1 1 性 「どうしてそんなにしたいんだ、おかしいんじゃないのか などと淫乱扱いされる場合も。 また、男性から求められた時に女性が拒否したことによってセックスレスに、というパ ターンも多いのですが、それは男性の中に「女性はいつも応じて当然」という気持ちがあ るが故に、拒否されると心が傷ついてしまうからでしよう。 日本の素人女性にとって、「多情」は罪。相手の性欲が湧いた時に、常に嫌な顔をせず 相手をするのが、正しい性欲です。女性誌のセックスレス特集では、対処法として三人 で旅行に行き、場所を変えてみる」「マッサージなどのボデイタッチから」「セクシーな下 着にトライ」「時には目隠しをしてみては ? 」といった提案がなされていますが、寡聞に してそれらの対処法でセックスレスが解消されたという話を、私は知らない。相手が突然 セクシーな下着を着ていたり、突然目隠しされたりする方が、男性はドン引きするという ものでしよう。 日本女性はかって、「あまりにも無ロだ」と言われていました。子供の時は父に、結婚 したら夫に、老いては子供に従えという「三従」が女性にとって重要とされていたわけで、 自分の意見を持っことも口に出すことも、よしとされなかった。 しかし明治維新だの敗戦だので世の中は変わり、女性も「自分の意見をしつかり持ち、 1 3 7
に言わなかった。『東大』それも『桜蔭から』とか言ったら、向こうの酔いも醒めますもん」 とのこ AJO 日本人は「東大出身」と聞くと条件反射のように「すごー と言うわけです。が、そ の東大出身者が男の場合は「すご ーい」がモテに通じる場合がままあり、女性の場合は い」からこそ一歩引かれる、ということになりがち。 知人男性は、私立大学から東大大学院に入った途端、 「すごくモテるようになった。東大ブランドってあるんだね」 と言っていました。東大Ⅱ将来有望そうⅡ結婚向き、と女性達が思うからこその、モテ でしょ一つ。 しかし女性の場合は、東大だからモテるということにはならない。東大Ⅱ俺より頭イ イⅡちょっとね、ということになるのではないか。 「だから東大女子は、学生のうちに東大男子をつかまえておかないと、あとが大変なんで すよ。一度社会に出てしまうと、東大出身の女と聞いただけで腰が百メートルくらい引ー る男ばっかりなんですから」 ということなのです。 女性にとって東大ブランドがなぜモテにつながらないかといえば、「女よりも男の方が 「すごー 1 9 4
「男は外で働いて、女は家で家事育児」というケースが一つの落ち着きやすい形であるこ とも事実であろうと思う。「『主婦』も立派な仕事です ! 」という意見に対しては、「まあ 確かにそうだ」と思いますし、主婦の苦労も理解できます。そして専業主婦に育てられた 私は、キャリアウーマンの母親を持っ子供が一人でコンビニのごはんを食べる、といった 図を見るとつい、「可哀想」などと思ってしまう人間でもあるのですから。 「七人の侍」を観て私がジ 1 ンとしたのは、時代のせいもあるのでしよう。今の日本は、 戦争や内紛と無縁でいられる、一応は平和な世の中。男が女を守らなくてはならないよう な場面は、日常生活ではなかなか見られません。 平和な時、男女の差は目立ちにくいものなのです。機械化が進み、家庭の中でも男しか できないカ仕事はそうそう無い。昔は、ちょっと硬くなったのし餅を切る時など、 「やつばりお父さんでなくっちゃあ」 ということがありましたが ( 東日本限定ネタ ) 、今や餅つきをする家も減り、餅は個別 パックをスー ーで買えばいいのでお父さんの出番は無し。 工事現場やマグロ釣り漁船等、本当に筋力が必要な仕事の場合は、男しか従事していな いこともあります。が、全体的に見れば男性も女性も様々な職業に進出し、男しか / 女し かできない、ということは、減ってきました。 2 2 8
