気 - みる会図書館


検索対象: レベル7
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1. レベル7

レベル 457 ほお 光男は右手で頬をかき、落ち着きなく目を動かした。「そりや、ええーーでも僕は 彼女の行き先なんかわからないです、 「近ごろの、彼女の様子を教えてくれてもいいわ。何か変わったことはありませんで した ? 」 お客はばらばらとしか入っていないが、光男は仕事が気になるのか、もじもじと店 長の方を気にする。悦子は大声を張り上げた。 「店長さん ! 」 レジの影からじゃらじゃらのネックレスがのぞいた。「なんです ? いくらお払いすれ 「ごめんなさい、安藤さんを少しお借りしたいんです。迷惑料に、 ギ ( ) ) で 1 ) よ、つ ? ・ 店長は、漫画映画のなかのオオカミのように、ロの端をつり上げてにやりとした。 「オレが、五十万よこせ ! なんて言ったら困るでしようが。しようがない、ロハで いいよ。そのかわり、何か注文してよ」 子はクリームソーダをふたっと、ゆかりのためにフラッペを頼んだ。ひょっとす ると、あとでゆかりがお腹をこわすかもしれないが、もう、仕方ない。 そのゆかりは、さっきからしきりにインべーダー・ゲームの方を気にしている。 なか

2. レベル7

あとにも先にも、みさおと顔を合せたのは、そのとき一度きりだった。そして今、 彼女は自宅からも次女を消してしまっている、とい、つ。 ( どこに行っちゃったの ? ) 写真立てのなかの笑顔に、子はきいてみた。 このところ、しばらく電話もかかってきていなかった。「ネハ ーランド」にはもち ろん、この子の自宅にも。一週間ぐらいになるだろうか。いや、もっとたっている かもしれない。 この前電話で話をしたのは、七月の末ごろだったような気がする。ア ルルバイト先の給料日だから、これから仲間と飲みにいく、と言っていたのだ。 べその時のみさおの声を、思い出してみた。明るかった、ということしか記憶にない。 ( レベル 7 まで行ってみる戻れない ? あの日記の文字が、気になった。みさおは、どこから戻れないと書いたつもりだっ たのだろう。 その必要があるわけではなかったが、不意に自分の居場所を確かめたいような気が してきて、悦子は時計を見た。午後四時三十五分だった。

3. レベル7

「かえって、ごめんなさいね」 一一人の前に腰をおろすと、開口一番そ、つ言った。 「あたしでカになれることがあるとは思えないんだけど、あなたがたのお父さんによ さそうな病院は、一「三心当たりがないでもないの。これも何かの縁ですから、教え てさしあげますよ」 三十代 とことん、気のいい女性なのだ。よく見ると、さほど若いわけでもない。 なかばだろうか。ショートカットに、化粧つけのない頬がつやつやしているので、 若く見えるのだ。 あけみ べ「改めて申しますけど、あたしは太田明美です」 ひでみ のりお レ 彼と彼女は、橋ロ紀夫、秀美という名前を名乗った。さっきまで観ていた映画に登 場したカップルの名前だった。 彼は緊張し、明美を呼び出したことを後海し始めてさえいた。父親がノイローゼ気 うそ 味でーーーと言い出したからには、その嘘をもっともらしい顔でつき通さねばならない だが彼も彼女も、そのための下準備らしいことをしておくことまで、気がまわらなか ったのだ。 だが、明美は、二人の「父親」の症状などについては、ほとんど質問してこなかっ 295

4. レベル7

252 てくれなきや駄目ですから」 「ごめんなさいね、不躾で。あなた、おいくっ ? 「今年一一十四になります」 しつかりしている、と子は思った。桐子にプローしてもらった髪は、子の顔を 華やかにひきたてている。腕前はかなりのものなのだろう。 「真行寺。という名前にもこれという反応がなかったことから見ると、みさおは桐子 ーランドーのことは話していないのだろう。話していたとしても、子の 名前まではあげていないようだ。そこで、子は自分のことを、みさおの親類だと説 うそ ペ明した。嘘をつくのは気が引けたが、その方が手つ取りばやい。 「五日も帰ってないなんて、おうちのかた、気が気じゃないでしようね みさおが初めて「ローズサロン、にやってきたのは、今年の春ごろだったというこ と。最初から桐子が担当し、ずっと指名してもらってきたこと。いちばん最近にやっ てきたのは八月四日のことで、彼女はとても明るくふるまっていたということーーー桐 子はてきばきと語った。 「あなたとのあいだで、家出の話が出たのはいつごろでした ? 「最初からですよ。あれぐらいの歳には、誰でも考えることでしょ ? あたしもそう だめ ぶしつけ とし

5. レベル7

「あんたの方は、そのーー記憶が消えているという以外には異常はないのか ? 話を聞き終えると、三枝はそう質問した。 ル彼はちょっと意外な気がした。体調について気にしてもらえるような立場にはない べと思っていたから。 まじめ 「どうなんだ ? ー三枝は真面目だった。 「特に異常はないみたいですよ。少し、物の名前が思い出しにくいようなことはあっ 「頭痛は ? 」 「ありませんね。僕は」 三枝は素早く彼女を見た。 「こっちのお嬢さんは、頭痛がひどかった ? 172 三枝は約束した。だから、彼は話した。ほかに選択の余地のないときは、とりあえ ず、差し出された手にはつかまってみるものだ、と自分に言い聞かせながら。

