世話になっているから、一一一口うことを聞かな きゃいけない部分もあるんじゃないかな。大人になれば自分のしたいことをできるから、 その時にやっても遅くはないんじゃない」と諭した。 同じような経験をしてきたはずの先輩の一言葉は、寺田さんの心にすっと染み込んだ。 その頃、寺田さんの中で、ある思いが大きくなっていく。 「私のような人がいてもおかしくないんだと伝えたい」と考えるようになったのだ。 身近なところでは、白澤さんや筧先生以外の教職員、特に男性教師がについて 186

5. ルポ保健室 : 子どもの貧困・虐待・性のリアル

「そんなこと、もう考えるんじゃない。そのうち治るだろう」 寺田さんは反論したい気持ちをぐっとのみ込んだ。 それから日を置かずして、父子は衝突する。 100 円ショップに行った際、寺田さんは化粧品を買った。女生タレントの美容本を読 んで、同じような道具を揃えたいと憧れていたのだ。 しかし買い物に同行していた父親は、店を出るや、「何を買ったんだ」とすかさず寺田 さんの買い物袋をチェックした。その中身を見ると眉をしかめ、「こんなことやってる場 合じゃないだろ」と怒って、その場で捨ててしまったのだ。 小学生の頃にも化粧品を買ったことがあったが、その時は父親も「遊びだからまあいし だろう」と許容していたという。寺田さんは「もう、すごいショックで。展みつらみをぶ つけました」と振り返る。 この頃、寺田さんは父親との一部始終を白澤さんに話していた。 白澤さんとしては、「治る」という父親の発言が、気がかりだった。 性自認 ( 心の性 ) や性的指向は生まれながらのものであり、育てられ方の問題ではない とされる。心の性を体の性に無理やり合わせようとするのは無駄なばかりか、、つつ病や自 182

6. ルポ保健室 : 子どもの貧困・虐待・性のリアル

「自分を真剣に見てくれるというのが嬉しくて、年賀状をよこしたんでしようね。自分が 大切にされているという体験は、子どもの成長過程に必要なものなんです」と白澤さんは 振り返る。 白澤さんが養護教諭として過ごした年間、世のありように従って子どもが coOco を出 す問題は変わっていき、保健室の役割もまた変化してきた。 その最後の年に関わることになった生徒が、寺田さんだった。 本当は女性になりたかった いよいよ、寺田さんと二人で会う約東の日曜日を迎えた。 中学時代の寺田さんについて、私が白澤さんから聞いていたのは次のようなことだ。 父子家庭に育ち、歌うことが大好き。学校でも女性ものの着物やドレスを着付けてコン サ 1 トをしていた。白澤さんに「実は男性が好きで性同一性障害かもしれない」と相談した のは 2 年生の時。本人が父親との関係に悩んでいたため、白澤さんが父親と話をしたという。 待ち合わせの駅で電車を降りると、駅前には果樹園だろうか、収穫を待っ赤いリンゴが 木々に実っていて秋晴れの空によく映える。 168

7. ルポ保健室 : 子どもの貧困・虐待・性のリアル

特にこの時期、結衣さんは部活動をしていたのだが、練習の都合上、どうしても顧問の 目が届かないことが出てくる。そんな時に「死ね」の声が結衣さんを襲うことが心配だっ た。柳先生が「その辺はどうでしよう」と尋ねると、医師は「それは学校の考えることで す」と突き放すだけだった。 柳先生は振り返る。 「だから腹が立って、じゃあ校長と相談して判断しますって言って帰ってきたんだよね」 学校へ戻った柳先生は、校長や部活動の顧問と話し合い、顧問が必ず立ちあえる日に限 って、結衣さんの参加を認めることにした。 この対応を知った母親は、病院で「部活をやらせてもらえない」と不満を漏らしたらし 、 0 さっそく主治医から柳先生に電話がかかってきた。 柳先生は毅然と、「学校で判断してということだったのでそういうふうにしたんです が」と伝えた。すると主治医は、「わかりました。では私からもお母さんに状況を説明し ておきます」と歩み寄りの姿勢を見せたのだ。 「それからその先生 ( 主治医 ) 、変わっていった。細かな指示をくれるようになって。修 学旅行はこんな薬を持っていってこんな時に飲ませるようにすれば行けるよとか、授業も 128