だんそんじよし 男尊女子 2 017 年 5 月 31 日 2 017 年 6 月 2 7 日 第 1 刷発行 第 2 刷発行 【著者】 さかいじ・んこ 酒井順子 【発行者】 茨木政彦 【発行所】 株式会社集英社 東京都千代田区ーツ橋 2 - 5 -10 〒 101-805 0 電話 編集部 03 -3230-6141 読者係 03 -3230-6080 販売部 03 -3230-6393 ( 書店専用 ) 【印刷所】 大日本印刷株式会社 【製本所】 株式会社ブックア 定価はカバーに表示してあります。本書の一部あるいは全部を無断で複写・複製することは、法律で認められた場合を除き、著 作権の優害となります。また、業者など、読者本人以外による本書のデジタル化は、いかなる場合でも一切認められませんので ご注意ください。造本には十分注意しておりますが、乱丁・落丁 ( 本のページ順序の間違いや抜け落ち ) の場合はお取り替えい たします。購入された書店名を明記して小社読者係宛にお送りください。送料は小社負担でお取り替えいたします。但し、古書 店で購入したものについてはお取り替えできません。 0 」 unko Sakai 2017 , Printed in 」 apa 心 SBN978-4-08-781628-0 C0095
る西洋料理のレストランにおいては、女性を先に立てて歩く方が変に見えない、というこ となのでしよう。反対に、赤だしをズズッとすすってもよい和食屋さんにおいては、男が 先に歩いても、気にならないのではないか。 お酌に関しても同じです。小料理屋さんのカウンターで、女性が男性のお猪口にちょっ とお酌、というのは悪くありませんが、フレンチレストランで女性がワインを注いで回っ ていたら、召使でも連れてきたかのように見えてしまう。 昨今は接待の場でも、女性社員がお酒を注いで回るのは、 「我が社の企業文化は遅れています、っていうのをアピールするみたいで、それはちょっ とできないなあ」 という会社が多い模様。「女性によるお的サービス」という日本文化は消えつつあり、 お酌という行為は専門職の女性に限られてくるのかもしれません。 今の日本において、男女どちらを「ファースト」にするかという問題は、正解の無い状 態です。蕎麦屋で音をたてて蕎麦をすするのは「粋」だが、イタリアンレストランでパス タを同じようにすすると「えつ」という感じになるという、時と場合によって和洋のマナ ーを使い分けなくてはならないのが日本だとしたら、男女の「ファースト」問題について も、時と場合を見極めた上での、微妙なさじ加減が必要なのでしよう。 ちょこ 1 2 0
象になってしまっていたのです。 美智子様や雅子様は、そのことを知っているのだと思います。国際的な感覚も持ってお られるお二人は、日本の「ジェントルマン・ファ 1 スト」が、世界的な視点に立った時、 いかに男を弱々しく見せるものであるかも、わかっていらっしやる。だからこそ彼女達は、 日本の皇室として守らなくてはならない最低限の男尊女卑システムを遵守しつつ、自分の 夫が国際社会の目にみつともなく映らないよう、後ろへの下がり方も、頭の垂れ方も、少 しずつ修正していったのではないか。 ジェントルマン・ファーストは、国際的に見れば異端。とはいえ日本では「そういうこ とになっている」のだし、その本家に嫁いだのだから、常に「下」でいることは運命であ り宿命。 : : : と自らに言い聞かせながら彼女達は何十年も結婚生活を送り、その齟齬を噛 み潰しているうちに、心身の調子を崩していったような気が : レディ・ファーストがいいのか、ジェントルマン・ファーストがいいのか。その正解は、 無いのです。時と場合によって、どちらが先に立つべきかは、変わってくるのではないか。 ただ、どちらかを先に立たせると決めてしまった方がラクではあります。時と場合をいち いち判断して、先になったり後になったりするのは、ややこしくてかなわないことでしよう。 だからといって、どちらかが必ず上・先・前と決めてしまったら、歪みが生じるのもま 1 2 6
とは表面的なものを示し、「芯」はまさに内部とか奥底にあるものを示すのだと思います が、表面的には男性を立てたり譲歩したりしても、男性に頼ったり任せたりするのでなく、 最終的にはしつかりした「自分」を持っている、というような。 それは「おふくろさん」の資質と似ています。世で「おふくろさん」と言われる人達は、 子供達にいつでも温かく接し、美味しいごはんを作ってあげ、、 しつの間にか洗濯も掃除も 済ませているのに不平は漏らさず、自分の意見を声高に言ったりはしないのだけれどイザ という時に頼り甲斐がある、という人。日本女性は、組織の中でそんな「おふくろさん」 と化した時だけ、高い地位でもうまく立ちまわることができるのではないか。 