6. レベル7

弸ているのだった。 「大先生は、 しいよ。ぎつくり腰でもおこされちやたまらんからな」 祐司は三枝に手を貸した。シートの中の身体にはまだ体温があり、やわらかく、死 体のような感じがしない。 ひどく、手が汚れたような気がした。殺人のその上に、まだ手を汚したような気が。 「どこかに埋めるなら、明るくなる前の方がいいんじゃないか ? 三枝の問いに、猛蔵が、どうでもよさそうな声を出して答えた。 「真っ暗なうちは、山には入れん ペ「じゃ、どうする ? 」 三枝はくたびれたようにべッドに腰をおろした。 「休憩か ? 「そ、つしましよう」と、祐司は言った。 その声の調子に、どこかひっかかるものがあったのかもしれない。三枝がこちらを 見た。 「どうしたんだ ? 大丈夫か ? 」 「大丈夫ですよ。

7. レベル7

地図はキッチンのテープルのうえにあった。彼はそれを取ってきて、三枝に渡した。 はすむ 「通りの名前は新開橋通りだ。斜向かいが公園だよ。そうそうーー」 ようやく説明を終え、受話器を置く。 「やれやれ、こいつがあって助かったーー」 そこで、三枝の顔から笑みが消えた。コピーを手にしたまま、静止している。 「どうしました ? 」 三枝はロを半開きにして顔を上げた。そしてコピーを指さした。 彼の質問に 「それが何か ? べ「気がっかなかったか ? 」 「何に 「俺は気がっかなかった。たった今まで」 三枝の声の調子に、彼は真顔になった。彼女のそばから離れ、三枝に近寄った。 「こいつはコピーだ」 「ええ、そうですよ 「にかィー 可から撮ったコピーかな」 「住居地図でしよう ? 231

8. レベル7

「こういう夜景、記億にある ? 確かなことは一言えないと思った。だが、見置れた光景であるよ、つな気もする。 「あるよ、つな、ないよ、つな」 「わたしもよ [ どこかで赤ん坊が泣き始めた。ごく小さく聞こえる。眼下に広がっている町並みの、 どこかの屋根の下だろう。 「さっき気がついたんだけど、この部屋、べランダがないのー 「そうだね べ「隣にはあるのよ。その隣にも。ここは角部屋だからかな ? 間取りが違、つのかもしれない。 せんたくもの 「その代わり、洗濯物を乾かせるように、浴室がそのまま乾燥室になるような設備が ついてるのよ。気がついた ? 」 「いや。そんな器用なことができるのかな」 「できるの。でも、すごく値段の張る設備だと思うわ」 彼女は額にかかる髪をかきあげた。 「それでね、洗濯用洗剤も、柔軟剤もあるわ。お風呂用のクリーナーも、パイプ洗浄 139

9. レベル7

ばかりはずれても、出血多量で死ぬ。頭は難しいんだ。案外、骨が固いからな」 もう一度、最後の抵抗をするために、祐司は首を振った。 「当たりませんよ」 「当たるさ。腕をあげて、顎を引け 自分の意志を失ってしまったような気がした。機械になったような気がした。 「銃は両手で支えるんだ。反動があるからな」 = 一一口われたとおりにした。 「両足は肩幅に開いて、腕はいつばいに伸ばす」 ペそのとおりにした。 レ べッドの上の男が、ため息のような声を出した。平和な眠りのしるし。生きている しるし。 「引き金は、右手の人差し指で引く。指をかけろ」 そのとおりにする。汗で銃を取り落としそうになる。 「ゆっくりと絞るんだ。最後の瞬間まで、ぎりぎりまで絞れ。いきなり引くと、狙い がはずれる 目を閉じて、祐司はうなずいた。 667

10. レベル7

「三枝さん、どこへ行った ? 「新宿の、デパートの屋上。べつに、誰と会、つわけでもないの。ただ、ばんやりして オその試みはうまくいかす、彼はみ みさおは、思い切って彼に近付いてみた。。こが、 さおを無視して行ってしまった。 「またあとを追いかけたんだけど、そこで見失っちゃったの。それで、翌日 ハンサ」へ行った。 今度は夜になって、また「ラ・ 「鹿みたいだけどーー・気になって仕方なかったの。あの人、真行寺さんのなんなん べだろう、真行寺さんに何かしようとしてるんじゃないかしら、なんて考えて : : : 心配 「お馬鹿さんね、と、院子は言った。だが、みさおの気持ちはよくわかるし、うれし かった。 その夜は、店にはまた一樹しかいなかった。そういう経験のないみさおにも、この 店が、あたりまえのスナックとは違うということはわかった。営業する気などないの だろう。店主の一樹がいつも酔っ払って一人でいるだけで、ほかには女性一人いない のだ。 653