8. ルポ保健室 : 子どもの貧困・虐待・性のリアル

の人生に大きな違いが出るんですよ 「よし、ここでやるしかないか ! 」 長谷川先生が相葉さんに指さしたのは、保健室の丸テープルだった。相葉さんも、それ ならと、つなすいた。 授業を終えてから午後 4 時半まで、毎日およそ 1 時間。 はたから見れば、わずかな時間かもしれない。でも相葉さんは、「人生で一番勉強した 時期だったな」と振り返る。相葉さんが誘って、友達数人も輪に加わった。 長谷川先生は、同じ保健室で自分の仕事をしながら、たまに声をかけるという、付かずれ さ 離れずの距離で見守った。若い教師が勉強を教えにきてくれることもあった。長谷川先生黜 がこっそりお願いしたのだ。他教師との日頃からの連携が生かされていた。 家 の 待 受験直前の時期に保健室を訪れると、壁には「高校絶対合格」という宣一言付きのイラス 虐 トが貼られていた。絵の得意な相葉さんが描いたものだ。願掛けの絵馬のようで微笑まし 章 かった。 第

9. ルポ保健室 : 子どもの貧困・虐待・性のリアル

も失われていったんでしようね。そういう経験があったので、相葉さんのことも気になっ たんです」 その後の相葉さんには特段の問題行動はなく、「たくさんいる気になる子の中の一人」 とい、つ位置に落ち着いた ただ、保健室を訪れることはしばしばあった。表情なく、「だるい」「具合悪い」という ような曖味な体の不調を訴えた。長谷川先生は、今思うと、として言った。 「保健室に来て、他の子と接する私の様子をじーっと見ているだけということもありまし たね。私が話を聞いてくれる人なのかを観察していたのかな」 相葉さん自身は、こう振り返る。 「あの頃は学校に行くのもだるかったからあまり覚えてないけど、 1 年の間は様子見して いたのかな。 2 年になってからも、夏までは長谷川先生、忙しそうだったし」 健康診断などでせわしい時期には遠慮があったらしい。 保健室で噴出した密室の事実 相葉さんが 2 年の夏。ある日、保健室に来た彼女が、突然いらないプリントの裏に猛烈 77 第 2 章虐待の家から出された SOS

10. ルポ保健室 : 子どもの貧困・虐待・性のリアル

そして「禁煙しようと思ったきっかけは ? 」と聞いた。 「舌死んでいくんやろ ? タバコ吸っていたら」と、ホンゴウ君が答案を確認するように 言う。森先生がタバコの害を説いたことを覚えているよ、というアピールのようだ。 森先生はうなすきながら、「味覚やられるのは確かやし、いろんなところがガンになり やすいしね。舌が寂しくて何か食べてしまったり」と返す。 「おれ、いつもガム噛んでるもんなあ」 こうしてタバコの話題が済むと、連休に繁華街でデートしたことや将来のことをほっり ほっりと話した。退室時には一一一一一口、「先生、ありがとう」。素直すぎて微笑ましいほどだ。 ホンゴウ君にとってこれほど素直な気持ちでいられる場だから、森先生の話が腑に落ち、 禁煙しようという気持ちになったのかもしれない。すぐにすつばり止められなかったとし ても、森先生のメッセ 1 ジが彼を応援していくことだろう。 森先生はこちらを振り返ると、「私、こういうことを伝えたくて養護教諭になったんで すよ」とにつこりした。 森先生は高校卒業後、看護の専門学校へ進んだ。その実習の場で、医者にも看護師にも ど、つにもできないことかあると伍旧ったとい、つ