皇室という組織の女性達のトップに立っ美智子様は国民から大人気ですが、美智子様の 場合も、気は強くなさそうだけれど、芯は強そうです。対して雅子様は、気は強そうだけ れど、芯は弱そうだからこそ、つらい状況が長く続いているのでしよう。紀子様の場合は、 よくわからないけれど両方強そう、そして気の強さを隠す術も身につけておられる : 「気が強そうな女性」というのは、そうしてみると、実はとても弱い存在なのかもしれま せん。男性からの評判はいざしらず、気が強そうな女性達は皆、自らを欺く術を持たない、 素直な善人が多い。しかしそんな彼女達が、気が強いが故に周囲から叩かれて、ボロボロ に。その間に、「本当は気が強い、しかしそれを巧妙に隠すことができる」という一見穏 1 6 0
目立っ二人の場合は、「すべての高低差をカネが埋めたのだな」ということが明らかすぎ て、どこを見ていいかわからないような状態に。 だからカオ偏差値の高い女は得だ、という話もありますが、カオ偏差値において女低男 高というカップルもまた、いるのです。夫はかなりのイケメン、しかし妻は : : : という夫 婦の妻が大変な事業家で、夫は「カネも力もなかりけり」タイプ、ということもあるもの の、中にはそういったカネの匂いが漂わない場合も。そのようなケースではたいてい、妻 の気立てがすごーくよかったりして、男性は「お目が高い」などと言われる。 やつばり女は優しさが大切なのね。 : などと思いつつも、それでも容姿の「女低男 高」という状態に、そこはかとない落ち着きの悪さを感じてしまう私。それはひとえに、 私の中に「女は容姿が良くてなんぼ」「男は仕事ができてなんぼ」という昔ながらの固定 観念があるからなのでしよう。結婚が女のカオと男のカネの交換であるならば、女は男よ りも容姿レベルが高くあるべきで、男は女よりも経済レベルが高くあるべきだ、と。 うつみけいこ 無職の夫を堂々と妻が養っていたり、また内海桂子師匠のように二十四歳下の男性と結 婚したりする女性を見ると、「すごい ! 」と、そして「私には無理だ ! 」と思う私。きっ 不は、いくら無職の夫が家事を全てやってくれても「とはいえ仕事をしていてほしいわ と思うでしようし、うんと年下の夫がどれほど若い魅力にあふれていても「自分の老 2 0 2
10 レディ・ファースト レディ・ファースト問題というものについては、いつも頭を悩まされます。洒落たレス トランにおいてカップルで来ているお客さんを見ていると、日本人は九割がた、男が先を く、というパターン。女性が遅れて のしのしと歩き、女が後ろからちょこまかとついてい しまっても、男性は我関せずで、どんどん進み、先にコートを着たりしている。 傍から見ていると、その姿はどうにもみつともないのです。レストランの通路というの はいわばランウェイ的な役割を果たしてもいるわけですが、そのランウェイを「俺の方が 偉い。俺が金を払った」とアピールしながら、男性が歩いているように見えるのですから。 それはレストランだから、という事情もあるのかもしれません。料亭の廊下だったら、 男性が先に歩く方が様になる場合も。しかしイタリアンやフレンチのレストランにおいて 「男が先」は、やはり変なのです。 郷に入っては郷に : : : ということなのであれば、皆が音を立てずにスープを飲もうとす レ一アイ・ファースト
は宀はい、か 私の場合、さすがに遠慮が出てきて女子会ではなく「婦人会」を開催するようになって きていますが、そろそろ〃老女子〃や〃銀女子〃のための雑誌も創刊されるのではないで 1 レよ一フ、か きよほうへん そんな「女子」をとりまく世界の中で、最も毀誉褒貶が激しい言葉が「女子力」です。 たとえば電通において、入社したばかりの女性社員が過労の末に自殺したという事件にお いて、上司から「女子力がない」などと言われていた、という報道がなされました。仕事 のクオリティーも女子力のクオリティーも同時に満たせ、というのは無理。ひどいセクハ ラだ : ということで、「女子力」はセクハラワードとしても有名になったのです。 もともと女子力という言葉は、女子達の間では常に、「 ( 笑 ) , 付きで使用されていたも のだったように思います。 「タオルハンカチってさ、明らかに女子力低いけど、でも吸水力を考えると使っちゃうよねー」 「だねー」 というような感じで。 「あー、女子力上げたい」 と言う人は明らかにウケ狙いだったし、 2 2 0